カンヌで2000年にグランプリ(パルムドールの下の賞。今年、日本の河瀬直美監督の「モガリの森」(漢字が出ない!)がとられたのと同じ賞です)を取った中国映画、「鬼が来た!」(「鬼子来了」)に出演した香川照之さんが、撮影当時、無印良品のノートに書いていた日記を中心に、映画が撮られた日々を書き綴ったもの。
jesterがこれを読んだのは、まず、日本映画について彼が書いた本、「日本魅録」を読んで、面白かったのでDVDで映画「鬼が来た!」を見て、そのあと、この「中国魅録―「鬼が来た!」撮影日記」、という順番でした。
ど、どうですこの表紙・・・・
思わず大きい画像を貼り付けちゃいました。
香川照之さん、日本の俳優さんの中ではjesterは好きなんですけど、この顔、怒りをこめて雄たけんでますよね~
その上なんなんでしょう、このベルトを引き絞るアクション・・・
「もうここでズボン脱ぐぞ!!わりゃ~」とフキダシをつけたくなっちゃいます。
まあ、読めば彼の気持ちも分かるのです。
何回彼はこういう顔で怒鳴りたかったか、怒鳴ったか・・・・
とにかく抱腹絶倒の世界です!
中国にいき、しかも都市ではなく僻地で、地元の人たちと映画を撮る、とんでもない苦労が伝わってきます。
タレントとかがアフリカとかアジアの国々で生活を体験する、という番組がありますが、あれはせいぜい1~2週間。
生活といっても観光旅行みたいな物で、どんなに苦しくても先が見えてますから、我慢が出来るでしょう。
でも香川さんは4ヶ月の間、お仕事として出かけられたのですから、さぞかし大変でしたでしょう。
その上撮っているのが、「戦時中の日本軍が中国でしたこと」で、彼は鬼子(日本)の兵士ですからね~
(鬼というのは日本だけを表している言葉ではないのですが)
ま、それにしても何ヶ月か後には仕事を終えて日本に帰れる、というのがあったのだから、駐在員よりはましですけれど。
jesterも開発途上国といわれる国々で暮らしたことがあり、こういう国で何年か暮らすというのは、ものすごい体験でございました。
今までの自分の常識をほとんど否定されるような・・・・
正直言って、その国を出てヨーロッパとかオーストラリアとかへ休日を過ごしに行くと
「あれは悪夢だったのかな・・・」
と思ったこともありました。はい。
で、その国にある自分の家に帰って
「あ~~やっぱり現実だったのね~~」
とまじにショックを受けました。
しかしその場所で暮らすうちに、何ヶ月かすると、だんだんそこにも慣れてきて(あきらめてきてともいう)その国の良い部分にも目が行くようになります。(ま、そうしないと生きていけない・・・・)
ま、驚愕→怒り→絶望→あきらめ→視点の変化→受容
というような過程を経るわけです。(爆)
(しかし、適応性のない人は あきらめ→逃避 となることもあります。
いや本当に、息抜きに別の国に行ったはいいけど、帰りの飛行機にどうしても乗れず、そこで辞表を書いて会社に送り、日本に帰国した人がおります)
香川さんの場合は、受容まで行きつく前に帰ってこなくてはいけなかったので、つらい想いばかり残ったらしい。
彼は、両親が離婚したとはいえ、父は歌舞伎俳優の三代目市川猿之助、母は元宝塚歌劇団トップ娘役で女優の浜木綿子という、芸能界の超サラブレッドで、しかも東大卒という大切に育てられたエリートでもありますから、そんな肩書きが一つも通用せず、その上日本では当然の『常識』さえ通用しない、という世界に放り込まれて、そりゃあ苦しんだことでしょう。
「鬼子来了」という長編中国映画で私が直面した、よい意味にせよ悪い意味にせよ「夢のような」体験は、私の理解を超えた実に過酷なものだった。肯定しがたいことも多々あった。夜中見てうなされた本当の「夢」よりも、その日起きてから降りかかってくる現実のほうが「夢」にしか思えなかったことも何度もあった。 (「中国魅録」 P7より引用)
と彼は書いていますが、
だが、この日々やって来る固くて厄介な異物をあれこれ考えずにガンガン飲み込み続けていたら、後日その異物から漉し出された芯のようなものが、今日の私を突き動かしていることにやがて私は気がついたのだった。 (同上)
と続けています。この映画に出た体験が彼の俳優人生を変えた、とも後述しています。
彼は文学部卒ですし、若い頃は三島由紀夫に陶酔しきっていたという文学青年でもありますから、文章もそれなりにうまい。
カッコをつけず、正直に書いているところも好感が持てます。
ゴーストライターが書いたような、いわゆるタレント本ではありません。
異文化体験としても、とても面白いです。
同じような体験を持つものとしても、共感を持って大爆笑いたしました。
・・・といっても中国や『発展途上国』を笑っているわけではないのです。
日本だって、また別の国々から見ればまだまだいろいろな面で遅れていて、その国から日本に来た人たちに言わせれば、同じこと。
とあるお茶会に出たら、jester以外全部海外から来た人たちで、「後進国・日本に暮らすストレスの愚痴大会」になっちゃって、肩身が狭い思いをしたこともあります。
この本の中でおかしいのは、異文化のカルチャーショックの中でじたばたする人間模様。
当事者は大変だけれど、第三者からみると、かなり滑稽なんですよね。
この本だけでも充分面白いのですが、もし出来たら映画、「鬼が来た!」(「鬼子来了」)をご覧になってから読まれたら、面白さが倍増します。とてもいい映画です。
(映画のネタばれがあるので、映画が先のほうがお勧めです)
なお、映画、「鬼が来た!」(「鬼子来了」)については、JUNeK-CINEMAのほうでレビューを書く予定です♪
後記;やっとこさ、レビュー、アップできました。
こちらです。
jesterがこれを読んだのは、まず、日本映画について彼が書いた本、「日本魅録」を読んで、面白かったのでDVDで映画「鬼が来た!」を見て、そのあと、この「中国魅録―「鬼が来た!」撮影日記」、という順番でした。
ど、どうですこの表紙・・・・
思わず大きい画像を貼り付けちゃいました。
香川照之さん、日本の俳優さんの中ではjesterは好きなんですけど、この顔、怒りをこめて雄たけんでますよね~
その上なんなんでしょう、このベルトを引き絞るアクション・・・
「もうここでズボン脱ぐぞ!!わりゃ~」とフキダシをつけたくなっちゃいます。
まあ、読めば彼の気持ちも分かるのです。
何回彼はこういう顔で怒鳴りたかったか、怒鳴ったか・・・・
とにかく抱腹絶倒の世界です!
中国にいき、しかも都市ではなく僻地で、地元の人たちと映画を撮る、とんでもない苦労が伝わってきます。
タレントとかがアフリカとかアジアの国々で生活を体験する、という番組がありますが、あれはせいぜい1~2週間。
生活といっても観光旅行みたいな物で、どんなに苦しくても先が見えてますから、我慢が出来るでしょう。
でも香川さんは4ヶ月の間、お仕事として出かけられたのですから、さぞかし大変でしたでしょう。
その上撮っているのが、「戦時中の日本軍が中国でしたこと」で、彼は鬼子(日本)の兵士ですからね~
(鬼というのは日本だけを表している言葉ではないのですが)
ま、それにしても何ヶ月か後には仕事を終えて日本に帰れる、というのがあったのだから、駐在員よりはましですけれど。
jesterも開発途上国といわれる国々で暮らしたことがあり、こういう国で何年か暮らすというのは、ものすごい体験でございました。
今までの自分の常識をほとんど否定されるような・・・・
正直言って、その国を出てヨーロッパとかオーストラリアとかへ休日を過ごしに行くと
「あれは悪夢だったのかな・・・」
と思ったこともありました。はい。
で、その国にある自分の家に帰って
「あ~~やっぱり現実だったのね~~」
とまじにショックを受けました。
しかしその場所で暮らすうちに、何ヶ月かすると、だんだんそこにも慣れてきて(あきらめてきてともいう)その国の良い部分にも目が行くようになります。(ま、そうしないと生きていけない・・・・)
ま、驚愕→怒り→絶望→あきらめ→視点の変化→受容
というような過程を経るわけです。(爆)
(しかし、適応性のない人は あきらめ→逃避 となることもあります。
いや本当に、息抜きに別の国に行ったはいいけど、帰りの飛行機にどうしても乗れず、そこで辞表を書いて会社に送り、日本に帰国した人がおります)
香川さんの場合は、受容まで行きつく前に帰ってこなくてはいけなかったので、つらい想いばかり残ったらしい。
彼は、両親が離婚したとはいえ、父は歌舞伎俳優の三代目市川猿之助、母は元宝塚歌劇団トップ娘役で女優の浜木綿子という、芸能界の超サラブレッドで、しかも東大卒という大切に育てられたエリートでもありますから、そんな肩書きが一つも通用せず、その上日本では当然の『常識』さえ通用しない、という世界に放り込まれて、そりゃあ苦しんだことでしょう。
「鬼子来了」という長編中国映画で私が直面した、よい意味にせよ悪い意味にせよ「夢のような」体験は、私の理解を超えた実に過酷なものだった。肯定しがたいことも多々あった。夜中見てうなされた本当の「夢」よりも、その日起きてから降りかかってくる現実のほうが「夢」にしか思えなかったことも何度もあった。 (「中国魅録」 P7より引用)
と彼は書いていますが、
だが、この日々やって来る固くて厄介な異物をあれこれ考えずにガンガン飲み込み続けていたら、後日その異物から漉し出された芯のようなものが、今日の私を突き動かしていることにやがて私は気がついたのだった。 (同上)
と続けています。この映画に出た体験が彼の俳優人生を変えた、とも後述しています。
彼は文学部卒ですし、若い頃は三島由紀夫に陶酔しきっていたという文学青年でもありますから、文章もそれなりにうまい。
カッコをつけず、正直に書いているところも好感が持てます。
ゴーストライターが書いたような、いわゆるタレント本ではありません。
異文化体験としても、とても面白いです。
同じような体験を持つものとしても、共感を持って大爆笑いたしました。
・・・といっても中国や『発展途上国』を笑っているわけではないのです。
日本だって、また別の国々から見ればまだまだいろいろな面で遅れていて、その国から日本に来た人たちに言わせれば、同じこと。
とあるお茶会に出たら、jester以外全部海外から来た人たちで、「後進国・日本に暮らすストレスの愚痴大会」になっちゃって、肩身が狭い思いをしたこともあります。
この本の中でおかしいのは、異文化のカルチャーショックの中でじたばたする人間模様。
当事者は大変だけれど、第三者からみると、かなり滑稽なんですよね。
この本だけでも充分面白いのですが、もし出来たら映画、「鬼が来た!」(「鬼子来了」)をご覧になってから読まれたら、面白さが倍増します。とてもいい映画です。
(映画のネタばれがあるので、映画が先のほうがお勧めです)
なお、映画、「鬼が来た!」(「鬼子来了」)については、JUNeK-CINEMAのほうでレビューを書く予定です♪
後記;やっとこさ、レビュー、アップできました。
こちらです。