日本裁判官ネットワークブログ

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「交通事故と運転免許の更新の話など」(その1)

2009年02月06日 | ムサシ
1 この数年の間に交通事故や運転免許の更新などをめぐって,役に立ちそうな知識やノウハウが少し蓄積できたように思う。これらを整理してこのブログに載せると,参考になったとか,助かったという人が出てくるかも知れない。弁護士などの法律実務家からほんのちょっとしたアドバイスを受けることで助かることも多いに違いない。法律の実務家は,職務上様々な日常生活に役に立つ知識やノウハウを蓄積できるのであるから,それらをもっと社会的に有益に活用する必要があると思う。私はこれまでそのような知識やノウハウをできるだけ親族や友人などに伝える努力をしてきたが,十分とは言えない。俗に友人に医師と弁護士と僧侶がいると何かと役に立つと言われるが,身近に法律の実務家がいることのメリットを実感してもらえるように,一層努力したいと思うのである。

2 ある時知人が運転中に,夜横断歩道でない所を横断中の歩行者を撥ねるという人身事故を起こし,被害者が骨折して入院したため,刑事処分や損害賠償,免許取消処分などがどうなるか,心配な事態となった。私はその知人から相談を受けたが,聞いてみると被害者の過失が大きい。私は以前ある弁護士から聞いていた話を参考にして,すぐに詳細な交通事故の状況報告書を作成して,公証役場に持参し,確定日付を得ておくようにと知人にアドバイスした。事故直後に作成した文書であることの証明付きであるから,記憶も正確であるし,信用性も高く,必ず役に立つと伝えた。

3 知人は早速翌日,事故とほぼ同時刻に,カメラと巻尺を携えて事故現場に出かけ,現場の写真を沢山撮影し,片側何車線かとか,車の交通量,横断歩道の有無と位置,信号までの距離などを確認し,巻尺による距離の測定などもして,メモを取ったそうである。

4 そして知人はパソコンで詳細な事故状況報告書を作成した。客観的な事実ではあるが,自分に有利な事情を詳細に記載したということであった。
 事故の態様を詳細に記載したほか,運転当時食事をしておらず,勿論飲酒もしていなかったこと,長年の運転免許歴があるが,人身事故は初めてであること,被害弁償については上限無制限の任意保険に加入していることなども記載したそうである。

5 以上のような詳細な事故報告書を作成し,確定日付を取り,取調べの呼び出しを受けた際,予め検察庁にそのコピーを提出しておいたとのことであった。そしてこの報告書のお陰と思われる経過で不起訴処分となり,損害賠償問題も無事解決し,免許についても講習を受けただけで,免許の取り消し等の処分を受けることはなかったそうである。

6 かくして知人の人身事故騒動は無事解決したが,いずれにしても事故直後に作成した事故状況報告書が絶大な威力を発揮したことは間違いないということで感謝された。事故の状況としては,自分に不利な場合もあるだろうが,事故状況報告書を作成しておくと,客観的な事実を超えて不利益な結果となることを防ぐ作用をしてくれることになる。

7 私はこの話を家族や多くの友人などにも話した。万一の場合には直ちに正確な事故状況報告書を作成し,確定日付を得ておくようにと,今も機会あるごとに勧めている。なお物損事故の場合には,特別な場合を除き事故報告書の作成は必要ないかも知れない。(ムサシ)