く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK> 「工芸の四季―愛しいものがある生活」

2013年12月13日 | BOOK

【文=澤田美恵子、写真・デザイン=中野仁人、京都新聞出版センター発行】

 文と写真を担当したお2人はいずれも京都市出身で京都工芸繊維大学の教授。専門は澤田氏が言語学と伝統工芸、中野氏がグラフィックデザイン。本書は2012年4月から今年3月まで丸1年365日にわたって京都新聞の1面題字下で連載したものを書籍化したもの。日々の暮らしに溶け込んだ工芸品を美しい写真と簡潔な文章で紹介しており、「民芸運動」推進者・柳宗悦が唱えた〝用の美〟という言葉を改めて想起させる1冊となっている。

   

 取り上げた分野は実に幅広い。キセル、印籠、文楽人形、釣竿、黒谷和紙、和鏡、ぽち袋、和綴じ本、和傘、竹垣、茶筅、鉄瓶、茶筒、すす竹の箸、蕎麦猪口(そばちょこ)、束子(たわし)、がま口、髪飾り、行灯……。もちろん西陣織や京友禅、京漆器、京七宝、清水焼、京ろうそく、京仏壇など、地元京都の伝統工芸品も盛り込まれている。

 例えば1月をみると――。元日の「蓬莱模様 飾り扇」に始まって神楽鈴、百人1首、押絵羽子板、注連縄(しめなわ)と続く。その後も奴凧やゑびす飾り、京弓、飾り餅、浜独楽、留袖、市松人形、狛犬など1月にふさわしいものが選ばれている。そして、それぞれの写真には5行100文字余りの説明文が添えられている。

 いずれも職人の匠の技が凝縮した逸品ばかり。中でも京和傘の内側開閉部や花火のような金網製の豆腐すくい、黒漆の女性用の下駄などにははっとするような美しさが漂う。ちなみに今日12月13日の項に取り上げているのは「旅持(たびもち)香箱」。小さな香炉、香木、香割り道具がセットに。旅先で香を聞く、とはなんと優雅な!

 書籍化に当たって、新たに澤田・中野両氏に静岡文化芸術大学学長の熊倉功夫氏が加わった特別鼎談や、「箔画」作家・野口琢郎氏ら若手工芸家・芸能師3人のインタビュー記事も織り込んだ。鼎談の中で熊倉氏は茶道や武道同様、ものづくりの世界でも〝守破離(しゅはり)〟が大切と説く。「まねることは誰でもできます。その後は自分で自分の生き方を切り拓いて、新たな境地に達していただけたら」。

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