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鉱物の部屋へのいざない

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アラバスター(雪花石膏)

2012-04-05 11:17:36 | 日記・エッセイ・コラム

今日はアラバスター(雪花石膏)です。

いい名前です。アラバスターは何となくアラベスクにも似ています。あの異国の眩暈がするような連続した幾何学模様を連想します。日本語の雪花石膏も雪に花に石に膏、好きなものの名前が続き、お店の名前にも通じるところがあります。

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上の写真は2005年の愛知万博の時にエジプト館で購入したアラバスターのピラミッド形の置物です。黄色と白の縞模様が美しいと思います。縞模様はメノウにもよく現れますが、他にはアラゴナイトや蛍石や大理石等にも現れます。もちろん、地質の世界でもよく観られる模様です。特に褶曲した縞模様には驚異と共に美も感じてしまいます。

このアラバスター(雪花石膏)、ひとつ思い出があります。確か2002年の冬でした。私は名古屋ボストン美術館で「ピラミッドの時代」という展示を見ました。それは古代エジプト美術の展覧会で、その中のいくつかの展示物の解説でアラバスター(方解石)という表記がありました。

アラバスターは雪花石膏の事で方解石はカルサイトです。明らかに鉱物名が違っていると思い美術館の受付の人にその事を指摘しました。受付の人は「その件は承りましたが、この展覧会は来週で終了しますので・・・」と曖昧な会話になってしまいました。

私はその時は、雪花石膏と方解石は見た目が似ているので単純な間違いだろう、と思ってすぐにその事は忘れてしまいました。この事を思い出したのは2007年に「岩石と宝石の大図鑑」という本を見た時です。方解石のページを読んでいると「古代エジプト人はこの方解石をアラバスターと呼んだ」とありました。

それで分かりました。古代エジプト人の間違いを古美術の世界ではそのまま間違いのまま伝承しているからだ、と思いました。名古屋ボストン美術館が間違えたのではなかったのです。恐らく鉱物的な知識がなかった古代エジプト人は見た目でそれ(方解石)をアラバスターだと間違っていたのです。そして古美術の世界ではアラバスター=方解石という古代エジプト人たちの間違いをそのまま踏襲しているのだと思います。

実は古代と現代とでは鉱物種の名前が違っているケースが他にもあるようです。その話題はまた後日にします。

コメント
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