経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

緊縮速報・景気悪化の中の税収動向

2019年12月22日 | 経済(主なもの)
 7-9月期資金循環が公表され、一般政府の資金過不足は、4四半期移動平均の名目GDP比で見ると-1.9%となり、前期より0.3%の低下となった。この1年は、一進一退しつつ、極めて緩やかながらも改善をたどってきた。しかし、10-12月期以降、消費増税分が加わるにもかかわらず、景気の減速で企業収益が大きく下がっているため、税収は停滞が見込まれ、景気対策をせざるを得ないこともあって、財政収支の改善が見通せない展開となる。成長より財政を大事にする単調な経済運営の当然の帰結である。

………
 2019年度の国の一般会計の税収は、景気の減速を反映し、10月までの累計額が前年同月比-7400億円にとどまっている。所得、法人、消費の主要3税ともにマイナスだが、特に、所得税が-4400億円と低いのが目立つ。これは、7月にソフトバンクへ4000億円の還付が行われたためであり、この特殊要因を除けば、税収は低調ではあるものの、さほどではない。現時点における2019年度の税収の予想は、60.8兆円程と見ている。

 他方、2019年度補正予算の税収見込みは60.2兆円となっており、予想より0.6兆円少ない。この違いは、法人税を前年度決算比-4.9%にしていることによる。野村・日興の企業業績見通しの経常利益の伸び率は、平均で-1.8%だから、かなり厳しめである。また、所得税の前年度決算比-4.2%というのも、特殊要因を踏まえても、やや少ないように思う。もっとも、景気悪化は進行中なので、企業業績見通しが更に落ちる心配はある。

 2020年度の税収については、政府予算案は63.5兆円としているが、65.0兆円程になると予想する。これは、企業業績見通しが+6.3%とV字回復になっていることを踏まえたものである。政府予算案の法人税収は、2年前の2018年度決算額より低くとどまる設定だ。また、所得税収も、還付の4000億円が消える特殊要因を踏まえると、700億円しか増えない控えめなものになっている。むろん、こちらも景気の行方にもよるが。

 すなわち、今より景気が悪くならなければ、税収の上ブレは、2019年度に0.6兆円、2020年度に1.5兆円になると思われる。2019年度補正予算では、4.4兆円の国債が追加されるが、税収が上振れした分、財政出動の威力は減殺される。今回の予算編成は、景気刺激型ではあるものの、景気が維持されたら、税収の上ブレによってブレーキがかかるということを知れば、有難味は薄いかもしれない。どちらに転んでも、停滞が待っている。

(図)


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 景気悪化の中で断行した消費増税だが、そもそも、必要があったのだろうか。一般政府の資金過不足は、この1年、GDP比で2%を切る水準が定着しており、経済見通しの名目成長率が2019年度1.8%、2020年度2.1%という状況(ただし、消費増税分のデフレータが0.4%)を踏まえれば、国債残高のGDP比がほとんど膨らまないところにまで来ているのだから、増税を焦らずとも良かったのである。

 むしろ、消費に対する増税によって、物価上昇を抑制する経済運営をして、名目成長率を鈍化させるようでは、かえって、財政再建が遠のいてしまう。しかも、増税のためにバラマキをするアホらしさは、改めて述べるまでもない。なぜ、日本が財政再建ができないかと言えば、状況に応じた柔軟な経済運営ができず、緊縮一本槍の消費増税至上主義だからである。信念ばかり固くて攻めが単調では、犠牲は大きくなるばかりだ。


(今日までの日経)
 地銀、無理な貸し出しで不良債権リスク。来年度予算案、歳出102兆6580億円。公共事業 目立つ積み残し。景気「緩やかに回復」維持 12月月例報告。 医療費「2割負担」明記 75歳以上、一定所得で。11月の工作機械受注低迷 一般機械向けも半減。

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