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いろいろありそうですね,取調録画DVD

2007年09月25日 | Weblog
 取調過程の可視化の取組みとして話題を呼んでいる取調べの録画DVDですが,予想どおり反発もあるようです。個別事件を通じて,論争が続くでしょうね。DVDの信用性を判断するために,従来の手法が使われることもあるのでは,と思います。今後,統一的なルールらしきものはできるのでしょうか。以下,産経新聞からです。

裁判員制度、取り調べ録画DVD 弁護側反発「都合よく撮影」

 ■検察側自賛「具体的に立証」

 平成21年5月までに始まる裁判員制度をにらんで、被告の供述調書の信用性を高めるために検察が試行した「取り調べの可視化」が、早くも争点化している。東京地裁では被告が取り調べで自白した状況を録画したDVDが証拠採用され結審したが、弁護側は「都合のいいところだけ撮った」などと猛反発している。密室で行われる取り調べの様子を映像で証拠化するのは日本の司法制度における大きな前進だが、実際に行ってみるとまだ課題も多いようだ。(大泉晋之助)

 東京地裁でDVDを証拠採用した公判で結審第1号になったのは、フィリピンで保険金目的で元同僚を殺害したとして、殺人などの罪に問われた山本俊孝被告(56)。

 検察官「自白して後悔はないか」

 山本被告「全然ありません。かえって心がさっぱりした」

 公判廷のスクリプターでは、取調室で山本被告が検事の前で自白している様子で上映された。

 山本被告は公判では犯行を全面否認しているが、検察側は19日の論告で「DVDの中の被告人の供述態度と、公判廷での態度を比べれば、どちらが真実を語っているのかは一目瞭然(りょうぜん)」と述べ、映像の力を強調した。

                  ◆◇◆

 刑事裁判では、捜査段階で自白し、供述調書にサインした被告が、公判では一転「自白は強要されたものだ」と主張し、調書の任意性が争われることも多い。これまでは法廷で取調官を証人尋問するなどして取り調べてきたが、これでは裁判の長期化にもつながる。こうした問題を解決する手段として期待されているのが、取り調べ状況を録画したDVDだ。

 取り調べ状況の録画は昨年7月から、東京地検のほか、大阪や名古屋などの各地検で試行が始まっている。証拠として提出されたのは、東京地裁で3件ある。

 DVDの映像なら、取り調べの様子を客観的に証明できる。検察側は、刑事裁判になじみの薄い裁判員に、“映像の力”で適正な取り調べだったことを分かりやすく伝えることを目指している。


 検察幹部は「どういった経過で自白に至ったかを具体的に見せられることは、調書に出てこない点を明らかにできる場合がある」とDVDの利点を話す。

                  ◆◇◆

 その一方で、DVDの証拠提出には疑問の声もある。日本弁護士連合会は「警察段階から取り調べのすべてを録音・録画しなければ意味がない」と、検察官の取り調べの一部だけしか録画していない現在のやり方を批判している。

 また、逆に「取り調べの様子をすべて録画すると、容疑者が意識して真実がわかりにくくなるのを懸念する」(鳩山邦夫法相)との意見もある。

 山本被告の弁護人はDVDについて、「最初に自白した日から1カ月以上たってから録画された。DVDで山本被告が話していることは、録画以前に完成した自白の総ざらい的なことで、検察官の念押しに相づちを打っているに過ぎない」と、証拠能力を否定している。

 裁判員が法廷でDVDを見たら、どう感じるのか-。

 あるベテラン裁判官は「自白を録画した映像はかなりの説得力を持っている」と指摘。その上で、「いくら『映像だけを有罪・無罪の判断基準にしないでください』と裁判官が説明しても、裁判員が冷静な判断をできるのか」と、現在のまま裁判員制度に組み入れることを疑問視する。

 元最高検検事の土本武司・白鴎大法科大学院長(刑事訴訟法)は、現在の試行状況について「録画していない場面で不当な取り調べがあったのではと疑われるのも仕方がない」と指摘する。「徹底するのであれば、警察の取り調べから録画・録音すべきだが、捜査にどんな影響が出るか分からない。日本の司法に合うのか、しばらくは試行錯誤が続くだろう」と話している。



受刑者の治療

2007年09月25日 | Weblog
受刑者の治療が心配されますね。医師不足が叫ばれていますが,問題ははここにも波及しているのでしょうか。産経新聞からです。

刑務所の常勤医不足が深刻

 全国の刑務所に勤務する常勤医が減少を続けている。国家公務員扱いから兼業禁止などの規定で、元々のなり手が少ないうえ、厚生労働省が義務付けた研修制度の影響で、大学病院が刑務所に医師を派遣する余裕がなくなったことなどがその理由だ。地方では常勤医ゼロの刑務所が珍しくなくなってきている。
 秋田刑務所は勤務していた医師が転職したことで、7月1日から常勤医がゼロとなり、現在は非常勤の医師と、別の刑務所からの派遣医に頼っている。
 医師確保は各刑務所に委ねられており、秋田刑務所の関係者も7月以降、大学病院を繰り返し訪問して交渉したが、いまだ常勤医は決まっていない。同刑務所の藤本英雄総務部長は「常勤医を採用する以前に外部の医者に非常勤で来てもらうことも難しい」と嘆く。
 秋田刑務所と同様、地方の刑務所での医師不足は目立っている。
 全国の刑務所、拘置所は75カ所で、常勤医が1人もいないのは、帯広(北海道)、月形(同)、長野(長野)、富山(富山)など全国で10カ所に上る。すべての施設の常勤医の定員数は226人だが、平成19年4月の時点で198人と深刻さがより浮き彫りになっている。
 法務省矯正医療管理官室は「診察の対象が受刑者では、進んで働こうという心理にはなりにくい。兼業ができないことも大きい」と常勤医確保の難しさを説明する。
 さらに、地方の刑務所の医師不足に拍車をかけたとされるのが、平成16年度から厚労省が医学部生に必修を義務付けた「新臨床研修制度」だ。
 制度導入後、充実した研修内容を求めた学生が、大学病院を避けて一般病院で研修を受ける傾向が強まっている。これによって大学側が自前の医師確保に汲々とし、「余裕のなさからか、地方の大学病院では刑務所などに医者を融通できなくなっているようだ」(文科省関係者)という。