聞き手・斎藤雅史 有料記事
北海道新聞2024年7月12日 22:00(7月12日 22:57更新)
【白老】12日で開業4年を迎えた民族共生象徴空間(ウポポイ)。伸び悩んでいる来場者数を増やす狙いもあり、今年4月から新たな誘客策や展示に取り組んでいる。観光客の獲得や先住民族が主体となる展示方法について、それぞれの専門家に聞いた。
■より広い層へ誘客拡大を 北大大学院国際広報メディア・観光学院 石黒侑介准教授
・・・・・・・
・・・・・・・
■民族職員の個性生かして 北大先住民・文化的多様性研究グローバルステーション 鵜沢加那子助教
鵜沢加那子さん
現在、米国のミシガン大学美術館で2026年秋に開くアイヌアート展に向けて、企画構成を中心になって担うメインキュレーターとして関わっています。
アート展では企画段階で、差別や土地の権利といった社会的な問題がどの程度盛り込まれているかが、展示の内容を決める基準や指標になっていました。
その場で見て楽しいという一過性ではなく、継続的な学びにどうつながるか。社会にいかに貢献できるかを、館内で細かく審査されました。
海外で先住民族に関わる展示をする際は、必ず当事者を入れる決まりになっています。むしろ当事者を入れない場合は非難されます。
現在企画中の展示は5年をかけて準備しています。これまでの美術展では主題とされてこなかったアイヌ女性をメインに据えた内容です。
アイヌ民族の中学生へのいじめを描いたアニメーションも作る予定。歌や踊りを交え、現代のアイヌの人たちが直面している問題をどう伝えるか試行錯誤しています。
短期間に企画展や特別展を重ねて来場者を増やす方法もあるかもしれません。一方、先住民族であるアイヌが置かれている背景や、さまざまな経験を持ったアイヌ民族の職員の個性が発揮できる展示のあり方や運営のあり方が、何より重要だと思います。
<略歴>うざわ・かなこ アイヌ民族出身のアーティストで権利活動家。少年期は東京と平取町二風谷で過ごし、現在ノルウェー在住。2020年にノルウェー北極大学で博士号を取得し23年8月から現職。キュレーターとして西欧や米国でアイヌアート展などを多数企画。