jesterは映画になる前に原作を読んでいることがよくあるのですが、この本は映画が先になりました。
ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上去年、文春のミステリーベストテンや『このミス』なんかで入賞し、話題になっていた本でした。
原題は、MAN SOM HATAR KVINNOR = MEN WHO HATE WOMEN = 女たちを憎む男たち
・・・・なんか読んでつらそうな題じゃございませんか。
jesterも話題になった頃に、英語訳で読もうかと思っていたので、書店で英語の本をパラパラしたのですが・・・・
しょっぱなからスウェーデン経済&ジャーナリズムの難しい話しと、なれないスウェーデンの名前やらコングロマリットやら会社名やら地名がいっぱい出てくるなあ~ AやOの上に・・がついてる字はどうやって読むのかわからなくて、音に出来ないから、おぼえられなくてわからなくなりそうだな~ しかもなんか込み入った話らしいなあ~ 描写が細かい分テンポが遅そうだし、長いし疲れそうだな~
などと、最初の数十ページでさっさとめげました。
英語自体はスウェーデン語からの翻訳で、決して難しくないのですが、英語で750ページ近くを集中力をキープして読むのがjester的にはつらそうな展開だったのと、テーマ的に惹かれなかったのもあって、その時は本棚に戻したのでした。
でも
映画が面白かったのです!
(映画の感想は
JUNeK-CINEMAに書きました)
なので映画館の帰りに本屋に直行。
さっそく読み始めたら、これがまた、
原作は映画より面白い!
もっと早くよんどけばよかった~~
でも、きっと原作を読んでから映画を見たら、映画評が辛い点になっただろうな~と思われるので、映画が先でよかったかもしれません。
最近は「やたらとテンポが速くて、先が気になるミステリー」も多くて、実はjesterが英語で読むにはこういうのじゃないと最後まで行きつけなかったりするのですが、この本は程よいテンポで、一緒に謎を解いていくという楽しみ方が出来ます。
映画では、はしょられた部分がかなりあり、それが原作では丁寧に書き込まれていて、事件の詳細やらリスベットやミカエルの心理などにも納得がいきます。
ジャーナリストであったスティーグ・ラーソンの文章は、正確で判りやすく、とても知的な印象を持てるもので、話しの組み立て方も巧妙です。
あらすじは
月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルは、大物実業家ヴェンネルストレムの違法行為を暴露する記事を発表した。だが、名誉毀損で有罪になり、彼は『ミレニアム』から離れることになる。そんな彼の身元を大企業グループの前会長ヘンリック・ヴァンゲルが密かに調べていた。背中にドラゴンのタトゥーを入れ、特異な風貌をした女性調査員リスベットの働きで、ヘンリックはミカエルが信頼に足る人物だと確信し、兄の孫娘ハリエットがおよそ40年前に失踪した事件の調査を彼に依頼する。ハリエットはヘンリックの一族が住む孤島で忽然と姿を消していた。ヘンリックは一族の誰かが殺したものと考えており、事件を解決すれば、ヴェンネルストレムを破滅させる証拠資料を渡すという。ミカエルは信頼を受諾し、困難な調査を開始する。 (アマゾン・ブックデータベースより 引用)
とまあ、こんな感じです。
主人公のミカエル中心に、入れ子の小箱のように、たくさんの話が綿密に組み立てられ、読むものを引き込みます。
今回、映画の後、早く読み終わりたかったので、日本語でまず読んだのですが、出だしがすぐに事件に発展せず、説明が細かくてなかなか動き出さない感じで、少々入り辛いのは、英語で読むのと同じ。
でも途中からぐいぐい引き込まれて、夜が更けるのも忘れて読みふけってしまいました。
これぞミステリーを読む楽しさの一つ。
反差別運動に取り組んだジャーナリストであったらしいスティーグ・ラーソンの視点は、男性が書いたにしては、かなりフェミニストの視点がはいっており、女性への暴力への怒りが感じられます。
「表紙に性差別的なイメージを絶対使わないでくれ」と編集者に要請したというところからもそれがうかがえます。
ところで、日本語版の表紙は「性差別的なイメージ」はどうなんでしょうか?
ペーパーバック版の表紙はこんな感じです。
jesterはこっちのほうが好きです。
(ペイパーバックでも日本語版ににた感じの表紙のもあるけど)
登場人物はみな魅力的。
社会派のジャーナリストである著者の考え方を反映していると思われる主人公ミカエルにまず共感できます。
そして、あらたなヒロインの誕生!と思わせたのが、
リスベット・サランデル!
う~~む、そう来たか!とうなずいてしまう造詣です。
天才ハッカーにして、画像記憶能力に優れ、鋼のように鍛え上げられた体をもつが、人とのコミュニケーションは下手で、空気が読めず、アスペルガー症候群かと思われるほど。
トラウマになるような事件を幼少期に経ているらしく、社会的には後見人が必要とされている、社会的弱者でもある。
その外観は鼻にピアス、背中に龍のタトゥー。がりがりに痩せて小柄・・・・
なんと個性的なヒロインでしょう。
パトリシア・コーンウエルが作り出した検視官、ケイ・スカーペッタに出会ったときのように、ぞくぞくと来ました。
(その後、スカーペッタさんは二人称でかかれるようになってから失速しましたが。。。。)
女性への異常な虐待と暴力が中心で、動物への虐待なんかもあって、jesterには苦手な分野なんですが、リスベットの魅力でこのマイナスな部分がかなり相殺されました。
The Man Who Smiled (Vintage Crime/Black Lizard)
いままで、jesterにとってスウェーデンのミステリー作家というと、
Henning Mankellさんのヴァランダーシリーズだったのが、新しい作家を発掘できて嬉しい!とおもったら・・・・
スティーグ・ラーソンさん、このミレニアム3部作を書いた後、発売を待たずに急逝なさったのですね・・・・
このシリーズも5部まで構想があったというのに、本当に残念!! でございます。