【木製品の樹種は広葉樹が全体の4分の3、用途・目的に応じて選択】
唐古・鍵考古学ミュージアム(奈良県田原本町)で秋季企画展「弥生遺産Ⅱ~唐古・鍵遺跡の木製品」が開かれている。弥生時代を代表する環濠集落で、国の史跡でもある唐古・鍵遺跡。1930年代に始まった発掘調査ではこれまでに木製品、石器、土器、青銅器など様々な遺物が出土した。今企画展では「木」に焦点を当て、出土した木製の農具や狩猟具・漁労具、食膳具、武器などを展示している。12月14日まで。
出土した木製品には多種多様な木材が使われた。遺物1000点余を樹種別に分類したところ、広葉樹が全体の4分の3を占め、中でもブナ科(全体の39%)が突出していた。クリやドングリなどの実を付けるものもあるブナ科は食料としても不可欠な木だったとみられる。ブナ科に属するカシ類は堅くて丈夫なため、鍬や鋤などの農具や斧柄として利用された。広葉樹でブナ科に続くのはクワ科(全体の7%)、ニレ科(6%)、ツバキ科(4%)。クワ科のヤマグワは食膳具の高杯や匙、杓子などに多く使われている。
針葉樹で最も多いのはヒノキ科(全体の8%)。これにマツ科(3%)やイチイ科、コウヤマキ科(いずれも2%)が続く。武具の盾は出土した14点全てが針葉樹で、その大半はマツ科モミ属だった。弓にはしなやかで反発力のあるイヌガヤが多く用いられていた。樹種の分類により、弥生人が木の特性を理解し、用途や目的に合わせ最適な樹種を選択していたことが分かった。
これまでの発掘調査では弥生中期初頭と中期中頃の2棟の大型掘っ立て柱建物跡が見つかっている。規模はいずれも長辺11.5m、短辺7m余りで、柱を立てるための穴は幅が長軸で約2mだった。今企画展ではそのうち中期中頃の建物跡で見つかった弥生時代最大級の直径83cm、長さ2.5mのケヤキ柱も展示中(写真㊧)。樹齢は110年で、炭素年代測定法では紀元前275年と同170年頃の2つの可能性があるという。
この巨大な柱はなぜか斜めに傾いた状態で出土した。この柱が巨大すぎて建物解体時に抜き取ることができず、横穴を掘って倒し放置したのではないかとみられている。柱の下部には2孔一対の目途孔が開けられ、うち1つの内部には14本1束になったツルが残っていた。運搬用のロープとみられる。その柱の隣には黒田龍二・神戸大学大学院教授によるこの大型建物の復元模型(50分の1)も展示されている。