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大型客船、室蘭を元気に 「ぱしふぃっくびいなす」6年ぶりに入港 祝津埠頭の多目的岸壁、一部供用開始

2022-05-16 | アイヌ民族関連
北海道新聞05/15 19:15

市民の歓迎を受け、祝津埠頭の多目的岸壁に着岸する「ぱしふぃっくびいなす」
 世界最大級の22万トン級クルーズ船が入港できる室蘭市祝津埠頭(ふとう)の多目的岸壁が15日から一部供用を始め、利用第1号として大型クルーズ船「ぱしふぃっくびいなす」(2万6594トン、関谷雅船長)が6年ぶりに入港した。
 神戸を発着する日本一周ツアーの一環で午前7時半に着岸した。約30人が「歓迎」を意味する国際信号旗を振って迎えた市民団体「室蘭港を愛する会」の中村嘉孝副会長(80)は「大型船が入ると港が元気になる。次は世界最大級の客船を期待したい」と話した。
 下船した乗客はバスに分乗するなどして室蘭市内、有珠山、アイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間」(ウポポイ)などを巡る各ツアーに出発。広島県の80代の夫婦は「2年8カ月ぶりの北海道旅行。少し肌寒いけれど有珠山や洞爺湖周辺を楽しみたい」とうれしそうだった。
 午後には埠頭で市の歓迎イベントも開かれ、道大谷室蘭高吹奏楽部が演奏を披露。岸壁の供用開始を記念する式典で青山剛市長は「今後もクルーズ船誘致に取り組みたい」と述べた。
 室蘭開建によると、岸壁は改良工事で水深11メートル、長さ410メートルに拡大され、8万トンを超える大型クルーズ船が使えるようになった。(河田俊樹)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/681058

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「アイヌ神謡集」序、30言語に翻訳 知里幸恵の思い、共感広がれ 室蘭報道部・渡辺愛梨

2022-05-16 | アイヌ民族関連
北海道新聞05/15 09:55
 アイヌ文化の伝承者、知里幸恵の著作で、近代化によって民族の言葉が失われていく悲しみなどを記した「アイヌ神謡集」の序文に当たる「序」の翻訳が3月、30言語に達した。多言語化が活発になる前の2019年夏までは5言語に過ぎなかった翻訳が2年半で6倍に広がったのは、「民族の文化を残したい」という幸恵の願いに、国と時を越える普遍性があり、各国のボランティアが協力したためだ。翻訳される言語がさらに増え、幸恵の思いへの共感が世界中に広がることを願う。
 「どの言語もみな平等で、民族の文化や価値観が詰まっている。そのことを『序』は教えてくれるのです」。研究の一環として「アイヌ神謡集・序」の中国語新訳に取り組み、19年に各国の留学生に翻訳を呼びかけた北大大学院文学研究科の中国人研究者、馬長城さん(36)はこう語る。
 幸恵は亡くなる直前に書いた「序」で、アイヌ民族の生活や言葉がなくなっていく悲しみ、自らが民族の物語を残す決意を記した。豊かな自然の中で、祖先が悠々と狩りをしたり、植物を採集したりする様子も美しく描写している。
 「私の出身地の中国河南省睢(すい)県でも古里の言葉を捨て、書き方すら忘れてしまう人もいる。方言を含めた少数言語はやがて消えるという危機感がある」。馬さんは自身が「序」から受ける思いをこう語った。
 フランス語や英語などに訳されていた「序」。馬さんの呼びかけに、スワヒリ語やヒンディー語、ネパール語などの話者が応じ、翻訳が広がるきっかけになった。登別市の資料館「知里幸恵 銀のしずく記念館」も馬さんらを支援しながら、独自に翻訳を呼びかける「知里幸恵をあなたの言葉で」の取り組みを2019年から始め、スウェーデン語、ベトナム語などに訳された。ほとんどがボランティアによる協力だ。
 この動きをまとめ、3月下旬から3回連載した「先住民への思い世界へ」の取材で、「序」の翻訳に取り組んだ各国の協力者に話を聞いた。それぞれが少数民族の言葉や文化が失われつつある故郷の状況を教えてくれた。「序」の翻訳が短期間で、しかも自主的に広がったのは、翻訳者たちが文化が存続の危機にひんしている各地の状況を幸恵の言葉に重ね、強く共鳴したからだと感じた。
 記念館の在り方も翻訳の広がりを後押ししている。記念館は10年、登別市内の幸恵の生家の敷地に建った。行政などの公的資金には頼らず、幸恵の思いに共感する人たちが寄付と手弁当で設立、運営している。「序」の翻訳もお金を投じて依頼するのではなく、記念館と同様に共感が共感を呼ぶ草の根方式。だからこそ予想もしなかった言葉への翻訳が実現したのだろう。
 胆振管内白老町のアイヌ文化の復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」は国によるアイヌ文化の継承という狙いそのものに大きな価値があるが、巨額の費用を投じなくても「伝えたいこと」に共感を呼ぶ普遍性があれば、世界中の人に知ってもらえることを「序」の翻訳は教えてくれる。記念館館長の金崎重弥さん(76)も「記念館にしか伝えられないことがある」と強調する。
 幸恵の文章が持つ独特の語感、文章の美しさも海外のファンを引きつける理由だろう。記念館スタッフの松本徹さん(68)は「幸恵が持つ独特の語感は、口頭伝承をしていた民族ならでは」と教えてくれた。
 今年は幸恵が亡くなって100年の節目。記念館は各国の主要言語に加え、方言による翻訳や、訳文の音声化の構想も進めている。これからも言語や形式を変えて、市民の手で幸恵の思いを紡いでいってほしい。
<ことば>アイヌ神謡集の「序」 「銀の滴降る降るまわりに」という詩文で知られる「アイヌ神謡集」の序文。神謡集の校正を終えた知里幸恵が、1922年(大正11年)9月に亡くなる半年前に執筆した。千文字余りの文中には「その昔この広い北海道は、私たちの先祖の自由の天地でありました」「激しい競争場裡に敗残の醜(しゅう)をさらしている今の私たちの中からも、いつかは、二人三人でも強いものが出て来たら、進みゆく世と歩をならべる日も、やがては来ましょう」などとあり、口頭伝承で伝えられてきた物語を残す意志を記している。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/680930

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<沖縄はいま 本土復帰50年>5 あおられる分断 基地問題抗議で「非国民」

2022-05-16 | ウチナー・沖縄
北海道新聞05/15 09:53

ヘイトスピーチ根絶を目指し、街頭に立つ「沖縄カウンターズ」のメンバーたち。配った白いトルコキキョウの花言葉は「思いやり」
 2月。那覇市にあるギャラリーの壁や床が191枚の黒い紙で埋め尽くされた。一枚一枚に白い文字で印刷されていたのは、「日本から出て行け」などと沖縄の人々を攻撃し、差別し、侮蔑(ぶべつ)する言葉の数々。インターネットや沖縄の街角で、実際に吐かれたものだ。
■差別が深刻化
 ヘイトスピーチ(差別扇動表現)に抗議する市民団体「沖縄カウンターズ」が1日限りで展示。目を背けたくなる言葉ばかりだが、深刻さを伝えたかった。メンバーで宜野湾市の屋我真也さん(52)は具合が悪くなった。「まるで自分が殺されたような感覚になる」
 偏見に基づくデマや差別的な誹謗(ひぼう)中傷などの「沖縄ヘイト」は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡る国と県の対立が深まった、2010年代から広がり始めた。
 元金武町長の吉田勝広さん(77)は、悔しさと悲しさが忘れられない。県議時代の13年、辺野古移設断念や米軍の輸送機オスプレイ配備撤回を訴えて、県内全市町村の首長らと東京でデモ行進をした時のことだ。
 沿道から浴びたのは「非国民」「売国奴」などの罵声だった。「国のために沖縄が犠牲になるのは当然だ」との叫びもあった。「何が国のためだ。沖縄がどれだけ苦しんでいるか」。吉田さんは怒りに震えた。
 17年12月には、普天間飛行場に隣接する市立普天間第二小の校庭に、米軍大型ヘリコプターの窓が落下した。重さは約7・7キロ。児童約60人が体育の授業中で、大きなけががなかったのは偶然に過ぎない。だが事故報道後、学校に「やらせだ」「学校は基地の後から建てたくせに文句を言うな」と批判電話が殺到した。
■負担押し付け
 沖縄に基地集中の負担を押し付け、国策に逆らえば「身勝手」と、切実な訴えすら中傷して退ける。吉田さんは「日常生活を脅かされる沖縄の苦悩を、知ろうともしていない」と嘆く。
 比屋根照夫・琉球大名誉教授(82)は「政府が構造的な差別と分断を助長している」と言う。辺野古移設を巡り、国は沖縄側が何度異議を申し立てても耳を貸さない。本土は決して受け入れない新基地工事を強行するのは、まさに「差別」じゃないか。「そんな政府の姿勢が『沖縄を甘やかすな』という攻撃をあおる」
 沖縄は1972年の本土復帰後、自然の豊かな「癒やしの島」として定着した。沖縄ブームも広がった。
 浦添市出身の明治学院大研究員、古波蔵契さん(31)は昨年、編著した「つながる沖縄近現代史」で、「『南の楽園』というイメージは、基地の島であり続けている沖縄の現実を覆い隠してしまう」と書いた。
 東京の大学に進む時、高校の先生から、おおらかで優しい「沖縄人」を演じろ、と言われた。そう振る舞う限りは「かわいがってもらえて、傷つかない」。基地問題は「越えちゃいけない一線」なのだと思った。なんだかワジワジーした。
 ワジワジー。怒りやいらだちを示す沖縄言葉だ。那覇市の芸人、小波津正光さん(47)も感じている。
■笑い通じ訴え
 2004年、普天間飛行場に隣接する沖縄国際大に米軍ヘリが墜落した。だが、当時活動していた東京で見た翌朝の全国紙は「アテネ五輪開幕」一色。2日後の漫才ライブで、大々的に墜落を報じた沖縄紙を「アテネで聖火が燃えたころ、沖縄ではヘリが燃えてたよ」と客席に突きつけた。客は沖縄にどれだけ米軍基地があるかも知らなかった。
 怒りだけでは聞いてもらえないなら、笑いでなら少しは伝わるかもしれない。05年からコント「お笑い米軍基地」を始めた。沖縄は「癒やし」と言われるけど、空は東京よりうるさいぞ。沖縄で起きていることは矛盾、コメディーそのものだよ―。そして何より「米軍基地は沖縄問題じゃなく、日本の問題だよ」と。ふつふつした怒りを半分お笑い、半分本気でぶつける。
 なんで、自分たちの問題じゃないみたいな顔しているのさ。=おわり=
アイヌ民族ヘイトも深刻
 道内でもアイヌ民族へのヘイトスピーチ(差別扇動表現)が後を絶たない。2021年3月にはテレビの情報番組がアイヌ民族への差別表現を放送し、謝罪したが、交流サイト(SNS)の一部ではアイヌ民族の存在を否定するようなヘイト表現が広がった。20年のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」開業を巡っても、いわれのない中傷や事実と全く異なる差別的な投稿が相次いだ。
 2019年に施行されたアイヌ施策推進法(アイヌ新法)は、アイヌ民族を先住民族と位置付け、差別を禁じている。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/680929

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ブラジル先住民インフルエンサー

2022-05-16 | 先住民族関連
AFPBB News5/15(日) 12:02配信

ブラジルの首都ブラジリアの野営地で、ファンとの写真撮影に応じる先住民インフルエンサーのサメラ・アウィアさん(右、2022年4月7日撮影)。【翻訳編集】 AFPBB News
【AFP=時事】羽根の付いた頭飾りと伝統衣装を身につけ、片手にはiPhone(アイフォーン)━━ブラジル・アマゾン(Amazon)の先住民サテレマウェ(Satere-Mawe)のインフルエンサー、サメラ・アウィア(Samela Awia)さん(25)は、最新動画を確認するとインターネットに投稿した。
 アウィアさんら複数の先住民グループ数千人は4月上旬、極右ジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領の政策に抗議し、首都ブラジリア付近で座り込みを行った。
 アウィアさんは、先住民が毎年行っている座り込みの様子を現地から動画で伝えている。「こんにちは、サメラが先住民キャンプからお届けしています」。ココナツの殻が付いたかぎ針編みのビスチェとカラフルなビーズと青い花をまとったアウィアさんが、5万4000人のフォロワーに語りかける。
「アマゾンの首都」として知られるアマゾナス(Amazonas)州マナウス(Manaus)出身のアウィアさんは、ネットで活躍するデジタル活動家だ。
 先住民の座り込みは今年、新たな先住民保護区の設置を制限し、既存保護区での採掘を可能にする法案など、ボルソナロ氏の一連の政策を一般市民に訴えることに焦点を当てた。これらの政策が、先住民と環境に壊滅的な影響をもたらすとの批判もある。
 若い先住民インフルエンサーたちは座り込みに加え、ネットでの活動にも力を入れている。
■「iPhoneインディアンズ」
 ブラジルには約90万人の先住民が暮らしている。人口の0.5%にすぎないが、環境保護において非常に大きな役割を果たしている。
 専門家は、先住民保護区の設置と保護が、気候変動を抑える上で主要な資源となる世界の森林を保全する最良の方法の一つだと指摘する。
 ブラジルの先住民は、集団殺害や虐待の犠牲者となってきた。現在も暴力や差別、権利侵害に直面している。
 先住民インフルエンサーは、先住民に対する偏見との闘いが自分の役割の一つだと考えている。
 トゥクマ・パタショ(Tukuma Pataxo)さん(22)は、「先住民にしては現代的すぎないか」とよく質問される。パタショさんは最近、これに答える動画を投稿した。
 パタショさんたちインフルエンサーは、「iPhoneインディアンズ」とやゆされることもある。これに対し「私たちは過去のままでなければいけないのか」と問いかける。
 17万2000人のフォロワーを抱えるパタショさんは、北東部の州の名前にもなっている先住民族「バイア(Bahia)」に所属する。先住民の座り込みキャンプでは有名で、デモ参加者から呼び止められ、写真撮影を請われることも多い。
 パタショさんは「若者は(先住民の)闘争において非常に重要だ。われわれの祖先は数年前から、自分たちの土地を守るために闘う方法の一つとして、ブラジリアに来るようになった。来てどうするのか、何をするのかさえも決めていなかったが、とにかくやって来た」と話す。
「私たちは今や、テクノロジーによってまったく新しいプラットフォームを手にした。全世界に私たちの闘いを知らしめることができる」
https://news.yahoo.co.jp/articles/47ae84f9e8f02e470d1ca545a4ae8e0bcb19838a

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ウクライナ代表が優勝 民族ラップの「カルシ・オーケストラ」 欧州音楽祭

2022-05-16 | 先住民族関連
JIJI.COM5/15(日) 8:32配信

14日、イタリア北部トリノで、欧州最大の音楽祭「ユーロビジョン」優勝を喜ぶウクライナ代表「カルシ・オーケストラ」(AFP時事)
 欧州最大の音楽祭「ユーロビジョン」の決勝が14日、イタリア北部トリノで開かれ、ウクライナ代表のラップグループ「カルシ・オーケストラ」が優勝した。
 ウクライナ勢では、2016年ストックホルム大会で、ロシアに併合された南部クリミア半島の先住民族タタール系の女性歌手ジャマラさんが1位に輝いて以来の快挙となる。
 グループは、西部イワノフランコフスク州カルシで結成。民族音楽や子守歌をモチーフにした「ステファニア」をウクライナ語で歌い、ステージで「(ロシア軍が制圧を進める)南東部マリウポリ、アゾフスタル製鉄所を助けて」と訴えた。優勝を決めると、メンバーは「欧州にありがとう」「ウクライナに栄光あれ」と喜びを語った。
 ウクライナのゼレンスキー大統領も声明で祝福し「来年のユーロビジョンは(優勝者を出した)わが国で開かれることになる」と歓迎した。 
https://news.yahoo.co.jp/articles/3d3f77ee3fc6644376c76ababb604941c7848721

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イタリア・アルプス山脈から南アフリカ・ミオンボ林まで──温暖化する世界の最前線 その2

2022-05-16 | 先住民族関連
GQ Japan2022年5月15日
地球温暖化が加速するなか、米版『GQ』はわずかな数値の差に運命を左右されてしまう8つの地域にスポットを当てた。ここで取り上げる地域は、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度までにとどめれば守ることができる。しかし、平均気温が2度上昇した世界では、修復不可能なまでに失われてしまうだろう。
Qikiqtarjuaq, Nunavut, Canada
カナダ、ヌナブト準州キキクタルジュアク
この北極の島付近では海氷が消滅しつつあり、イヌイットが大切にしてきた伝統が脅かされている。

Jonas Bendiksen
キキクタルジュアクがあるクィキクタアルク地域は、おもにグリーンランドとカナダ本土の間に位置する北極海の島々によって構成され、ここに居住する約1万5000人のイヌイットたちは、困難に対する強さで知られている。2019年、カナダ政府は先住民族に対する親子強制隔離政策など、長年続けられた植民地支配的かつ非人道的な政策について正式に謝罪した。しかし現在クィキクタアルク地域の先住民は別の脅威にさらされている。彼らにとって経済的、文化的に重要な役割を果たす狩猟には、海氷が不可欠だからである。バフィン湾全域では海氷が減少しており、人口600人弱のキキクタルジュアクの島周辺もその例外ではない。地元住民は、海氷が減少し安定しなくなったことで、狩りが難しくなったと認めている。
島であるキキクタルジュアクは、押し寄せる波にも弱い。アラスカ大学フェアバンクス校の気候科学者ジョン・ウォルシュは、「海氷が融解すると開放水域が広がり、開放水域が広がればより多くの嵐が発生します」と話す。「そして嵐は波を立て、波は海岸を浸水させ、浸食を引き起こすのです」。ウォルシュによると、キキクタルジュアク島の海氷はまだ守ることができるそうだ。ただし、これには温暖化を速やかに抑制することが不可欠だという。「1.5度の温暖化シナリオは、北極海の海氷面積が安定する唯一のシナリオです」とウォルシュは語る。「これは気候モデルのシミュレーションによって明確に示されています」。また気候モデルは別のシナリオも明らかにしている。「平均気温の上昇が2度から3度に達した場合、将来的には海氷は失われるでしょう」──E.A.
Italian Alps
イタリア、アルプス山脈
雪のないゲレンデ、閉鎖されるスキー場。ヨーロッパを代表するスキーリゾートが崩壊するかもしれない。
イタリアのアルプス地方は、気候変動によって甚大な影響を受けており、すでに閉鎖したスキーリゾートも少なくない。北東イタリアのエクストリームスキーヤーであるマルチェッロ・コミネッティは、彼の故郷の山々が受けている影響を明かしてくれた。
「私はドロミーティの村にある築350年の木の小屋に住んでいます。窓からはこの地域で最大の氷河が見えるのですが、この氷河がかつてどのような姿をしていたかをよく覚えています。私はここに40年住んでいるため、この氷河を見れば、どれほど解けてしまったかはわかります。冬季は毎日スキーをするので、この目で変化を見ているのです。今日も山に登り、素晴らしい滑走を楽しみました。スキーのために登山をするさい、私は以前よりも薄着で出かけるようになりました。昔は、マイナス20度以下の日が、冬の間は毎日のように続いていたように感じましたが、現在そう感じられるのはたったの2、3日です。あと何シーズン滑りつづけられるかわかりません。人工雪は高価なので。また、ここにはスキーを唯一の収入源としている渓谷の街が多く存在します。山で生計を立てている友人もたくさんいます。私は素晴らしい場所で暮らしていますが、不安を感じずにはいられません」
Yakutia, Russia
ロシア連邦、サハ共和国(ヤクーチア)
南アフリカ、ミオンボ林世界有数の寒さで知られる地域では、永久凍土の融解により大量のメタン(だけではないかも)が放出されている。
日常的に気温が氷点下40度に達するシベリア東部のヤクーツクは、世界で最も寒い都市として知られている。この街は周辺地域と同じく、永久凍土(一年中解けない凍った土の層)の上に立っているが、温暖化によって永久凍土は解けはじめ、壊滅的な地盤沈下のリスクが高まっている。アラスカ大学フェアバンクス校の地球物理学者であり、サハ共和国の永久凍土の研究に携わるヴラディミール・ロマノフスキーは「このような永久凍土にとって、1.5度と2度のシナリオの差は、生きるか死ぬかを左右する差です」と話す。とくに憂慮すべき問題は、この地域の永久凍土が、ほかと比べてもはるかに大量の氷を含んでいることだとロマノフスキーは語る。「氷が多い分、この地域一帯の地盤はすべて湖と化すでしょう。もし傾斜地だったら? 考えたらゾッとするでしょう」
凍土の融解がもたらす影響は、首都であるヤクーツクよりもむしろ郊外で顕著にあらわれている。地盤が崩れて深い裂け目が生じているのだ。この事例として、バタガイカ・クレーター(写真)がある。地球の表面に現れた裂け目からは、気候変動を加速させる大量のメタンや、長年凍っていた細菌やウイルスなどが放出され、さらなる危険をもたらしている。天然痘の遺伝物質の断片は何百年もの間、永久凍土の中で生存できるため、「これは大変危険な事態です」とロマノフスキーは警鐘を鳴らす。
いずれにせよサハ共和国には支援が必要だとロマノフスキーは言う。「1.5度の温暖化でも永久凍土の安定を崩しかねません」。平均気温1.5度上昇の温暖化であれば、表土の再凍結が成功する可能性が高くなる。しかし2度上昇のシナリオの場合、「費用がずっと高くなり、実現可能性が低くなるでしょう」とロマノフスキーは話している。──E.A.
Miombo Woodlands, Southern Africa
南アフリカ、ミオンボ林
気候変動は、この生物多様性のゆりかごの生態系を根本から破壊し、絶滅危惧種の生息地を奪うおそれがある。
傘のような形のミオンボの木にちなんで名づけられたミオンボ林は、アフリカ南部に広がっており、ゾウ、ライオン、ヒョウ、ブチハイエナ、バッファロー、アンテロープ、キリンなどの生息地である。しかしこれらの動物の生息環境は悪化しつつある。気候の変化により、降雨は散発的になり激しさを増した一方、山火事が増加し、絶滅寸前のクロサイなどのすでに密猟によって長年絶滅が危惧されてきた大型動物相が脅威にさらされている。
イーストアングリア大学の気候科学者で、この地域を研究してきたジェフ・プライスによると、1.5度目標を実現したシナリオでさえもミオンボ林に生息する最大半数の種にとって適したものではなく、2度目標のシナリオでは最大で4分の3の種にとって生息不可能な場所になってしまう。プライスがさらに危惧するのは、生態系全体を支える昆虫の存在だ。送粉者が死滅すれば、この地域の生き物の食糧供給は不安定になるだろう。動植物よりも温暖化に敏感であると考えられている昆虫にとって、平均気温の上昇を1.5度までに抑えることがどれほど重要であるかわかるだろう。
ミオンボ林を有する国々ではもうひとつの変化、つまり人口急増が起きており、林の喪失を助長させている。1980年代以降、林の面積は推定30%縮小している。この地域の研究を数十年間行ってきた科学者のナターシャ・リベイロによると、ミオンボ林特有の生物多様性はこの地域に住む80%の人々の生活を支えており、人口増加は天然資源の供給に大きな負荷をかけているという。「気候変動はさらにもうひとつの困難をもたらしました」とリベイロは表現している。──C.L.
Antigua and Barbuda 
アンティグア・バーブーダ
ハリケーン被害を被ったこの島国は、環境を汚染している工業大国に対して訴訟を起こして反撃する。
世界中の島々は海面上昇の危機に加え、気候変動によって悪化したハリケーン、台風、サイクロンを含む熱帯低気圧の異常発達による危険にさらされている。そしてこれは、2017年に衝撃的な現実として私たちに突き付けられた。イルマとマリアという名の2つのハリケーンが、9月、アンティグア・バーブーダを襲ったのだ。とくにイルマはバーブーダ島の建物を81%も破壊した。「われわれの地域はイルマとマリアによって破壊されました」と同国首相のガストン・ブラウンはGQに語った。そこで10月に、アンティグア・バーブーダは太平洋の島嶼国であるツバルとともに、気候変動による被害に対して、環境破壊を多くしてきた国々に法的責任を負わせることを目指す小島嶼国委員会を設立した。「国際法の基本原則として、汚染を引き起こした国が賠償すべきです」と同委員会の法律顧問であるパヤム・アカバンは話す。「汚染した者が支払う。自らの領地を、ほかの国土に危害を加えるような使い方をすることは許されません」。アカバンはこの国々にほかの選択肢はないと主張する。パリ協定は、締結国による国内排出量抑制の取り決めを強制する仕組みを有していない。「工業国は、私たちが気候変動に順応するための支援や、気候変動の影響を緩和することを、慈善活動のように捉えていますが、これは法的賠償であるべきです」とブラウンは話す。アカバンによると、委員会の設立以来、パラオ共和国を筆頭にほかの島嶼国の加入が続き、共同で法的な戦略を準備しているそうだ。しかし、彼らには経済的な補償以上のものをもたらしたいとアカバンは考えている。「小さな島嶼国に今起きていることが、明日はわが身に起こると彼らは教えてくれています」と話す。「彼らの声に耳を傾ければ、せめて私たちはこの集団的大惨事を回避できるでしょう」──E.A
WORDS BY EMILY ATKIN AND CAITLIN LOOBY 
TRANSLATION BY FRAZE CRAZ
https://www.gqjapan.jp/lifestyle/article/20220515-216-the-razors-edge

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完結も話題沸騰、「ゴールデンカムイ」企画展が京都に

2022-05-16 | アイヌ民族関連
エルマガ5/15(日) 18:15配信

「ゴールデンカムイ展」イメージ(c)野田サトル/集英社
明治末期の北海道・樺太を舞台にした、漫画家・野田サトルによる『ゴールデンカムイ』(発行:集英社)。その展覧会が、7月9日より「京都文化博物館」(京都市左京区)にて開催される。
連載完結を記念したオンライン上での全話無料公開を5月8日まで実施するなど、今もっとも勢いのある漫画のひとつである同作。日露戦争で死線を潜り抜けた元兵士・杉元佐一とアイヌの少女・アシ(リ)パが、網走監獄の死刑囚たちが隠したという莫大な埋蔵金を追いかけるストーリーだ。
ツイッターではトレンド常連ともいえる人気作。その魅力は、アイヌ語監修者を設けるほど本格的なアイヌ文化の追求、そして、一見シリアスな画風とは反した個性豊かすぎるキャラクターたちによるギャグ要素だ。その予想を上回る趣向や下ネタが読了後にギャップを生み、SNSではたびたび「変態博覧会」と称される様子も見られるほど。また、4月に発表された実写映画化にも注目が集まっている。
そんな同作の展覧会が、東京につづいて京都でも開催。5つのゾーンに分けて、名シーンの数々や24人の刺青囚人などを掘り下げるほか、野田氏が所有するモデル資料「杉元佐一の軍帽」や「アシ(リ)パのマキリ」、「鶴見篤四郎の軍服」なども展示されるという。
期間は9月11日まで、「京都文化博物館」にて開催。入場料は一般・大学生1300円、中高生1000円(いずれも前売券、5月16日から販売開始)など。※アシ(リ)パのリは小文字が正式表記
https://news.yahoo.co.jp/articles/c037c82c9ff1c1b73d63d9c3c537acfb6dc08a62

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