経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

10-12月期GDP1次・株高のマイナス成長

2024年02月18日 | 経済
 2/15に公表された10-12月期GDP速報は、実質成長率が前期比-0.1%と2期連続のマイナス成長になった。次の1-3月期も、特殊要因のサービス輸出の剥落もあり、マイナスが濃厚だ。1月の景気ウォッチャーも下がっている。他方、株価は、年初から15%も上がり、バブルの最高値を更新する勢いである。10-12月期の名目GDPは、前期比+0.3%で順調だからと言えば、それまでだが、実質と名目は、かくも乖離している。

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 成長には設備投資の促進が必要だと叫ばれるが、実は、足下の設備投資の水準は高い。名目GDPに占める設備投資の割合は16.7%で、アベノミクス、リーマンシッョク前、デフレ前の各ピークとほぼ同じである。デフレ前と何が違うのかと言えば、住宅投資と公共投資の割合が下がっていることで、投資全体を盛んにし、高投資の経済にしたければ、これらをテコ入れすべきだろう。

 もっとも、緊縮で、公共を減らし、可処分所得を削って住宅を持ちがたくしたのだから、政策どおりの結果になっているに過ぎない。失われた30年と言っても、リーマン前とアベノミクスの2度に渡って、設備投資が盛り上がった時期があり、長期停滞は、消費のことだという理解が重要である。そうであれば、成長のための処方箋が設備投資の促進や労働市場の改革にはなりようがない。

 本当の意味で高成長にしたければ、輸出急増で設備投資が伸びたら、生まれた所得を財政が削らずに消費に結びつけ、消費も伸びた結果、設備投資の比率があまり上がらないという形にしなければならない。設備投資は、需要を見込んで期待が形成されるので、設備投資だけを政策的に上げるのは無理があり、上げられるのは、輸出という外挿的な大需要が来た場合に限られる。財政需要でもできなくはないが、規模が大き過ぎて間尺に合わない。

 かつて日本が奇跡の高度成長を成し遂げたのは、輸出をテコに高投資の経済を構築できたからだし、停滞のアジアを脱したのは、日本をお手本にできた国々だった。反対に、緊縮で需要ショックを与えれば、低投資と低成長の経済に移行して、抜けられなくなる。設備投資は、現場の実感どおり、金利でなく、需要で決めるものだとすると、奇跡も、停滞も、必然的なものでしかない。

(図)


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 今回のGDPでは、一時的な産業財産権等使用料の受取でサービス輸出が増加したとされ、それがなければ、モノの輸出は停滞していて、マイナス成長は、もっと深刻なものになっていた。今の日本は、「デジタル小作人」になっており、2023年には赤字が過去最高の5.6兆円前後になると試算されている。輸出で景気回復という御家芸を使える局面が果たして巡ってくるのか、ますます遠のいているように感じる。


(今日までの日経)
 世界株4割、昨年来高値。インフレが呼ぶ「5%成長」 32年ぶりの恩恵と錯覚。「結婚氷河期」脱却見えず。好調な企業業績に死角 10~12月GDP0.4%減。米高圧経済、3つの注意点。

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