く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK> 『日本の巨樹 1000年を生きる神秘』

2014年11月16日 | BOOK

【高橋弘著、宝島社発行】

 著者高橋氏は1960年山形県生まれ、北海道育ち。巨樹写真家として活躍する傍ら、東京の奥多摩町日原森林館の解説員・調査員、環境省の巨樹データベースの管理者を務める。「東京巨樹の会」を主宰、「全国巨樹・巨木林の会」「日本火山学会」の会員でもある。著書に『巨樹・巨木をたずねて』『神様の木に会いに行く』など。

    

 高橋氏が巨樹に魅せられ〝巨樹巡礼〟を始めたのは1988年に会津で巨木に出会ったのがきっかけという。以来、訪ね歩いた全国の巨樹は幹周5mを超えるものだけでも3200本を超える。「それぞれの巨樹に個性があり、歴史があり、表情がある」「巨樹とのすべての出会いが一期一会の感動的な体験」。本書では「あまり日の目を見ないが素晴らしい個性を持った巨樹たち」にもスポットを当てている。

 最初取り上げるのは「圧倒的なオーラに人生が一変 神宿る巨樹12選」。まず菅山寺のケヤキ(滋賀県)。山門のそばに樹齢1000年余といわれる巨樹2本が阿吽の仁王像のように並び立つ。ほかに表紙を飾る西善寺のコミネカエデ(埼玉県)、加蘇山の千本かつら(栃木県)、山高神代ザクラ(山梨県)、洞杉(富山県)、小野のシダレグリ(長野県)など。いずれも圧倒的な存在感だ。

 続いて北海道・東北から南へ、心に訴えかけてくる〝100体〟を順に紹介する。喜良市(きらいち)の十二本ヤス(青森県)、三春滝桜(福島県)、賀恵渕のシイ(千葉県)、月瀬の大杉(長野県)、岩屋の大杉(福井県)、平湯大ネズコ(岐阜県)など。近畿では高井の千本杉(奈良県)や祇園杉(京都府)、和池の大カツラ(兵庫県)など12体を取り上げている。中国や四国、九州では川棚のクスの森(山口県)、杉の大杉(高知県)、仲間川のサキシマスオウノキ(沖縄県)など。

 筆者によると「日本は巨樹大国」。国土が南北に長く降水量が多く、様々な気候が存在するため、多種多様な樹種が育つ。北海道で多く見られるのはイチイやカツラ、東日本ではスギやケヤキ、シイノキ、カツラ、西日本ではクスノキ、カシ、シイノキなど。巨樹は深い森の中に多く存在すると思いがちだが、森林内は生存競争が熾烈なため、思うほど巨樹を見ることが少なく、むしろ人里近くの社寺にある場合が多いという。本書に登場する巨樹にも注連縄を飾られたものが目立った。

 解説板に書かれた樹齢は実態より大きな数値が記載されていることが多いそうだ。「一番手っ取り早くて適当と思われる樹齢は解説板にある樹齢表記の半分の数値」。巨樹を目の前にすれば誰もが直接木肌に触ってみたいと思うはず。「木も人との触れ合いを望んでいる」と筆者。だが、最近は周囲を柵で囲うことが多くなった。中には鋼鉄製の3mもの高い柵で囲んだケースもあったという。「『困る』という漢字は『木』を国構えで囲んでしまっていて困る――。まさにその通りだと感じざるを得ない」。なるほど!

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