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ゆきてかえりしひび――in the JUNeK-yard――

読書、英語、etc. jesterの気ままなおしゃべりです。(映画は「JUNeK-CINEMA」に引っ越しました。)

山で読んだ本。 その1 破門 by黒川博之 (151回直木賞受賞作品)

2014-08-19 | 読書
山から下りてきました。

まだまだ東京は酷暑でありまする。



高原のせせらぎが懐かしい・・・・

(前回載せたのはiphoneからの画像だったので、少しはましなコンデジの画像を上げてみました)


さて、今年の奥日光は天気に恵まれず、読書の時間が長く取れました。

最初から天気が悪そうというのはわかっていたので、ホテル引きこもり用にどっさり本を持ち込んだのですが、それも読み切ってしまい、家族から借りて読んだりしました。


今回の旅で読んだ1冊目。

破門 (単行本)破門 (単行本)

でございます。


『映画製作への出資金を持ち逃げされたヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮。失踪した詐欺師を追い、邪魔なゴロツキふたりを病院送りにした桑原だったが、なんと相手は本家筋の構成員だった。組同士の込みあいに発展した修羅場で、ついに桑原も進退窮まり、生き残りを賭けた大勝負に出るが―!?』(アマゾンより)

という展開です。

黒川博行さんの本を読んだのは初めてでした。

というのも、わたくし、ヤクザものはあまり興味がなくて。

(ついでにいうと『警察小説』というやつもあまり興味がないです)

主人公は、二宮君。

ヤクザの父を持ち、でもすれすれ堅気(?)で、ある日窓から飛び込んできたオカメインコの「マキ」をこよなく愛し、怪しげな「建設コンサルタント」会社、二宮企画をしている。

(このオカメインコを愛している、というのに引っかかる方もいるのでは!)


表看板は建築工事や解体工事の仲介斡旋だが、じつは建築現場にまとわりつくヤクザの嫌がらせを別のヤクザを使って防ぐ『サバキ』で生計を立てている。

これって堅気の仕事とは言えない気が・・・。

この二宮君が、『厄病神』とこっそり読んでいる本物のヤクザの桑原と絡んで、どたばた劇を演じます。

出だしからテンポよく、次が気になってサクサクと読める展開。
最後までぐいぐいと引っ張ります。

だけれど、内容はとりあえず詐欺師にだまされたヤクザが、ほかのヤクザとぶったりけったり刺されたり刺したり・・・と闘争しながら、詐欺師を追いかけ、お金をとりかえす・・・・という話で・・・

・・・・・それだけです。


読了後、直木賞の選評を見ると、

『初回の投票で圧倒的な支持を集め、会見した選考委員の伊集院静さん(64)は「候補作の中で読み物として一番面白い。心象を一切書かず、これだけ読ませるのは素晴らしい」と絶賛した。』

そうなんですが、まことに全編「心象を一切書かず」なので、わたくしとしては実に雨に降りこめられたホテルで「暇つぶし」に読む本、という感じでした。

もともとハードボイルドは苦手なので、『男性が主人公の男性が書いた男性のための本』であるこの本は、読んでる時はさらさら読めるしまあ楽しくて、思わず関西弁で喋りたくなるノリではありましたが、読み終わって、もう一度読みたいとか、いろいろ考える、ということはないです。

女性の登場人物は、ナイスボディの従妹の悠紀と、逃亡する詐欺師の彼女ぐらいかな。
ま、セクシーシンボルという役割だけで、活躍は全くしません。


この著者の別の本も、チョイスがないのなら読むかもしれませんが、自分から進んで購入して読むことはないだろうな~というのが感想でした。



ちなみに「温泉が気持ち良くて、思わず中で放尿」とか、ショックでした・・・

そんな大人がいるのか???    





冬天の昴 あさのあつこ  と、Sherlockの類似・・・?「親分、心など捨てちまいな、邪魔なだけだぜ」

2014-05-31 | 読書
今夜もSherlockがございますよ~~

BSプレミアム、21時からです♪

みなさん、ご準備はよろしいですか、って、なんのだよ、自分。


下の記事のコメント欄(ありがとう)で、シャーロックとジョンが

「陰陽師の晴明と博雅に似ている」

「弥勒シリーズの信次郎と清之介だ」

「家守奇譚の綿貫と高堂はどうよ」

「た、確かに!」

・・・と、皆様とお話ししてるうちに、そうや、「冬天の昴」のレビューを書いてないや、と思い出しました。


あさのあつこさんの弥勒シリーズに関しては、以前こちらの記事で、信次郎と清之介の関係がいい!と騒いでましたが、その5作目が今年の3月に出ました♪

(iguさんに教えていただいて、あわてて読みました♪ iguさん、いつもありがとうございます!)


冬天の昴冬天の昴

4作目で「このシリーズ、終わりにしようと思っているのでは?」と不安になったので、次の本が出たのはとっても嬉しいです♪

(以下、ネタバレはありませんが、本文の引用があります)



今回は舞台がまた江戸に戻り、女郎と武士が心中したシーンの妻のモノローグから始まります。

この奥さんがあの人だなんて。


時代物のミステリーとしても、最後までぐいぐい引っ張るストーリーテラーのあさのさんですが、やはりなんといっても、信次郎と清之介と伊佐治の三人組のやり取りが光ります。

清之介が信次郎について、

『 孤独は人を苛む。苛まれるから人なのだ。
 父は、人であることを捨てよと息子に命じた。人を殺すためだけの道具になれと命じたのだ。そして、信次郎は、言う。
 おまえは、人斬りだ。商人の形をした人斬りなんだよ。
 そう執拗に言い募る。
 しかし、木暮さま、もしかしたら・・・・・・。
 清之介は無言でここにはいない信次郎に語りかける。
 もしかしたら、あなたの方がよほど……、独りであることに平然と耐えていけるあなたの方がよほど、人斬りに近いのではありませぬか。あなたはご自分のうちの頻闇をただ、わたしに重ねているだけではございませんか。』p172


と思いをはせれば、信次郎は信次郎で

『 口の中が苦くて堪らなくなったのだ。水を飲みたいと思う。冷たく澄んだ水を一息に飲み干したい。そして、美味い茶が欲しい。仄かな苦味とこくのある茶だ。遠野屋の茶だった。
 あいつの淹れる茶は、何であんなに美味いんだ。別段、変わった茶葉をつかってるわけじゃねえだろうが、やたら美味い。湯の加減がいいのか。こちらの好みを知り尽くしてるのか。
 奥歯を強く噛み締める。
 知り尽くしているだと? 冗談じゃねえよ、知り尽くされてたまるかい。まったく、こんなときに、何を考えているんだ、おれは。』p185


と修羅場で清之介のお茶を所望している。

『「親分、そんなに顔を近づけてくんなよ。気味が悪いや」
「なんだったら、鼻の頭をなめて差し上げやす。それが嫌なら、ちゃんと答えてもらいやしょうか」』p303 


伊佐治も相変わらずマイペースで信次郎に迫っております。


本の帯には

「これが、あさのあつこの代表作だ!」

なんて書いてある割には、お話自体は他のものと比べると割とあっさりめで、短編になりそうな話を引き延ばした感もちょっとありますが、なんといってもキャラクターの魅力で読ませるのです。

ものすごく頭が切れるのに、クールで人間らしさに欠ける信次郎が、清之介や伊佐治との関わりから、人間の温かさを感じられるようになっていくのか、シリーズの先が楽しみで気になる作品です♪



なお、このシリーズを読んだことのない方は、ぜひぜひシリーズの一作目から読まれることをお勧めいたします。

弥勒の月 (光文社時代小説文庫)
弥勒の月 (光文社時代小説文庫)


夜叉桜 (光文社時代小説文庫)
夜叉桜 (光文社時代小説文庫)


木練柿 (光文社時代小説文庫)
木練柿 (光文社時代小説文庫)

東雲(しののめ)の途(みち)
東雲(しののめ)の途(みち)




恋歌 朝井まかて  直木賞シリーズ2

2014-04-21 | 読書
昨日に引き続き、第150回直木賞受賞の作品のレビューです。

恋歌恋歌

朝井まかてさんの「恋歌」。

姫野カオルコさんの「昭和の犬」とまたちがって、こちらは大河ドラマ風の歴史ものです。


『女性はこれほどまでに恋を抱いて生きるのか。樋口一葉の歌の師匠として知られ、明治の世に歌塾「萩の舎」を主宰していた中島歌子は、幕末には天狗党の林忠左衛門に嫁いで水戸にあった。尊皇攘夷の急先鋒だった天狗党がやがて暴走し、弾圧される中で、歌子は夫と引き離され、自らも投獄され、過酷な運命に翻弄されることになる。「萩の舎」主宰者として後に一世を風靡し多くの浮き名を流した歌子は何を思い胸に秘めていたのか。幕末の女の一生を巧緻な筆で甦らせる。』  (アマゾンの作品紹介より)


樋口一葉の師であったという中島歌子さんのことは名前ぐらいしか知らず、水戸の天狗党の顛末も教科書に載っている以上のことは知らずに読みました。

なのでその辺が、へ~~、そうだったのね~と興味深かったです。

硬いながら上手な文章なので読みやすく、テンポも速く、脇役がきっちり描かれてるのがよかった。

塩辛声の江戸弁をしゃべる爺やの清六気風の良さとか、京都から嫁入りした水戸の貞芳院ののどかな典雅さ、義妹のてつのかたくなさとかが描き分けられているので、物語が立体的に迫ってくる。


けれど前半では、ヒロインの登世(歌子)にはそれほど共感できず・・・

なぜ登世(歌子)が林忠左衛門以徳(もちのり)に心惹かれたのか、たんに端正な姿に一目ぼれ?というぐらいしか伝わってこないまま読み進みました。

『意志の強そうな鼻筋は清らかに細く、誰かが寄って大声を出すたびに頬に笑みが浮かぶ。それはごく微かに苦みのようなものを伴った、静かな微笑だ。』P29

という以徳(もちのり)さんは、現代の俳優に当てたら誰だろうなどと想像しながら読む。

にしても以徳(もちのり)さん自体についてもあまり掘り下げて描かれていないので、ハンサムで、迷子になった犬を連れてきてくれたので、登世は惚れたのだろうな・・・とわりと冷たい目で見ておりました。

二人が結婚してからも、二人の愛情が深まっていくまでを語るエピソードはあまりなく、金持ちのお嬢様であった登世が、実家のお金を使って客にウナギをふるまったり、女中などに気前よくするシーンでは、質実剛健で質素に暮らしてきた小姑のてつに共感してしまったり。


ところが天狗党の掃討がはじまり、登世が投獄される辺から急展開。

諸生党の凄惨な報復に追い詰められていく、天狗党の家族たちの行く末にははらはらさせられ、引き込まれて読みました。


瀬をはやみ岩にせかるる滝川の われても末に逢はむとぞ思ふ

という良く知られた崇徳院の歌が、効果的に使われて、切ない。

主人公に共感を持ち、読後に心に響くという点では姫野さんの「昭和の犬」に軍配があがりましたが、歴史の大きな流れに翻弄される人々を描いているという点では、こちらも読みごたえがありました。


そして、歌子の

君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ
(恋することを教えたのはあなたなのだから、どうかお願いです、忘れ方も教えてください)


にはちと落涙しそうになってしまったのでした・・・。













昭和の犬 姫野カオルコ 今年の直木賞シリーズ その1

2014-04-20 | 読書
姫野カオルコさん(姫野 嘉兵衛さん♪)が直木賞を取られましたね♪

昭和の犬
昭和の犬

うわ~~ なんかこの表紙を見ただけで、ちょっとうるうる来ちゃう感じなので、大きい写真を張り付けてしまいました・・・

そのぐらいよかったです♪

姫野さんというと

リアル・シンデレラ (光文社文庫)
リアル・シンデレラ (光文社文庫)

で直木賞をとると思っていました。感動したし、泣けたし、読んでよかった!と思った本。

でも「リアルシンデレラ」はノミネートのみで受賞はしませんでした。
これ以上のものを書くっていうのはしんどいのでは??とひそかに心配してました。

でも、そんな心配を裏切って、見事150回の直木賞を受賞なさいました!

で、その「昭和の犬」ですが、直木賞というより、芥川賞をあげたいような、清々しい作品です。

そのため、「なんだこれ、もりあがらないぞ」と思われた方もいらっしゃるかも。


『昭和33年、滋賀県のある町で生まれた柏木イク。嬰児のころより、いろいろな人に預けられていたイクが、両親とはじめて同居をするようになったのは、風呂も便所も蛇口もない家だった――。理不尽なことで割れたように怒鳴り散らす父親、娘が犬に激しく咬まれたことを見て奇妙に笑う母親。それでもイクは、淡々と、生きてゆく。やがて大学に進学するため上京し、よその家の貸間に住むようになったイクは、たくさんの家族の事情を、目の当たりにしていく。
そして平成19年。49歳、親の介護に東京と滋賀を行ったり来たりするなかで、イクが、しみじみと感じたことは。

ひとりの女性の45年余の歳月から拾い上げた写真のように、昭和から平成へ日々が移ろう。
ちょっとうれしいこと、すごくかなしいこと、小さなできごとのそばにそっといる犬と猫。
『リアル・シンデレラ』以来となる、姫野カオルコ待望の長編小説! 』(アマゾンより)


とまあ、こういう話なんですが、不思議と暗くない。

自分では喋ってるつもりでも、人間にはイクの声はなかなか届かない。

イクの声が聞こえるのは猫や犬だけ。

というか、猫や犬には、ちゃんと喋れる。

そんな少女イクが、やがて物静かな大人になって暮らしていく。

それをそばでじっと見つめる犬や猫。

まるでその一匹の猫(もしくは犬)になったような気持ちで、イクの成長を見守ったような読後感を持ちました。


子どもにとって、親は動かせない与えられた環境であり、その環境がどんなに理不尽でも、子どもはそれに適応して暮らしていくしかない。

それは絶望というよりは、日常になっていく。

まわりの家と比べて、自分の親は普通じゃない、と思っても、逃げ出すこともできず、守ってくれる人もいず、ただ「適応」していくしかない。

そんな子ども時代を送り、どこか大人になりきれない人たちのセラピーになるような、イクの静かな生き方が心を打ちます。


『女性が社会で大きく成功するには、厳しいにしろ大甘にしろ父親を受け容れて―――早世した彼を偲びつづけたようなケースを含め―――育った過去をもっていなければならない。
 これが女性が社会で好感を抱かれる鍵なのである。好感が高評価を与える。男が優位にいて社会を支配しているのではない。父権を軸にして形づくられているものが社会なのである。』p247

では、父親を受け入れることができず、社会で好感を抱かれない女性はどうやって男性社会に適応していけばいいか。

イクは、(株)バレで働き、馬車のおじさんや、久村夫妻、同窓生、大家、同僚、数えきれぬ人たちと触れ合う中で社会に適応していきます。

そして

『獲得したものを数えるのではなく、彼らの厚情により、被らなくてすんだ不幸を数えれば、それは獲得したものとちがい目には見えないが、いっぱいいっぱいあるのではないか。近いと大きくて掴めないが、遠いとぎゅっとつかめる。
(年をとると、掴めることが増えるのがよい) 』P300

という心境になっていくのです。


読みながら、自分も同じような体験をしているのを思いだし、ちょっと笑い、ちょっと涙し、しみじみと過ごしてきた行く年月を愛おしみたくなるような、傑作でございました。










中村勘三郎 最期の131日

2014-01-17 | 読書
あの人のことだから、絶対ガンも克服して戻ってくる。

そう漠然と信じていたのに・・・

勘三郎さんが亡くなった時のショックはそれは大きかったです。

その前から難聴などで舞台を休んでらしたけど、その時も「すぐ治るだろう」と思っていました。

パワフルな舞台を見る限り、弱った肉体などは全く想像できなかったから・・・・

なので本屋でこの表紙を見て、え、もう?と思いつつ、つい手に取ってしまいました。

中村勘三郎 最期の131日 哲明さんと生きて中村勘三郎 最期の131日 哲明さんと生きて

買ってみたものの本心は、「まだ早いでしょう?」という気持ちが大きかったです。

遺族としても、本を書くほど心が癒えていないのでは。
(読む方だってこれほどつらいのに・・・)

もうけ主義の出版社には早い方がいいと、「心を癒すために書かれてはいかがですか」と説得されたのかもしれないとも思いました。

もしかしたら本人が書いたのではなく、ゴーストライターが書いたのかも、なんてひねくれて思ったりもしました。


しかし・・・読み始めたら引き込まれてしまいました。
(著者が直接書いたかどうかは置いておいて、家族でなくては知りえない事実が書かれていました・・・)


前半部分は保養のため旅行に行っても耳鳴りがひどく、途中で帰るほど体調が悪かったこと、「うつ」と診断されて強い薬を飲まなければ眠れない状況だったことなどが書かれていて、それほどだったのかとびっくり。

病院から出された薬を、妻が勝手に判断して、本人にも内緒で別の薬(ヴィタミン剤など)に変えて与えていたと得意げに語られる辺では、薬漬けの医療に問題があるとしても、ちょっと眉を顰めながら読みました。

亡くなった後、遺骸を焼くのが嫌で、北の国の指導者のように永久保存する方法を探った、というのにも、自ら遺体から血を採り、手が欲しいと手の型をとり、デスマスクうんぬんのへんも、う~~ん、という感じでした。

そのほか、生前の太地喜和子さんとのこと、大竹しのぶさんとのこと、『ガールフレンド』たちのこと

(「キャバクラに行くから」と言っていた彼が女性と二人で食事していたことやら、松本での歌舞伎の時「来てくれるの?うれしい。鍵どうする?」というGF宛のメールが間違って妻に届いたこと、etc・・・)

など『暴露本』的なことも書いてあって、ああ、亡くなって一年でこんなことまで書いてしまうんだ、と買ったことをちょっと後悔しながら読み進めました。
(たとえ本の売り上げが落ちても、この辺は書いて欲しくなかった・・・。)

ほかに女性がいても私が看取った妻なのよ、といいたかったのかな。


しかし後半部分、2012年6月のガン宣告から入院、手術、誤嚥による肺炎から急性呼吸性窮迫症候群の発症と容赦なく進む過酷な闘病生活の部分は引き込まれて読みました。

日常の会話、弱くなっていく病人のつぶやきなども綿密に書いてあり読んでるうちにつらくなり、何回も本を閉じました。

でも必死で生きようとしていた勘三郎さんの姿に、また本を開き読み進めました。


読み終わって、本当に勘三郎さんは生きて、舞台を踏みたかったんだろうなあ・・・と涙が止まりませんでした。


・・・食道ガンを「手術」しなかったら、彼はまだ生きていたかもしれない。

手術の前に抗がん剤を打った時、ガンがかなり小さくなっていて
「切らなくていいんじゃないか」と別の医者に言われたと書いてありました。


今更いっても仕方ないことだし、彼が自分で選択して選んだ手術だったのですが、私は以前読んでここでも感想を書いた近藤誠氏の

「早期発見はラッキーではない」という言葉が浮かんできました。

医者に殺されない47の心得 医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法
医者に殺されない47の心得 医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法


を本棚から手に取っていました。

(この本の記事はこちら)

『ガンには転移するものと転移しないものがあり、転移しないものはほっておいても大丈夫だが、現在の医学では見分けがつかない。本物のガンはどんなに早期に発見しても、すでに転移している。手術や抗がん剤で治るのは『がんもどき』であり、もともと手術しなくても治るものだ』

近藤氏のこの本、私はけなしているのですが(爆)

・・・本当のところはどうなんだろう?


勘三郎さんは当初は肩に転移があったものの、手術後はガンの転移は発見されず、誤嚥による肺炎から、急性呼吸性窮迫症候群を起こし、転院し、脳出血を起こしてしまったわけです。

そも手術したほうが良かったのか?
手術自体は成功で、そのあとがたまたま不運だったのか?
抗がん剤が効いた時点で手術をやめるべきだったのか?
危ないほど血圧が下がってしまう鎮痛剤(マイケル・ジャクソンも打っていた)を打つなどの医療行為は適切だったのか?

テレビなどで入院の直前に元気にゴルフをしていた姿などを見るにつけ、疑問がわきます。

日本でも最高といわれる医者に
「一緒に戦って、勝ちに行きましょう!」
といわれれば、必ず
「よっしゃ!!」と受けて立っただろう勘三郎さんと思われます。


診療にあたった医師たちはもちろん精いっぱいやっただろうし、それについて、本書に恨み言は書いてありませんが、失われたものが大きいだけに、疑問がたくさん浮かんでしまうのです。



しかし、波野好江さんはいろいろな意味で強い人だと思います。
闘病を一緒に戦い、その後の中村屋をしょって立つ息子たちをバックアップし、その上このような本を今の時期に書くとは・・・

死ぬ前に勘三郎さんが彼女を押しのけながら「病室に入るな、顔を見せるな」といい、息子には会っていたのに、妻を一週間拒絶していたこと。

彼女は「看護婦さんは『奥様には元気な姿を見せたいからじゃないか』といっていた」と書いていますが、どうなんでしょうか。


もやもやといろいろ考えつつ、本を読み返してみるのでした。






児童文学ファンタジーの名作「クラバート」とそのDVD 「クラバート 闇の魔法学校」

2013-09-11 | 読書
「クラバート」という児童文学をお読みになったことがあるでしょうか?

去年の10月6日の日経+1の特集「何度も読み返したいファンタジー」ランキングで3位になっていた、ドイツの伝承文学を題材にした名作。

先日引退を宣言した宮崎駿氏が「千と千尋の神隠し」を作る際に影響を受けた、と発言していた作品です。


クラバートクラバート

あの「大泥棒ホッツエンプロッツ」とか「小さな魔女」を書いたオトフリート・プロイスラーが1971年に書いた作品。

小さいころ読んだ

大どろぼうホッツェンプロッツ (新・世界の子どもの本―ドイツの新しい童話 (1))大どろぼうホッツェンプロッツ (新・世界の子どもの本―ドイツの新しい童話 (1))
「ホッツエンプロッツ」とか


小さい魔女 (新しい世界の童話シリーズ)小さい魔女 (新しい世界の童話シリーズ)

「小さな魔女」(こっちがお気に入りでした。この表紙、懐かしい!)
の著者がいまだに創作活動をしていたというのがちょっとした感激で、翻訳されてすぐに読みました。

(プロイスラー氏は今年の2月に89歳でお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします)


さてこのお話、ドイツとポーランドとチェコの国境近くにあるスラブ系のソルブ人が住むラウジッツ地方に昔から伝わるクラバート伝承がもとになっています。

なので「どうして水車場に魔法を教えるところがあるのか?」
「なんでクラバートが呼び寄せられたのか?」
「なんでトンダやミヒャルの身に起こったようなことが起こるのか?」
などなど、湧き上がる疑問は
「それがこの地方の伝承だから」で納得しなくてはいけません。

ちょうど「竜の子太郎」のお母さんがどうしてお魚を食べたら竜になるのか?
太郎がどうしてお母さんの目をしゃぶって大きくなるのか?とかいう疑問は置いといて「竜の子太郎」を読むのと同じ感じですね。

寒くて暗くて貧しい中で人への信頼と愛を学びながら孤独な少年が成長していく姿に、謎が謎を呼ぶミステリーを絡めて、大人も最後まで楽しんでぐいぐいと読める作品です。

そういえば、民族色たっぷりの不思議な建物にいる大ボスにとらわれるように修行にはいり、先に修行している魔法使いに助けられながら仕事をして成長し、自分の愛する人を助け、助けられ脱出する・・・って、「千と千尋」そっくりですわね・・・


展開は早くて、クラバートはどうなるのか、最後までハラハラしちゃいます。
そしてラストは結構あっさりと終るのですが、それも「伝承に基づく文学」ならではの感じです。


さて、こないだ珍しくレンタルDVD屋さんにまいりました。

と申しますのは、やっと今頃ですが、「ホビット」のSEE版発売に備えてブルーレイ・プレイヤーを買いましてん。

Panasonic DIGA HDD搭載ハイビジョンブルーレイディスクレコーダー 3TB ブラック DMR-BZT830-KPanasonic DIGA HDD搭載ハイビジョンブルーレイディスクレコーダー 3TB ブラック DMR-BZT830-K

(無精者なのでHDDが3TBあります 
本当はコマーシャルカットしてくれる東芝のが欲しかったけど、東芝のブルーレイはとにかく評判が悪くて、結局いろいろ調べた結果、高評価のパナソニックのディーガにしました・・・
3TBあってもきっとHDD増設したりするんだろうな~~ 
HDDはUSBハブが使えないみたいなので、差し替えて増設しまくるんだろうな~~ 
ちなみに画像とか良くて、今まで持っていたDVDも格段に綺麗に見えるし、使い勝手はまあまあ満足しております。)

それで、なんかブルーレイ・ディスクを借りたろうと出かけたわけですが、店内をぶらぶらしてたらこれを見つけました。


クラバート 闇の魔法学校 [DVD]クラバート 闇の魔法学校 [DVD]

んまー、映画になっていたとは知りませんでした。

よく見るとダニエル・ブリュールがいるじゃありませんか。それもトンダ役!!
(トンダは原作読んでいて一番好きだった人)

クラバート役のデヴィッド・クロスもどこかで見たなと思ったら「愛を読む人」や「戦火の馬」に出ていたお人。

なのでDVDなのに(ブルーレイを借りに来てたのに)借りてみることにしました。

ドイツでは観客動員数110万人と大ヒットした映画ですが、『日本では劇場未公開。新宿バルト9で開催された2008年ドイツ映画祭には『クラバート 謎の黒魔術』(クラバート なぞのくろまじゅつ)の邦題で10月31日と11月3日の2回限定公開された。』(ウィキより)だけだそうです。

頭の中だけで妄想状態だった、かの有名なホグワーツと大違いの、貧しくて寒くて暗~~い厳し~~い黒魔法の修業が画像になっていて、結構おどろおどろしくて、ちょっとうれしい。

(DVDには「闇の魔法学校」という副題がついてますが、これは間違って借りる人がいるように仕掛けられたわなで 「学校」とは全然違います。マイスター(親方)の元で仕事をする弟子たちが、仕事がはかどるように黒魔法を教えてもらいますけど、水車小屋を出られれば習ったことは忘れてしまうのですし。)

結構特殊撮影映像にもお金も手もかかっていて、見ごたえがあります。
(ナルニアなんかより手がかかっていた気がしたけど、・・・お金じゃなくて愛かな?)

原作を読んだ時のイメージではトンダはもうちょっと年取った人かなと思っていたけど、ダニエル・ブリュールはさほど違和感なくなじめました。
『ペコちゃん顔』と呼んでいたわたくしですが、哀愁を帯びた目つきはやっぱり凡人とはちがいます。

デヴィッド・クロスは見事に成長して見せてくれて、最後には主人公の気迫が漂います。
この後に大作に続けてキャスティングされたのもうなずける感じ。

クロスの演技の上手さもありますが、クラバートの恋心は原作より映画のほうがうまく描かれていると思いました。

jesterが好きなユーローもナイスキャスティングです。

最後も原作よりずっと盛り上げてあります。
嫌な奴だったリュシュコーに光を当ててくれたのが嬉しかった。



吹雪の中を歩く物乞いの少年たちの悲惨さ、魔法の学校の徒弟関係の過酷さ、理不尽さ、凍りついた水車の重々しさ、そして冬のドイツの凍りついた森・・・・

とにかく自然の風景が実写で見るとそれは綺麗で、原作を読んで面白かった方にはぜひ見ていただきたいです♪

久しぶりに原作本も読み返しましたが、やっぱり面白かった!











犯罪と知っていても惹かれてしまう・・・ 解錠師 byスティーブ・ハミルトン

2013-08-11 | 読書
「風たちぬ」をみて、この「人を殺す武器となるとしっていても、どうしても憧れて作らずにはいられないジレンマ」の感じ、どこかでもっとうまく表現されているのを読んだことがあるな~と思って思い出したのが、

解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

スティーブ・ハミルトンの「解錠師」でした。

いろいろなミステリーベストテンでもトップに輝いたことがある名作なので、読んだことがある方も多いかもしれません。

小さいころに恐ろしい事件から生き残り、言葉を失ってしまった少年マイクが、錠を開けることの面白さにひかれ、ただただ面白くて古い鍵を分解しては開け方の研究をする。

それを高校で初めてできた親友に見せるが、そこから悲劇が始まる・・・・

錠を開けるということだけ、ただそれだけが面白くてマイクは熱中するのですが、大人の社会では錠を開けるということが意味するのは犯罪。

法を犯す意図をもった悪人の犯罪に巻き込まれていくマイク・・・

また、マイクは「絵を描く」という才能も持っていて、それを通じて知り合った少女と心を通わせています。

そんなマイクが、小さいころのトラウマを克服し、現状で巻き込まれてしまった犯罪からどう立ち直っていくのか・・・

少年の成長の様子が、時を飛んで入れ子細工のように組み立てられて、最後まで飽きさせずに読者を引っ張る作品です。

1999年の、マイクが犯罪に陥っていく辺と、2000年にぬきさしならない立場になってしまう辺が交錯して書かれ、それが一本の線にまとまっていくところが読んでいて小気味よいのですが、今回は1999年の辺をまずざっと読み、また最初に戻って2000年につなげて読む、という変則読みをしてみました。

もちろんそうすると味わい的には平面的になってしまうので、決しておすすめはしませんが、そうやってよんでみると、まだ幼いマイクが言葉を失い、聞こえないような音を手掛かりに錠を開けるのに惹かれていく姿や、芸術的に錠を開けられるということで、今まで孤立していたのに、急に人からつながりを求められるのが嬉しくて、最終的に犯罪だとしても手を貸してしまう心情が切ないほどに伝わってきて、

「そこで立ち去るんだ、マイク!」
「そこでやめれってば!」

と思わず大声で(もちろん心の中ですが)叫んでしまったのでした。

細やかな人物描写は、主人公の人間性をくっきりと描き出していて、共感してしまいます。


かの映画でもこのように主人公の心理を描いてくれていたら、きっともっと共感できたのに、とおもいまする。

                


さて、暑い盛りの東京を抜け出して、またしばらく山奥でしばをかってきます。

少し涼しくなったらもどります。

できるだけあちらから更新しようかな?  ?  と思っていますが・・・

コメントのお返しは遅れるかもしれませんのであしからず。


では行ってきます♪




ジェノサイド 高野和明 ハワイで読んだ本その5

2013-07-06 | 読書

泣けちゃうほど美しい空と海は、カイルアビーチです。

ああ~~ またカイルアにいってぼんやり風にふかれつつ、本が読みたいにゃあ~


さて、ここに寝転んで読んだ本といえば、こちら。

ジェノサイド
ジェノサイド

この画像の大きさでjesterの中での評価がわかるしともいるかもしれませんが、かなり熱中して読みました。


高野和明さんの本といえば、

13階段 (講談社文庫)
13階段 (講談社文庫)

は、ハラハラして面白く、この新人は行けるかも?と上から目線(爆)で思ったものでしたが、その後、

幽霊人命救助隊 (文春文庫)
幽霊人命救助隊 (文春文庫)

がちょっと・・・

いや面白かったのですが、なにぶんセリフ全部に「!!!」ビックラゲーションマークがつき、みんな叫んでる、という趣向のコミカルなお話で、しかも長尺。

長い時間をかけて読むのは、ちょっと人生の無駄遣い(爆

読後になにかしみいるものもなく、ああ、ちょっともうこの人は自分的に相性がないかも、と思ってました。

なので、ブログにレビューをアップすることもなく、その後「ジェノサイド」がベストセラーになり、書店で平置きになった時も、「高野和明か・・・」と素通りしてました。

高野さん、ごめんなさい!!


さらにその後、書評でも高い評価を得ていたので気になってなにかのついでに買い求め、そのまま積読になっていたものを、ハワイに持ち込みました。

結果。

いまさらなんですが・・・面白かったです!

ハリウッド映画にしてもいいかも、と思えるほどの規模で展開するSFアクションです。

内容をネタバレしないように紹介するのは難しいので、アマゾンの紹介文を引用しますと(責任逃れ

「急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。 」アマゾンより

とまあ、こんなはじまり方をするのですが、これだけでは惹かれないかもしれませんね。

でも読み始めたら、研人がどうなるのか、イエーガーがどうなるのか、そしてあの人(たち)は・・・・
と、先がめちゃくちゃ気になり、夜も徹して一気読みしちゃう迫力でした。

じっくり読んだらほころびが気になるかもしれないんだけど、初読ではそんな余裕を読者に与えないストーリー展開で、ページをめくる手が止まりません。

内容的に、「あ~あ、こんなこと書いて、叩かれるぞ」ということにも触れてますが・・・

最近CIAの職員が「アメリカ政府が個人情報を広く防諜していたことを発表した」件で香港からロシアに逃れて話題になっていますが、作中のエシュロンを告発しようとして命を狙われるウォーレン・ギャレットを思い起こさせます。
「え、ほんとにあるんじゃん!」と思いました。


最後にある登場人物が
「寂しくないか?」と聞かれて答える
「猫でも飼うよ」

が心にしみていったハワイの夕日でした。







東雲の途 あさのあつこ * 美しい人をつくる「所作」の基本 枡野俊明 * ハワイで読んだ本、その4

2013-06-20 | 読書
ドクダミだのパフェだの、心はちぢに乱れておりますが、想いはまだハワイに(爆

今回のハワイは羽田からの便で楽ちんでした。



羽田というと、新国際ターミナルビルの江戸小路の中にある、勘三郎のまねき。

羽田が新しくなったばかりの時に、このお店(京都の永楽屋のブランドで、伊兵衛ENVERAAKとRAAKというお店らしい)の前に立って、ドキドキした覚えが。

今はこれを見ると、悲しくて切なくなってしまいます。

この街並み、勘三郎がプロジュースしたんでしたね・・・。

と重くなった心を引きずりながら、その近くの寿司屋に入りました。



成田から海外に出るときに、ターミナルビルのすし屋で「とろ寿司」を食べるのが慣習になっていた我が家ですが、今回は羽田にある「ありそ鮨し」という回転ずしに入ってみました。

「飛行機に乗ったらすぐに機内食がでるじゃない」(夜出る便でした)
「でもまずいし」
「ま、そだよね。食べなきゃいいよね」

というわけで、遠慮なくぱくぱくと食べて、お安くて、味はまあまあで、悪くなかったです。

(もちろんその後、機内食だって食べたことは内緒です



さて、ハワイに持って行った本の第4弾はわれらが「あさのあつこ」さん♪

東雲(しののめ)の途(みち)
東雲(しののめ)の途(みち)

海外旅行では「時代物」を最低1冊は持っていくのが定番です。

めちゃくちゃ頭が切れるけどなんか人間っぽくない、心が氷りついてるような同心、木暮信次郎と、真面目で端正で冷静な商人だけど、謎の陰のある、遠野屋清之介の「弥勒シリーズ」第4巻目です♪

思えば

弥勒の月 (光文社時代小説文庫)
弥勒の月 (光文社時代小説文庫)

「弥勒の月」で、現代風な味付けの時代劇の面白さと、圧倒的な登場人物のキャラ力にノックアウトされ、

夜叉桜 (光文社時代小説文庫)
夜叉桜 (光文社時代小説文庫)

次作の「夜叉の桜」でも期待を裏切られず、さらに魅惑され、

木練柿 (光文社時代小説文庫)
木練柿 (光文社時代小説文庫)

三作目の「木練柿」では、二人が引き寄せる事件を
「人っていうのはおもしれえ」と眺める岡っ引きの伊佐治やその家族を含めた、二人の周り取り巻く味わいの深い人々の短編がつづられ、どれも面白くて情け深くて楽しみつつも、

「信次郎はどうなる、清之介の謎は???」と盛り上がって、

満を持して発売されたのを買い求めた「東雲の途」でございました!


木暮信次郎は「日本のシャーロック・ホームズか?」という気もしないでもない、頭はめちゃくちゃ切れるけど、「面白い事件がないと退屈で死にたくなる」、ちょっと人間的に問題のある若い同心。

『木暮信次郎とはそういう男なのだ。
沈着で緻密で怜悧で、人としての何かが欠落している。』p34


そんな「生きている人間には興味のない」ような木暮が、清之介だけには興味を持ち、嫌に絡む。
意地悪に、冷たく、ねちねちとだけど、自分から接触していく。

それに対し、心から愛した妻を亡くしながらも、まじめでひたすら商売に打ち込む遠野屋清之介(贔屓で様をつける)の、心細やかで端正な小間物屋ぶりの陰に潜む、「人切り」のすざまじい殺気の謎・・・

悲痛なまでに「断ち切れ、断ち切れ、過去の一切を断ち切って生きろ」とすべてを忘れて宿命に抗おうとするけれど、結局逃れることあたわず、生国の兄たちの政変に巻き込まれてしまう清次郎

川から引き揚げられた無残に切り刻まれた男の屍体。
その腹の中に謎の瑠璃石が隠されているのが見つかる。

そしてそれは清之介が育ての乳母からもらったお守り袋に入っていたものと同じだった。

今回は、いろいろなアイディアを出して小間物屋の商売を盛り立てようと頑張る清之介が、はらってもはらっても追ってくる運命に逆らえず、ついに人切り清弥に戻って、江戸を離れ、脱藩した故郷にもどり・・・

というお話です♪

相変わらずテンポが速く、どんどん引き込まれて読んでしまいます。
そしてさすがあさのあつこさん、そんなテンポの速さの中にも人間観察が鋭くて、しらけずに読み進められます。

特に、刀を持たずとも何人に囲まれてもやっつけてしまう清之介の強さ。故郷の未来を遠く読んで、血のつながりを無視して真の途を模索するには、ミーハーjester、俳優ならだれがやるかな?などと考えつつ、よだれダラダラ流しつつ読んでしまいます。

が・・・

ラスト数十ページで、「あとこれだけのページ数でこれだけ広がっちゃったお話に結末がつくの???」と残るページ数をみてはらはらしつつ読みました。

最後のほう、もうちょっと詳しく書いて欲しかったな。

後日談が語られると、もうこのシリーズはおしまいか?とさみしい。


なんだかシリーズを読めば読むほど木暮信次郎も気になって気になって、今回はあまり出番がなかったので、それもさみしかった。

ぜひぜひ、信次郎が血の通った人間として生きられるようになるのどうかも、続く作品で読みたいです♪




それと、これはKindleに入れて持って行った本ですが、

禅が教えてくれる 美しい人をつくる「所作」の基本
禅が教えてくれる 美しい人をつくる「所作」の基本
(リンクからは紙の本に行きますが、そこからKindleへのリンクをクリックすると、Kindle版に行けます)

静かで美しい「所作」を身に着けたいものだ、などと考えて Kindle に入れていったのですが、ハワイの美しいビーチでトドのように寝そべっていたある午後、家族Bと「美しいふるまいの人」についての話になりました。するとやつは、

「禅では「行住坐臥」といって、すべてが修行なんだよね」

「形を整えれば自然に心も整うし、所作を美しくすれば、心も美しくなるんだよ」


なんて難しいことをいうのです。

・・・ふ~~ん、あんたも結構勉強してんだねえ。

・・・しかしちょと待て!

どっかで聞いたぞ、そのせりふ・・・・

「ここだ!」と家族Bの ipad の Kindle アプリを開けてみたら、やっぱりこの本が入っていました。わははは。

やはり親子ってシンパシーがあるのかしら? 同じ本を買ってしまうことがよくある私たちです。

本は「姿勢を調え、呼吸をととのえ、美しい所作で、ていねいに生きる」ことが語られます。

読みつつ姿勢を正し、腹式呼吸になるわたくし。

ふむふむ、それで?
と言ってるうちに本は終わってしまい、もっと深く、警策(きょうさく、座禅の時肩をピシリとやられる棒のことです)でビシバシとしごいて欲しかった気もしますが、

*ゆっくり季節を感じながら歩く。
*「汚れたものはその日のうち」に片づける
*おなかいっぱい食べない
*朝の過ごし方(5分でいいので掃除をする)
*今日のことは、眠る3時間前までにすませる


など、とりあえず実践できることから「美しい生活」を始めたわたくしでした。
















おかえりなさい! 三浦さん♪

2013-05-30 | 読書
しつこく連続で三浦雄一郎さん話題です・・・

昨日、三浦雄一郎さんが無事エベレストから帰国なさいました。



実は、帰国まで、かなり心配してました。

登山は下山が7割と言われますが、75歳の登頂の時も「帰りはくたくた」とおっしゃってましたし、
この間ご紹介したこの本

私はなぜ80歳でエベレストを目指すのか (小学館101新書)
私はなぜ80歳でエベレストを目指すのか (小学館101新書)

でも、2012年12月の心臓手術の後の、緩い坂でも上れないほどの不調、出発直前の2013年1月に心臓の再手術と続き、
家族に大反対されて、「それなら家出する」(爆
とまで言って駄々をこねての出発だけれど、本を読んでいると
「エベレストでなら死んでもいい」「あの山を墓標にしたい」
というような三浦さんの覚悟が(直接は書かれてませんが)文字の間から立ち上ってくるようで、かなり心配だったのです。

それで、登頂の後の「これまでにないくらい疲れています」でしたから・・・・

だから日本にお帰りになったのを見て、ほんとにほっとしました。

今後は祝賀会とか出ないで、ゆっくりゆっくり休んでほしいです。

ちなみに、三浦雄一郎さんの御本で一番好きなのは、二男の豪太さんと書かれたこの本。


生きがい。
生きがい。

(うわなんだか下が真っ白と思ったら著作権コンテンツ?で帯の画像が出ないのね? 帯は三浦さん自筆の自己紹介が載ってます)

75歳の時に書かれた本です

三浦さんの御本は、まあ、どの本も同じような内容(爆)
でして、幼少のころからあった三度の挫折とそこから立ち上がる辺なんかは、今まで何回読んだことか。

新しい本が出るとそこに少し違う話が添えられている、その新しい部分が読みたくて読者は買ってしまう、という感じなんですが、この本はわずかながらでも息子さんの目から見た三浦さんも描かれているので、三浦さん像が立体的に見えてくる感じがします。

オリンピック候補選考の大会で豪太さんが負傷し、決勝を棄権すると電話した時、母親は「無理しないで」といったのに、父である三浦さんは

『「どれぐらいひどい。押し込んでもスキー靴を履けないのか」
「何とか押し込めるかもしれないけど、痛くてはけない」
「そんなこと言わないでがんばれ。あきらめるのは最後の最後でいいんだ」
「親父はこの痛みがわからないから、そんなことがいえるんだ」

 僕も最後にはカッときて、「片足でもいいから、スキー靴を履いてとにかく出ろ!」と。

P136より、三浦雄一郎さんの視点

と理不尽なことをいったそうですが、それで奮起した豪太さんが、翌日レースに参加すると、ライバル2人が失敗をしたこともあって、トップになり、オリンピックに出ることが決まったそうです。

その様子が次に豪太さんの視点でも描かれ、普段はとぼけてやさしい父が、時に無理をいうときの迫力が伝わってきます。


「楽しく遊ぶ」ために、人が見て笑うような努力でもしてしまう、しかもそれを苦にせず、笑い飛ばして真剣に、命を懸けて遊ぶ。

そんな三浦雄一郎さんの魅力が伝わってくる本です。





三浦雄一郎さん、がんばれ!!! 「歩けば歩くほど人は若返る」「私はなぜ80歳でエベレストを目指すのか」

2013-05-23 | 読書

三浦雄一郎さんたちは昨日、キャンプ4(C4、7980メートル)から約6時間かけて、午後2時20分(日本時間同5時35分)、最終キャンプ地のC5(8500メートル)に到達したそうです。

今日最終アタック。
今頃上ってるはずです

頑張れ!!!

昔記事に書きましたが、雄一郎さんも、お父さんの三浦敬三さんも尊敬しております。

遊ぶことに真剣な大人が大好き♪

応援しておりまする。


歩けば歩くほど人は若返る
歩けば歩くほど人は若返る

私の「毎日のウオーキング」のモチベーションを上げてくれる教科書。

これを読んでから、歩道橋をみると「やった!」と思うようになりました。
「下りる」ことでホルモンがでるなんて、目からうろこでした。
マンションの階段もせっせと上り下りしております。



私はなぜ80歳でエベレストを目指すのか (小学館101新書)
私はなぜ80歳でエベレストを目指すのか (小学館101新書)

80歳でも目標をもって生き続けること。燃え続けて生き切ること。
大変な困難にぶつかっても、ひたすら前向きに。

読むたびに元気をもらえる本です。
「年甲斐もなく」なんて言葉は忘れます!


そのほかの本も、元気をくれます。

三浦敬三さんもそうでしたが、メンターとして尊敬できるお二人です。

無事登頂なされることを祈り、ご帰還をおまちしております!!

へこたれない心 園田天光光  不死身ともいえる健康の秘訣! ハワイで読んだ本 2

2013-05-19 | 読書
旅に出るときに、「この本を今回は読みながら旅をしよう」と思って持って出る本と、出発前に空港の本屋で衝動買いしちゃう本と、2種類あります。

この本は後者。

へこたれない心へこたれない心

いつもならパラパラと立ち読みだったかもしれないけど、気になる部分を読んでいたらボーディングタイムが迫る~

では買ってしまおう。これも一期一会だし。

などと、出発間際の本屋では2~3冊買ってしまうことが多いのです。

著者の園田天光光さんは93歳でものすごい元気な方。

戦後、日本初の女性衆議院議員に当選。
のちに外相になる、園田直氏と「職場結婚」・・・
だけど、「バツイチで子供が一人いる」という園田氏のふれこみは大嘘で、バツサンで子供は5人もいた・・・

でも天光光さんは「へこたれない」!

おむつを議員会館の電熱器で乾かしつつ、子育ても。

関東大震災も経験し、戦争中には自分が入るはずの防空壕に、ほかの人が入ってしまい、仕方なく別の防空壕に走って行ったら、自分の入るはずの防空壕に爆弾が落ちて、そこに入っていた人は全員死んでしまった、とか、本当にドラマチックな人生を送ってきたお方です。

jesterがどうしてこの本を買ったかというと、健康の秘訣の一つ、ヨーグルトの話がじっくり読みたかったから。

天光光さんが、ブルガリア大使館の方があまりに健康そうでピカピカしているので、その秘訣を聞いたところ、ヨーグルトを毎日食べている、と答えられたそうです。

そこで、そのヨーグルトの種を大使館に行って分けてもらい、それからずっと手作りして愛飲しているのだそうです。

愛飲のおかげで胃腸が丈夫になり、風邪もひかなくなった、というふれこみとともに、作り方が丁寧に書いてあります。

天光光さんはブルガリアヨーグルト普及活動のおかげで、ブルガリアから表彰されたそうです。

jesterは自分でも手作りヨーグルトにはまっているので、ここに興味をひかれました。

(jesterの手抜き手作りヨーグルトの作り方についてはこちらです)


天光光さんのモットーは「人の良いところだけ見る」ということ。

往々にして人は人間の悪いところを見てしまいますが、良いところだけ見るようにしていると、周りによい人だけいるようになる。

そして悪口は絶対言わない。

・・・とまあ、よく考えてみると、戦後初の国会議員じゃなくても、路地に椅子を出して座り込んでいるおばあちゃんが聞かせてくれるようなお話ですが、93歳の方が話していると思うと、なんだか心にしみたりしてきます。



ワイキキのビーチでで風に吹かれながら、ちりちりに冷えたモヒートを片手に過ごす午後に読むのには、なかなかの本でございました。




海賊と呼ばれた男 by百田尚樹  *ハワイで読んだ本 その1

2013-05-15 | 読書
今回も馬鹿でかいスーツケースで行きましたが、その中身はまず、シュノーケル用の足につけるゴムのフィン。

これが重いのです・・・

プラスティックのフィンは軽いんだけど、ゴムはしなりが良くて、泳ぎやすいので、フルフィット(履くタイプ)のゴムフィンをずっと使ってます。

それと、マスクとシュノーケル。ウエットスーツも持っていきました。
ダイビングはしなかったけど、シュノーケリングはいっぱいしましたので。
こいつらが重かった。フィンは60センチ以上あるしね。

しかもシュノーケルは15年前ぐらいのものでプラスティックが劣化してて、途中で壊れてしまいました。
あ~~高かったのにな~~
マスクも同じときに買ったけど、こちらは全然使えましたが。

仕方ないのでハナウマベイではシュノーケルだけレンタルしました。


それからスケッチブックと水彩絵の具セット。
折り畳みの椅子なんかも。
旅のお供に欠かせないセットです。


それと・・・

今まで毎回旅行には日数と同じぐらいの冊数の本を持っていってました。

重症の活字中毒なので、読む本が切れるのが何よりつらいのです。

1か月ぐらいの旅だとちょっと全部持っていくのは無理なので、現地調達ですが・・・


これがまた買いすぎたりして溜まってしまうと重くて、帰りにいつも荷物の重量が重くなりすぎる・・・

でも今回、ワトソン君(Kindleの名前です)を導入したので、本はぐっと減る予定でした

なにしろKindleには、1000冊以上入るのですからね。
しかもあっちで読む本が切れたら、アマゾンで即買えるし。


・・・けれど、考えてみると、離陸の時と着陸の時、
「すべての電子機器の電源をお切りください」
って言われるから、きっとKindleも切らなくちゃいけないだろうと思って、その時用に紙の本も少しは持っていこうと思いました。

プールサイドとか海辺では万が一濡れて壊れると嫌だから、Kindleじゃなくて紙の本がいいかも、と、それ用にも持ちました。

・・・ううう、結局なんだかんだいって空港でも買っちゃったりして、紙の本も結局5冊、持って行ってしまった。

それでもいつもより軽かったからいいか。


その中の1冊(というか上下巻で2冊ですが)が

海賊とよばれた男 上
海賊とよばれた男 上



海賊とよばれた男 下
海賊とよばれた男 下

でした。

行きの飛行機で上巻、読了しました。

出光石油の創始者、出光佐三(作中名:国岡鐡造)の伝記です。

作者は以前、レビューにも書いた「永遠の0」の百田尚樹さん。

出光佐三さんは「題名のない音楽会」のスポンサーとして「芸術をCMで中断してはいけない」とCMなしで放送させた人、というぐらいの知識しかありませんでした。

それがこんなにすごい人とは。

名前だけは聞いた感じがある「日章丸事件」も、こんなに裏があったのですね~
お勉強になりました♪


知ってる人がたくさん出てくるし、とにかく読みやすいのとテンポが良くて、先が気になるので、どんどん読んでしまいます。

私はどちらかというと左翼なんですが、国粋主義者というか、「日本の誇り」みたいなのを前面に打ち出して戦前から戦後にかけて『愛国主義』で『民族会社』を作っていった出光佐三という人にかなり惹かれました。

出勤簿もなし、首もなし、定年もなしの、人間を尊重した、家族のような会社をつくろう、とか、絶対に外資の石油会社と提携しない、とか、徹頭徹尾自分の信念を貫いた人。

戦争ですべての資本を失っても、絶対社員を首にしなかった。

自社の利益より信用や国益を迷わず優先する竹を割ったような性格。

社長と呼ばせず、「店主」と呼ばれることで、大企業でなく地元と密着した個人営業の店というこだわりを持ち続けた。

巨大タンカーの竣工パーティーに15000人の中学生を招待する優しさ。

顔を見ただけで、相手が信頼できると思えば何も聞かずに即、契約を決めてしまう思い切りの良さ。

「おお! 今後は出光石油のスタンドでガソリンを入れよう!」

などと思いつつ読み進んだのですが・・・

なにしろこの人、すご過ぎて、あまりに展開が「店主マンセー」なので、ひねくれたわたくしは、途中から眉につばつけて読む感じになってきました。

ほんとにすごい人だから、著者はこの人にひどく感動して一気に書いたんだろうけど、・・・なんかね。

「店主の一声で、社員が泥の溜まった石油タンクにもぐりこんでみんな笑いながら底を掃除する」シーンなんか、ちょっと北朝鮮のニュースを見てるみたいに感じてしまったり。(このシーンで感動した方、ごめんなさい!)

もうちょっと出光佐三の「影の部分」も書いてくれると、もっと光の部分がはっきりしたのでは、などと思います。

まあ、著者にしたら、影なんかなくて光ばかりの人間に見えたんでしょうけど・・・


男の生きざまを描いた、男のための男の書いた小説で、女性はほとんど出てこないし、出てきてもいつも男の補助役。
心を打たれる細かい心理描写などはなく、とにかく
「歴史的にはこういうことがあったんだよ~!」
という冒険小説的な展開ですが・・・

311の後のつらい時代を生きながら日本人としての誇りを保つためには、こういう本を若い人が読んだらいいのかも、などと思いました。


しつこころなく・・・散っていく桜に。@青山霊園  『永遠の0』

2013-04-01 | 読書
前を見ても・・・



後ろを見ても・・・



わけいっても
わけいっても

延々と続く桜並木なのは、青山霊園を西麻布から外苑前まで貫く通り。

ああ、美しや。


おしゃべりなアン・シャーリーじゃなくても、この花のトンネルの下を馬車で走ったら「まあ、クスバートさん!まあ、クスバートさん!」といったっきり、無口になってしまうだろうな。←意味不明ですかね?


いつか、満開の桜の下、この通りをオープンカーでゆっくり走ってみたい、野望。
(馬車とか、わがまま言いません・・・)


青山霊園は、墓地なのにお花見客が多くて、「○○通り、○○番地のお墓の前の席」というと、ブルーシートをひいた宴会に宅配ピザがとれるそうです。

あいにく日曜日は天使が堕ちてきそうに低い曇り空でしたが、最後のお花見週末とおもって、早朝にダウンを着て散歩しました。

散っていくソメイヨシノと、今まさに満開になるほかの種類の桜とが見事に入り乱れて、湿気を含んだ冷たい大気は『桜餅の匂い』でいっぱい。



もう散り始めた桜は、歩道を薄桃色に染め、一斉に風に舞ってきれいです。


雪のように散りしきる桜を見ていて、以前読んだ

永遠の0 (講談社文庫)
永遠の0 (講談社文庫)

を思い出しました。

墓地から連想する『死』のイメージと降りしきる桜吹雪で、

「お前と俺とは 同期の桜・・・ 中略 
咲いた花なら散るのは覚悟
みごと散りましょ 国のため」

なんて歌が浮かんだからかも。

ああ嫌だ。この歌大嫌いなのに。


いわゆる『戦争もの』の小説は最近ほとんど読むチョイスにない私ですが、
『その存在を知らなかった本当の祖父が特攻隊だったということを知った現代の若者が、その祖父の姿を探究する』
というテーマに惹かれて読んでみました。


911の時、あの恐ろしいテロリズムを、多くのアメリカのマスコミが「Kamikaze Attack」と書きたてました。

国を守るため、信仰を守るため、自死を覚悟で飛行機で敵に体当たりする姿が重なったのでしょう。

日本人の私としては、こういう記事を読んでつらかった。自分の知人も911で亡くなったので、なおさらでした。

911のテロと零戦の特攻隊は、精神構造的に同じなのか。


終戦近くになって、無駄死にとわかっていながら特攻を命じられ、断れずに死んでいった若者は、優秀で戦後の日本復興のために兵役が免除されていたはずの理工系の旧制大学・旧制専門学校の学生が中心だったそうです。

ろくな飛行機ももう残っておらず、帰りの燃料を積むことを許されず、脆弱な機体では本懐を遂げて敵を攻撃することすら叶わずゲームの標的のように撃ち落とされ、中には敵地に着く前に海に落ちてしまった機も多くあったそうです。

「国にいる家族を守る」という建前のもとに貴重な命を無駄に散らしていった若者たち。

その心中やいかに無念だったかと忍ばれます。


死んでいった祖父やその友達たちと同じ年代で「ニート」の主人公・健太郎は、自分と同じぐらいの若い学生たちがどんな気持ちで飛び立っていったのか、またそんな中で
「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」
と言って、天才的な飛行士だったにもかかわらず臆病者とそしられた、母もあったことのない祖父が、なぜ終戦直前に特攻していったのかという真実に迫るため、もうほとんど生き残っていない関係者を探して、話を聞いて歩きます。

関係者へのインタビューの中で次第に明らかになる謎。

まさに戦争の狂気です。

そして、最後に謎が解けたとき、泣かそうという著者の意図が丸見えであるにもかかわらず・・・、ちょっと泣けました。


今、中国や韓国と日本の関係が悪化し、簡単に「相手を叩け」的な発言が聞かれるようになってきました。

戦後60年以上たって、戦争を経験した世代がいなくなり、その悲惨さを伝える人が少なくなって、また歴史を繰り返すようなバカなことがあってはなりません。

そのためにも、こういった「戦争の真実」を描いた小説がたくさんの人に読まれるといいなと思いました。

戦争は、万が一どうしても回避できないのなら、喧嘩が大好きな一部の人たちが、どこか離れ小島に行って、その人たちだけでやってくれればいいです・・・・。

ホントに・・・・






医者に殺されない47の心得 医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法  *花の下にて生と死を考える・・

2013-03-26 | 読書

こちらは中野区の江古田の森公園の桜。

その如月の望月の頃・・・花の下を散歩しつつ、昨日買って読んだ本について考えました。

医者に殺されない47の心得 医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法
医者に殺されない47の心得 医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法


この本です。
いろいろなベストテンに入っているし、本屋でも平置きで売っているので、読んだ方も多いかと思います。

中に書かれていることは、著者である近藤誠氏が以前から言っていることをセンセーショナルな題で、焼きなおしてまた書いた、という感じですが、そのセンセーショナルな題に惹かれて買ってしまった(汗)のには理由があり、父が90を過ぎてガン治療をしていること、親しい友人が肝ガンの手術をし、苦しい治療を経ていったん元気になったけれど、最近転移が見つかったこと、また、最近の勘三郎、團十郎の死などから、ガン治療について考えてみたくなっていたからです。

『ガンには転移するものと転移しないものがあり、転移しないものはほっておいても大丈夫だが、現在の医学では見分けがつかない。本物のガンはどんなに早期に発見しても、すでに転移している。手術や抗がん剤で治るのは『がんもどき』であり、もともと手術しなくても治るものだ』
という主張は、彼が書いた

患者よ、がんと闘うな (文春文庫)患者よ、がんと闘うな (文春文庫)

にも書かれており、発売当時は画期的な説としてセンセーションを巻き起こしました。
そのころ読んだ覚えがあります。

近藤氏は放射線医師としてガンの治療にあたり、乳房を切り取る手術一択だった日本に乳房温存療法を広めたパイオニアでもあります。

彼の説に本音で共感する医師も多いと聞きます。

本書の目次から抜粋したものがアマゾンの紹介文に載っていたので引用しますと、


■第1章 どんなときに病院に行くべきか
心得1「とりあえず病院へ」。あなたは医者の“おいしい"お客様
心得2「老化現象ですよ」と言う医者は信用できる
心得3 医者によく行く人ほど、早死にする
心得4「血圧130で病気」なんてありえない
心得5 血糖値は薬で下げても無意味で、副作用がひどい
心得6 世界一売れるコレステロール薬の「病気を防ぐ確率」は宝くじ以下
心得7 がんほど誤診の多い病気はない
ほか

■第2章 患者よ、病気と闘うな
心得12 一度に3種類以上の薬を出す医者を信用するな
心得13 軽い風邪で抗生物質を出す医者を信用するな
心得14「抗がん剤を使えば寿命が延びる」と言う医者を信用するな
心得15 がんの9割は、治療するほど命を縮める。放置がいちばん
心得16「医者から薬をもらう」を習慣にしてはいけない
ほか

■第3章 検診・治療の真っ赤なウソ
心得20 がん検診は、やればやるほど死者を増やす
心得21「乳がん検診の結果は、すべて忘れなさい」
心得22 胃を切り取る前に、知っておきたいこと
心得23 1センチ未満の動脈瘤、年間破裂率は0・05%
ほか

■第4章 100歳まで元気に生きる「食」の心得
心得27 体重、コレステロールを「減らさない」健康法を選ぶ
心得28 ピンピン100歳への体づくりは「毎日タマゴと牛乳」から
心得29 ビールは1日にロング缶2本までなら「百薬の長」
心得30 ビタミン・ミネラルの摂りすぎで早死にする

■第5章 100歳まで元気に生きる「暮らし」の心得
心得34 22時から2時にどっぷり眠る。「超」早寝早起き健康法のすすめ
心得35 石けん、シャンプーを使わないほど、肌も髪も丈夫になる
心得36 大病院にとってあなたは患者ではなく被験者
心得37 「手当て」でストレスを癒す
ほか

■第6章 死が恐くなくなる老い方
心得42 ポックリ逝く技術を身につける
心得43 いきなり進行がんが見つかったらどうするか
心得44 喜怒哀楽が強い人ほどボケない
心得45 100歳まで働き続ける人生設計をする
ほか


とまあ、こんな感じです。
これだけ読むと、ちょっと読みたくなりますよね。その辺の売り方がうまいな~と思います。
どの話も一応裏付けの数字が載っています。

ガンは手術も抗がん剤治療もしないほうがいい、ガン検診もしてはいけない、ガンになったら放置しておくのが一番いい・・

抗がん剤は猛毒で、抗がん剤が「効く」というのは、単に「がんのしこりを一時的小さくする」という意味。そのしこりはあとで必ず大きくなる。つまり「効く」というのは治すとか延命につながるという話ではない。


ま~なんてセンセーショナルな論法なんでしょう。


さて、内容を読んでみての私の素直な感想は、確かに抗ガン剤治療などに問題はあるのだろうけれど、この本の書き方は「上っ面を撫でているだけで、掘り下げがない、不安を煽っているだけのような信頼できない書き方だな」ということでした。

もっと突っ込んで読みたい部分でふっと終わっていて、だから何?となるところが多かったです。
全体に薄っぺらく、統計の数字なども、一面性しか示してない感じでした。
パラダイム・シフトとまではいきませんでした。

多分ある程度は事実を書いているのかもしれないけれど、現在の医療はこれだけではないだろうと思います。

出版社の狙い通りに、こういう本を買う人間(註:わたくし)がいるから、こういう本がベストセラーになってしまい、またこういう本が出版されてしまうのよね・・・・


私は海外で病院にかかったり入院したこともあるので、日本の一部の医者の偉そうな態度には腹立たしい思いをします。

「患者はバカで、知識がないんだから、おれの言うことを聞いていればいいんだ。忙しいんだから説明してる暇はない」という上から目線の医者が、日本には多すぎると思います。

なので、説明に納得がいき、人間的にも良い(悪くない)と感じられる医者を選んでかかるようにしています。
難しいですけどね。
本当にいい医師は人気が高く、なかなか治療を受けられなかったりします。
結局、消去法で選んでいるのが現状です。

しかしこの本に書かれているように、『医者はヤクザや強盗よりタチが悪い』(p8)とは思いません。


風邪のウィルスに効く薬はなく、抗生剤は細菌性の肺炎などにならない限り必要ない、というのは常識だと思いますが、それでも医者に抗生剤を出されれば、飲んでいる人は多いと思います。

医者も抗生剤は風邪に効かないよな~と思いつつ、出さないと患者が不安になるから、肺炎の予防のために、などと言って、軽い風邪でも抗生剤を出す医者が多いです。

薬を出さないと儲からないシステムになっているのが現状らしいです。


そして、本書にあるような酷い副作用がある抗ガン治療が、必要ないと思われる患者にまで使われることや、高血圧やコレステロールに対する投薬が、製薬会社との金銭的癒着から来ているなどという指摘は、確かにあるかもしれないなと思います。

が、それにしても、医者が金を儲けるために病人を作り出しているといわんばかりの論調は、どうかなと思います。

確かにある程度医学界の裏側を書いているのかもしれず、この手の本を全く読んだことがない人は一読の価値はあるかもしれませんが、この本を、病気で弱気になっていて判断力が劣っている人が読んで、妄信的に信じたら、と思うと、不安になるだろうなあとかわいそうになります。

患者さんには、この本を読んでも、一つの側面を書いているととらえ、ほかの立場の本も読み、かかりつけの医者の話も聞き、情報も調べ、その上で、自分で判断して治療方法を選んでほしいと思います。


さて、ガンになってしまったら、どうしたらいいのでしょう。

        

とりあえず、信頼できるかかりつけの医者を見つけておくのが大切。

その上で、自分で情報を集め、治療方法を考えて選び、無駄に苦痛な治療は拒否し、生活の質を落とさずに、最後の時を迎えたいな・・・

などと、花の下を歩きつつ長いこと考えたわりには、ごく普通のつまらな~い本日の結論となりました。