く~にゃん雑記帳

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<画家島本芳伸> 没後3年の回顧展、奔放な筆致で自然の輝きを描く!

2016年11月28日 | 美術

【奈良を拠点に海外にも、晩年までエネルギッシュに創作】

 奈良県橿原昆虫館(橿原市)で「自然を感じる・命を見つける―画家・島本芳伸の世界」が開かれている。島本は1937年和歌山県生まれで、7歳のとき奈良へ。元一陽会委員・日本美術家連盟会員で、現場主義をモットーに画材を求めてキャンピングカーで走り回り、3年前の2013年秋に病没するまで創作活動に精力的に取り組んだ。多作で知られ、テーマも風景、人物、寺院、仏像と多岐にわたった。30日まで。

 

 会場の入り口に飾られた作品は色鮮やかな『朝日を受ける畝傍山』(上の作品)。季節は秋だろう。朝日が田園や紅葉を照らし、中央奥の畝傍山をひときわまぶしく染め上げる。その左背後には二上山。平和な朝の風景を明るく自在な筆致で描き上げた。橿原市に居を構えていた島本は畝傍山と二上山がお気に入りだったようだ。会場には『青い風』(下の作品㊧)や絶筆『二上山と畝傍山』も展示されている。絶筆は亡くなる4日前の作品。飛鳥路を車椅子で散歩していたとき「二上山がきれいね」と声を掛けると、島本は「畝傍山と合わせて描くのがいいんや」と答え、自宅に戻るとベッドの上で描き始めたという。だが翌朝には意識を失ったそうだ。

 

 島本の作品には独特なタッチの個性豊かなものが多い。『赤の気配』(上の作品㊨=部分)は150号変形の縦長の大作。滝を激しく下り落ちる白い水しぶきがユニークに表現されている。別の滝を描いた『虹の気』は勢いのある筆運びでほとばしる水のすさまじさを表した。一方、病没2年前の作品『はちすのゆめ』(下の作品)はメルヘンチックな作品で、月光に照らされて咲くハスの花を幻想的に描いた。

 

 『余呉郷湖』(下の作品)は横長の和紙に描いた作品。『はちすのゆめ』と同様、静寂が画面全体を支配するが、手前の親子(?)のカモが厳しい冬の自然の中で一服の温かさを感じさせてくれる。なかなか味わい深い。会場にはヨーロッパを訪ねたときの作品『トレドの太陽』(スペイン)や『オンフルールの雨』(フランス)、1978~84年に30冊分の挿絵を描いた『全国の昔話シリーズ』なども並ぶ。島本は東大寺学園の夜間高校を卒業後、自然と真摯に向き合いながら多くの作品を残してきた。晩年は病魔に襲われ76歳で病没したが、全力疾走の人生に悔いはなかったのではないだろうか。

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