日本裁判官ネットワークブログ
日本裁判官ネットワークのブログです。
ホームページhttp://www.j-j-n.com/も御覧下さい。
 



1 先頃依頼者から運転免許の更新について相談を受けたが,よく分からず,いろいろと調査した。私も知らなかったことがいろいろと分かり,多くの人も知らないに違いないし,知れば役に立つと思われるので,纏めてみることにした。

2 長期間外国に出かけたり,災害や服役,日頃車の運転をしないために運転免許の更新を忘れたりなどで,運転免許の有効期限が経過し,免許の更新ができないことがある。多くの人はそのような場合に免許を失効させることが多いのではあるまいか。運転免許更新のために刑事裁判中の被告人の保釈を申請したとしても,裁判所が保釈を認めるとは思えない。

3 調べた結論はこうである。有効期限が切れた場合の手続きは細分化されており,やや面倒であるが,救済される場合が案外多いということになる。
(1)運転免許の有効期限が切れて6か月以内で,やむを得ない理由がある場合。
   海外旅行,災害,服役等一定のやむを得ない理由があり,それを証明する書類(パスポートや診断書,刑務所の「在所証明」など)を提出できる場合には,学科試験と技能試験が免除されて,適性試験(視力検査等)と講習を受けることで,免許証の再取得ができる。免許は継続していたとみなされる。

(2)有効期限が切れて6か月以内で,やむを得ない理由がない場合
  (1)の書類を提出できない場合もこれに該当する。この場合は免許の更新はできず,新たに免許試験を受けることになるが,学科試験と技能試験が免除され,適性試験(視力検査等)と講習を受けることで免許の再取得ができる。免許は継続せず,新規取得となる。

(3)有効期限が切れて6か月を超えているが3年以内で,やむを得ない理由がある場合
   やむを得ない理由がなくなった日から1か月以内であれば,学科試験と技能試験が免除され,適性試験(視力検査等)と講習を受けることで免許の再取得ができる。1か月以内に手続きができない場合には,学科試験と技能試験も免除されず,新規取得するほかない。

(4)有効期限が切れて3年を超えた場合。
   改めて新規取得する以外にはない。

4 おそらく以上のとおりである。この結果を依頼者に伝えたところ納得していた。以上の結果を知っておくと役に立つ場面は案外多いと思われる。私の依頼者の場合も救済されることになる。もしもこれを知らなければ失効することになったに違いない。警察や拘置所などで身体を拘束されている被疑者,被告人に面会(接見)すると,この様な質問を受けることが多い。これまではよく知らないと答えていた。今後は自信を持って回答できることになる。

5 結論としては最大限3年以内であれば,実技と学科試験を免除されて更新できるという道はあるが,それを超えると実技も学科も含めて試験を受け直して,新規取得する以外には方法はないように思われる。服役などを終えた後で,実技と学科の試験を受け直して免許を新規取得するのは,費用の点からも再び勉強する労力の点からもなかなか困難といえるだろう。

6 運転免許を有することは服役を終えて社会に復帰した場合などの就職に役立つ重要な手段となるものであるし,更生の意欲にも強く影響することになると思われる。運転免許の有効期間を経過して3年以内に更新手続きができない人について,施設内で身体検査と講習を受ける機会を作って,運転免許が失効しないような措置を講ずる意義は大きいと思われるが,そのような制度を実現するためには,法改正や予算措置が必要であろうから,容易なことではないだろう。(ムサシ)


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )