本「無実の君が裁かれる理由」
友井羊著者
司法試験を目指す大学2年の牟田幸司と、同じ大学で心理学科4年の遠藤紗雪が、
事件の犯人にされてしまいそうな市民の無実を解き明かしてゆく連作短編集。
第一話では牟田がストーカー扱いされ、
バイト先のイタリアンレストランの店長祁答院の知り合いの遠藤の力冤罪事件の力をかり、
周囲の誤解を解きます。
第2話は、無実でありながら、部活仲間の将来のためや、
厳しい指導者からの圧力でやってもいない器物損害を認めてしまう大学生を助けます。
第3話は冤罪事件になりがちな痴漢が題材。
牟田の父親の裁判官の使命が語られます。
第4話では、15年前に殺人事件の容疑者として逮捕され、
公判中に自殺してしまった遠藤の父親の事件の真相が明らかになります。
静岡県で起きた袴田事件を思い起こさせる証拠のねつ造にも触れています。
無実の自分の訴えを誰も聞いてくれないという冤罪の話を読むと、
眠れなくなります。
ただいま午前3時30分。
新聞配達のバイクの音が聞こえてきました。
☆☆☆☆
冤罪はなかなかなくなりません。
昨今、未成年誘拐略取の容疑で逮捕される案件が散見されますが、
ホントに逮捕された容疑者は悪人なのか、
という疑問を感じることがちょくちょくあります。
というのも、22歳の男性会社員が未成年略取の容疑で逮捕された最近の事件では、
18歳未満の女子高生が被害者とされています。
彼女は会員制交流サイト(SNS)で知り合った男性会社員と午後八時ごろに落ち合い、
彼の車に乗り込み、深夜に自宅近くまで送ってもらっています。
この間に家族が警察に届けを出したため、
男性会社員が「未成年略取」の疑いで逮捕されました。
男性会社員は悪人でしょうか。
てるりんは疑問に感じます。
教え子の身体に触ったとしてわいせつ容疑で逮捕される教員も数々いますが、
これまでの経験から何割かは冤罪だと思っています。
ある小学校の体育の授業で、児童が腹筋運動のようなポーズを取るシーンがありました。
おなかが落ちて背がそっている児童に、教諭が
「おなかをもうちょっと上げて」
と、おなかに手を添えて正しい姿勢にします。
もしかすると、教諭におなかを支えてもらった児童は帰宅して夕食時に
「先生におなかを触られた」と話したとします。
だんだんと話しに尾ひれが付いて、
「わいせつ行為」ということになってしまう可能性は排除できません。
おなかを支えてもらった本人が言わなくても、
そのシーンを見ていた別の児童が家族に
「あの先生が、お友達のおなかにさわっていたよ」
と言うかもしれません。
別の機会に訪れた中学校では、先生が生徒に慕われているせいか、
休み時間に女子生徒が先生の膝の上に乗っていくのを見かけました。
女子生徒にしてみれば、「おとうさんやおじいちゃんにだっこしてもらう」
くらいの感覚だったでしょう。
でもその光景を見た別の生徒が、だれかに報告したことで、
事実が少しゆがめられて伝わってしまうこともあるでしょう。
男女の関係に関心を持ち始める思春期の彼ら、彼女らのことです。
もしかすると、どちらの行為も「セクハラ」とか「わいせつ」
と認定されるケースもあるでしょう。
当事者たちの思いとは別の場所で。