経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・増税で景気は破断せり

2020年02月02日 | 経済(主なもの)
 12月の商業動態・小売業は前月比+0.2の微増にとどまり、早くも、反動減の戻しの勢いは消えた。10-12月期の前期比は-6.5にも及ぶ。2014年の消費増税時の-7.7よりマシに見えるが、前回の直前の駆け込みが+4.4だったのに対し、今回の7-9月期は+3.3と小さめだったことを踏まえると、種々の手立ての甲斐もなく、前回と同様の大打撃を被ったと評せざるを得ない。今後は、L字型の展開が予想されるところであり、増税という意図的な政策によって、景気は破断するに至ったという結論になる。

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 10-12月期の商業動態・小売業は大きく下落し、鉱工業指数の消費財出荷も前期比-6.1と急減した。来週公表の日銀・消費活動指数のマイナスは4%にもなると見られる。比較的、安定しているCTIマクロでも3%弱のマイナスであろう。こうなると、GDPの家計消費(除く帰属家賃)は、アベノミクスで最低の2014年4-6月期を割るかはともかく、最低水準に陥るのは確定的だ。これは、民主党政権下の2012年さえ下回るものである。

 今後の消費については、1月消費者態度指数が前月比横バイであり、景気を先導する輸出などの指標が低迷していることから、L字型の展開になる公算が高い。アベノミクスの間に、消費税率で+5%、年金保険料率で+1.53%の引き上げがあり、緊縮財政が敷かれたのだから、消費がまったく増えないのは、むしろ、当然だ。それでも、輸出とインバウンドにより、女性と高齢者を中心に雇用増を確保できたことの方が特筆されよう。 

 その輸出は、日銀・実質輸出入で見て、12月は+1.9となったものの、10-12月期は前期比-0.8と減少しており、下げ止まりとは、まだ言えない状況にある。そこへ、新型コロナの蔓延だ。中国の生産活動の停滞と来日観光客の減少は、一過性であるにせよ、影響が出よう。前回の増税の際も、輸出が減退しただけで、消費はズルズルと低下した。今回はインバウンドが加わるから、拡がりは、それ以上である。

 もう一つの景気の先導役である住宅は、着工戸数が12月こそ前月比+1.8となったものの、10-12月期は前期比-4.4万戸と、4期連続の減少となり、下がり幅も大きい。頼みの公共事業にしても、建設業活動指数の11月までの数字を見る限り、ようやく底打ちをしたくらいだ。アクセルを吹かそうにも、人手不足で執行が難しくなっているため、せっかくの補正予算も、繰り越しの増加につながりかねない。

 また、今回の経済指標で特徴的なのは、設備投資関係の激しい落ち込みである。10-12月期の鉱工業指数の資本財(除く輸送機械)の出荷は前期比-6.6、資本財輸送用が-9.4、建設財建築用が-4.8である。増税の駆け込みの反動などの特殊要因が含まれるにしても、落ち込み幅は大きい。こうなると、設備投資は、製造業が輸出に従い、非製造業が建設投資をなぞるので、こちらにまで不調が及ぶのはやむを得ないところだ。

(図)


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 今回の消費増税についても、「不運にも、増税に台風や新型コロナが重なった」と語られることになろう。しかし、消費増税の打撃からの立ち直りには、順調な環境が1年以上は必要で、時間を費やしているうちに、大なり小なりリスクが顕在化するのは避けられない。不運に脆弱な状況をわざわざ作るようなことをしていたら、やはり、不運に巡り合ってしまう。それは、悲劇というより、未必の故意によって招いた政策不況と言うべきであろう。


(今日までの日経)
 中国経済 春節明けも休止 新型肺炎 8割地域で生産再開延期。英離脱 戦後秩序に幕 EU、結束へ正念場。


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