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先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

フクロウ巣箱にオオコノハズク産卵 ネズミ食害防止へ平取町など設置

2022-05-28 | アイヌ民族関連
北海道新聞05/27 08:44 更新

5月23日の調査で確認されたオオコノハズクの親鳥とひな(平取町アイヌ文化振興公社提供)
 【平取】町、平取アイヌ協会、道森林管理局の3者が進めるアイヌ伝統の森づくりを考える事業「21世紀・アイヌ文化伝承の森プロジェクト」の一環で、樹木に食害を及ぼすネズミを餌とするフクロウ用の巣箱を町内の民有林に設置したところ、フクロウの仲間のオオコノハズクが産卵し、ふ化しているのが確認された。専門家によると、巣箱を設置してネズミの食害を減らす取り組みは道内でも珍しいという。
 同事業はアイヌ語でコタンコロカムイ(集落の守り神)と呼ばれるシマフクロウが持続的に生息できる森づくりを目指し、2012年に始まった。19年から国のアイヌ政策推進交付金を活用し、現在は町の第三セクター「平取町アイヌ文化振興公社」が町から受託して実施している。
 今回は、森林保護の国際認証「FSC」を09年に取得し、殺鼠(さっそ)剤を使わずにネズミの食害を防ぐ取り組みに力を入れている三井物産と協力。カラマツの樹皮を食べるエゾヤチネズミを減らすため昨年12月、同社の社有林にオオコノハズクとエゾフクロウ用の巣箱計20個を設置した。
 今年4月に同公社の職員と、三井物産の子会社三井物産フォレストの平取山林事務所(本町)の所員らが調査を実施。小型カメラを使って巣箱の中を調べると、1カ所にオオコノハズクの親鳥1羽と卵6個を確認した。今月23日の2回目の調査では、この巣箱で親鳥のほか、1羽のひながふ化しているのが分かった。
 別の巣箱でも親鳥1羽と卵5個が見つかった。同公社の鹿戸幸助さん(29)は「目に見える成果が出てうれしい。ゆくゆくは町民がフクロウの存在を感じられるようになれば」と話す。
 4月の調査に同行し、オオコノハズクを約20年研究する根室市の外山雅大さん(44)によると、営巣期は4~6月。1カ所の巣で3~6羽のひなが生まれ、巣立ちまで約2カ月の間に、ひなだけで計200~300匹のネズミを食べる。
 オオコノハズクは親鳥でも体長23、24センチと小さく、鳴き声も聞こえないため、個体数や生態の研究は進んでおらず、外山さんはこの事業を通じて研究を進めたい考え。
 外山さんは「巣箱設置後すぐに利用されたので、設置環境が良かったのかもしれない。ネズミを減らす目的で巣箱を設置するのは道内で多くはないが、環境に負荷がかからない良い取り組み」と話している。(杉崎萌)
(注)文中の「コタンコロカムイ」の「ロ」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/686058

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《“原初の森”殺戮のリアル》ヤノマミ族を脅かす国家ぐるみの違法金採掘、森での殺戮、女性への性暴力…「私たちは森で平和に暮らしたいだけ」

2022-05-28 | 先住民族関連
文春オンライン05/27
 3月31日、南米アマゾンでベネズエラ軍と先住民族が、Wi-Fiをめぐって争い、先住民族4人が死亡したニュースが報じられた。
 この先住民族とは、アマゾンの密林で狩猟と採集をして暮らすヤノマミ族のことだ。2009年に放送されたNHKスペシャル「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる」のディレクターで、150日間彼らと同居した国分拓氏は《Wi-Fiを巡って4人が死亡、違法金鉱夫が少女を強姦致死》ヤノマミ族から「文明」が奪い続けているものと「Wi-Fiが必需品になったワケ」で、外界からの影響で文明化していくヤノマミ族について、こう語っている。
「私は、ただただ、複雑な気持ちになる」
ヤノマミ族を蹂躙する「文明」の正体とは何者なのだろうか――。

ヤノマミ族 ©getty
ヤノマミ族長老が絞り出すように言った「嫌いなもの」
 2008年にヤノマミ族の集落に同居したとき、長老のひとりに「嫌いなもの」を挙げてみてくれと頼んだことがある。悪い精霊の名前、彼らが忌避するもの(例えば「煙」)などがヤノマミの言葉で語られるのだろうと思った。
 だが、長老は予想に反する言葉を口にした。
「セリンゲイロ(ゴム採集人)、ファゼンデイロ(農園主)、マデレイロ(木材伐採人)、ペスカドール(漁民)、ガリンペイロ(鉱物採掘人)……」
 ヤノマミの言葉ではなかった。すべてポルトガル語。しかも、ヤノマミからすれば、森や川を越えてやってくる侵入者を言い表す言葉だった。
 中でも、ガリンペイロと口にしたときの表情が忘れられない。長老は、口を歪め、絞り出すような声音で、「ガリンペイロ」、と言った。
 先住民保護団体によれば、90年代にヤノマミ族保護区に侵入したガリンペイロは推定で2~5万人。保護区に暮らすヤノマミ族の総数とほぼ同じか、それ以上である。
 その時代、ベネズエラ側では殺傷事件も起きている。1993年にはハシムーという集落で16人が殺されたのだ。私も、侵入の痕跡を見たことがある。1999年にブラジル側の保護区を飛び北部のスルクク集落と中部のホモシ集落を訪ねた際、森を削って作った違法の滑走路を眼下にいくつも見た。
 ブラジルの法律では先住民保護区に無許可で入ることはできない。当然、無断侵入も犯罪なら保護区での採掘も違法である。連邦警察が動いた。空からガリンペイロを探し出し、森から追い出そうとした。だが、見つかった金鉱山は数か所にとどまり、多くは警察のヘリの音を聞いて逃げたあとだった。警察が公開した映像には、唯一の成果と言えるガリンペイロの連行シーンが映っている。捕まったのはたったの3人。私の知る限り、大がかりな掃討作戦はその一度だけである。
急増する「侵入者」と性暴力、その裏に見える「国家」
 20年が過ぎた。今再び、ヤノマミ族の保護区で「侵入者」が急増、凄惨な事件が頻発している。詳細は不明だが、ベネズエラではWi-Fiのパスワード変更に端を発した国軍による殺人事件が起き(3月20日)、背後にガリンペイロの存在が噂されている。ブラジル側でもガリンペイロから武器を渡された別の先住民がヤノマミ族の集落を襲った(4月11日)。
 ヤノマミ族の渉外団体であるHUTUKARA(ヤノマミの言葉で「天」を意味する)はすぐに声明を出し、ガリンペイロと何もしようとしない政府を激しく非難した。
 声明には保護区内での独自の調査結果も公表されている。それによれば、違法採掘は昨年より46%増加し、女性(少女も含む)に対する性暴力も起きているという。事実だとすれば、すぐに止めねばならない。少なくとも、信頼できる機関が早急に調査すべき事案である。
 だが、国家の腰は重い。取り締まりが強化されたという話は伝わってこない。そればかりか、私には、国家の側が侵入者に加担しているようにしか見えない。ブラジルでは、現職の大統領が――明らかに憲法違反にもかかわらず――先住民の土地を開発することの必要性を堂々と口にし続けているし、一部の報道では大統領と内外の多国籍企業との間で「開発」に関する話し合いも進んでいるという。
長老が知らない「ガリンペイロ」以外の存在
 無力感に苛まれる中、前述の長老の言葉を思った。確かに彼は、ガリンペイロを嫌っていた。しかし、長老は「ガリンペイロ」しか知らない。例えば、「ガリンペイロを運ぶ者」がいることを知らない。
 1999年に、保護区にガリンペイロを運んでいたパイロットを取材したことがある。どこに運んだのか、そこには何人ぐらいのガリンペイロがいたのか、集落との関係はどうだったのか。違法行為であるはずなのに、私の問いに対して男は臆することなく答えた。男は羽振りが良さそうだった。「運搬」で儲けたカネでロライマ州の州都ボア・ビスタにナイトクラブとラブホテルを所有しているのだという。
 別れ際、「店に来れば安くしとくぞ」と軽口を叩いたあと、半ば冗談半ば本気でこう言った。
「警察署長も州知事も、みな友人だ」
 長老が知らないのは運ぶ者だけではない。パイロットが口にした警察署長も州知事も知らない。保護区での資源開発を画策する大統領も知らない。黄金に投資して儲けている人も知らないし、黄金で身を飾る人たちのことも知らない。長老はいつも通りに狩りに行き、そこで生き続け、侵入者だけを憎んでいた。
金の価格急騰で増える「森での殺戮」
 長老の認識をはるかに超えて、奪う側はより強大で巧妙になっている。分業化と効率化が進み、奪われた資源は世界中に運ばれ、加工され、瞬く間に商品となっている。今や、私たちはクリックひとつで容易く貴金属を買うことができる。
 だが、その資源はどのようにとられたのか、私たちは深く考えようとしない。ヤノマミとガリンペイロの血腥い抗争と24金のリングは中々結びつかない。たとえそれが森での殺戮の末にもたらされたものであったとしても、自分で手を下したわけではないから心も痛まない。
 現在、黄金の価格は急騰を続けている(この数年でグラム4000円が8000円になった)。おそらく、保護区に侵入するガリンペイロは、増えることはあっても減ることはないだろう。それだけではない。ガリンペイロが増えれば、ガリンペイロを運ぶ者や、黄金に投資する者や、黄金を貯め込む者や、黄金で身を飾る者も増えるだろう。そして、森の奥では先住民の土地が奪われ、汚され、病をうつされ、犯され、殺され続けるだろう。
 そう考えたとき、長老が口にしたガリンペイロという言葉は、果たして「ガリンペイロ」だけを意味するのだろうか、と思った。
「私たちは森で平和に暮らしたいだけ」
 彼らは末端の実行者に過ぎないのではないか。ヤノマミの長老が口にする「ガリンペイロ」とは、森で生きるヤノマミ以外の人間、すなわち「私たちの側の全員」、なのではないか。
 2008年の同居後、何人かの若者が集落を出た。HUTUKARAに常駐する者もいれば看護助手になった者もいた。彼らはFacebookのアカウントを持っていた。3年後にレスポンスが来るようなやり取りではあったが、頻発する事件をどう思っているのか、メッセンジャーで質問を送った。7人中2人から返信が来た。2人ともほぼ同じ言葉を綴っていた。
「私たちは森で平和に暮らしたいだけなのだ。勝手に入ってこないでほしい。これ以上、土地を奪わないでほしい」
 その通りだ、と返信しようとして手が止まった。彼らからすれば、私もまた、加害側の一部なのだ。どんな返事をしても嘘くさくて、今も書けないでいる。
https://bunshun.jp/articles/-/54457

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Wi-Fiを巡って4人が死亡、違法金鉱夫が少女を強姦致死》ヤノマミ族から「文明」が奪い続けているものと「Wi-Fiが必需品になったワケ」

2022-05-28 | 先住民族関連
文春オンライン2022年05月27日 12時00分

《Wi-Fiを巡って4人が死亡、違法金鉱夫が少女を強姦致死》ヤノマミ族から「文明」が奪い続けているものと「Wi-Fiが必需品になったワケ」の画像
 3月31日、アメリカのワシントンポスト紙がこんな事件を報じた。3月20日、南米アマゾンでベネズエラ軍と先住民族が、Wi-Fiをめぐって争い、先住民族4人が死亡した、という内容だった。
 4月26日にも、ブラジル最北部、つまりベネズエラとの国境近くで、不法侵入の金鉱夫「ガリンペイロ」に暴行・強姦された先住民族の12歳の少女が死亡したとも報じられた。
 この先住民族とは、アマゾンの密林で狩猟と採集をして暮らすヤノマミ族のことだ。1万年以上にわたって独自の文化や風習を守り、彼らの日常には森や精霊がいまだ息づいている。2009年に放送されたNHKスペシャル「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる」でその存在を知ったという人も多いのではないだろうか。
 そんなヤノマミ族がなぜWi-Fiをめぐって軍と激しく争うに至ったのか。そしていま、彼らに一体何が起きているのか――。
 150日間彼らと同居し、その神秘の生活に迫った「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる」のディレクター国分拓氏が、その実態を解説する。
◆◆◆
■一度変わってしまえば、二度と“以前”に戻ることはない
 ヤノマミ族がWi-Fiを使っていた。人間の命が奪われたことより、こちらの方に驚いた人が多いのではないか。少なくとも、ソーシャルメディアの受け止め方はそうだった。
 私はと言えば、驚くことはなかったが、複雑な気持ちになった。
 原初の世界が文化的に変容するのは、きまって私たちの側からの圧による。善意、悪意は関係ない。ヤノマミ側が望んだかどうかも関係ない。私たちの側と恒常的な接触があり、文明側のモノの使い方を教える文明側の人間がいて、ヤノマミの側がその利用価値を認めれば、それまでなかったものがあっという間に広まる。Wi-Fiもそのひとつなのだろう。
 しかし、一度変わってしまえば、二度と“以前”に戻ることはない。その是非について、様々な意見がある。仕方のないことなのだ、という人もいる。彼らだって喜んでいる、と力説する人もいる。進化とはそういうものだ、と語る人もいる。私は、ただただ、複雑な気持ちになる。
■「文明」側との接触頻度による大きな違い
 ソーシャルメディアやウィキペディアには様々な誤解と誤謬があるので、私がこれまで実際に見聞きした範囲で、まずはヤノマミ族の実相から述べたい。
 当たり前のことだが、一口にヤノマミ族と言っても様々な集団が存在する。言葉も違えば家の形状も違う。が、それ以上に違うものがある。「暮らしぶり」と「持っているモノ」だ。
 違いを作るのは「文明」側との接触頻度である。例えば、ヤノマミの中には、今なお裸で、私たちと交わろうとせず、獲物を追って移動を繰り返す集団が存在する。ほとんどイゾラド(=文明社会と未接触の先住民)である。ヤノマミの友人がこう言っていた。
「彼らはヤノマミもナプ(ヤノマミ以外の人間)も敵視する。近くまで行ったことがあるが怖くて逃げた」
 一方で、大河のほとりにある集落(ベネズエラ側に多い)では街場との往来が容易なため暮らしぶりは私たちとさほど変わらない。私が同居した集落にベネズエラのヤノマミが表敬訪問に来たことがあったが、セスナから降り立った男の姿を今もはっきり覚えている。ジャケットを羽織り、真っ赤なネクタイを結び、ぴかぴかの革靴を履いていたからだ。彼はベネズエラ側のリーダーのひとりで、文明側の正装で訪れることが礼儀だと考えているようだった。それほど、文明側との接触頻度によって大きな違いが生まれる。
■シャーマニズムなどの伝統が消滅しかかっている集落も
 分かっていないことも多い。私が持っている最新版の公的資料には、ブラジル側のヤノマミは人口およそ26,000人、集落の数は300と書かれている。しかし、実態が分かっているのは政府機関が恒常的な接触を続けている10カ所ほどで、他は、住んでいる場所も人口も分からず(一部のヤノマミは定期的に移動する。そうなると絶望的に分からなくなる)、ヤノマミ側からの情報をもとに推量しているに過ぎない。
 それでも、ブラジルとベネズエラに生きるヤノマミ族は南米の先住民の中で1、2の人口を有していることは確かだろう。しかも、文明化が著しい先住民の社会にあって、伝統的な生活を持続させている数少ない集団でもあることも間違いない。私は4カ所の集落に行ったことがあるが、そのすべてで自給自足の暮らしが堅持されていた(もはや、アマゾンの先住民であっても、完全に自給自足を続ける集団は稀である)。
 とはいえ、彼らは文明側と無縁ではない。ヤノマミの集落に「文明のモノ」が流れ込んでから、既に長い時間が過ぎている。最初は鉄器、次に服やサンダル、さらには薬品に宗教。シャーマニズムなどの伝統が消滅しかかっている集落も少なくない。医薬品の劇的な効き目を目の当たりにしたとき、シャーマンに代わって「医療」が新しい信仰となる。
■次々に「文明のモノ」が流入
 では、Wi-Fiはどうなのか。
 20カ所以上の集落に行ったことがあるというヤノマミに聞いてみた。彼は若い時から文明側の学校で学び、現在は先住民医療を請け負う公的機関に勤めている。その友人が言うには、ブラジル内のヤノマミ族保護区でWi-Fiがある集落は3カ所だという。近くに軍が駐屯している集落、伝道所がある集落、大河のほとりにあり上流に不法の金鉱山が密集する集落、である。大河のほとりにある集落(パリミ)に最近までいたというフォトジャーナリストによれば、Wi-Fiは僻地の救急医療のために使われているが(以前は無線を使っていたが、Wi-Fiの方が早く正確に情報を伝達できる)、それ以上に「彼らは外の世界と繋がりたがっている。Wi-Fiはそれを容易に可能にするツールだ」と話してくれた。
 私が同居をしたワトリキ(人口およそ200人)には「Wi-Fiはまだない」という話だった。しかし、それも時間の問題のような気がする。Wi-Fiに限らず、政府機関の人間が常駐し、医療団も定期的に入り、支援をするNGOの人間が頻繁に出入りする集落(言い方を変えれば“管理下”にある集落)では、次々に「文明のモノ」が流入し、時に常態化する。医療機器、PC、様々な薬品、マッチ、ブラジル的食事、流行歌、ポルトガル語、今どきのファッション、握手やハグなどの習慣。文明の側は様々なモノを集落に持ち込んでくる。
■「不要なモノ」と「なくてはならないモノ」
 人間誰しも好奇心がある。純朴素朴であればあるほど、珍しいモノを見れば触れてみたくなり、欲しくもなり、真似したくなり、使い方を知りたくなる。例えば、私が同居したワトリキに人類学者がやってきたことがあった。彼はDVDプレーヤーを持ってきていて、夜な夜な映画やドキュメンタリーを見ていた。何人かのヤノマミが興味を持った。皆、若い男だった。近づいてきて機械をいじり始めた。学者が操作方法を教えるとすぐに覚えた。DVDプレーヤーの回りにいつも大勢のヤノマミがいた。
 幸か不幸か、「流行」は長くは続かなかった。
 文明のモノが常態化するには一定のルールがあるようだった。おそらく、基準は単純明快だ。そのモノが、森を生きるために必要かどうか、である。DVDプレーヤーが娯楽や暇潰し以上のモノ、森の暮らしに必要なモノであれば、彼らは使い続けたに違いない。ナイフやサンダルやパンツやマッチや銃(ワトリキに銃はなかったが、誰かが持ち込むか与えればすぐに定着するはずだ)ではなかったのだ。
 ならば、事件が起きた集落にとってWi-Fiとはどのようなモノだったのか。DVDプレーヤーのように「不要なモノ」だったのか、ナイフやマッチや銃と同様に「なくてはならないモノ」となったのか。
 残念ながら、情報はほとんどなく本当のところは分からない。だから、類推するしかない。
■弓矢を持参することの本気度
 私はこう考える。
 彼らは大切なモノを奪われたとき、命を賭して抗議をする。私が集落の誰かを殺めたり、女に手を出したり、全員のナイフを盗んだとしたなら、おそらく弓矢を持った男たちに囲まれ、非難され、最終的には殺されただろう。とすれば、ヤノマミが一方的かつ衝動的に殺されたのではなく、両者の間で激しい争いがあった末の殺人だったとすれば、その集落のヤノマミにとって、Wi-Fiとは命を賭けても守るべき「なくてはならないモノ」だったと考えられる。
 抗議に行ったとき彼らが弓矢を持っていたのかどうかで、さらなる類推が可能だ。
 狩りでもないのに弓矢を持参することは、私たちの世界で言えば最後通告、あるいは宣戦布告とほぼ同義である。軍隊に抗議に行ったときヤノマミの男たちが弓矢を持っていて、部屋の中に入ったあとも(話し合いが室内で行われたとするならば)離さなかったとすれば、ヤノマミは殺し合いも辞さないほど本気だったと言える。
 逆に、持っていかなかった、持って部屋には入らなかったとすれば、軍隊側の過剰防衛かまったく別の理由で(ガリンペイロ化した軍隊が最初から殺すつもりだった可能性も捨てきれないと思う)ヤノマミを殺したのだろう。
 いずれにせよ、やるせない事件であることに変わりはない。
■違法に侵入したガリンペイロが、女性を強姦し殺害
 人が死んでいることもやるせないし、ニュースの伝わり方もやるせない。仮に、事件の原因がWi-Fiに関することではなかったとするならば、これほど耳目を集めるニュースになっただろうか。
 私たちの社会には、ヤノマミがWi-Fiを使っていることへの違和感があった。そして、そう思ってしまう原因の一部は、明らかに私たちが制作したテレビドキュメンタリーにある。それが、一番やるせない。
 ヤノマミ族の渉外団体であるHUTUKARA(ホトカラ。彼らの言葉で“天空”を意味する)が先月「違法に侵入したガリンペイロが先住民保護区で女性を強姦し殺している」と抗議の声明を出した。これに関しても短く触れたい。
 違法であろうとなかろうと、侵入者は先住者の土地を奪い、人間を犯し、殺してきた。これまで何度、同じ話を聞いてきたことか。
■人口100人ほどの集落に10人を超える混血児が
 アワ族という先住民のある村(マラニョン州アルト・トゥリアス集落)に行ったときのことだ。その集落は一番近い街場(人口は1万人ほど)から60㎞ほどのところにあり、乾期であれば陸路で行くことができる。言うなれば、ブラジル社会に組み込まれる寸前の集落だった。
 常駐していた政府機関は予算不足から20年前ほど前に撤退。時を同じくして、無許可の伐採人が大勢で入り込むようになった。私が聞いた限り、侵入者の手口はすべて同じだ。彼らは「友好の証」として男たちに酒を勧める。
 先住民伝統の酒であろうはずはなく、ピンガなどアルコール度数の高い蒸留酒である。強い酒を飲み慣れていない男たちが次々につぶれていく。その場に女だけが残る。そして、襲われる。連日同じことが繰り返される。未婚の女性もいれば、未成年の女性もいれば、夫がいる女性もいる。何カ月後かに子供が生まれる。先住民と黒人、先住民と白人の混血児が生まれる。私が訪れたのは2017年だが、人口100人ほどの集落には10人を超える混血児がいた。
 1990年代まで無許可の伐採会社を経営していた男にも話を聞いたことがある。男はイゾラドが生存する森で、人を使ってマホガニーを伐採していた。男たちが森から戻ってきたとき、口々にこう言った。
「森に素っ裸の男たちがいる。俺たちのナイフを盗む。服も盗む。邪魔だから殺していいか」
 経営者は私に、「もちろん、殺してはダメだと命じた」と言った。私はその言葉を信用できない。本当にそう言ったとしても、現場の男たちが命令を守ったかどうか、それも信用できない。
■密林での性交渉を面白おかしく語るガリンペイロ
 政府の報告によれば、少なくとも1970年代まで、その一帯には部族名不明・言語不明の集団(人数は不明だが住居の大きさや囲炉裏の数から少なくともひと家族以上)が生存していた。しかし、1986年には「ふたりだけ」になっていた(その“ふたり”は政府によってのちに“アウレとアウラ”と名付けられる)。調査報告書にはこう記されている。
「アウレとアウラは、かつて生存していた未知の部族の“最後の生存者”である」
 各地を転々としたガリンペイロ(金鉱掘り)にも話を聞いた。ガリンペイロは法螺話が好きなので話半分なのだが、何人かが先住民保護区内での不法の採掘経験があり、「女には不自由しなかった」と答えた。男たちは下劣な描写をふんだんに交えて密林での性交渉を面白おかしく語った。そして最後には必ず、「レイプじゃないぜ。俺がモテるって話だ」と言ってゲラゲラと笑った。
■「合法」的に開発業者を送り込もうとする政府
 現代文明には繁栄から遠く離れた「吹き溜まり」がある(先住民社会にはそのような場所はない)。都会にもあるし周縁部にもあるし森の中にもある。
 南米の場合、その最たる場所がファベーラ(都市部の貧民街。リオ・デ・ジャネイロの場合は人口の10%以上がファベーラに暮らす)とアマゾンだ。ファベーラは麻薬密売組織の拠点となっているし、アマゾンでも流入者による資源略奪が後を絶たない。何も持たない人たちが貧民街でドラッグを売り、アマゾンでは行き場のない人たちが、カネのため、生きるため、あるいは一攫千金のために森に分け入る。それを防ごうとしている人たちも少なからず存在するが、もはや、善意の努力でどうにかなる段階ではない。そもそも、アマゾンはあまりに広大で可視化することさえ難しい。今日も、侵入者は先住者の土地を奪い、犯し、殺しているかもしれないのに、そうした惨状が私たちの元に届くことはほとんどない。
 人権問題であると同時に、構造的な貧困問題なのだと思う。にもかかわらず、政府は重い腰をあげない。森の奥でいくら惨劇が起きようと、被害者の声を聞こうともしない。そればかりか、違法なガリンペイロや伐採人を追い出して、「合法」的に開発業者を送り込もうと画策している。そんなことが現実になれば、たとえ「合法」だろうが、同じことが起きる。
「合法」的に入り込んだ連中が、奪い、犯し、殺す。
 コロンブスが南米大陸にやってきて500年余り。森の奥では、同じ悲劇が永続的に繰り返されている。いい加減、私たちの社会は自覚すべきだ。ヤノマミから発せられる悲痛な声を加害側として受け止めるべきだ。今、強くそう思う。
写真提供=国分拓 撮影=Eduard Makino
《“原初の森”殺戮のリアル》ヤノマミ族を脅かす国家ぐるみの違法金採掘、森での殺戮、女性への性暴力…「私たちは森で平和に暮らしたいだけ」 へ続く
(国分 拓/Webオリジナル(特集班))
https://news.nifty.com/article/item/neta/12113-1656250/

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消息絶った息子尋ね台湾へ ニュージーランド人男性の足跡映画に

2022-05-28 | 先住民族関連
中央フォーカス台湾5/26(木) 18:57配信

台湾で行方が分からなくなった息子を尋ね続けたフィル・チェルネゴブスキーさん(右)=瀚草文創提供
(台北中央社)24年前に台湾で行方が分からなくなった息子を尋ね続けたニュージーランド人男性、フィル・チェルネゴブスキーさんの物語を映画にしたドキュメンタリー「費爾的旅程」が27日、台湾で公開を迎える。台湾の人々の優しさに触れ、悲しみが少しずつ癒されていったというフィルさん。映画では台湾の人々との交流も描く。
1998年、フィルさんの息子は阿里山で登山を楽しんでいた。消息が絶たれた後、渡台したフィルさん。息子の写真を抱いて総統府前で支援を求めた様子は当時広く報じられた。
行政機関や民間の助けを得て、阿里山で懸命な捜索活動が行われた。遺体の発見には至らなかったが、台湾原住民(先住民)族ツォウ族の友人の言葉を信じることにした。「息子は森になったんだ」。現在も地元の人々との交流は続いており、息子が眠る森を訪れることもある。
メガホンを取ったのは陳勇瑞監督。「彼が一番困っていた時に、見返りを求めず手を差し伸べた人々がいて、彼の悲しみを癒した。これは本当に感動的なこと」と語る。フィルさんの体験がニュースとしてではなく、永遠の物語として記録されるべきだと考えたという。
27日から台湾10カ所の映画館で公開される。
(王心妤、葉冠吟/編集:楊千慧)
https://news.yahoo.co.jp/articles/e3ca0c07bb82c65139b1f360626f9a90c339d943

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「北方四島、ロシア名に変更を」 元副首相らが提案 「必要ない」地元は冷ややか

2022-05-27 | アイヌ民族関連
北海道新聞05/26 22:09 更新
 ロシアの元副首相や野党党首が相次ぎ、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島からなる北方四島を、ロシアにまつわる名称に変更するよう提案し物議を醸している。ロシアのウクライナ侵攻を受け、対ロ制裁を発動した日本への反発を背景に、愛国的な主張をアピールする狙いとみられる。ただ、アイヌ語を語源とする四島の呼称はロシアでも長年使われており、地元では「必要ない」と冷ややかな声が相次いでいる。
 元副首相である国営宇宙開発企業ロスコスモスのロゴジン社長は23日のラジオ番組で、四島の島名を日露戦争の巡洋艦「ワリャーグ」などに変えることを提案。過去に愛国主義政党を率いたロゴジン氏は北方領土問題で強硬な主張で知られ、「島々にロシア語の名前がないことは、ロシアに帰属しているか疑問に思われる」と指摘した。
 インタファクス通信によると、25日にはプーチン政権に近い左派野党「公正ロシア」のミロノフ党首が、北方四島を事実上管轄するサハリン州を「サハリン州とロシア諸島」に改名するよう提案。ミロノフ氏は、日本が島の返還を要求してこないよう「きっぱりと正す」と一方的に主張した。
 ペスコフ大統領報道官は24日、「地元からのイニシアチブはいつでも歓迎だ」と述べたが、地元通信社サハリン・インフォが25日に発表したアンケートでは1875人中、91%が反対。対日強硬派で知られるロシア地理学会サハリン支部のポノマリョフ支部長もインタファクス通信に「名前はアイヌ語であるだけでなく、今やロシア文化、ロシア史の要素となっている」と指摘。改名提案は「地域の住民に失礼だ」と批判した。(渡辺玲男)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/685852

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<平取 二風谷アイヌクラフトの挑戦>中 異業種で触発 創造力に

2022-05-27 | アイヌ民族関連
北海道新聞05/26 09:50 更新

工芸家と共同開発した、アイヌ民族の衣装デザインを現代風にアレンジしたボディーバッグを持つ東京のデザイナー今福弘樹さん
 二風谷アイヌクラフトプロジェクトに参加した東京のプロダクトデザイナー原田元輝さん(38)は、昨年7月に初めて日高管内平取町二風谷を訪れ、工芸家の姿に心奪われた。
■新たな柄考案
 二風谷の木彫作家と共同でアイヌ文様を刻んだ万年筆を作るために現地を見学。アットゥシ(樹皮の布)職人の貝沢雪子さん(81)が自宅前の工房で布を織る姿は、創作というより日々の営みのように見え「実家のような温かさを感じた」。木彫作家の貝沢徹さん(63)が多様な彫刻刀を使いこなす姿に「作品の細部までこだわり、魂を込める姿勢が伝わってきた」と言う。
 東京のデザイナー今福弘樹さん(30)はアイヌ刺しゅう作家の尾崎友香さん(42)の思いに共感した。尾崎さんは「アイヌ文化になじみがなかった人にも、文様を純粋に『きれい』と思ってもらいたい。高価な工芸品ではなく、修学旅行生でも気軽に手に取れる品を作りたい」と熱く語った。
 今福さんは、アイヌ民族の伝統衣装「カパラミプ」(木綿衣)の模様が交易で手に入れた他地域の布を組み合わせて作られていたと尾崎さんに教わった。「(古着を仕立て直す)リメークに近くて面白い」と感じ、現代に手に入る生地で新たな柄を作ろうとひらめいた。古着や外国産の布を組み合わせ、刺しゅうを施したデザインを考案。尾崎さんとボディーバッグを作った。
■手頃な値段で
 「手軽にアイヌ文化に触れられる品を」という思いは購入者にも伝わる。
 昨年11月、東京で開かれた郷土料理のレシピコンテスト。優勝した道内チーム3人のうち江別市の大麻小教諭、東定利さん(52)が発表の際に身にまとった「アイヌ法被」は、プロジェクトが生んだ品だ。アイヌ工芸家、関根真紀さん(54)と法被ブランド「Happi・Tokyo(はっぴどっと東京)」(東京)が2020年度に開発した。
 東さんは「本物のアイヌ民族衣装を買おうと思ったが、20万~30万円もして無理だった」と肩を落としていたところ、知人にアイヌ法被を教わった。「色やデザインがイメージ通り」で、1着1万7940円の値段にも「何とか手を出せる」と購入した。
 法被には、関根さんが刺しゅうしたアイヌ文様が印刷されている。同ブランドのクリエーティブディレクター柴崎秀誠さん(40)は「アイヌ文様は唯一無二の個性がある」と人々の心を引き付ける理由を語る。
 こうした斬新な商品開発の裏には、「コシノさんをあっと言わせたい」と工芸家らが語るほど、プロジェクトの総合デザインディレクター、コシノジュンコさんの存在が大きかった。
◆「アットゥシ」のシと「カパラミプ」のプは小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/685560

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苫小牧でアイヌ民族に伝わる「刀」をテーマにした企画展

2022-05-27 | アイヌ民族関連
NHK05月26日 19時10分

アイヌ民族に伝わる「刀」をテーマにした企画展が苫小牧市で開かれています。
この企画展は苫小牧市美術博物館が開いているもので、会場には明治から昭和にかけて見つかったアイヌ民族が儀礼で使っている刀など、およそ100点が展示されています。
このうち「エムシ」という刀は、「つか」や「さや」にアイヌ文様の装飾が施され、儀礼の際に魔よけとして使われているほか、死者とともに埋葬されるということです。
また、「タンネプイコロ」と「タクネプイコロ」は、それぞれ「長い宝刀」「短い宝刀」という意味で、贈り物などとして扱われていたということです。
苫小牧市美術博物館の岩波連学芸員は「アイヌの人たちが作ったエムシの『さや』と『つか』にはアイヌ文様が施されているのでじっくり見てほしい」と話していました。
企画展は、苫小牧市美術博物館で6月26日まで開かれ、来月11日には苫小牧アイヌ協会のメンバーによる舞踊が披露されるということです。
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20220526/7000046884.html

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すすきの徒歩3分!歓楽街の異空間「本格ジビエ&アイヌ創作料理」"誰かに教えたい店"

2022-05-27 | アイヌ民族関連
SASARU 2022/05/26 19:25
© SASARU
「チセのある個室居酒屋海空のハル」は、アイヌ文化に触れながら本格的なジビエやアイヌ創作料理が味わえるお店。すすきの駅から歩いて3分ほどのアクセスしやすい場所にあります。
料理だけでなく、アイヌの伝統工芸品や暮らしに使用していた生活用具が展示してあり、まるでアイヌ民族のチセに遊びに来ているかのような空間でした!
北海道・アイヌ文化を感じる店内
まずは、座席の様子からご紹介します。
こちらは、カウンター席。木彫りの熊やアイヌ紋様が刻まれた伝統工芸品”二風谷イタ”が飾られており、ゴールデンカムイファンも多く訪れるそうです。カウンターのほか、掘りごたつの個室が4部屋と特別個室が1部屋あります。
特別個室ハルのチセに大興奮!
こちらは、アイヌ語で「チセ」と呼ばれる伝統家屋を模した、特別個室ハルのチセ。アイヌ文化に興味があり、ゴールデンカムイファンである筆者は、この部屋を目にした瞬間、興奮を抑えることができませんでした!
花ござや灯明台、火箸などの生活道具が並べられており、アイヌの方々の生活を肌で感じることができます。こちらのチセや生活道具は、ウポポイ(民族共生象徴空間)が監修したものなんだそう。
美しい紋様が刻まれたタシロ
テーブルの横には、アイヌ語で「タシロ」と呼ばれる山刀も飾られていました。こちらは、アイヌ文化伝承者である、浦川太八さんの作品。細かく刻まれた紋様が繊細で、とても美しいです。
鮮やかなアイヌ文様の半纏
こちらは、アイヌ文様が美しい半纏。筆者も着用させていただきました。チセを再現した空間の中で、このような体験ができるのは本当に貴重なことですよね。記念撮影を楽しんだ後、いよいよお料理をいただきます。
海空のハル一番人気!「アイヌ創作料理セット」
当時の食事を再現!アイヌ創作料理セット:3,500円(税込)
運ばれてきたのは、アイヌ創作料理をワンプレートでいただけるセットメニュー。白老地方のアイヌ伝統料理を学び、アレンジして作られた料理です。
コースやセットは数種類ありますが、こちらの“アイヌ創作料理セット”は海空のハルのメニューの中で一番人気なんだそう。聞き覚えのある料理が一度で味わえて、このボリューム! 確かに人気なのも頷けます。
【内容:全6品】※仕入れ状況により一部食材が変更になる場合アリ
・ヒグマ肉と鴨肉(低温調理済み)
・鹿串焼き
・オハウ
・チポロシト
・チタタプ
・鮭塩焼き
食べたらジビエの印象が変わります!
どのお料理も臭みがなくてやわらかい!新鮮な素材を仕入れ、丁寧に下ごしらえを施していることが、食べるだけで伝わってきました。
特に肉は加熱すると固くなってしまうので、低温調理でじっくり火を通しているそうです。プレートの中央にある“チタタプ(プは小文字)”は、細かく刻んだ料理でたたきの様なもの。海空のハルでは鮭の身と行者にんにく、味噌などで食べやすく味付けしているそうです。
「美味しいものが溢れている北海道ですが、グルメだけではなく、歴史や文化・SDGSの考え方などに関心を持つキッカケになってくれたら嬉しいです」と、店長の崎本さん。料理を通じて北海道の歴史や文化を身近に感じてもらえたら良いですね!
貴重な「ヒグマ」のお肉をいただきます
筆者が特に感動したのは、ヒグマのお肉。臭みがなくやわらかくて旨味たっぷり。まるでローストビーフをいただいているかのようでした。
北海道の中でも新鮮なヒグマのお肉をいただけるお店は非常に珍しいです。こちらのヒグマは、独自のルートでを一頭買いしたそうですよ!
優しさが染み渡る「オハウ」
汁物を意味する“オハウ”には、ごろんと大きくカットされた野菜のほか、鮭の身が入っていました。味付けには、塩と昆布。さらに鮭の骨の出汁に、鱈の肝臓から作られた鱈油を使い、素材が主役の優しい味わい。“行者にんにく”との相性もバッチリでした!
アイヌのお酒を復刻した「カムイトノト」
画像提供:チセのある個室居酒屋海空のハル
アイヌ伝統食セットには、アイヌのお酒を復刻した“カムイトノト”が一杯ついてきます。
アイヌ語で“カムイ”は「神」“トノト”は「酒」という意味を持つことから、 “カムイトノト”は「神様のお酒」という意味の造語です。
ヒエを使ったお酒は、アイヌ民族の儀式で神々や先祖への贈り物として欠かせないものだったのだそうです。その伝統的なお酒を現代に復活させたのが “カムイトノト”です。
稗(ひえ)を原料とした珍しいお酒で、どぶろくにもに似た濁りがあり、ほどよい酸味と自然の甘さが特徴的! とろりとした飲み口。甘さと酸味のバランスが整ったお酒です。
単品料理とお酒で一杯
その他、店内には北海道産のお酒や、単品メニューも豊富。その時期のおすすめなどもあるので、訪れるたびに新しいおいしさに出会えます。
筆者も、今度は単品メニューをじっくり味わいながら、お酒も堪能したいです。
自信をもって紹介したくなるお店
海空のハルがある場所は、地下鉄『すすきの駅』から徒歩3分。金の卵が目印のF45ビル地下1階にあります。アクセスのしやすさも魅力的ですね。
北海道の歴史と伝統、素材のおいしさがギュッと詰まった海空のハルは、地元の人のみならず、道外の方が来たときにお連れしたいお店。これだけ“北海道ならでは”が詰まったお店での食事は、良い思い出となり、喜んでもらえるのではないでしょうか。
海空のハル、美幌峠店もオープン!
2022年4月、海空のハル第2号店となる美幌峠店がオープンしました。美幌町の食材を中心としたメニューが味わえるお店。店内は木目調の落ち着いた空間で、シンボルの大きな“熊面”がお出迎えしてくれます。
美幌店のイチオシは「美パオライス」
美幌の野菜を使った“美パオライス”が一番人気のメニュー。ガパオライスに美幌をかけたユニークなメニューです。そのほか、10食限定のアイヌ創作料理「オハウ定食」もおすすめとのこと。不定期提供となるので、かなりレアなメニュー。運良く出会えたら迷わずオーダーしたいですね。
チセのある個室居酒屋海空のハル
住所:札幌市中央区南4条西5丁目8 F-45ビル地下1F
営業時間:午後5時~午後11時30分 (ラストオーダー:午後11時)
定休日:日曜日
電話番号: 011-231-6868
Instagram:@umizoranoharu
Twitter:@umizoranoharu
Facebook:チセのある個室居酒屋 海空のハル
Webサイト:https://umizoranoharu-susukino.owst.jp/
(上記の情報は記事作成時点でのものです。価格や最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください)
https://www.msn.com/ja-jp/travel/news/すすきの徒歩3分-歓楽街の異空間-本格ジビエ-アイヌ創作料理-誰かに教えたい店/ar-AAXKGUV?ocid=BingNewsSearch

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(アイヌ刀・下) 墓の副葬品で多く出土 (動画あり)

2022-05-27 | アイヌ民族関連
苫小牧民報2022/5/25配信
 アイヌ刀は民族資料として博物館等に収められているもののほかに、遺跡からも多く出土します。遺跡から出土する場合、多くはお墓の副葬品として出土します。  弘前大学の関根達人教授による分析では、全体の4割弱のお墓から出土しており、男性に限…この続き:494文字
ここから先の閲覧は有料です。
https://www.tomamin.co.jp/article/feature/kioku/78102/

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アイヌの植物利用と健康【平取】

2022-05-27 | アイヌ民族関連
日高報知新聞2022.05.25
【平取】町主催のシシリムカ文化大学講座「アイヌの伝統的生活文化の再発見第1回」が11日、町中央公民館で開かれ、会場44人、オンライン61人計105人が参加して、アイヌの植物利用などについて学んだ。
 講師は町出身で、薬学・天然物化学を専門分野とする薬学博士の山岸喬(たかし)北見工業大名誉教授。平取小学校時代に木の実や昆虫採集に熱中したのが趣味の原点で、現在は世界各地の植物を撮影。著書に「北海道薬草図鑑」などがある。
 山岸教授は、アイヌの植物利用と健康をテーマに、アイヌの人たちが薬物や食物として利用してきた植物や活用の可能性について話した。
 アイヌ民族にとって最も重要な植物とされるイケマの信仰での利用や、毒の強いトリカブトが平取にもあり酋長のみが採集の権利を持っていたとあるなどと紹介。
 また、漢方で重要な生薬ヤマシャクヤク・芍薬は、腹痛時に使う薬草で、「見た目にも美しく、保護して群生するのも良いかも知れない」。ハマナスの花は、ビタミンCの含有量が高く熱にも安定。乾燥させお茶にして飲むなど、投与により便臭の原因物質が減少したデータなども示し、活用の可能性に触れた。
 「アイヌの人たちは、食材についても生活の知恵から生み出したものが多く、バランスの良い食事をとっていたため、健康な体を維持できていたのではないかと考えられる」とした。
http://www.hokkaido-nl.jp/article/25410

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<ウポポイ オルシペ>40 「チプ」のある風景 交易支え社会に変化

2022-05-26 | アイヌ民族関連
北海道新聞05/26 05:00

ポロト湖で「チプ」に乗る筆者
 ウポポイ(民族共生象徴空間)の国立民族共生公園に隣り合うポロト湖畔では、アイヌの舟について学ぶことのできるプログラム「丸木舟実演・解説」を行っています。
 丸木舟のことをアイヌ語で「チプ」といいます。丸木舟は石器時代にはすでに作られており、昭和の初めごろまで使われてきた息の長い民具の一つです。道路や橋のない時代は、河川を利用した重要な交通や運搬の手段でした。湖沼では水生植物の採取、河川ではサケ・マスの漁に使用するなど用途は多岐にわたります。
 また、アイヌは交易の民ともいわれるほど、交易が盛んな民族としても知られています。外洋へ出るためには、丸木舟の舷側に板をとじ付けた「イタオマチプ」という舟が利用されてきました。
 交易は互いの社会にいろいろな変化をもたらします。例えば、和人社会からはガラス玉、漆器類、鉄製品などがもたらされました。一方、アイヌ社会からは昆布や干鮭(ほしざけ)、毛皮、細工物のほか、アイヌの労働によって生産された魚の〆粕(しめかす)は良質な肥料として近畿地方の綿花生産を増大させ、それによって普及した木綿がアイヌ社会に木綿衣を普及させたように、交易は新たな文化を生み出しました。それを支えたのも舟です。
 日常的に見ることが無くなった丸木舟ですが、現在でも丸木舟の製作技術や関連儀礼が各地で伝えられており、ここウポポイでも製作から乗り方、関連儀礼について伝承を行っています。9月ごろまでは丸木舟に乗っているスタッフの姿を見ることができますので、「チプ」とともに暮らしていた景色を少しでも感じていただけたら幸いです。(文 山道ムカラ=象徴空間運営本部・工房担当)
※「チプ」のプ、「イタオマチプ」のプ、山道ムカラさんのラは小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/685400

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<二風谷アイヌクラフトの挑戦 平取>上 伝統の文様で傘、万年筆

2022-05-26 | アイヌ民族関連
北海道新聞05/25 09:38

二風谷アイヌクラフトプロジェクトで開発されたボディーバッグや傘、万年筆などを1カ月間、限定販売した東京・渋谷の「イコーランド シブヤ」の店頭=2月(ノーザンクロス提供)
 今年2月、東京・渋谷の昼下がり、商業ビル内の衣類・雑貨店「イコーランド シブヤ」では、20、30代の若者らが商品を手に取って楽しげに話していた。「デザインが細かくてすごいね」「見たことある柄だな」。そこにはアイヌ文様がデザインされた万年筆や折りたたみ傘が並んでいた。
■「現代」と融合
 商品は、アイヌ伝統工芸が伝わる日高管内平取町二風谷の工芸家と、公募した東京などのデザイナーらがタッグを組み開発。東京で1カ月間、限定販売した。「伝統と現代デザインの融合」を目指す「二風谷アイヌクラフトプロジェクト」の成果だ。同町が国のアイヌ政策推進交付金を活用し2020年10月に開始。アイヌ文化に縁遠い人にも工芸の魅力に触れてもらい販路を拡大するのが狙いだ。
 事業の総合デザインディレクターを世界的デザイナーのコシノジュンコさんが務め、20年度は工芸家5人とデザイナーら4人が組んで法被や靴べらなど4点を開発。21年度は別のデザイナーらと組み、ベルトやつぼ押しなど5点を作った。
 「事業はアイヌ工芸を守る一つの手段」と語るのは二風谷民芸組合代表理事で木彫作家の貝沢守さん(57)。担い手が減る中、アイヌ工芸を次世代につなげる新たな挑戦だと期待する。
■購入層拡大へ
 1960~70年代の北海道ブーム。二風谷の国道沿いには工芸品店が今の6倍超の20店も並び、工芸家は4倍近い約40人。観光バスが何台も止まった。貝沢さんは、木彫作家だった亡き父が「若い弟子を何人も雇って工芸品を作らせ、腕を磨かせていた」と振り返る。
 しかし、ブーム衰退で店や職人は徐々に減り、担い手不足と販路拡大が重い課題に。当時、副町長だった遠藤桂一町長が克服策を探っていた5年前、国土交通省の観光担当者に「アイヌ工芸盛り上げのため有力者に協力してもらえないか」と相談すると、予期せぬ大物の名が挙がった。たまたまツテがあるというコシノさん。同町は好機を生かし、助言を受け現代デザインを取り入れる同事業に着手した。
 貝沢さんは「若手が育つ場になり、新たな商品が購入者の幅を広げる」と期待。二風谷でアットゥシ(樹皮の布)織りに励む柴田幸宏さん(33)は「コラボにより自分にはないアイデアが出てオシャレな商品が生まれた」と刺激を受けた。
 誕生した9商品はオンラインショップなどで、計約140点が売れた。「母親に贈りたい」と万年筆を買う人や「デザインがすてき」と傘を自分用に買う人がいた。同事業が着実な一歩を踏み出すには、伝統に今を吹き込むデザイナーらの熱い思いも不可欠だった。(静内支局の杉崎萌が担当し、3回連載します)
◆「アットゥシ」のシは小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/685050

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映画「Ainu(アイヌ)ひと」を通じて語学の大切さを知る

2022-05-26 | アイヌ民族関連
ワールドヴォイス2022/05/25

©Naomi Mizoguchi
映画「Ainu(アイヌ)ひと」の監督、溝口尚美さんとは、2013年にワオラニ民族を救えという取材させていただいてから、実際にニューヨークで数回お会いしたことがある。しっかり映像としての記録をとって、世界の人へ伝えよう、残していこうというジャーナリスト魂にパワーを感じた。
今回、シカゴ日本映画コレクティブで上映されたのは、実際にアイヌの人々へ溝口監督が取材したドキュメンタリー作品。映画「Ainu」は、これまでも世界各国で様々な映画祭に出品されている。
ドキュメンタリー映画「Ainu | ひと」予告編
https://www.youtube.com/watch?v=JZ1-kXeT9Ow
一番心に響いたのは、子供の頃から差別を受けて育ってきたアイヌの男性が放った言葉で、「和人を恨んでいない」というところ。アイヌの人々が使っていた言語を消滅させないために、アイヌの言語を学ぶ人たちの努力する姿がまばゆい。
アイヌの言語を学ぶという観点から、ニューヨークの大学で言語学を専門として教壇にたつスパーベック美恵子兼任教授にも映画「Ainu」を視聴後、コメントをいただいた。
「素晴らしかったです。アイヌの方々が差別されて、土地を追いやられ、大変な生活をして来た過去があったのに、『和人への恨み節ではない。』と言い、さらに感謝まで口にするというのは並大抵の事では出来ません。
日本語のクラスの第一日目は イントロですが、来学期からはその日にアイヌの方々について少しでもこちらの学生に伝えていくのが大事だと思いました。アイヌ語及び文化が後世にも継承されて行き、話者がなくなることのない様に祈ります。
アイヌの言語が絶滅の危機にあると言うことをアメリカで日本語を勉強してる学生に少しでも知っておいてもらう事、つまり日本に日本語だけではなく、アイヌの言語もあるのだという事を伝えるのは大事だと思います。
これまでに言語学のクラスでは、アイヌ語について少し扱ったことがあります。一つはMorphology(※1 形態論)のトピックのところで、アイヌ語はPolysynthetic language (※2 抱合語)で、アメリカンインディアンの諸言語と同じタイプである事です。
もう一つは、歴史で、例えば英語はインドヨーロッパ語族に属するなどといった言語の関連性についてのユニットがあるのですが、アイヌ語はどのlanguage family(※3 語族)にも属しないということを学びます。こちらのコースのシラバス(講義などの内容や進め方を示す計画書)にも掲げておりますが、学習ゴールは、言語の多様性を学び、偏見をなくすことを目標にしています。」
どんな小さな世界でも差別がなくならない人間社会。溝口監督が映画を通じて、スパーベック美恵子兼任教授が、生徒さんたちに、言語学の側面から、なくならない差別の実情を後世の人たちへ知らせる。
若い世代の人たちが、差別される側の悲しみや辛さを知らないままで過ごすのと、知っている上で過ごすのは、違うからこそ、争いのない世界は必ずやってくるのだと信じたい。
※1 言語学における形態論(けいたいろん)とは、ヒトの言語の、語(単語)を構成する仕組みのこと。また、それを研究する言語学の一分野。
※2 抱合語(ほうごうご、包合語とも書く)は言語類型論における言語の分類の1つ。単語、特に動詞に他の多数の意味的または文法的な単位が複合され、文に相当する意味を表現しうるような言語を指す。これに該当する言語はシベリアからアメリカ大陸にかけて特に多く分布する。
※3 語族(ごぞく)とは、比較言語学において、ある言語(祖語)とそこから派生した全ての言語を含む単系統群のうち、他の単系統群に包含されることが認められていないものを指す。
<引用 ウィキペディア>
【プロフィール】
溝口尚美(みぞぐちなおみ)
日本での映像制作会社勤務を経て、1995年にフリーランスとなり、テレビ用ドキュメンタリー、プロモーションビデオ、短編文化映画など様々な作品を制作。
2004年、コミュニティ・メディアを学ぶためにニューヨークに渡り、全米最大かつ最古のコミュニティ・メディア組織のひとつであるダウンタウン・コミュニティ・テレビジョンセンターに勤務。2008年、NPO法人Cinemingaを設立し、コロンビア、エクアドル、ネパールの先住民に映画制作に必要な機材や技術を提供する活動を開始。その結果、作品はカナダ、コロンビア、ネパール、日本、アメリカの映画祭で上映された。
2014年にCinemingaを退社後、溝口はGARA FILMSを設立。メインストリーム・メディア向けの番組や、地域社会の問題をテーマにしたインフォーカス映画など、幅広い視野で映画制作を続けている。これまでのキャリアにおいて、溝口は100以上のプロジェクトを監督し、300以上のプロジェクトを編集。現在、ニューヨーク在住。
スパーベック美恵子(スパーベックみえこ)
神奈川県出身。1995年にペンシルバニア州フィラデルフィアのテンプル大学を卒業後、日本に戻り、英会話スクールで英会話教師として勤務。その後、アメリカ人との結婚を機に来米。ミネソタ州ミネアポリスの語学学校で日本語教師となり、多くの客室乗務員に日本語を教える。2001年ニューヨーク市立大学大学院言語学部に入学。10年に同校を卒業後、同年9月アデルファイ大学の言語学兼任教授に就任。13年からジョンジェイ大学で日本語を教える。現在2校を兼任。
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/bailey/2022/05/post-32.php

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地域密着型プロジェクトを通して考える、エコロジカルな写真の未来Vol.2 ヤン・グロス、アルギーネ・エスカンドン

2022-05-26 | 先住民族関連
IMA 25 May 2022
持続可能な世界を目指す現代社会において、写真には何ができるのだろうか? IMA Vol.37「自然と環境をめぐる写真家の声」の関連記事第一弾では、現地コミュニティに根差して環境問題と向き合う写真家たちによる、イラン、ペルー、ガーナ、イギリスの4つのプロジェクトを紹介する。vol.2は、写真家のヤン・グロスとアルギーネ・エスカンドンがペルーのアマゾンで取り組んだ「Aya」。現地の体験をさらにリアルに伝えるため、プリント制作のプロセスに植物を取り入れて実験を重ねた彼らは、アマゾンの熱帯雨林とどのように向き合ったのだろうか?
原住民のコミュニティを表現するため、
熱帯雨林の植物で感光するプリント
ケチュア語で魂、死、霊を意味する「Aya」と題した本作は、ペルーのアマゾンに広がる植物やシャーマニックな体験を伝えながら、原住民のコミュニティを描きだしている。ペルーのアマゾンで失踪したとされている19世紀のドイツ人写真家、チャールズ・クレールの痕跡をたどり、この密林にやってきた写真家のヤン・グロスとアルギーネ・エスカンドン。アマゾンで制作をした初めての写真家であったクレールが、「記録」という名目で行った撮影を、侵略を正当化するためのように感じた二人は、アマゾンに対する偏見を改めるために本作のストーリーを編みだした。当初、先住民族と生活を共にしながら、森を理解するために自生する植物を食べ、儀式に参加し、写真を撮っていた。しかし、それだけでは、その体験を写真に反映させるには不十分だと感じた彼らは、ジャングルを忠実に写すために、コミュニティで重要な役割を果たしている植物をプリントの制作プロセスに用いることにした。

ジャングルの中で、現地に生息する感光性の高い植物を探しだし、試行錯誤しながらプリントを行った。
紙やシルクスクリーン、写真製版、鉄板写真などのさまざま技法を植物を用いて試した二人は、過去に木の葉にイメージを転写したプリントを見たことがあったため、葉っぱから顔料を抽出し、感光乳剤と同じような効果を生む液体を作ることで何が起きるかを実験した。パパイア、クズウコン、ヒロハフウリンホオズキなどの感光性の高い植物を探し、アマゾンで万能薬といわれている植物の葉から色素を抽出し、感光乳剤のようなものを調合して、プリントを試みた。
歴史的にはヨーロッパ人が近代科学のパイオニアといわれているが、「Photography」の単語を初めて使ったのはブラジルの発明家、エルクレス・フロランスであると、グロスは語る。フロランスは、ダゲールより5年も前に、ブラジルでダゲレオタイプに近い技法を編みだしていたため、原住民が植物の感光性を早くから知っていた可能性は十分にあるという。
植物は地球上の生物資源の99%を占めているが、いまだに軽視されがちだと考えるグロスは、人類学者であるエドゥアルド・コーンの「私たちは唯一の存在ではない」という言葉を引用し、人の世界を離れた森の存在を振り返ることは、人類が自身に与えた特権意識を問い直すことを意味すると話す。「Aya」は現地の素材を取り込むことで、現実に固定化されたイメージの再生成という目的を果たしている。実験の積み重ねで生みだされたこのプロセスは、原住民に対するステロタイプのイメージと環境問題の双方を写真それ自体に織り込んでいる。
IMA 2022 Spring/Summer Vol.37より転載
ヤン・グロス|Yann Gross
1981年、スイス生まれ。2010年、イエール国際モード&写真フェスティバルにてグランプリ、2015年、アルル国際写真フェスティバルにてLUMA Rencontres Dummy Awardを受賞。写真集に『The Jungle Book』(Aperture、Actes Sud、Editorial RM、2016年)、『Aya』(Editorial RM、2019年)、などがある。
アルギーネ・エスカンドン|Arguiñe Escandón
1979年、スペイン生まれ。大学院でドキュメンタリー写真とビデオを学ぶ。フィクションと現実の間にある、神秘的な雰囲気に包まれたファンタジーの世界を写真の中に創り出す作品を手がける。2020年には、ヤン・グロスと共に、Prix Elysée 2020-22にノミネートされた。
https://imaonline.jp/articles/archive/20220525yann-gross_arguine-escandon/#page-1

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『SCHOOL OF LOCK!』 ×「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭」“超ダイバーシティ芸術祭”で「SOCIAL LOCKS! 課外授業」を実施!

2022-05-26 | 先住民族関連
JIJI.com2022年5月26日(木)
[株式会社エフエム愛知]
第一弾 は5月28日(土)名古屋で開催!
FM AICHI(JFN系38局)で放送中の10代向け番組『SCHOOL OF LOCK!』(毎週月曜日~金曜日22:00~23:55)では、毎週月曜日にダイバーシティや“違い”を知るためのコーナー『SOCIAL LOCKS!』を放送しています。
この度、パフォーミングアーツを通じて、障害・性・世代・言語・国籍など、個性豊かなアーティストと観客が一緒に楽しむイベント、「True Colors Festival超ダイバーシティ芸術祭」内でパーソナリティのこもり校長とぺえ教頭とスペシャルゲストが全国各地を巡り、「SOCIAL LOCKS! 課外授業」を実施します。
第一弾は、5月28日(土)名古屋・アスナル金山「明日なる!広場」で開催されます。     
「SOCIAL LOCKS! 課外授業」は、12時30分頃から、メインパーソナリティである、こもり校長とぺえ教頭ともに、名古屋限定のスペシャルゲストとして、名古屋出身のSKE48の須田亜香里さん、交通事故による高次脳機能障害とともに生きる、オーストラリアの先住民族アボリジニの伝統楽器「ディジュリドゥ」奏者・GOMAさんがステージに登壇します。司会は、FM AICHIパーソナリティの黒江美咲。
【「True Colors CARAVAN in Nagoya」概要】
◇開催日:2022年5月28日(土)11:00~18:00
◇会場:アスナル金山「明日なる!広場」 ※入場・参加無料です。
◇主な出演者
<パフォーマンスステージ>
・「True Colors CARAVAN」CARAVAN Performers
・障害児(者)ダンスサークル「JOY☆UP」
<トークステージ「SOCIAL LOCKS!」課外授業>
・「SCHOOL OF LOCK!」こもり校長(小森隼/GENERATIONS from EXILE TRIBE)、ぺえ教頭(ぺえ)
・須田亜香里(SKE48)
・GOMA(ディジュリドゥ奏者、画家)
・司会/黒江美咲(FM AICHIパーソナリティ)
◇主催:日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS
◇助成:日本財団
◇公式サイト:https://truecolorsfestival.com/jp/program/caravan/
企業プレスリリース詳細へ (2022/05/25-18:47)
https://www.jiji.com/jc/article?k=000000286.000036704&g=prt

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