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ゆきてかえりしひび――in the JUNeK-yard――

読書、英語、etc. jesterの気ままなおしゃべりです。(映画は「JUNeK-CINEMA」に引っ越しました。)

さて、若竹七海さんの葉村晶(世界で最も不運な探偵)シリーズの四冊目を読んだわけですが・・・

2021-05-27 | 読書
コロナ禍を粛々と本を読むことで過ごしているjesterでございます。

若竹七海さんの『葉村晶シリーズ」もその中に入っておりまして、

一作目の『プレゼント』



プレゼント (中公文庫)

から始まって、

2作目『依頼人は死んだ』



依頼人は死んだ (文春文庫)

3作目『悪いうさぎ』



悪いうさぎ (文春文庫)

と惰性で読み進んで、正直もうこのシリーズはいいかな・・・という気分でした。

これらが短編集ということもあって、まあ最後に全体が繋がる構成の本もあるのですが、どの事件もいや〜〜な人間の悪意みたいなのが漂っていて、必ずしも読後感がいいとは言えないものが多かったのです。

では4作目の『さよならの手口』



さよならの手口 (文春文庫)

はどうなのか。

これが面白かったのです。

ヒロインの葉村晶さんはハードボイルド系の女探偵さんで、4作目では40代に入っています。

『世界で最も不運な探偵』というあだ名がつくほど、行く先々でトラブルが待っている探偵。

(去年、NHKで、シシド・カフカさんが主演してドラマ化もしております)

探偵もやめて、古本屋でアルバイトをしながら漫然と日々を過ごしていた彼女が、古本の回収に行ったボロ屋で、本を取り出していた物入れの床が抜けて、床下に隠してあった水分を含む白骨に顔からダイブして怪我をする・・・・というスタートから、話はスピード感を持って展開していきます。

入院した病室で、警察官が事件について話し、同室だった女性がそれを聞いて、元探偵と知って、探偵を依頼してくる・・・という辺はちょっと強引ですが、その後、葉村晶が皮肉を込めた呟きを漏らしながら、次々と体を張って謎に挑戦していくところは、昔読んだスー・グラフトンのキンジー・ミルホーンシリーズや、サラ・パレツキーのV.I.ウオーショースキーシリーズを彷彿とさせるタフ・ガイさ。

日本でもこんな女性探偵の女性事件を扱ったものを女性の著者が描く、『Witten by, about and for Womem 』って奴の傑作があったとは。

コロナ禍の梅雨に、女探偵のハードボイルド謎解きに浸ってみるのもいいかもしれません。

まだ葉村晶シリーズを読んだことがない方なら、『さよならの手口』から読み始めて、葉村ワールドに浸ってから、1作目に戻って読む、という読み方もおすすめします。


この後、『静かな炎天』



静かな炎天 (文春文庫)


『錆びた滑車』



錆びた滑車 葉村晶シリーズ (文春文庫)


『不穏な眠り』



不穏な眠り (文春文庫)

とシリーズが続いていきます。まだ読んでいないので楽しみ。



すっかり『女探偵』マイブームがわき起こり、懐かしのスー・グラフトンやら



サラ・パレツキーを



本棚から引っ張り出して、埃を払って、読んでみようかな、なんて思う、雨の1日でした。











最強の片づけ本かもしれない小説見つけた・・・『あなたの人生、片づけます』by柿谷美雨

2021-01-31 | 読書


お片付けは、今年も『New year Resolutions』(新年の決意、とでも言いましょうか・・・・)にトップランキングで入るテーマでございます。

世に言う『片づけ本』(お片づけのやり方をいろいろ書いてある本)も何冊も読んでいる私。



とか・・・・



とか・・・・


でも・・・なんかぴんと来ないんですよね。

読んでいると

「こんなに捨てろ捨てろっていって、なくて困ったら買えばいい、みたいな、刹那的な感じ」

なんて思ってしまって、読んだあと、片づけのモチベーションが下がって、不貞腐れてしまう・・・・

(素直ぢゃないからねえ〜〜)

そんな私にも、しみじみと「身の回りを片付ける」ということを考えさせてくれた本をこの間見つけました。



あなたの人生、片づけます (双葉文庫)

片付け屋、大庭十萬里はGパンとダウンを着た丸顔の普通のおばさん。彼女と「片付け」について話して、捨てていくうちに、片付けられないのはなぜか、その裏にある理由に、相談者は気づいていく。

片付けを単に物理的な問題であると考えず、その後ろにある心の問題まで解決していく話。

読みやすい文章で、でも心にグサグサ刺さる人間観察力。

特に3話目の「豪商の館」という話が考えさせられました。


78歳の三枝泳子は、夫に先立たれ、田舎の広い家に一人暮らし。娘と息子は離れてそれぞれ家族を持っている。
千坪の敷地に三百坪の豪邸。
収納はたくさんあり、物は多いが、きちんと片付けて暮らしている。

だが、本当は近所の家族に囲まれて暮らしている友達が羨ましい。

孤独死した老人や、施設に入った隣人の話を聞いても、寂しさと不安が募る。

離れて暮らしている娘の睦美は電話してきて
「お母さんが死んだあと、整理が大変なんだからね。要らないものは元気なうちにさっさと捨てておいてくれなきゃ困るわよ」ときつい口調で言う。

そして、『片付け屋の大庭十萬里を予約したから』と言われた。


大庭十萬里は訪ねてきて、片付いた部屋の収納の中を見ていく。

炊飯器が全部で三つある。新しく出たものを買ったけれど、以前のものも捨てられない。

本家だから人が集まる行事があったとき、たくさんご飯を炊くこともあるかもしれないし、壊れた時に貧乏になっていた場合買い替えられないとか、大災害が起きた時のために、まだ使える炊飯器をとってある。

電子レンジも同じ理由で3つある。

デパートで買ったお節のプラスティックの重箱やら子供が小さい時に使っていた水筒やら弁当箱、コンビニの弁当の容器・・・

食料庫の中には買い置きの食品やお茶、ラップなどがたくさんある。
食品の中には賞味期限が切れているものもたくさんある。

夫が亡くなりそうになった時、呉服屋に注文して作った座布団が50枚、結局使わないまま新品でとってある。
布団は急に孫が来た時のために8組とってあって、時々陽に干したりしている。

大庭十萬里に

「これは本当に必要ですか? これから使いますか? こんなに蓄える必要がありますか?」

と質問され、泳子が一生懸命言い訳する様子が、痛々しい。

それは、所々自分に当てはまるから・・・。


自分にとっては、本当に理由があってとってあるのだけれど、使う日はきっと来ないことも薄々わかっている。

大地震も、津波ももう来ないかもしれない。

使う日が来ない方がいいけど、でもやっぱり備えでとってある。


似合わなかったりもう着ないと思える洋服も、まだどこも傷んでいなくて、元は高いものだったりするからとってあるのだ。

でも、もう着ない洋服をとっておいても、誰も着てはくれないし、取っておいて良かったと思える日がくることはほとんどないだろう。

それより、それらをすっきりと手放して、今生きやすく、そしてあとを濁さないようにするのが大切と言う事もわかっている。

豊かでない時代を生き抜くための知恵は今では時代遅れ。
予備は1つでいい。
あとはスーパーで買えばいい。
なんなら予備はいらない。


それに気がついていく泳子。


泳子にすごく感情移入して読みました。


そして自分が大庭十萬里になったつもりで家の中を見てみる。

自分がこれからの人生をどう生きたいのかを考えてみる。

(答えは本当は自分が一番よくわかっているはずだ)



New year Resolution の一つを叶えられそうな予感に、ちょっと寂しさと不安を抱えて・・・

今年もよろしくお願いします!








眠られぬ夜のコンパニオン 壇蜜日記シリーズ

2019-02-11 | 読書

昔から寝付きの悪いわたくし。

本を読んでいて、いつのまにか寝ていた、というのが理想の『寝付き』なんですけれど、カフェインを摂取してしまったとか、すごくショックなことがあったとか、色々な理由で、夜明けごろまでベッドで三転四転してしまうことも。

そんなとき用に、いろんな本をKindleの『good night, sleep tight』(別名羊文庫)と名付けたファイルに入れてあります。

あんまり面白すぎて先が気になるミステリーの新作とかは、夜を徹してラストまで読みふけってしまうので、絶対だめ。

何回か繰り返して読んで、もう内容もセリフも覚えちゃってるような本。

山本周五郎、池波正太郎、吉川英治、藤沢周平、司馬遼太郎、と渋いメンバーから、沢木耕太郎、角田光代、梨木香歩、恩田陸、高橋克彦、重松清、あさのあつこ、佐藤優、瀬尾まいこ、村上春樹、五木寛之(百寺巡礼シリーズだけだけど)、伊坂幸太郎、北村薫・・・

海外の作家だと、Ken Follett、Connie Willis、Agatha Christie、Ellis Peters、George R R Martin、Stieglitz Larson、それにMary Poppins とかAnne of Green Gables とか Naria なんかの昔懐かしいシリーズものなど。

とにかく「眠くなるような本」を中心に取り揃えております。


ところが、すごく体が疲れていて、それなのに眠れないときには、知り尽くして暗記している内容でも、『物語』が重くてだめ、というときがあります。
『物語』はどうしても先を追ってしまって。

そんなときにいつのまにか開いている本が


壇蜜日記 (文春文庫)



なのでございます。

最初に買ったのは

泣くなら、ひとり 壇蜜日記3 (文春文庫 た 92-3)



でした。
色々なレビューで取り上げられていて、高評価だったので、読んでみようかなと思って買ったのです。

まあまあ面白かったので、次に、1番上の最初のを買い、そして

壇蜜日記2 (文春文庫)



と続けて読みました。


(以下、よく読む本としてレビューを書こうと意図しつつ、辛口レビューになってしまいました。壇蜜さんのファンの方がいらしたら、どうぞこれ以下はスルーしてくださいませ)


普通の女優さんの書いた本の中には、『自慢』臭がプンプンしていて、読んでいてやりきれなくなってくるものがありますが、壇蜜さんの書いたものはそれがないです。

その辺は賢い人なんだと思います。

劇的な展開などは全くなく、日常生活を淡々と語る感じ。
毎日綴られるのは、ツイッターほどの短文。

まったりと、飼っている熱帯魚と毛の生えていない猫(スフィンクスという種類。でもだんだん毛が生えてきた)との暮らしが語られます。

日記なので、『その日にあったこと、聞いたこと、見たこと、言われたこと、感じたこと、思ったこと』が淡々と書いてあります。
『考えたこと』はあまり書いてない。

映像で見かけるから、日記を読んでいても実像が浮かび、飽きずに読めるというのはあると思います。
これが全然知らない人の日記だったら、多分4冊も読めないでしょう。

100均で買い物をしたけれど、そのあとスーパーで買い物したら、100均で買ったものが入っているビニール袋を忘れてきた、とか。

猫の餌がなくなる前に届いてよかった、とか。

夕方まで寝てしまった、とか。

テレビで見たこと、自分の過去の話、親や祖母の話。

突然『男』が来ても、出すのは『トマトジュースでつくったカップヌードル』(これが美味しいなどと書いてある)と冷凍の惣菜。

もう年齢的に無理だろうと周囲から言われつつ続けているグラビアの仕事も、寒い中で全裸になる仕事でも、『それが好き』と言います。
需要の有無にかかわらず、ヌードのグラビアモデルは、やりたくない職業トップ10にはいると思えるわたくしは、へえ〜〜 そう言う女の人もいるんだ・・・と思いつつ読みます。

(多分報酬と労働量を換算した時に、報酬が羞恥心を凌駕するんだろうなあ・・・)


仕事の話の中には自虐的なネタがふんだんに盛り込まれていて、こんなことを書いていいのかなと思われる、芸能界のいじめや暗闇を感じさせるものもあります。

思わせぶりにぼかして書いてある過去の出来事なども、今バレたらきっとやばいんだろうなあと思わせます。

何をしても褒められるより貶されるほうが多いけど、お金のためと割り切って開き直っている感じ。


私がいうのもなんですが、文章はうまくありません。

時々褒めているブックレビューもありますけれど、それは、

『グラビアモデルが書いたにしては、文章になっている・・・』

というぐらいの目線なのではないかな。
職業作家の人と比べて上手なわけがないのであって、それは仕方ないことです。

でも、素直に書いてくれればいいのに、どちらかというと『名文をカッコよく書こうとしていて背伸びをしている中学生の作文』っぽいところが散見されます。
文章が回りくどくて、何回か読み直ししないと意味がわからない。
それから稚拙な造語みたいなものを使うのもやめたほうがいいと思う。

内的衝動はあるけれど、それを表現する語彙や的確な文章力が足りない。

多分この人はプライベートでそれほど本を読まないんじゃないかな。

本の番組なんかに出たりしているけど、日記の中にも、それほど日常的に文学を読んでいないのがうかがえる描写がでてきます。
漫画は楽しみにしていて、発売されると買った、とよく書いてありますが、本についてはあれを買ったとかあれを読んだとかの描写はあまりありません。


と書いていると、なんだか貶しているみたいですけど、我がKindleの『good night, sleep tight /羊文庫』の中ではヘヴィーデューティ。

常にトップの辺に置いてあります。

自分の知らなかった情報があったり、聞いたことのない愉快な言い回しが出てきて、覚えておこう、とメモしたくなったり、このレシピは試してみたいなと思うことなどは、一切ありません。

どの本も同じようなことが淡々と書いてあり、何回も繰り返して読んでも、内容を覚えるほどな内容がないというか・・・
知的な興奮を刺激されることはなくて、眠れない夜に「羊が1匹、羊が2匹・・・」と数えている感じの読書です。

古くからの知り合いの、どうでもいいようなおしゃべりの相手をしているような・・・

ああ、また貶してるみたいになってしまいますが、面白くもないし、文章も下手くそなのに、読んでいるとなにやら癒されて、落ち着いてきて眠くなるのです。

内容がないので、かえって毎日読んでも飽きないし。
この先読んでも特に面白いことは書いてないから寝ていいわよ、と言われる感じ。

これってすごいことではないかと思います。

わたくしにとっては、まさに、広い草原で区別のつかない同じ容貌の羊が柵を順番に飛び越えている風景と同じで、どの羊も例外なく、め〜〜〜と鳴いて柵を飛び越します。



噂は噂 壇蜜日記4 (文春文庫)




というわけで散々いう割に4冊目も買ってしまいました。

これでこの日記シリーズは終わりになるらしい。

ちょっとさみしい気持ちです。

といっても、何冊出ても、きっとおんなじようなことを書くんでしょうけど。それでもいい。続けて欲しい。


壇蜜さん本人については、グラビアを見ないわたくしは、壇蜜日記を読む前はあまり認識しておらず、時々バラエティで、CMに切り替わる前に、足元から舐めるようにカメラで撮られて、どうでもいいことを一言言ってる(言わされている)モデルだなあ〜と思っていました。

気持ち悪いおっさん(議員とか)に「お綺麗ですなあ〜〜〜」とか鼻の下を長くされていやらしい目つきでジロジロ見られても、お仕事と割り切っているんだろうなと。

でも、毎晩お世話になり始めてから(注、本を読んでいるだけ)なにか他人とは思えず、

テレビに出ていると注目してみてしまいます。


バラエティの添え物じゃなくて、ちゃんと意見を言える立場でテレビに出ていることもあるけど、そして必死にに考えて喋っているけど、なんか滑っているなあ・・・というときは、頑張れ!と応援したくなります。

NHKのBSでは、結構いいお仕事もしてます。

ドラマもちょい役で時々出ているし。

年齢的にグラビアモデルが難しくなってきているなら、賢い彼女は多分ほかの食い扶持稼ぎを見つけていくでしょう。

書くことも続けていたら、感じたことや思ったことだけじゃなく『考えたこと』も書けるようになるかもしれない。
そうしたら残念ながら我が『羊文庫』からは卒業になってしまうかもしれませんが。


眠れない夜にいろいろ本を読み漁り、そして最後に『壇蜜日記』なぜ行き着いてしまうのだろう、と考えて書き始めた文章ですけれど、読み返すと貶してるみたいになって申し訳ない。

でも、きっと今夜も眠れなかったら、読むんじゃないかな?




どなたか、ご自分の眠れぬ夜のための『羊文庫』をお持ちの方はぜひ教えてくださいませ。





















いつか行ってみたい花の庭 『武市の夢の庭』  北海道紋別郡 『陽殖園』

2017-02-07 | 読書
白樺の梢をふき渡る風、蜂の羽音。
むせ返るような緑と咲き乱れる花の香り。



いつか行ってみたいと思う花のお庭が北海道紋別郡にあります。

高橋武市さんが一人で作られた『陽殖園』です。



高橋さんのことを知ったのは、

武市の夢の庭 (BE‐PAL BOOKS)
武市の夢の庭 (BE‐PAL BOOKS)


『武市の夢の庭』を読んで。


昭和16年、貧しい農家に生まれた彼は、小さな頃から花が好きで、父親に農作地を少し分けてもらって花を植えていました。

そして、それを家計を支える野菜売りのかごに挿して背中に背負い、山を越えて町まで売りに出たとき、野菜より高く売れたのが中学2年の時。

小学4年生から水汲みや、ウサギを罠で捕まえて皮をはぎ売るなど、家計を支える仕事をしていた武市さん。

「花は野菜より金になる」と気がつきます。


貧しい農家でしたが、中三の時の修学旅行に武市さんを行かせてやりたいと、父が仔馬を売って得た3000円を武市さんに渡すと、

「この金で種や苗を買いたい」と武市さんはいい、親を説得します。

そしてこの3000円を元手に、『武市の夢の庭』は始まっていくのです。



たった一人で土を運び、山を作り、道を作り、池を掘って水を入れ・・・長年にわたる彼の努力で庭は少しずつ形になって行きます。



農薬などは一切使わず、

『植物がそこで自分で生きていける方法、それをいつも考えているんだ』という武市さん。



いろいろな困難を経てできた彼の庭は、ターシャ・チューダーの庭にも優るとも劣らない素晴らしい庭になりました。

この本、写真がとにかく素晴らしく、(上の写真は、本書から私が写したものですが、きれいに撮れてなくてすみません・・・・)

眺めているだけでまるで『武市の夢の庭』を訪れているかのような心地にさせられますが、


・・・でもいつか、ここに行ってみたいと、また一つjesterの「夢ノート」の項目が増えるのでした。



陽殖園 

住所 〒099-5601 紋別郡滝上町あけぼの町
電話 0158-29-2391
開園期間 4月29日~9月最終日曜日
開園時間 10時~17時(15時までに入園。)
入園料 800円









おめでとう、恩田陸さん、「蜜蜂と遠雷」直木賞受賞

2017-01-23 | 読書
やっと、やっと、恩田陸さんが直木賞をおとりになりました。

たしか6回ぐらいノミネートされていて、いつも受賞を逃していたので、一ファンとしては、
「やっとだ~~」という感が強いです。


蜜蜂と遠雷
蜜蜂と遠雷

とはいえ熱烈なファンというわけではありませんが、デビュー当時から新作がでるとほとんど読んでいました。

姫野かおるこさんの時も思ったのですが、受賞した作品が一番の傑作というより、今までの作品を通してその実力を認め、まあそろそろこいつに取らせてやってもいいかなという感じで受賞した気がします。

(これは宮下奈都さんが『本屋大賞』を取ったときにも感じたことですが・・・・)

私の、お気に入りの恩田作品は、

光の帝国―常野物語 (集英社文庫)
光の帝国―常野物語 (集英社文庫)


蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)
蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)


エンド・ゲーム―常野物語 (集英社文庫)
エンド・ゲーム―常野物語 (集英社文庫)

などの常野物語シリーズ。

(続きが気になりますが、『エンドゲーム』ではだいぶテイストが変わってきているので、どう持って行くのか、常野たちの先行きが気になるところ)


黒と茶の幻想 (上) (講談社文庫)
黒と茶の幻想 (上) (講談社文庫)

などなど。

他にもいろいろございます。

なにしろたくさん書いてらっしゃるので、なかには、これはちょっと、というのもありますが、全体のレベルが高いので、まあどれを読んでも損はない、という感じです。


今回受賞した『蜜蜂と遠雷』は、ピアノコンクールにエントリーしている若者たちの話です。

それなりに面白いのですが、欲を言うと、もうちょっと彼女なら書き様があったのでは、と思う部分もございました。

話自体は面白く、読みやすいですが、恩田さんだから、ハイレベルを要求してしまうというところがありますが、音楽を小説に描くということの難しさを感じます。




漫画を例にとって失礼なんですが、


のだめカンタービレ全25巻 完結セット (講談社コミックスキス)
のだめカンタービレ全25巻 完結セット (講談社コミックスキス)

『のだめカンタービレ』を楽しんだ人が


四月は君の嘘 コミック 全11巻完結セット コミック (講談社コミックス月刊マガジン)
四月は君の嘘 コミック 全11巻完結セット コミック (講談社コミックス月刊マガジン)

『四月は君の嘘』を読んで、白けてしまう・・・・ような。


(『四月は君の嘘』のファンの方、すみません・・・・。百戦錬磨(?)のjesterには

「『三月のライオン』みたいに、いけてない男の子が苦しみながらも芸術性に目覚め、活躍する青春群像を描きたいな~  
そうそう、親の影響でピアノが弾けない天才少年(メガネかけてる)がいて、
そこに天才ヴァイオリニスト少女が
奇蹟みたいに出てきて出会って、
心触れ合うけど、でもその子は不治の病で・・・なんてかっこいいじゃない? 
売れるんじゃないかな」

というような作者の思惑が透けて見えた気がしたので・・・・)

(いえいえ、アニメ化もした人気のこの作品にこんな感想を抱くのはjesterぐらいでしょうけど)


ちょっと例がわかりにくいですね。


とはいえ、恩田陸さんのこれからの著作には大いに期待しておりまして、受賞後のご活躍を心からお祈りしておりまする。



モノは最低限、幸せは無限大・・・・

2016-04-24 | 読書
寒くなったり暑くなったり、気温変化が激しい毎日ですが、そんな中、やっとこさ衣替えしました。

それにしても、一回も着ないまま衣替えを迎えた冬物の服の多いこと・・・・

どの片付け本でもいわれるのが「1年間着なかった洋服は捨てましょう」

しくしく・・・

それができたらどんなに嬉しいか。

この形、このサイズ、もう着ないよね・・・と思っても・・・、

穴も空いてないし、毛玉もついてないし、シミもついてないし、どっこも悪くなってないのに、捨てるのか・・・・ 

そういうものか・・・・ ホントに?? それでいいの??

・・・と暗くなってます。


そんな時衣替えの手を止めて、取り出してみるのに買った本。

モノは最低限、幸せは最大限 (ていねいに暮らす)モノは最低限、幸せは最大限 (ていねいに暮らす)


ま、こういう本はいっぱい持っているのですが・・・・

蔵書的には全然最低限じゃないですが・・・・

でも綺麗な写真を見ていると、よっしゃ、わたしももうちょっと身軽になってみるか!

「捨て神さま降臨」


ずっしりと抱え込んでるものを少しは手放そうか、という気になりまする。

「持っている洋服はここに釣り下がっているので全部」とかいうクローゼットの写真をまじまじと見て、

「そうだよね~~ 人間、20枚ぐらいの服で生きていけるよね・・・・」

と自分に納得させる。

(これでも捨てるのが嫌なら、もう買わないしかない!!!)


こういう役割の本は、こないだドラマにもなった

わたしのウチには、なんにもない。 「物を捨てたい病」を発症し、今現在に至りますわたしのウチには、なんにもない。 「物を捨てたい病」を発症し、今現在に至ります

あこがれの『捨て変態』、ゆるりまいさんの本の数々とか、

人生がときめく片づけの魔法人生がときめく片づけの魔法

皆様ご存知、『人生がときめいちゃう』ベストセラーとか、何冊持っております。

でも新鮮な刺激がほしくて、また新たな片づけ本を買ってしまう・・・。


しかし

「使いきる。」レシピ 有元葉子の”しまつ”な台所術 (講談社のお料理BOOK)「使いきる。」レシピ 有元葉子の”しまつ”な台所術 (講談社のお料理BOOK)

なんかを読むと、大根の皮も、葉っぱも、全部捨てないぞ! などと意気込んじゃうし・・・


最終的には、


毎日すること。ときどきすること。毎日すること。ときどきすること。

などを読んだりして、とりあえず、丁寧に生きていこう、と心に決めたりして・・・・

         


また山となった衣装に立ち向かい、終わりなく思える衣替えを続けるのでした・・・・



取り急ぎ、おめでとう! 宮下奈都さんの「羊と鋼の森」、本屋大賞受賞!!!

2016-04-13 | 読書
朝、飛び込んできたうれしいニュース!

宮下奈都さんの

羊と鋼の森
羊と鋼の森

本屋大賞受賞!

ここでも何回か書いてきましたが、わたくしは宮下さんのファンで、あちこちで勧め、貸し、ブログでも紹介を書いてきましたが、今回の「羊と鋼の森」も傑作だよ!と騒いでおりましたら、このニュース・・・・

う、うれしい!

しっとりとした森の香りに包まれ、美しいメロディが本から流れ出てくるような素晴らしい作品でした!

本の感想は後でゆっくり書くとして、とりあえず、おめでとう!!!を言いたいです♪


宮下さんの作品はほかにもたくさんの傑作があります。

どれも細やかに人間観察を重ね、読み終わった後、「よし、今日一日、丁寧に生きよう!」と思わせてくれる作品です。

まだお読みになってない方は、この機会にぜひ、読んでみてくださいませ!

スコーレNo.4 (光文社文庫)
スコーレNo.4 (光文社文庫)


太陽のパスタ、豆のスープ (集英社文庫)
太陽のパスタ、豆のスープ (集英社文庫)


窓の向こうのガーシュウィン (集英社文庫)
窓の向こうのガーシュウィン (集英社文庫)


誰かが足りない (双葉文庫)
誰かが足りない (双葉文庫)



もたない すてない ためこまない 身の丈生活 byアズマカナコ ロンドンで読んだ本その1

2015-12-09 | 読書
最近はキンドルちゃん(名前はWatson君)のおかげで、海外旅行に重たい本をどっさり持っていくことはなくなりましたが、それでもチェックインを済ませて離陸前に羽田空港で本屋を漁るのは旅行の楽しみの一つ。

今回本屋で「タイトル買い」したのは4冊。その中の一冊はこれ。

もたない、すてない、ためこまない。身の丈生活もたない、すてない、ためこまない。身の丈生活

大きな写真を貼りつけたのは、この表紙の魅力をお伝えするため。

帯にある、電気代500円って・・・?!

ついつい惹かれてしまいました。


それと「捨てない」というのがすごく心をひかれたキーワード。


今どきの日本で出ている片付け本って「捨てなさい!」というものが多いんですね。

「ワクワクしないものは捨てなさい」

「全部捨てて心まですっきり!」

などなど、読み終わると、jesterみたいにモノに愛着(執着とも呼ぶかも)を持つタイプの人間は、なんかうすら悲しくなるものが多くて・・・・

人生がときめく片づけの魔法人生がときめく片づけの魔法

ご存知のベストセラーのこの本とか

新・片づけ術「断捨離」新・片づけ術「断捨離」

とか

(前にも書きましたが、わたくし「断捨離」って言葉が好きになれません・・・)


わたしのウチには、なんにもない。 「物を捨てたい病」を発症し、今現在に至りますわたしのウチには、なんにもない。 「物を捨てたい病」を発症し、今現在に至ります

とか

(ゆるりまいさんは、自分を面白おかしく「捨て変態」とか読んでいて、捨てたがる自分を「異常」と認識して、それでもその生活に幸せを感じているところが好感が持てます)


洋服は季節が変わったら来年着そうにないものは捨てなさい、(そして新しいものを買いなさい、)って結局資本主義社会の売り手側の「古いものはどんどん捨てて、新しいものを買え!」というセオリーを、片づけに見せかけていっているだけ。

結局は「お金をどんどん使いましょう」って押し付けられてるって気がします。


湯水のように使えるお金もあるはずないのに、『身の丈にそぐわない使い捨て生活』。

捨てるって、今自分が所有している財産の価値を破棄することですものね。


とはいえ、物が捨てられない、モノがあふれている自分の生活もうんざり・・・・

バックパックひとつに必要なものを入れて流離うミニマリストにあこがれる・・・・


(・・・だから『片付け本』をついつい読んでしまいます)


結局・・・・

最終的には、簡単に「購買」することによって生じる「所有」に安易な幸せを求めず、知恵を使って自分らしい生活をクリエイトすること、その中で幸せを感じる時を過ごすこと、が一番なんじゃないだろうか?

もしミニマリスト的な生活をしたいのなら、新たな購入をやめて、今あるものを捨てずに活用して暮らしていくべきなのでは? 

なんて思うのでありますけれど・・・・

(でも~~~ 
今ある洋服を全部着たおしても、死ぬまでありそうなんですけど~~~

      



その点、最近のベストセラーである

フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣~フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質


なんかは、

「アメリカ人である著者がものであふれている自分の生活を見直して、不便だけれど生活を楽しんでいるフランス人のマダムに学ぶ、」

という、あまりに陳腐過ぎるテーマについて書いた本ですが、ただただ「捨てなさい!」と言っているんじゃなくて、便利さより「暮らしの質を高める」『知性』に関して書いているところが好感が持てます。

(といって、買って読むほどの本じゃないですけどね)←買った私がいうことじゃないが。



さて、このアズマカナコさんのご本ですが、なぜ電気代一か月500円で済むか。

それはこの方は『エアコン、炊飯器、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、掃除機、携帯・・・・』
などなどを持っていない!

今どき『エアコン、炊飯器、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、掃除機、携帯・・・・』なしで生活しているのです!


思わず大文字にしちゃいましたが、実はわたくし、これに近い生活を2週間ほどしたことがあります。

某国駐在から家族Bを連れて帰国した時、ちょうど初めての消費税導入の直後だったんです。

導入前の駆け込み需要で、皆様が白物家電などを爆買いなさったあとだったんですね~~


なので都内の大型家電販売店のどこにいっても、白物家電がない!
買っても納入は2週間後!

というなかで生活を始めたのであります。


4月ごろだったと思うのですが、冷蔵庫がないと、お肉やお魚はもちろん、『岩下の新ショウガ』なんて買ってきて封を開けると、その日のうちに白い膜が貼っちゃうし・・・

家族Bの部活で汚れたTシャツとか毎日手洗いでごしごしで手は荒れちゃうし・・・・

カーペットのホコリはほうきではなかなか取れないし・・・・、私的には結構大変でした。

毎朝の家族Bが学校に持っていくお弁当のおかずにも困るし。


2週間後に冷蔵庫が届いたときは、ドアを開け閉めするたびに「はあ~~」って手を叩いて拝んじゃったほど。


なので、この本をぱらぱらとめくって

『冷蔵庫がなくなって、自由にモノが食べられるようになった。買いだめしないから』という一節を読んで、衝撃。

そっか~~ そんな風に思う人もいるんだね~~~


しかし、考えてみますと、確かに、冷蔵庫があると便利だけれど、セールの時など冷蔵庫・冷凍庫に買いだめすると、それを早く食べなくちゃと思って、もう飽きても必死で(いやいや)食べたりすることも良くありますもの。

もたない生活って不便だけど、結構自由なのかなあ・・・?


でも洗濯物を家族の分もごしごし手洗いするのって実際やってみるとやっぱり大変でしたし・・・。


・・・などなど、いろいろ考えさせられました。


なんしろアズマ家では、雨水を溜めてトイレを流す水にしたり、お日様が当たると日向水を作って行水用にしたり、冬は炭のこたつに入り、夏は水をためたタライに足を付けて冷やしたり、現代人が忘れている知恵を使って生活をなさっているのですが、これって確かに昭和の生活では結構普通のことでしたよね。


電話は自分の家になくて、緊急の場合は近所の家にかけて呼び出してもらったり。

冷蔵庫も氷を入れて冷やすタイプがあったのを覚えています。(年ばれ)


電灯は家に3か所しかなくて、窓に食卓を寄せて明るいうちに夕食を食べたり、暗くなったら灯りの下に家族が集まって、静かに過ごす。

朝家族のお弁当を作るときに自分の分も作っておけば昼に火を使わなくて済む。


アズマさんは、洋服も枚数はシーズンで3セットしか持たず、それらのものを継いだり当て布したり染め直したりして、家族で交換しながら大事に長く着る、っていう生活だそうですが、それも好きだな~~ jesterは友達になれる、この人と。

だって。綿花を育ててそれを糸にして、布を織り、裁断して、縫う、っていう手間を考えたら、シーズンが終わったら捨てる、なんてできないです。

(まあ、みんながこういう生活をしたら、ファッション業界の人はおまんまの食い上げにつながっちゃうかもですが~~)


あと、テレビは夫が見たがるのであるけれど、普段はダンボールに入れておいて、見たいときだけ出す、っていう処は笑えました。

男ってほんとにテレビが好きだからね!!!(当社比)



良く考えると、この生活はjesterの好きな、マーク・ボイル氏の生活につながっていくのかも。

ぼくはお金を使わずに生きることにしたぼくはお金を使わずに生きることにした


そして地球上の人間がみんなマーク・ボイルさんやアズマカナコさんの暮らし方を少しでも取り入れて生活するようになれば、エネルギー問題とか、食糧問題なども解決していく部分もあるのかもしれません。



アズマカナコさんの本、ほかにもたくさん出ている模様。



捨てない贅沢捨てない贅沢


電気代500円。贅沢な毎日電気代500円。贅沢な毎日


昭和がお手本 衣食住昭和がお手本 衣食住


なんか、きっと内容は似たり寄ったりなんだろうな~と思いつつ、もうちょっと読みたくなってしまいました。



ジョコビッチの生まれかわる食事 あなたの人生を激変させる14日間プログラム

2015-06-08 | 読書
全仏オープン決勝、ジョコビッチ負けてしまいましたね~

私は別にジョコビッチのファンではないのですが、この本を読んでから気になってました。

ジョコビッチの生まれ変わる食事ジョコビッチの生まれ変わる食事

確かに少し前のジョコビッチって最初ガンガン攻めてたのが、突然失速するっていうパターンが多かったのに、最近はめちゃくちゃ強い・・・・

本屋で手に取ってパラパラ読んでみるとこの部分が目に飛び込んできました。

「今後、君の体の機能を上げたいのであれば、パンを食べるのはやめなさい」。セトヴィッチ博士が言い渡した。「チーズもだめだね。トマトも減らすことだ」。
「先生待ってくださいよ」。私は抵抗した。

「うちの両親はピザ屋なんですよ!」  (p72)

めちゃくちゃ笑いました・・・・

ピザ屋の息子に、チーズとトマトとパン(クラスト)を食べるなって・・・

ジョコビッチ、泣いたやろうな~

最近気になっていた「グルテン不耐症」「セリアック病」については、

「いつものパン」があなたを殺す: 脳を一生、老化させない食事 (単行本)「いつものパン」があなたを殺す: 脳を一生、老化させない食事 (単行本)

とか

小麦は食べるな!小麦は食べるな!

とかを読んで、大体のことはわかった気になってました。

まあ、私、主食はお米だし、主食パンの国の人とは違うよなあ・・・

それにしても、これ、パン屋さんとかピザのみならず、ラーメン、うどん、などなど、小麦粉業界は戦々恐々だろうなあ~などと思っておりました。


でも実際に良く知ってる(?)ジョコビッチが最強になったのが、グルテンを食事から排除したから、という過程を読んでみたくなりました。

厳格な食事管理について、とても詳しく書いてありますが、相手のマッチポイントの時に持ちこたえる精神的な強さをもたらす瞑想とか、トレーニングなどなど、結構いいこと書いてるんです、ジョコビッチ。

原書の

Serve To Win: The 14-Day Gluten-free Plan for Physical and Mental ExcellenceServe To Win: The 14-Day Gluten-free Plan for Physical and Mental Excellence

も、ロンドンでもベストテンにはいって、本屋さんで平置きになっていました。


ちなみに、jesterもちょっとマネしてグルテン抜いてみたら、体が軽くなった気がしてます。

グルテンとか小麦、っていうか、炭水化物全般を摂ると満足感があるけど、そのあとしばらくぐったりして眠くなっちゃうんですよね。

炭水化物を摂らないと、どんなにおなか一杯に野菜とタンパク質を食べても眠くなりません。動けます。


グルテン不耐症ではない普通の人でも、グルテン自体に中毒性があり、摂り続けると疲労感や頭痛の原因になるという学説があります。(上にあげた2冊の本に書いてあります。ご興味のある方は是非読んでみてくださいませ。)


でも小麦ってすごいいろんなものに入っているんですよね~~

クッキーやケーキなどのお菓子はもちろん、ラーメン、パスタ、うどん、そうめんなどなど、jesterが大好きな麺類はほとんど小麦。
 
それに蕎麦だって10割蕎麦以外は小麦が入ってるし、たこ焼きにお好み焼き、パンケーキ・・・・あ、お麩もグルテンじゃなかったっけ?


グルテン抜くって結構大変です。

それでも体が健康になるならちょっと試してみる価値があるかもです。


シャーロック・ホームズの愛弟子 byローリー・キング

2014-12-19 | 読書
日本、寒いですね~!
特にここ2~3日の寒さはすごい。

一説には『太陽神』松岡修三さんがバルセロナに行っちゃってるからだとか・・・

20日には松岡さん帰国なさるということなので、それに期待したいです。

『太陽神、カムバ~~ック!!』



・・・と、くだらないことを書いてないで、本題に入りますね。

ローリー・キングの『シャーロック・ホームズの愛弟子』でございます。

シャーロック・ホームズの愛弟子 (集英社文庫)シャーロック・ホームズの愛弟子 (集英社文庫)

今回、シャーロック・ホームズのパスティーシュを読みたいというテーマでもって本を選んだので、「そういえばあんな本があったなあ~」と本箱を穿り返して化石地層の中からやっと見つけたこの本。

1998年4月にでた第2刷ですから16年前の本。

でも読み始めたら、とっても面白かったです!

内容は全く忘れてたし!!

(1冊で二度美味しい・・・・・我ながらなんてお得。)


両親を亡くし、15歳の孤独にして賢い少女、メアリ・ラッセル。

サセックスの丘陵を散歩していて、ミツバチを観察している風変わりな初老の男性に会う。

それが引退して養蜂家になっていたシャーロック・ホームズなんですね♪

ちゃんとハドソン夫人と一緒に住んでおります。

原題は「The Beekeeper's Apprentice」。(養蜂家の弟子)



二人は年齢の壁を越え友情をはぐくみ、メアリの賢さに気付いたホームズは、二人して科学実験をしたり、メアリに探偵としての知識や技術を教え込む。

メアリは1917年にオクスフォード大学へと進み、演劇同好会などに入り、学生生活を楽しむけれど、長期の休みには、サセックスに戻ってホームズの元で過ごす。

最初は弟子(apprentice)だったメアリが次第に成長して、ホームズのパートナーとして難事件に挑むようになります。


ホームズ物のパスティーシュというと、依頼者がやってきて、難事件をホームズが解き、ワトソンが時にはボケ役、時には相棒としてその事件を文章にしていく、というパターンを引き継いでいるものが圧倒的に多く、このローリー・キングの作品のように、後日談というのは珍しい。

ローリー・キングの上手いところは、メアリ・ラッセルを主人公にしてその青春を生き生きと描きながら、ちゃんとホームズのパスティーシュから外れていないところだと思います。

この「シャーロック・ホームズの愛弟子」シリーズはこの後も続けて出版されています。


実はわたくし、このシリーズは最初の1冊を読んで、その後16年間放置状態でした。

同じローリー・キングの「捜査官ケイト」シリーズの3冊目ぐらいでちょっと飽きてきて、なんとなくこっちのシリーズもそのままになっていたのでした。

今回このブログを書くのに調べてみて「シャーロック・ホームズの愛弟子」シリーズがあと

和訳で6冊、原書では12冊も!

出ていることに狂喜乱舞。

これからじっくり楽しんでいこうと思っています。

(しかもこのあと、メアリは・・・・・ いや、書かないでおこう!!)

(シリーズ後半は日本のアマゾンでは読んだ人が少なく、評価も書いている人が一人ぐらいしかいなかったりして、星の数も少ないですが、アメリカアマゾンではどの本も星4つ以上の評価になってます♪)


女たちの闇―シャーロック・ホームズの愛弟子 (集英社文庫)女たちの闇―シャーロック・ホームズの愛弟子 (集英社文庫)


シャーロック・ホームズの愛弟子―マリアの手紙 (集英社文庫)シャーロック・ホームズの愛弟子―マリアの手紙 (集英社文庫)


バスカヴィルの謎―シャーロック・ホームズの愛弟子 (集英社文庫)バスカヴィルの謎―シャーロック・ホームズの愛弟子 (集英社文庫)


シャーロック・ホームズの愛弟子 エルサレムへの道 (集英社文庫)シャーロック・ホームズの愛弟子 エルサレムへの道 (集英社文庫)


公爵家の相続人―シャーロック・ホームズの愛弟子 (集英社文庫)公爵家の相続人―シャーロック・ホームズの愛弟子 (集英社文庫)


疑惑のマハーラージャ―シャーロック・ホームズの愛弟子 (集英社文庫)疑惑のマハーラージャ―シャーロック・ホームズの愛弟子 (集英社文庫)


それぞれの感想は、そのうち書こうと思っておりまする。






御手洗潔対シャーロックホームズ  柄刀一  ロンドンで読んだ本その2

2014-12-14 | 読書
ロンドンで読んだ本の2冊目。

御手洗潔対シャーロック・ホームズ (ミステリー・リーグ)御手洗潔対シャーロック・ホームズ (ミステリー・リーグ)

ええ、まず言っておかなくてはいけないのは、柄刀一さん、私は苦手なんです。

ストーリーとかなんとかよりも、まず文がダメ。

細かい表現のあいまいさにひっかかり、全体のリアリティが損なわれてしまう感じ。

今までに何冊か読んでみて、「もうこの人はいいかな」と思った作家さんです。
(ごめんなさい)

それでも読んでみようと思ったのは、御手洗潔という日本の探偵と、シャーロック・ホームズというイギリスの探偵が対決、というのが面白そうかも、と思ったからです。

しかし存在する時代が違うこの二人がどうやって対決するのか。

これがなんと、シャーロック・ホームズが現代の、それも二子玉川221番地Bのベイカーヴィレッジという処に住んでいるのであります。

この設定に乗れないシャーロキアンはこの本を断念するべきでしょう。



本は5つの短編から成っていて、最初の二つが御手洗潔のパスティーシュ、次の二つがホームズのパスティーシュ、二人がいっぺんに出てくるのは最後の「巨人幻想」のみです。

(パスティーシュって、先人の書いた作品に出てくる主人公を使って新たに書かれた作品のことで、パロディとの違いはコメディかどうか、というところかなあ・・・?)


この「巨人幻想」、御手洗潔は「夏目漱石がホームズと知り合った頃の先生であったクレイグ先生が書いたシェークスピア事典の原稿を探しに」イギリスを訪れているのです。

そう、くしくも、前回書いた島田荘司の「夏目漱石と倫敦ミイラ殺人事件」の後日談として書かれているのです。

なので、この順番で読むと理解が進みます。

まあ全体的にいろいろ文のがさつき(当社比)に引っかかりながらも、原作のファンであるため、時々はニヤリとしつつ最後まで読むと、最後に島田荘司の「石岡とワトソンの書簡」という短文が載っていて、まあこれを読むためにこの本を読んでもいいというぐらい、これが上手いです。

お互いほめちぎりながら、火花を散らすあたりが、短いながらも笑いを誘います。


パスティーシュとかパロディは、基本的に原作を熟知しているファンが内輪受けみたいに書くものなので、まずはホームズと御手洗の探偵ものを読み漁り、その後に読むものがなくなった時に、このような本を読むとよいのではないか、と思います。

ところがローリー・キングのパスティーシュは一味違います。

つづきます・・・・






漱石と倫敦ミイラ殺人事件  ロンドンで読んだ本 その1

2014-12-13 | 読書
東京に帰ってきたな~と実感するのは、地下鉄に乗った時。

「次は~ 都庁前~ 都庁前~ 車両とホームの間が広く開いているところがございます。お足もとご注意ください~!」

なんていうアナウンスを聞いてると、思わずくすくす。

だってロンドンでは

・・・「Mind the Gap」

・・・・この簡潔な一言だけでしたから。

必要にして十分な一言がちょっとなつかしいです。


さて、ロンドンでは結構忙しくて、映画もいつもなら4~5本は見るのに、今回は一本だけ。

(ホビットは見なくて、見たのはインターステラーだけです。よかったです。theory of relativityなんて単語には悩まされましたが・・・・)


でも本はまたどっさり持っていきました。

今回はシャーロック・ホームズのパステーシュものを何冊か選びました。

その中の一冊がこちら。

漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫)漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫)


大分前に書かれた作品なので、もう読まれた方も多いと思いますが、夏目漱石が留学中にシャーロックホームズに出合い・・・・という話が、夏目漱石の文体とワトソンの文体で交互に書かれる、という、それを聞いただけで読みたくなるような小説なんです。

パステーシュものというと、同人誌みたいなアマチュアっぽい文体でうんざりしちゃうものも多いのですが、そこはさすが御手洗潔を書いた島田荘司ですもの、読ませます!


漱石は明治33年10月28日からロンドンに2年間住んだのですが、到着した日から寒くて暗くて心細い。

『晩秋の北国のことであるから、すでに陽はとっぷりと暮れ、まるで街じゅうが夜会の最中でもあるかのごとくシルクハットの男たちが往きかい、車輪の音も高く二輪辻馬車が行く。』

(ああ~~わかる~~)

なかで、周りの人がみな背が高く、『自分の背が畸型のごとく低いということ』にコンプレックスを抱く漱石に、初めて会ったホームズはその辺をつつくジョークを言ってしまいます。

かなりプライドを傷つけられた漱石。

それからは漱石のホームズに対する敵意が文のなかに満ち溢れ、漱石風にひどくパロディ化されたホームズ像が展開し、ほんとに爆笑してしまいます。

この辺のコミカルな展開は、御手洗潔ファンで、石岡と御手洗コンビのやり取りが好きな人なら、きっと気に入るはず。


ある夫人が行方不明の弟を探し出したら、弟は「中国の呪い」に取りつかれていて、全身が一晩で乾燥してミイラになってしまった・・・・

という何とも奇怪な事件全体の謎解きも見事なんですが、同じ事件の経緯に対して、ホームズへの怒りでバイアスがかかってる漱石の書くことと、ワトソンの書くことの相違がおかしくて、思わず吹き出してしまいます。

漱石の作品やホームズ物へのオマージュにもあふれていて、両方の作者のファンもかなり面白がれると思います。


そして最後にホームズが漱石に贈るもの。

何とも言えなく洒落ていて、ちょっとほろりとしてしまいました。

作品の中で「猫」が大切な役割なのも、猫好きなわたくしとしては大満足。



さて、今回これを読んでいた時、下の記事でも書いた「ランガム・ホテル・ロンドン」に泊まっていたのですが、作中に

『ランガム・ホテルの便せんの切れ端に書かれた不思議な文字』

が謎解きの手がかりとして出てきたときはちょっとうれしかったです。

そんな昔からある、歴史あるホテルなんですね♪


それと作中に何回か出てくる、ベイカー街という処は、余程変人が集まる街とみえるP268という言葉。

作中に出てくる「シェイクスピア学者のクレイグ教授」やホームズたちの変人ぶりがおかしく・・・

今やベイカー街の住人となった家族Bの未来やいかに? と思いをはせるのもまた楽し、でございました。







千住博さんの本、いろいろ。 「美」を生きる、NYアトリエ日記など  奥日光で読んだ本、その4

2014-09-05 | 読書
ちょっと間が空きましたが、お山で読んだ本です。

新しく買った本は以前にご紹介しましたが、それ以外には『千住博祭り』でした。




千住博さんというと、ヴァイオリニストの千住真理子、作曲家の千住明の芸術家三兄弟の長男です。

最近ではいろいろなところにその作品があり、例えば羽田空港にもでっかい滝の絵があるので、ご覧になった方も多いと思われる最新鋭の日本画家です。



その前に佇むと、体の中のよどみが流されて浄化される心地がする、一連の「ウオーターフォール」シリーズが一番有名ですが、もちろんそれ以外の絵も描いています。





千住さんの本は以前から何回も読んでますが、今回はその中から4冊選んで、雨降りのホテルで拾い読みしておりました。


まず一冊目は

「美」を生きる「美」を生きる

家庭画報に掲載されていたものをまとめたものですが、とにかく写真が綺麗です。
(カラー写真が多いですが、願わくばオールカラーにして欲しかった!)

子どもの頃の話から始まって慶応を高校まで上がりつつ芸大を受験したころ、そして画家になり・・・という辺が丁寧に描かれていて面白いです。

また、巻末のお母様との対談で

自分は小さいころ、壁でも父親の机の裏でも、どんどん絵を描いていた。それで怒られることがなかった。
でも芸大に入ってその話をしたら「うちもそうだった」という友達ばかりだった。


というところがとても印象的でした。

それを家族Bに話したところ
「へ~~ いいな~~ 私だってそういう風に育ててくれれば今頃芸大に・・・」
などどいいだしたので、ちょっとむっと来ました。

あなたは絵を描くのは好きじゃなかったでしょ!←心の声



次は

NY(ニューヨーク)アトリエ日記NY(ニューヨーク)アトリエ日記

日記ものを読むのが好きなので、苦しみながら製作を進める姿が浮き彫りになるこの本は時々読んでは元気づけられています。

しかしNYのアトリエ、もと発電所だったところを改装したということですが、ほんとに広くて綺麗で、素敵です。

お昼を作ってくれる専属の日本人のコックさんがいるというのはちょっとびっくりしました。
これがBIGになるということか。


そして

千住博の美術の授業 絵を描く悦び (光文社新書)千住博の美術の授業 絵を描く悦び (光文社新書)

もし絵を描きたい、何かを作りたい、と思う方がいて、「クリエイションとは何か」を学びたいと思ったら、この本を読んでみるといいと思います。

まるで大学で千住教授に授業を受けているかのようです。

とはいえ、権威的な感じはなく、平易に学生に語りかけるような感じです。


最後は

美は時を超える 千住博の美術の授業 (光文社新書)美は時を超える 千住博の美術の授業 (光文社新書)

これは日本画についての千住教授の授業という感じ。

日本画について学びたい方にお勧めです♪




おなかに湯たんぽいれてます? 「村上海賊の娘」 by和田竜 山で読んだ本その3

2014-08-23 | 読書
先日のことですが、エレベーターの中で、隣のおば様とご一緒になりました。

jester「ほんとに毎日暑いですね~~」

おば様、私をじっと見ながら

 「おなかに湯たんぽ入れてる?」にっこり。



・・・・は???

思わず自分の腹に手を当てる

・・・そりゃあ湯たんぽ入れてるみたいにで出てるかもしれんがの。そんで汗ダラダラだしの。

Damn my tummy!!!・・・・とガラ悪く返したくなりましたよ、まじに。

(これは「私のおなかなんかほっとけや!」ぐらいに訳せばいいかなあ・・・

シャーロックでジョン・ワトソンがハドソンさんに足のことを言われて「Damn my leg!」といったののマネです・・・

つい出そうになったぜよ。すぐ真似したがるんだから・・・

ほんと、いかんがな、こんな品の悪い言葉ばっかり憶えちゃ・・・

しかもtummyは幼児語ですがな・・・)


しかし3秒ほど、目を白黒させて腹を抑え、隣人にスラングで怒鳴り返したものか、その場合その後のご近所関係をどう友好的に維持しようか迷う私に

おば様 「・・・っていうほど暑いわね~~」にっこり。



・・・・つまり、なんですか?「おなかに湯たんぽいれてるほど暑いわね」と、そうおっしゃりたかったと。


・・・それにしては途中のタメが長すぎませんでした????

エレベーター5階上がる分ぐらいタメてましたよ????

        


・・・なんとかその場をひきつった笑いでごまかして、家に帰り家族Bに話すと

「それ、被害妄想でしょ? そのぐらい暑いってことよ」

とわれましたが、それにしても「おなかに湯たんぽ入れてるほど暑い」なんて慣用句は生まれて初めて聞きましたよ。

おなかに湯たんぽ入れるの? お布団じゃなくて? 歩いてて重くないの?

そういう地方があるのか?

それとも思わずそういう慣用句が生まれてしまうほど暑いということなのだろうか・・・ 

言葉に敏感な乙女(当社比)なんだから、せめて「背中にカイロ入れてるほど暑い」といって欲しかった・・・・・・・・・


(その後我が家では「おなかに湯たんぽ入れてるほど暑い」という慣用句が公認され、頻繁に使われ始めました。)


・・・とまあ、八月も後半戦なのに、毎日体温を超える暑さが続いておりまする。

皆様、お元気でしょうか?



さて、お山で読んだ本のその3は、

村上海賊の娘 上巻村上海賊の娘 上巻

村上海賊の娘 下巻村上海賊の娘 下巻

です。

ま、これも、前の2冊も、色物と申しますか、本屋大賞だったからとか直木賞をとったからとかいう理由だけで旅のお供に選ばれた本で、自分でもそれほど期待してるわけではなかったのですが。


和田竜さんは「のぼうの城」しか読んだことありません。


『和睦が崩れ、信長に攻め立てられる大坂本願寺。

海路からの支援を乞われた毛利は村上海賊に頼ろうとした。

その娘、景は海賊働きに明け暮れ、地元では嫁の貰い手のない悍婦で醜女だった…。』

(アマゾンの紹介より)


というような話ですが、上巻70ページ目までは、大阪本願寺と織田方の政治的な説明がいろいろなされるわけで、良く知らない人がいっぱい出てきて良くわからんことをしゃべるんで、

「げ、これってずっとこの調子で上下巻行くのかな・・・」

と暗雲立ち込める心境でしたが、70ページを過ぎて「景」が出てきてぐっとテンポが速まります。


『身の丈6尺(180cm)髷も結っておらず肩までの髪を海風になびかせ』

『長身から伸びた脚と腕は過剰なほどに長く、これもまた長い首には小さな頭が乗っていた。その近世の不具合は、思わず目を留めてしまうほどである。』

『最も異様なのはその容貌であった。海風に逆巻く乱髪の下で見え隠れする貌は細く、鼻梁は鷹の嘴のごとく鋭く、そして高かった。その眼は眦が裂けたかと思うほど巨大で、眉は両の眼に迫り、眦とともに怒ったように吊り上っている。口は大きく、唇は分厚く、不敵に上がった口角は、鬼が微笑んだようであった』上巻 p70

とまあ、こんな容貌の、20歳すぎても嫁げない、飛び切りの醜女の景が大暴れしてくれるので、さくさくと読めます。


ところが。

この『飛び切りの醜女』は『この時代の』というワードが隠れているタイトルでありまして。

この時代は、色が白くて目が細くてぽっちゃりしてるのが美女だったのでした。

しかし田舎ではそうでも、堺・泉州あたりに行くと、外国と交流があるので、目鼻立ちがはっきりして手足がすらっとしている景は

「ごっつ、べっぴんさんやな~」

と男が群がってくる美女と思われてしまう、これも一種のパラダイムシフトでしょうか。


それを聞いて大阪本願寺なんかどうでもいいけど、おのれの婚活のため、いそいそと堺に船出していく景も景なのですが・・・・

思わず「これが映画になったら、誰が景の役をやるのだろう」と妄想してしまった。

(宝塚で男役をやっていた人が向いているかも。身長180センチある人いるかなあ。)


いままで瀬戸内の「村上水軍」の単語は知っていてもその実態はまったく知らなかったので、結構楽しく読めましたが、それにしても漫画のような展開で、海賊たちの海賊ぶりもとてもコミカルでした。

全編にちりばめられた海賊の会話がおかしい。

命を救われて、

『「余計な手出ししよってからに。いらんかったのによお、おどれなんぞ」

これでも礼を言っている。』上巻p414

なんてところがたくさんあって笑えます。


これもまた「男が書いた男のための男が主人公の物語」系の小説でした。

題名にもなってますが、ヒロインは「村上海賊の娘」である景ですが、主人公と言えるのはワサワサと出てくる海賊たちであります。

というか景も中身は男みたいなもんだし。


全体的に「ターミネイター」と「パイレーツ オブ カリビアン」とを混ぜて舞台を日本の時代物にした・・・・みたいなお話です。

つまり、面白おかしいけど、心には響いてこない、自分の心を投影して共感できる主人公は出てこず、考えさせられる場面もなく、ひたすらはらはらドキドキで終わってしまう軽いお話。


今回の『色物』本は、そんなのが多くて、ちょっとjester的にははずれかな。



それにしても・・・ターミネイター『七五三兵衛』は何回も振り仮名(しめのひょうえ)が振ってあるのに、心の中では「しちごさんべい」と読み続けておりました・・・。





男ともだち 千早茜  「ハセオ君、うらやましいぞ!」  奥日光で読んだ本その2

2014-08-21 | 読書
前回書いた黒川博行さんの「破門」が

「男性の書いた男性が主人公の男性のための小説」だとしたら、

こちらは

「女性が書いた女性が主人公の女性のための小説」といえる・・・・かもしれない。

今回の直木賞にノミネートされた 千早茜さんの「男ともだち」です。


男ともだち男ともだち

じゃあ楽しめて読めたのか?

というと・・・

朝主人公の女性が寝ていると、自分でご飯を作り、弁当を作り、「なんか食べたほうがいいよ」といいつつ会社に行く、理解のある男性と同棲中で、

その上妻子ある医者と不倫していて、

しかもずっと変わらずに守ってくれる男友だちがいる、新進のイラストレーターの話・・・・


正直言うと・・・なんかね、読み始めはイライラしました・・・

はいはい、そうですか、美人は得ですよね~~

みたいに。

なんで金払ってあんたの自慢話を聞かなあかんねん! と憤りながら読み進みました。

はい。



表題の「男ともだち」のハセオ君は、大学時代の友達。

学生時代からサッカーやってるもてもてのイケメンで、寄り添うと胸板が厚く、いい匂いがする。

主人公の神名は、ハセオ君とは恋人同士ではないのに、昔からハセオ君の部屋に泊まったりしていた。

そして、卒業後に再会し、またネットカフェで腕枕で一晩過ごしたりしたけど、それでも一線は超えない。


神名の不倫相手とバッタリ会うと、見事やっつけて、「来いよ!」とさらってくれたりする。

同棲相手と別れてさみしい大晦日には「来いよ!」といって、雪国の駅に迎えに来てくれて、自分の彼女はほったらかしで、その上自分は体調が悪くて熱があってもずっと一緒にいてくれる。


「来いよ!」  


そんな男、いるか??いるのか???


(いや、いるのなら、そんな男友だち、欲しいです~~・・・・

何も見返りを求めず、理解してくれて、いつも気にかけてくれて、ただひたすら守ってくれる・・・・・

いつも必要な時はそばにいてくれて、寄り添ってくれるけど、いっさい代償をもとめることはない・・・・

寂しい時は一緒に寝てくれて、腕を回して優しく抱き寄せてくれるけれど、それ以上はまったく求めない・・・

ピンチの時は突然現れて、かっさらって救ってくれる・・・

離れていくときは自分の後ろ姿が見えなくなるまでいつまでも見ていてくれる・・・



・・・・これはファザコンの女性の妄想ではないだろうか・・・・


まあ、妄想でもいい。それが小説だと言われればそうかもしれん。

こういうのが好きな人もいるかも。(ハーレクインとか売れてるらしいし)


それでもこの小説にのめりこめなかったのは、とにかく私は主人公の「神名」にまったく魅力を感じられなかったかもしれません。

イラストレイターというけれど、モノローグを読んでも絵を描く人とは思えない。

個展をやるお金を稼ぐためにキャバクラで働いていたというのも違和感ありです。

舞台をやる劇団員がオーディションを受けたくてとかいうならわかるけど。

(少なくとも私の周りの絵を描く女性の中には、キャバクラでお金を稼いでも個展をしたい、という人はいません・・・

『キャバクラで自分をすり減らしてまでお金を稼ぐ』、ということと、『絵を描く』ということは真逆の行動と思えるから。

生活費を稼ぐために、というのなら百歩譲って・・・もしかしてそういう人もいるかもしれないけれど・・・西原理恵子とか?←学生時代そういうところで働いていた、とどこかで読んだ。『上京物語』かな?)


なんか読んでも読んでも「わかるなー」という共感が全然涌いてこない。

ただひたすら自分勝手なわがままな人で、好き嫌いがはっきりしていて、ブランド好きで派手でやり手で・・・。

しかも「自分はあんたらと違ってすごく苦労して、恋愛でも苦しんで、いろいろあるんだからね」という上から目線でいる。

社会的には結構ラッキーに認められて、いろんな人を踏み台にして有名になり、バリバリやっていくタイプ。

知人でもこういう人、確かにおります。

(ああ、それで引っかかったのか、自分・・・・)


多分著者もこういう女性なんでしょうねえ・・・



まあ、「ハセオ君」の存在はなんとなく大島弓子さんの「F式蘭丸」なんぞを思い出してしまいました。

精神的に幼い女の妄想だといわれるかもしれないけれど、スーパーマンのクラーク・ケントのような「ガーディアン」の存在は、やっぱり憧れかもしれません。

一般的には父親(とか兄)がそういう存在なのかもしれないけれど、私の場合はそんな感じの父ではないし、兄もいないので、もし現実に「ハセオ君」みたいな人がいたら、ものすごく幸せだなあ~

いっつも頼ってしまうだろうなあ~~

毎日一緒にいたいかも????



・・・なんて妄想をたくましくしてしまう読後感でありました。