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フランス領ニューカレドニア 暴動から2か月 影響は長期化

2024-07-14 | 先住民族関連

NHK 2024年7月13日 20時39分

南太平洋のフランス領、ニューカレドニアでは5月、先住民などによる暴動が発生しましたが、2か月がたった今も散発的な衝突が続き、夜間の外出禁止令は解除されていません。不安定な情勢を受けて日本を含む海外からの観光客は激減していて、主要産業の観光業では大きな影響が出ています。

南太平洋のフランス領、ニューカレドニアでは5月、フランスからの独立を目指す先住民などによる暴動が起き、これまでにフランスの治安部隊2人を含む10人が死亡する事態となりました。
暴動から2か月がたちましたが、空港から中心都市ヌメアに向かう幹線道路沿いでは、焼け焦げた店舗などが数多く見られました。
フランス政府によりますと、この2か月で店舗などへの略奪や放火は700件に上っていて、被害額は合わせて日本円でおよそ3800億円にのぼるということです。
暴動後に出されていた非常事態宣言は、5月下旬には解除されましたが、その後も散発的な衝突は続いていて、夜間の外出禁止令は解除されていません。
暴動が発生した5月以降、旅行のキャンセルはおよそ5万件に上るなど、主要産業である観光業への影響は深刻で、フランス政府はこれまでに2万4000人が仕事を失ったとしています。
現地の状況に詳しい専門家は「フランスはいま政治が混乱し、オリンピックも控えている。観光業など、打撃を受けた経済の回復や状況を改善するための対策を行うことは難しい」と指摘し、影響の長期化を懸念しています。

暴動の被害と背景は

オーストラリアの東に位置する南太平洋のフランス領、ニューカレドニアでは5月13日の夜、人口のおよそ40%を占める先住民族「カナック」の若者の一部が中心都市のヌメア郊外で幹線道路を占拠し、車に火をつけたり、店に押し入って略奪したりしました。
フランス政府によりますと、これまでに治安部隊2人を含む10人が死亡したほか、1800人以上が拘束されたということです。
当時、現地にはおよそ50人の観光客を含む300人の日本人が滞在していましたが、空港も閉鎖されて足止めされる状況が続き、フランス政府などが用意した航空機で出国する事態となりました。
フランス政府によりますと、この2か月で店舗などへの略奪や放火は700件に上っているほか、学校や公共施設も被害を受けていて、被害額は合わせて日本円でおよそ3800億円にのぼるということです。
暴動の背景には、新しくニューカレドニアに移住してきた住民にも地方参政権を拡大しようというフランス本国での憲法改正の動きに対し、独立を目指す先住民の間で反発が広がったことがあり、暴動を受けて、現地を訪れたマクロン大統領は憲法改正の手続きを延期する考えを示しました。
ただ、先月下旬、暴動後に拘束されていた独立派グループの指導者らがフランス本国に移送されことを受けて、警察署や自治体の施設に火がつけられるなど、散発的な衝突は続いていて、フランス政府が出していた非常事態宣言は、2週間後の5月28日に解除されましたが、夜間の外出禁止令は解除されていません。

暴動以降の旅行キャンセルは約5万件に

今回の暴動で大きな影響を受けているのがニューカレドニアの主要産業である観光業です。
ニューカレドニアの観光局によりますと、暴動が発生した5月以降、この2か月で旅行のキャンセルはおよそ5万件に上り、大型のクルーズ船の寄港もすべてキャンセルになったということです。
暴動を受けて閉鎖されていた現地の国際空港も6月上旬に再開しましたが、オーストラリアやニュージーランドの航空会社はまだ運航を再開していません。
また、ニューカレドニアの航空会社はオーストラリアや日本などとを結ぶ便を減便して運航を再開したものの、暴動の影響が長引く中、日本便については9月以降、運航を停止することを決めたということです。
現地ではコロナ禍で落ち込んだ観光客が戻りつつありましたが、暴動が起きて以降、観光客の姿はほとんど見られなくなっています。
中心都市ヌメアからボートで5分ほどのところにあるカナール島もシュノーケリングなどを楽しむ観光客が大勢訪れる場所ですが、いまは外国からの観光客はほとんどいません。

現地でレストランなどを経営するティアリ・ロシニョールさんは、売り上げはふだんの1割にまで落ち込んでいると話していて、30人いた従業員も3分の2以上を解雇せざるを得なくなり、これまでは毎日だった営業日も地元の人たちが来る週末を中心に切り替えたとということです。
ロシニョールさんは「いつもならたくさんの人がいて、お菓子を食べたり食事をしたりして楽しんでいましたが、今はすべてが止まってしまいました。何もない、誰も歩いていない砂漠のようです。希望が戻ってきていたのに、5月の暴動ですべてとまってしまった」と肩を落としていました。

「天国に一番近い島」観光客ほぼゼロに

ニューカレドニアは1980年代に大ヒットした映画の舞台となったこともあり「天国に一番近い島」と呼ばれ、日本人にも人気のリゾート地です。
新型コロナの感染拡大前は、日本からも年間2万3000人の観光客が訪れ、その数はフランス、オーストラリアに次いで3番目の多さでした。

20年以上前から現地で土産物店を営む高橋リサさんはチョコレートやTシャツのほか、手作りのキーホルダーや写真立てを販売してきました。
客の8割は日本人で、毎年、夏休みに入るこの時期には、日本からも多くの家族連れが訪れていたと言いますが、ことしは5月以降、ツアーを中心にキャンセルが相次いでいて、外国からの観光客はほぼゼロになったといいます。
また、売れ筋のチョコレートやTシャツを仕入れている会社が相次いで暴動の被害にあい、新たな商品を納入できない状況になっているということです。
高橋さんは「今回の事態は青天のへきれきでした。今は観光客はゼロで、現地のお客さんや治安部隊が買い物に来るだけになりました。コロナから回復して経営が安定する兆しが見えてきたところだったので、とてもショックです」と話していました。

混乱長期化 背景には先住民の不満

混乱が長期化する背景には、人口のおよそ40%を占める先住民と、およそ25%を占めるヨーロッパからの移住者やその子孫との間の格差に対する先住民の人たちの不満があります。

先住民のオバデ・ディディエさんはヌメア郊外の水道や電気が通っていない地区に自分で家を建て、8人の子どもたちと家族10人で暮らしていて、トイレやシャワーにはためた雨水を使い、飲み水はペットボトルを持って近くの水道にくみに行っているといいます。
氷の製造・販売などの仕事をしていましたが、どれだけ働いても自分の家を買うことなどできないといい、せめて子どもたちには自分と同じ思いはしてほしくないと考えてきました。
5月13日に暴動が起きたとき、ディディエさんもそうした思いを訴えようと街に出ましたが、治安部隊のゴム弾が当たり顔や腕にけがをしたほか、抗議活動への参加を理由に仕事も辞めさせられたということです。

ディディエさんは「ことばにはできませんが、この国には人種差別があると感じています。そして、それに対する怒りがあります。何十年もフランスとの共存を探りましたが、1度も実現しませんでした。フランスには出て行ってもらいたい」と話していました。

長年、ニューカレドニアを取材してきた、ジャーナリストのニック・マクレランさんは、「不平等があり、それが引き金になっている。カナックの若者はヌメアの中心に住んでいるヨーロッパ系の住民と同じチャンスを与えられていない」と指摘します。
その上で「フランスはいま政治が混乱し、オリンピックも控えている。観光業など、打撃を受けた経済の回復や状況を改善するための対策を行うことは難しいだろう」として、混乱の影響が長期化することを懸念していました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240713/k10014511021000.html

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