事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

攻殻機動隊への道PART6 ~ Stand Alone Complex

2008-03-30 | アニメ・コミック・ゲーム

うる星やつら」篇はこちら。

Sss_key おっと肝心の「攻殻機動隊」にまだ話が及んでいなかった。アニメ特集の最終回は、もちろんこの作品のことを。劇場版の1作目と2作目にあたる「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「イノセンス」には押井守らしい臭味が爆発。そのために敬遠されるリスクはある。なにしろ「ビューティフル・ドリーマー」とおんなじ“現実と夢想の狭間の追求”をくどいぐらいにくり返しているからね。押井が、作品のなかで言うように「ネットの世界は広大だ」とほんとうに信じているかは疑問だし。

 でも、押井の弟子にあたる神山健治が構成したテレビ版「攻殻機動隊S.A.C(STAND ALONE COMPLEX)」はオタク濃度の低い人もぜひ見てほしい。攻殻の世界を借りて“刑事ドラマ”がつくりたかったと企画されたこのシリーズは、テレビの最大の長所『長時間にわたってひとつのテーマを追求できる』ことを利用し、ネットの世界で機械に精神(Ghost)は宿りうるかを、原作の士郎正宗以上にハードかつ徹底的に描いている。文句なく傑作。菅野よう子(溝口肇の奥さんです)の音楽もみごとだ。

 2004年、わたしが見たDVDソフトのほとんどは押井が関与するプロダクションI.G.(あのタツノコプロから分離)の作品だった(「キル・ビル」を含む)。日本がいつの間にか世界に誇れる最大最良のアートとなったジャパニメーションを、日本人が楽しまないなんてもったいない。

「海の神兵」「白蛇伝」「鉄腕アトム」から遠く離れて、アニメは今、いびつではあるけれどそれなりに日本で花開いている。ぜひ、ご賞味を。

Tachikoma1

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攻殻機動隊への道PART5 ~ うる星やつら

2008-03-30 | アニメ・コミック・ゲーム

機動警察パトレイバー篇はこちら。

Beautifuldreamer攻殻機動隊」をつくった押井守が名をあげたのはご存知「うる星やつら」による(同時に、脚本家伊藤和典の出世作でもある)。高橋留美子のハチャメチャな原作がまだしもまともに思えるぐらいアニメはぶっ飛んでいた。製作にキティミュージックがかんでいたせいもあるのだろうが、エンディングテーマがあがた森魚のヴァージンVSだったあたり、狂いっぷりも板についている。

 このシリーズは、要するに主人公の諸星あたるが女の子を追いかけ回し、鬼娘ラムが嫉妬してあたるに電撃を加える、このフォーマットさえ守っていればあとは何でもありの自由さが身上。ところが、上には上がいる。劇場版第一作「オンリーユー」の併映は同じキティ製作の「ションベンライダー」。永瀬正敏や河合美智子のデビュー作。監督は、当時ガキ映画を撮らせたら日本一だった相米慎二(「翔んだカップル」「セーラー服と機関銃」)。長回しを基調とした相米の奔放な演出テクを見て押井はこう思ったのだそうだ。

「あ、もっとメチャメチャやっていいんだ。」

そしてできあがったのが第二作「ビューティフル・ドリーマー」。友引高校の永遠につづく文化祭前夜の物語。“作家”としての押井はこれで一気にメジャーになった。

 ところがそれが災いしたか、押井の映画は概してむずかしい。「ビューティフル~」で言えば、夢と現実の境界線をおなじみの面々に右往左往させるのだが、これはもうどう考えても“漫画映画”を逸脱している。しかし90年代、人間と機械、リアルとネットのにじんだ境界線を描く「攻殻機動隊」は、全世界で熱狂的に迎えられる(製作したバンダイも驚いたとのこと)。どうやら、オタクの時代が到来していたのである。

Cherry 最終回はテレビシリーズ篇。よけいなことですが、相米はわたしの妻の高校の先輩だそうです。合掌。

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攻殻機動隊への道PART4 ~ 機動警察パトレイバー

2008-03-30 | アニメ・コミック・ゲーム

AKIRA」篇はこちら。

Pato1 「AKIRA」と「攻殻機動隊」をつなぐ線上に、ひとつ重要な作品「機動警察パトレイバー」がある。なんかもうオタク一直線なタイトルでもうしわけないけど、しかしおもしろさは保証する。スタッフのメンツを見ればそれは一目瞭然。

「うる星やつら」で注目された押井、上山トキワ館の息子にしてあの平成ガメラシリーズを手がけた伊藤和典(高橋留美子の亭主じゃないかという噂は結局検証できませんでした)、メカデザインならこいつしかいない出渕、そして劇場版最新作の脚本はとり・みきという豪華版。

 特に、押井が手がけた劇場版1作目と2作目は大傑作。コミックやOVAでは能天気な警視庁特殊車両二課第二小隊が、いつもとぼけているくせにいざとなると超有能という上司の理想型“カミソリ後藤”隊長とともに、平和ニッポンの喉元に突きつけられた革命や内乱に応戦する。

 その緻密なストーリーは制服好き(この場合は自衛隊です)伊藤の得意技だし、なにより東京をこれほど活写している映画はめずらしい。

ロボットアニメかよー、と偏見を持たずにぜひ観てほしい。そしてこのシリーズの成功をもとに、押井はいよいよ「攻殻機動隊」を製作する。余談だけれど、押井が「機動警察~」を企画したのは、当時予定されていた宮崎駿の「カリオストロの城」に続く劇場版ルパン三世の企画が流れたから。パトレイバーファンにとってはありがたいことなのだろうが、観てみたかったなー、押井のルパン三世。

次回は「うる星やつら」。

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攻殻機動隊への道PART3 ~ AKIRA

2008-03-30 | アニメ・コミック・ゲーム

手塚治虫の功罪はこちら。

Akira  今思えば不思議なくらい大友克洋の「AKIRA」は熱狂的に迎えられた。「童夢」(’82 双葉社刊……「真っ赤なトマトになっちゃいな」という衝撃のセリフあり)でSF大賞を後にとることになる大友は、いきおいをそのままにこの大ヒット連載を開始する(『ヤングマガジン』1982年12月16日号)。そしてこのころから、自らをオタク(そんな言葉はまだ一般的ではなかったが)であると意識した読者たちは、単行本発売時に爆発した。

 連載時と同じ判型、値段は他の少年コミックスの3倍、青年コミックスと比べてもほぼ2倍という強気の講談社の商売は奏功し、誰もが驚くような売り上げを記録した。オタクごころをくすぐったわけね。わたしもよくおぼえている。発売当日、書店に何段も平積みされた「AKIRA」第1巻を前に、いかにもそれ風のオタクたちが嬉々としていたのを。でまた続刊が出るのが遅いものだからそのたびに大騒ぎになるのだ。

 そして88年、自らの手で映画化された劇場版「AKIRA」は、ぶっ飛んだ映像表現と、革新的と言っていい“”で(先日DVDで久しぶりに見直してよくわかった)またしてもオタクを熱狂させた。動かない画と無音のマンガ表現へのフラストレーションを解消したかったんだろうなあ。

 それにしても、デビュー当時は「原稿が(スカスカだから)なんとなく白い」と言われていた大友が、「童夢」以降徹底して書き込むようになったのはなぜだろう。モンスター化した鉄雄の姿や、瓦礫のネオトーキョーなど、これがあの大友かと思うほどだ。当時漫画界でニューウェイブと呼ばれた大友、高野(「絶対安全剃刀」)文子吉田(「カリフォルニア物語」)秋生などの“瞳がキラキラ輝いたりしない三白眼な日本人顔”キャラが世界に通用したことも画期的だった。そして結果的にはこの映画が起爆剤となり、「攻殻機動隊」ブレイクへの道を開いたのだ。ジャパニメーションが、商売と芸術表現が両立しうると世界へ証明した記念碑的作品。

次回は(やると思ったでしょ)「機動警察パトレイバー」を。

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