ゆきてかえりしひび――in the JUNeK-yard――

読書、英語、etc. jesterの気ままなおしゃべりです。(映画は「JUNeK-CINEMA」に引っ越しました。)

恥辱  Skam  by カーリン・アルヴテーデン

2008-07-19 | 読書
ミステリーでも謎解きが中心な物は、読んでいる時は面白いけれど、読み終わった後なんとなくむなしい気がします。
貧乏性なので「ああ・・・ 無駄に時間つぶししたな~」なんて思っちゃうのです。

だもんで、英語で書かれているものはなるべく英語で読んだりします。
それだと読み終わった後にあまりにおそまつな内容だったなと思っても、「ま、英語の勉強にはなったからいいか」と自分を納得させられるし。

でも、ミステリーでも人間心理が細かく追求されていると、う~~んとうならせられ、深く感動することも。

恥辱 (小学館文庫 ア 4-4)
 スウェーデンの作家、カーリン・アルヴテーデンの「恥辱」はそんな一冊でした。

サイコパスの残虐な連続殺人も、派手なレイプシーンも全くなし。

心に傷を負った二人の女性を中心に話が進みます。

38歳の女性医師、モニカ。
優秀な医者であり、責任ある地位にもついている彼女は、心から許しあえる男性トーマスとであったが、どうしても自分が幸せになれる自信がない。

50代の超肥満女性マイブリッド。
あまりに太りすぎて自分で体を起こすことが出来ず、ヘルパーなしには暮らせない障害者になっている。
しかし辛らつな皮肉でヘルパーを攻撃し、ヘルパーがどんどんやめてしまう。

モニカはトーマスと離れてある泊りがけのセミナーに出席することになる。

一方マイブリッドの元には、覚えのない女性から親密そうな手紙が届く。
しかもその住所は重罪な犯罪人が入る刑務所だった・・・・。

こんな出だしで、交互に話が展開するうちに、二人の子ども時代の事件が次第に浮かび上がり、そして思いもかけないところで二人の人生が交錯する。

非常に厳格な宗教者の家庭に育ったものの苦しさ、「性とは汚いもの」と思い込まされて育ったものの罪悪感、過失から愛するものを死に至らしめた心の傷。

どのキャラクターも深く描かれていて、自然に物語りに引き込まれ、主人公たちを見守るようになります。

そして、物語が終わった後、また初めのページに戻って読み返してみると、それぞれのシーンが切なくて、大きな苦しみを背負いながら、必死で生きようとする主人公たちに思わず涙・・・・。

彼女の作品はどれも人間が良く描けていて傑作ですが、これはその中でも1番好きな作品です。


The Road by Cormac McCarthy  (『ザ・ロード』)

2008-07-15 | a day of my life
灰色の雪の中
冷え切った大地を
寄りそってゆく父子。

南へ
南へ。

The Road
人類が自らの手で破壊した
死の世界の中を、
火を携えたものが
南を目指していく。


本を読んで泣くことは良くあるのですが、これはラストは号泣に近かったです。
なんでそこまで泣いているのか家族が不審がるほど、目が腫れてしまいました。

誰かと語り合いたくなる、そんな本。

コーマック・マッカーシーのピューリッツアー賞受賞作、「ザ・ロード」です。

最終戦争後の地球が舞台ですが、SFではありません。


コーマック・マッカーシーというと、最近話題になった映画「ノーカントリー」の原作の、No Country for Old Men (Vintage International)が有名ですが、映画は見ましたが、原作は読んでいませんでした。

彼の作品で私が読んだことがあるのは
すべての美しい馬 (ハヤカワepi文庫)
だけで、しかも日本語で、でした。


この『The Road』、実はヴィゴ・モーテンセンがこの原作の映画化された作品にでるということで、仲間内では噂になっていた本でした。

けれど、どうも先に原作を読むと、映画を素直に見られない傾向があるので、映画を見るまで読まないでおこうとjesterは思っていたのです。

でも翻訳がでて、ヴィゴファンの友だちが読み、
「すごい感動したから、読んだほうがいいよ!」
と薦めてくれたので、読んでみることにしたのですが、・・・泣きました・・・・。


ザ・ロード
翻訳本のほうの書評が日経新聞(7月6日付け)に載っていましたが、『世界が真黒の闇に覆われても、火を消さずに掲げ続けていられるのか。さまざまなことを考えさせられる、これは問題作にしておごそかな傑作なのである』と豊崎由美氏が書かれていましたが、まさに『問題作にしておごそかな傑作』だと私も思いました。


ただし、英語は癖があり、読み辛いです。
アポーストロフィーを省いて「wont」「dont」などと綴るのはまだいいとして、ヴォキャブラリーがかなりjesterのそれから外れてまして、最初はてこずりました。

The Star-Ledgerの書評でも『MaCarthy possesses a massive, Biblical vocabulary』(マッカーシーの語彙は大量であり聖書風だ)とかかれてましたから、ネイティブにとっても難しい語彙で書かれた本といえるのだと思います。

そりゃあ、John Grisham だの Jeffery Deaver だのを読むようにサクサクは読めません。(最近jesterはこの二人の本を続けて読んでおります)

しかし、我慢して辞書を引き引き読み進むうちに、だんだんに彼の語彙に慣れてきて、途中からは楽に読めるようになりました。


残り少ない食料を生き残った人間たちが奪い合い、殺しあう殺伐とした世界で、主人公の父親が、『火を持ち続ける』事が出来るのは、深い愛ゆえです。

自分の遺伝子を継ぐ子どもを守るのは、『愛』とはいわず、単に自分の遺伝子を守ろうとする生命体の本能だ、という説もありますが、この本を読むと、そんな説を笑い飛ばしたい気分になります。

親の子に対する感情を「愛」という。
それがどんな本能に基づいているとしても、自らの命を投げ打っても子を守ろうとするその尊さには変わりがないし、その尊さが人間をして尊厳のあるものにしているのだ、という真実を知らされるから。


原作を読んだ後、英文が難解でよくわからなかった部分を確認したくて、友達に翻訳本を借りて目を通しましたが、翻訳は句読点を省いた文章でびっしりと訳されていて、単語と単語の間にスペースがある英文の感じより、かなり詰め込まれたような印象を受けました。

やはり原作と翻訳は似て非なるものだな~と感じました。

あ、それと、jesterがこの本をアマゾンでオーダーして手に入れたのは10日ほど前だったのですが、いまコレを書くために調べてみたら、その時のと同じ表紙の本がなぜかアマゾンから消えていて、その上500円近く安くなっておりました。シクシク。

それと、カートを押して歩いていく父親をヴィゴで脳内演技させつつ読んだのはいうまでもありません。
(サッカーボール柄のパジャマはさすがに着せませんでしたが・・・・)

映画も楽しみです!!!


ひさしぶりなのに猫話題

2008-07-06 | にゃんこ
ロッタの天敵、それはパソコン。

いくら足もとでにゃ~にゃ~(あそぼ~~)言っても、生返事しか返ってこない。

膝に乗ってもちょっと頭をかいてくれるだけですぐにキーボードに手が行ってしまう。

頭にきて、ばりばりと爪を立て、シャツを破いて、飼い主の体をよじ登って肩に乗り、シッポで顔をしゃっしゃ!とワイパーしてあげても、めげずにシッポをかいくぐって画面をみる飼い主。

それでは心を入れ替えて、キーボードをたたくお手伝いでもしようとおもって猫の手を貸すと

ppppppplolllk・・・・・

「ロッタ!! やめて!!」

手伝ってたのに怒るなんて、も~~むかつく。

ので、画面の前に座り込み。

「もうここ見ちゃ駄目!」

5センチぐらいの狭いスペースに無理やり座り込み。下目使いで最後のお願い、「遊んで!!」

ま、コレが効くのだ。

飼い主もやっとパソコンを諦めて、わたしと遊ぶ気になるのであった。