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「これは世界的な民主主義の問題だ」。米・辺野古署名のロバート・カジワラさんが玉城沖縄県知事と面談

2019-03-11 | ウチナー・沖縄
ハーバービジネスオンライン 2019.03.10
面談後に記念撮影に応じる玉城知事とカジワラさん
新たな署名活動を始めた、ロバート・カジワラさん
 沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡り、県民投票が終わるまで建設工事を中止するよう米ホワイトハウスへ求める嘆願書・電子署名を呼び掛けたハワイ在住の沖縄系4世、ロバート・カジワラさん(32歳)が3月5日、沖縄県庁で玉城デニー知事と約30分面談した。2人が会うのは初めてのこと。
 米国人の父とウチナーンチュ(沖縄住民)の母をもつ知事は「カジワラさんが始めた署名運動は有名人の賛同も得て世界にうねりのように広がった」と謝意を表明。沖縄・アイヌ系の祖父母をもつ米国人青年のカジワラさんは「今後も沖縄の民意を支える貢献を続けたい」と強調した。
 2人は、世界に向けて辺野古新基地反対の声を届けていき、基地問題だけでなく沖縄の民主主義と尊厳を守ることで合意した。カジワラさんは2月21日から、「沖縄の民主主義とサンゴ礁を守れ」と題した新たな請願署名活動も始めている。知事は3月下旬にハワイを訪問する予定を明らかにし、ハワイでの再会を約束した。
玉城知事「沖縄のことを世界に伝えてくれて感謝」
 玉城知事は5日午前10時、知事応接室でカジワラさんと固く握手し、「沖縄に来てからずっと忙しいでしょう」と尋ね、カジワラさんは「辺野古に3回行きました。そこで三線を演奏しました」と答えた。
 玉城知事は「ロバートさんは、辺野古の埋め立てについて21万筆を超える多数の署名を集めていただき、ありがとうございます」と挨拶、こう続けた。
「ホワイトハウスの署名は、ローラさんや、私の大好きなクイーンのブライアン・メイさんらが協力してくださったことで、沖縄のことが世界に伝わりました。そういった意味でも改めて感謝申し上げます。県民投票について、若い人たちの『自分で考えて、自分で投票したい』という気持ちに、ロバートさんのこの署名が影響を与えたことは間違いないと思います。
 それは決して埋め立てに反対というだけではありません。元山仁士郎さん(県民投票を呼び掛けた大学院生)をはじめ若い人たちが、反対、賛成、どちらでもない、みんなが自分の考えを話し合うことで、どこに問題があるのかをとらえるきっかけになりました。日本の若い人たちが将来について考える、大きなきっかけになったと思っています。
 さらにロバートさんは、沖縄の民主主義とサンゴ礁を守るための署名を始めたと聞きました。沖縄のよいインフルエンサーとして、これからも力を貸してください」(玉城知事)
カジワラさん「辺野古の工事が必ず止まると確信」
これに対し、カジワラさんはこう答えた。
「私はハワイから来たウチナーンチュです。知事にお会いできて本当に光栄です。昨年秋の県知事選挙では、とても素晴らしい結果が出て、ハワイでとてもうれしく思っていました。改めておめでとうございます。私は県民投票が大成功を収めたことについても大変うれしく思っています。これからも沖縄の問題を世界に発信するために力になりたいです。
 最初のホワイトハウス署名は、県民投票までに埋め立て中止を求めるという内容でした。次の署名は日付にこだわらずに始めています。ウチナーンチュはハワイにも世界にもたくさんいます。ウチナーンチュだけではなく、世界中の人が沖縄に関心を寄せています。私と私のチームは、沖縄の問題についてどんなことでも協力していきますし、辺野古の工事が必ず止まるということを確信しています」(カジワラさん)
基地問題は沖縄だけの問題ではなく、世界的な民主主義の問題
 玉城知事は、自身の米国での講演についてこう語った。
「昨年10月に県知事に当選してから、11月にニューヨークとワシントンに行きました。そこでニューヨーク大学で話をした時、『実は、沖縄の人々がすべての基地に反対しているわけではない。米国が嫌いだというわけではない。けれど沖縄における米国と日本の民主主義の問題が、沖縄県民の民主主義と食い違うのかどうか、米国の皆さんは考えてください』と話をしました。
 ニューヨークの大学に集まってくれた沖縄にルーツを持つ方も、ルーツをもたないけれど沖縄に興味をもってきてくれた方も、『民主主義の尊厳とは何かお互いに考えましょう、』ということで沖縄との接点が作れたと思っています。
 よく『沖縄米軍基地の問題』といいますが、それはとてもとても、テーマを小さくしようとする人が使う言葉です。なぜ基地を持つのかということは、世界的な民主主義の問題とかかわってくるのだと思います。
『抑止力』という言葉で基地が必要だと考えている人がいますが、それは誰に対して、何に対しての抑止力なのか。その抑止力を持たない世界を作るにはどうしたらいいか、その民主主義の歩みに僕はつなげたいなと、いつも思っています」(玉城知事)
 知事はさらに沖縄の民主主義についての思いを伝えた。
「その民主主義の尊厳、それが今回のロバートさんの民主主義やサンゴ礁を守ろうという署名にも繋がっていく。民主主義の尊厳、それを我々は守るためにあらゆる形で取り組んでいかなければならないと思っています。
 今月実は、ハワイに行くスケジュールを組んでいます。またハワイでも会って、私たちが目指す世界とはどういったものなのか考える機会を作れたらうれしいと思っています。ウチナーンチュの『チムグクル(沖縄の人の真心)』は万国津梁(ばんこくしんりょう)ですから、世界に橋を架けましょう」(玉城知事)
世界のウチナーンチュが、ウチナーンチュであることを誇りに思えるように
 2人は改めて固い握手を交わし、カジワラさんは「ちょっと、おみやげです」と日本語で話した。
「私のCD。私は作曲家でミュージシャンです。これは今回の旅のために作ったCDです。沖縄のことを思ってこの曲を作りました。署名もそうですが、音楽、映画、アートなどの力を使って、沖縄を助けたい。知事もまたミュージシャンということを聞きました。ぜひ楽しんでいただけるとうれしいです」(カジワラさん)
 玉城知事はCDのラベルを見つめて「ありがとうございます」と言った後、突然英語で「一つ聞きたい。あなたは“ヌブイクドゥチ”(沖縄の有名な古典楽曲)に影響を受けた曲も作曲しますか」と聞いた。
 カジワラさんは「もちろんです。“ヌブイクドゥチ”など、私が影響を受けた曲からアレンジを加えて作っています。このCDは4曲の短いものなのですが、今後も琉球音楽のテイストをさらに加えて作っていきたいと思っています。沖縄の伝統的な音楽も大事にしながら、沖縄の新しい音楽を創出して、共有していきたいと思っています」と話した。
 知事は「音楽というのは、バイブレーションですよね。壁も何もない。全部乗り越えていくんですよね」と述べ、カジワラさんは「その通りですね。これは沖縄のルネッサンスだと私はとらえていて、世界のウチナーンチュが、ウチナーンチュであることを誇りに思うようにしたいと思っています」と答えた。
沖縄の文化を知ることで、基地問題だけではなく沖縄の尊厳にも関心を
 玉城知事の父は米国人の元海兵隊員で、母はウチナーンチュという、2つのルーツを持っている。「こういうダイバーシティ(多様性)が今、世界で当たり前になっている時代になっている」と玉城知事は指摘した。
「2つの国のルーツを持つ私でも、沖縄県のリーダーとして仕事を任される時代になっている。これからはあらゆることを乗り越えて協力していく。そういうようにすれば、若い人たちはもっとその力を発揮してくれると私は考えています。
 その気持ちに、例えば楽器を弾いたり、踊りを踊ったり、そういうムーブメントが加わると、もっと勢いをつけていくんじゃないかなと思っています」(玉城知事)
「世界の若いウチナーンチュが、豊かな舞踊や伝統文化、ポップ文化など沖縄の文化を知っていくと、沖縄をもさらに理解することになります。文化を知れば、彼らはただの政治的な基地の部分だけではなく、沖縄の尊厳について深く関心を持つようになるのではないでしょうか。
 私は、沖縄のことを学んだ人たちは、沖縄をサポートしてくれるということがわかりました。この基地が、沖縄の人たちだけではなくすべての人たちにとって利益がないということも理解してもらえると思っています。
 だから私は知事とともに沖縄を助けていきたいし、知事とともに辺野古の新基地建設を止めることに力を注いでいきたいです。今日はありがとうございました」
 知事は「ぜひ、よろしくお願いいたします。今度は、ハワイでお会いしましょう」と述べ、記念撮影をして面談を終えた。
<文・写真/浅野健一(アカデミックジャーナリスト、元共同通信記者・元同志社大学大学院メディア学専攻教授)>浅野健一
https://hbol.jp/187606
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