ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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石の呼吸

2013-05-18 12:27:00 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「石の呼吸」です。「泡」の話題からの流れで今日は「石の呼吸」とします。

もちろん石は生物ではないので呼吸しません。「石の呼吸」とはタイトルになりやすい一種の比喩的表現です。

昨日、水入り瑪瑙の水抜けの事を考えていたら、これはもしかすると「石の呼吸」と解釈できるかも知れない、と思ってしまいました。どんな石でも地中から地上に掘り出された瞬間から大気に晒されます。水入り瑪瑙の水抜けは地上の環境下で起こる乾燥のひとつで、それは長い時間をかけた「石の呼吸」の1回分という比喩ができるような気がしました。石の時間は長いのです。

黄鉄鉱や白鉄鉱のような硫化鉱物も空気と反応して酸化して黒ずんでしまいます。岩塩も空気中の水分と反応し溶けてしまいます。ある種の鉱物は地上に出て来た瞬間から地上の空気と化学的な反応が生じてしまいます。それも拡大解釈すれば、「石の呼吸」の一種と考えられなくはありません。

大谷石や日華石のような凝灰岩は吸水・浸透性が高く、石材として使われますが、その性質もある種の「石の呼吸」と解釈できるような気がします。ゼオライト等の多孔質鉱物も然りです。

そうそう、本当に「石の呼吸」といえるものがありました。それはストロマトライトです。ストロマトライトはシアノバクテリアと泥粒などによって作られる層状の構造を持つ岩石です。それは先カンブリア紀の化石で有名ですが、オーストラリア・シャーク湾(ハメリンプール)には現生のものもあります。シアノバクテリアは水中で光合成を行い、酸素の泡を作り出しています。NHKで放送された「地球大紀行」や「生命」の映像を思い出してしまいます。

「石の呼吸」は現実に存在するようです。

それは地球が生きている証拠なのです。

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泡2

2013-05-17 13:06:16 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「泡2」です。

石のブログ的に「泡」の話題では、やはり「水入り水晶」が登場します。

「水入り水晶」は水晶の結晶内に捕獲された水が入っている水晶の事で、その水と共に入っている泡の動きで水の存在が分かります。水入り水晶を傾けたりすると水晶内部の空洞にある水が泡と共に移動する様子が見えます。水晶のインクルージョンには不思議が詰まっていますが、その最たるものはやはり水だと思います。その神秘は泡が物語っているようです。

水入り水晶は水晶が成長する時に熱水として存在していたのだろうと思います。その水晶の成長が止まり、我々がそれを手にした時は冷えて結晶内部に閉じ込められた水の体積も縮小します。恐らくその縮小分が泡になっているのだろうと思います。

Dscf4252
中国 江蘇省 東海 産 水入り水晶(Quartz with water included)

これは水入り水晶ですが、この写真では内部に水が入っている事は分からないと思います。この水晶を手に取って動かすと矢印の部分の内側に水と泡が入っている事が分かります。この水晶は手のひらサイズなので水と泡の動きは肉眼で確認できます。

先日、100円水晶コーナーに置いてあった小さな中国産の両錐水晶を買われたお客さんが、後日、水晶の中に水が入っていたと教えてくれました。それはハーキマーダイヤモンドのような形をしたもので、小さな黒い粒々が入っているものでした。そのお客さんはお仕事で使われている業務用の顕微鏡でその水晶を見てみたらしく、水晶内の小さな空洞と水と泡とがしっかり確認できたとおっしゃいました。

水入り水晶の存在は不思議で神秘的な珍しいもののように思えますが、もしかすると、小さなマイクロ・ナノスケールのサイズではそんなに珍しいものではないのかも知れません。

実際、鉱物結晶中に捕獲された流体は流体含有物と呼ばれ、石英の他にもダイヤモンド、緑柱石、コランダム、石膏などの鉱物にも存在しています。流体含有物中に確認される流体としては水以外に液体二酸化炭素や水蒸気・炭酸ガスなどのガス成分が代表的です。

また、流体含有物には流体と一緒に固体が存在している場合があり、日本産の天然ダイヤモンドもそのような場所から発見されています。

サイズは人間サイズの話に戻りますが、水入り瑪瑙の存在も忘れてはいけません。瑪瑙の中には内部に水が入っている水入り瑪瑙があります。私は鉱物趣味に入った初期の段階で水入り瑪瑙を購入しました。水が入っている事は神秘的でそれだけでその瑪瑙の存在価値があると思っていました。ただ、水入り瑪瑙内の水は枯れる事があるようです。水入り瑪瑙は幾つかあったのですが、それらの瑪瑙のたぶたぶにあった水の動きは無くなってしまいました。それと同じような事を澁澤龍彦夫人であった澁澤龍子さんが「夜想33 鉱物」の中で書いておられました。もしかすると、水入り瑪瑙の水は抜けるものなのかも知れません。

水入り水晶の水はそのままですが、水入り瑪瑙の水は瑪瑙にある目に見えない微細な亀裂などから乾燥して抜けて行っているのかも知れません。

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泡1

2013-05-16 18:34:14 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「泡1」です。

昨日は定休日で、天気も良かったので、前から気になっていた氷見の「ひみ番屋街」に行って来ました。「ひみ番屋街」は氷見漁港場外市場に昨年秋にオープンした新しい道の駅で、飲食店やお土産物屋があり、そこに隣接して総湯(共同浴場)があります。

その総湯に朝一で入って来ました。昨日は天気が良かったものの空が白っぽく、期待していた海越しの立山連峰は見れませんでした。いつか温泉に浸かりながら海越しの立山連峰を見たいものだと思っております。密かに企んでいる事は満月の日に海沿いの旅館に泊まり、夜は海に沈んでいく満月を見て、その翌朝、海越しの立山連峰から昇る朝日を見る事です。お天気次第ですが、氷見ではそれが可能です。

今日は「泡1」です。

氷見温泉郷の総湯には炭酸風呂がありました。炭酸風呂は炭酸ガスが溶け込んだ風呂の事で、それは健康に良いとされています。私は健康よりもその泡そのものの方に興味が湧きました。湯に浸かっていると無数の泡が身体にまとわりついてきます。肌に付いた無数の泡の振る舞いは非常に面白く、その泡は払っても払っても新たに生成し執拗にまとわりつきます。それらの無数の微細な泡は銀色の球体で、非常に美しく見えました。「泡」にも「微」としての「美」があります。

「泡」といえばマイクロバブルの事を思い出します。マイクロバブルにも面白い特性があり、興味深いものがあります。すぐに思い出すのは愛知万博の日本館で見た海水魚と淡水魚の共生でしょうか。そのナノバブルの展示では鯛と鯉とが同じ水槽で泳いでいました。それは「石に花咲く」現象でした。

石のブログ的に「泡」を話題にするとすると、やはり最初は日本産の天然ダイヤモンドの発見の事にならざるを得ません。日本産の天然ダイヤモンド発見は2007年当時、大きなニュースになりました。

それは愛媛県の特殊な露頭の岩石から見つかりました。それはマントル捕獲岩(玄武岩中の苦土かんらん石)の中の二酸化炭素からなる流体含有物内の泡の中にありました。そのサイズはミクロンスケールで、顕微ラマン分光分析によって発見されました。

その発見の意義は大きく、その成因の解明も含めて大きなパラダイムシフトをもたらしました。我々の足下にはまだまだ未知の現象がたくさんあります。

「泡」では水入り水晶の存在も忘れてはなりません。

「泡2」に続きます。

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石川県鉱物同好会第3回採集会

2013-05-13 12:22:07 | 日記・エッセイ・コラム

昨日、第3回採集会を行いました。

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12ヶ滝

集合場所は小松市の12ヶ滝、晴天の下、今回は小学生も含めて総勢21名の参加でした。

今回の採集地は尾小屋、金平周辺です。焼き山の方は京都ナンバーや名古屋ナンバーの車が来ていたそうですが、今回の我々の採集地は重見坑と赤目脈のズリ場です。

まず、山本会長から今回の採集場所の説明がありました。会長は昭和26年の石川県地下資源調査報告書や尾小屋鉱山資料館資料を元に今回の採集場所の詳しい資料も用意して下さっておりました。このような事前の資料は貴重な情報になります。

全員の集合写真を撮った後、早速、最初の重見坑のズリ場へ向かいました。

Photo
重見坑のズリ場

重見脈は自然金を伴う石英脈で、かつて金鉱脈として稼行されておりました。昨日はさすがに金鉱脈の標本は見つかりませんでしたが、紫水晶や方鉛鉱、閃亜鉛鉱は容易く採取できました。

Photo_2
方鉛鉱(Galena)

Photo_3
閃亜鉛鉱(Sphalerite)

岩石を割ったばかりの方鉛鉱はキラキラして非常に美しく、鉱物も鮮度が重要です。小学生も鮮度の良い閃亜鉛鉱を見て喜んでいました。

Photo_4
炭焼き窯跡

採集場所に気になる穴がありました。会長から炭焼き窯の跡だと教えてもらいました。かつての鉱山は今では近代遺跡として扱われます。このような穴も近代遺跡の一部なのです。

午前中は重見坑の採集、昼食をはさんで、午後は赤目脈へ向かいました。

昼食はお弁当の方以外の皆さんは近くの「花水樹」に行きました。採取場所の近くで食事ができる店がある事は非常にありがたい事です。食事中の石談義も同好会ならではの楽しい時間です。

午後は赤目脈のズリ場での採集でした。写真を撮り忘れたのですが、Yさんが採集した黄銅鉱の結晶はなかなかのものでした。それは小さな水晶の群晶の中に小さな黄銅鉱の四面体三角形ピラミッドがチョコっと顔を出していました。それから会長が採集した重晶石の結晶もなかなかのものでした。それは5cmくらいの白い板状結晶でした。重晶石らしい重量感がありました。私はというと小さな水晶の欠片や重晶石の欠片くらいで大した収穫はありませんでした。採集会の目的は収穫よりも会員たちとのコミュニケーションだと思っております。

今回の採集会は天候にも恵まれ、楽しい時間を過ごす事ができました。早めの解散だったので、夕方には金沢に戻ってお店に出ました。

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穴1

2013-05-07 11:48:21 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「穴1」です。久しぶりのブログ更新です。ゴールデンウィーク中は午前中からお客さんがありましたので、ブログ更新よりも接客を優先してきました。普段は静かな午前中にブログを書いております。不思議な事に、ブログ更新をしないでも、それほどアクセスが落ちない事が分かりました。

さて、「穴」です。穴というキーワードは何度か登場しておりますが、タイトルにするのは初めてです。

アメリカ・ユタ州のアーチーズ国立公園は砂岩地帯に自然に出来た穴でした。このような地形はアーチーズ国立公園以外にも世界中にあります。もちろん、日本にもあります。有名なところとしては南紀白浜の円月島でしょうか。特に夕日が円月島の海食洞の穴に入っている風景は貴重な絶景だと思います。地球の穴と太陽との共演は写真を撮りたくなる瞬間です。それは写真を撮る人と地球と太陽との宇宙的な位置関係で成り立つ貴重な光景です。そう言えば、そのような光景は月でも可能だと思います。円月島という名前のように満月が円月島の穴に入っている写真も見てみたいものです。

円月島に限らず、自然の穴は、絶景を創りだす一種のカメラフレームです。そのフレーム越しに見る風景には太陽や月の天体ショーだけではなく、他の自然現象でも特別な風景としての付加価値を付けると思います。

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忘帰洞という銘の付いた古谷石

これは穴の空いた古谷石です。水石的には「ヌケ」がある洞門タイプの石です。この石は名古屋の骨董市で入手したものですが、この石の入った木箱には忘帰洞という銘が書かれていました。この石の持ち主はこの古谷石を忘帰洞に見立てていたのでしょう。忘帰洞は有名な南紀勝浦温泉・ホテル浦島にある洞窟温泉の事です。

そこへは私も一度、行った事があります。洞窟温泉は洞窟好きにとってはたまらない魅力があります。私が行った時は生憎の雨の日でした。私は忘帰洞の温泉に浸かって、そこから見える外の海をボーっと見ていました。すると、雨模様の空に日が差してきて、何と!虹が見えて来ました。5分位の時間だったと思いますが、虹の発生から消滅までの完全版を見る事ができました。それも洞窟風呂に入りながら、その狭いアングルから、海にかかる虹を見る事ができました。それは幸せな一時だったと思います。ただ、その光景の写真を撮れなかった事が残念でした。

その事を思い出していると、アーチーズ国立公園の岩のアーチと虹のアーチの共演している写真を見てみたいと思ってしまいました。

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