油断大敵!
ある人から薬局の開局について相談があった。
月に約4,000枚の処方箋が出る医療機関の門内だそうだ。
全く迷う余地はない。
ただ、その門前には既に薬局があり、その医療機関から処方箋を応需している。
医療機関は2代目が継承しており、この若院長がすこぶる人気がある。
何でもテレビや雑誌などにも取り上げられており、患者は遠方からでもやってくる。
当初は今ある薬局で十分対応できたが、患者数の増加に伴い薬局店舗のキャパを超えてしまった。
繁忙時間には患者が待合室からあふれて外で待つらしい。
それでも薬局は何も対応もせず店舗拡張計画もない。
今年は猛暑だった。
この暑い盛りにもかかわらず患者が外で待たされたことに院長が怒った。
経営者を呼んで対応を迫るが言い訳ばかりでらちがあかない。
この薬局の経営者と院長とはごあいさつ程度の関係でしかない。
薬局の責任者(薬局長)と院長は信頼関係にある。
一緒に食事に行ったりゴルフをしたりの関係である。
そこで院長が薬局長に持ちかけた話が駐車場に薬局をやって欲しいだった。
話はとんとん拍子で進んで門内に薬局が出来る事になった。
ところが、これに待ったがかかった。
当たり前であるが既にある薬局が黙ってはいない。
そこに努める薬局長が開業するのは許せない。
実は、就業規則に、「従業員は在職中及び退職後5年間は、会社と競合する他社に就職及び競合する事業を営むことを禁止する」という競業避止義務の規定があったそうだ。
要は、門内の薬局に勤務できないというのである。
しかも期限は5年間で或る。
どうしてもやるなら”訴えてやる“と騒いでいる。
院長は薬局長にやってもらいたい。
さて、どうなるのか。
弁護士に相談すると、競業避止義務は職業選択の自由との関係で判断されるらしいが、このケースでは問題がないそうだ。
医療機関は既存薬局に何度も苦情を伝えていた。
それにもかかわらず何ら改善が無かった。
ある面では高をくくっていたのだろうか。
ただ、”訴えてやる“に薬剤師は弱い。
見えざる不安でどうしたらいいのか悩んでいるそうだ。
経営者は何でも現場任せではいけない。
また、薬局は場所だけの特権ではない。
これからは門内薬局がある面では強敵になりかねない。
”下克上”はありえる。