事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「東京ゴッドファーザーズ」('03)Tokyo Godfathers 

2008-03-09 | アニメ・コミック・ゲーム

Tokyogodfathers01 ソニー・ピクチャーズ配給 原作・脚本・キャラクターデザイン・監督:今敏

白い雪が町を染めるクリスマスの夜。3人のホームレスはゴミ袋の山の中から“赤ん坊”を見つけ出した。名前を付け、手掛りを探し、その子の親捜しを始めることにした3人に、次々と運命の出会いが訪れ始める…

いきなり、幼稚園児による東方の三賢人の場面から始まる。キリストの生誕劇。この日はクリスマスイブで、つまりこれは“何らかの奇跡が起きますよ”と脚本(「白線流し」の信本敬子と共同)の今敏の高らかな宣言だ。どうしてこんな手間をかけるかというと、それでもストーリーに偶然が多すぎるという批判が散見される世の中だから。いくら無宗教の国でも、「素晴らしき哉、人生」や「クリスマス・キャロル」ぐらい観ておけっちゅうねん。「古ーい!」あ、そお?なら「ダイ・ハード」や「ホーム・アローン」でもいいや。聖夜に奇跡はつきものなのである。ついでにこのホームレスたちが、三賢人をシンボライズしているわけね。

 もうひとつの批判は「このストーリーなら、実写でもかまわないじゃないか」という意見。もっともな話で、声優の江守徹と梅垣義明(ろくーでなーしー♪で鼻から豆ミサイルのあの人)、そして岡本綾の三人で、そのまま実写映画化しても泣ける映画にはなったろう。赤ちゃん役のこおろぎさとみ(クレヨンしんちゃんのひまわりでお馴染み)は別だけど。でも今回は、むしろアニメならではの味を実現させたことを評価すべきだと思う。何よりも、こんなに美しい聖夜の東京は実写では実現できないだろうし。

 あたたかい気持ちになれる、完璧な奇跡の物語。クリスマスまで待たないで、ぜひ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

解説者を評定する ~ 古田敦也

2008-03-09 | スポーツ

掛布雅之篇はこちら。Furuta01

 日本シリーズを見ていていつも不思議に思うことがある。事前に詳細なデータが各スポーツ紙に特集され、戦力分析や勝敗予想を解説者たちが競うのだが、これがもう見事にマニアックなのだ。いつも「それでも野球選手だったのか」と吐き捨てたくなるほど低レベルな解説しかできない彼らが、この決戦においては「おー、さすがだ」と唸らせる分析をみせる。まあ、ダメなヤツはダメだけどね、有藤とか。

 そんななか、最も驚かされたのはヤクルト時代の広沢。中継のゲストに招かれた彼は、ピッチャーの投球モーションの癖や、ランナーの動きを的確に指摘し、「プロってここまで計算してやってたのか」と見直した。ところが「なんでお前は放送で機密事項をばらすんだ!」と当時の野村克也監督に怒られたというオチまでついている。つまり、観客が本当に知りたい肝心な部分はおよそ解説されないのである。

 このことは、解説者たちが結局はまたユニフォームを着ることに恋々としているんだと気づかせてくれる。そこをスパッと思い切ることができれば、ペナントレースの解説においてもネタをばらしまくって視聴者を喜ばせてくれるんだろうに。ダメかな、解説者のもうひとつの本能は、“選手や監督たちと仲良しでいること”らしいし。

 さて、そんな事情のなかでも、ダントツに面白い解説はやはり古田敦也。日本シリーズの解説のレギュラーとなった(てことは優勝から遠ざかっているわけ)彼の解説は、現役であることの強みを差し引いても群を抜いている。引退してもヤクルトの監督の座は確実だし、解説者になってくれるのはずいぶんと先だろうけれど。それまでは、かなりマシな解説だと思っている田尾や牛島でがまんして……ありゃ、今年は二人とも監督になっちゃった。やっぱりユニフォームが恋しいかーっ! 
【解説者を評定する・終了】……と思ったけどあの人を忘れてた!

※これは2004年のネタ。古田にとってプレイングマネージャーという選択肢は幸せなことだったろうか。田尾、牛島、古田には、しかしもう一度リベンジの機会がめぐってくると思う。メジャー組が帰国し、指導者になることで日本プロ野球が変わる前に、絶対に出番はめぐってくるはず。あ。でも閉鎖的で嫉妬深い日本球界は、一種の異端児であるメジャー組に、監督の座など用意しないんだろうか。それはそれで哀しい。ところで古田はどこの解説者になるのかな。やっぱり奥さんの関係でフジ?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

解説者を評定する ~ 掛布雅之

2008-03-09 | スポーツ

西本幸雄篇はこちら。Kakefu01

楽天、掛布氏に監督就任を正式要請

プロ野球への新規参入を表明している楽天の三木谷浩史社長が7日、元阪神の主軸打者として活躍した野球解説者の掛布雅之氏(49)に新球団が出来た場合の監督就任を正式に要請した。掛布氏は「楽天の参入が決定していない段階で答えを出せるものではない」と、返事を保留した。
 この日午前、三木谷社長が大阪市内を訪れ、掛布氏と約1時間話し合った。監督要請について、掛布氏は「野球界が変わろうとしている時期に声をかけていただいたことは喜ばないといけない。いつかグラウンドに戻る、ということは心に持ち続けていた。ただ、仙台となると家族の問題もある。阪神へのこだわりが残っていることも事実」と話した。
2004年10月7日付朝日新聞

 阪神生え抜きの選手が、読売テレビと契約した途端、妙に巨人寄りの解説をし始める不思議さは、故村山実にしても、この掛布にしても、球界で生き残っていくことの大変さを物語る。

 村山の場合は阪神の監督に結果としてなったからまだいい。でも掛布は?彼ははっきりと阪神に捨てられた人間ではないか。飲酒運転とかスキャンダルもあったわけだけれど、ミスター・タイガースの晩年に、阪神の扱いはオーナーが欠陥商品扱いするなど“冷遇”そのものだった。

Kawato01  楽天が球団を立ち上げられるかが不確定な状況では、監督就任は保留扱いしかないだろうけれど(その意味でマーティ・キーナートは勇気があるし、期待もしている)、その理由として阪神へのこだわりをあげるあたり、縞のユニフォームにはやはり魔力があるのだろうか。それとも復讐したいとでも?

 彼の解説は技術論がくどいという世評もあるようだが、同じ阪神→読売テレビでありながら、いつも単なる酔っぱらいの戯言のスタンスを崩さない川藤幸三(彼は意外に球団から厚遇された)との差はすごい(笑)。で、わたしは両名ともに好きなのである。マジで。
60点。

……楽天の監督はご存じのように田尾に決定。そして使い捨てにされて野村克也に。掛布はだから断って正解だったかも。ヤクルトで成功、阪神で大失敗だった野村の起用は、岩隈を再生できるかにかかっている。

次回は最終回。満点評価の人です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

解説者を評定する ~ 西本幸雄

2008-03-09 | スポーツ

中畑清篇はこちら。Enatsu21

 2004年9月27日現在、日本プロ野球をめぐる状況はまことに混沌としている。楽天とライブドアの確執やパ・リーグのプレイオフに話題の中心はうつっているようだが、今回の騒動の、根本に立ちかえって考えてみることが必要かと。近鉄とオリックスの合併にからんで、巨人・西武・オリックスの3球団が企図したものは何なのか。ここを忘れると選手会は内紛報道などで足元をすくわれてしまうだろう。

 いずれにしろ、プロ野球界からファンを遠のかせた元凶が、渡辺恒雄を中心としたオーナーたちの「ギルド」にあったことは記憶しておこう。へたな戯画よりも露骨。「たかが選手が」老害とはまさにこれ。こんな状況を、阪急と近鉄の黄金時代を率いた西本はどんな思いで見ているのか……

 日本シリーズ出場7回。しかし一度も制覇することができなかった悲劇の闘将。というか短期決戦にこれほど弱い人も珍しい。年季の入った解説は味わい深く、隣のチンピラ解説者が「(巨人の篠塚は)打率はいいんですけどね、打点が少なくて」とぼやくと「でもねえ、監督としては、3割は確実に打ってくれるバッターがいてくれるっていうのは助かるものなんですよ」と例の関西弁で蹴散らしてくれた。まあ、誰に向かって何を解説しているのかという疑問はあれど(笑)。こういう述懐はわたし好み。この人でなければ吐けないセリフだし。一度「江夏の21球」に対する彼の反論を、文章の形で読んでみたいものだ。
80点

1018nishimoto江夏の21球
故山際淳司が活写した近鉄VS広島の79年日本シリーズ最終戦最終回の江夏豊の投球のこと。特に、一死満塁の時点で監督西本が出したサインはスクイズ、しかしこれを“投球モーションの最中に見破った江夏が反射的にウエストし、空振りさせた”攻防をさす。野村克也は「そんなことは絶対にできない」と断言。大毎時代に続き、またしても消極策を批判された西本はどう総括しているんだろう。

次回は掛布雅之篇。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

解説者を評定する ~ 中畑清

2008-03-09 | スポーツ

広岡達朗篇はこちらへ。Nakahata01

視聴率ドン底!巨人戦3日連続1ケタ

 日本テレビが13~15日にかけて中継した「巨人対横浜」3連戦の視聴率がすべて1ケタだったことが16日、ビデオリサーチの調べ(関東地区)で分かった。14日は今季最低の6・6%。巨人戦ナイターの視聴率が“3タテ”を食らうのは、低迷が続く今季でも初めてで、同一カードでは90年以来。一方、14日未明に開幕したアテネ五輪は総じて好調。柔道女子48キロ級谷亮子(28)の金メダルの瞬間などを放送した14日午後10時からのNHK総合では、瞬間最高で43・7%をたたき出した。                      

 2004年8月17日付スポーツニッポン

 もう、とまらない。巨人戦視聴率の低下は目を覆うばかり。もう1ケタは常態。先日は5%台でニュースになっていると思ったら、今度は4%の史上最低まで記録している。

 ペナントレースの真っ最中に4%!もはやキラーコンテンツなどという称号は巨人戦にとってすっかり過去のものになってしまった。これではゴールデンタイムから追われるのは時間の問題。かつてのプロレスがたどった道を、日本のプロ野球も歩み始めたのか。

 こうなると元巨人というレッテルだけで売っている野球評論家たちには、特に厳しい冬の時代がやってきたと言えそうだ。たとえば中畑。この人の最大の特徴は、その徹底した田舎臭さだ。アナウンサーの質問に調子を合わせただけのコメントをくりかえし、妙な笑いをとろうとして、しかもことごとく失敗している。こういう人、田舎にはほんとうに多い。

Nakahata02  現役当時の「ゼッコーチョー!」は確かに流行したが、流行っていると確信してからの彼のゼッコーチョーは、あざとくて本当に嫌だった。変にためたりするのね。コーチや監督になりたい色気をむき出しにする(そのこと自体は悪いことではない)中畑だけれど、すっかり洗練された今の選手たちに、はたして受け入れられるのかなあ。

え?オリンピックではヘッドコーチをやったじゃないかって?なに言ってるんですか、あのチームの監督は城島でしょう?(笑)                    20点

次回は西本幸雄篇。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

解説者を評定する ~ 広岡達朗Ⅱ

2008-03-09 | スポーツ

89komada 広岡達朗篇PART1はこちら。

‘89年の日本シリーズは、初戦からパ・リーグの覇者近鉄が一気に3連勝。巨人を土壇場まで追い込んだ。その第3戦、NHKラジオの解説は広岡。

 勝利投手加藤哲はヒーローインタビューの際に
「どうですか巨人はパ・リーグのチームと比べて」という考えてみれば意地悪な質問に
「ここで負けたら(同年パの最下位チーム)ロッテに失礼でしょ」と思いっきり失礼なコメントをしてしまった。

※どうも誤解があるようなのでちょっと言っておくと、加藤は別に「巨人はロッテより弱い」なんて紋切り型のことを言ったわけではない。これはマスコミが例によって面白おかしく書き飛ばしただけ。逆にそのことを大きく曲解し、加藤は何も失礼なコメントはしていないのに、という人もいる。これも実は違っている。その際に広岡達朗はこんな解説を……

……クールきわまりない広岡は、「こんなことを選手に言わせちゃいけませんね」と、当時の監督である仰木に痛烈な皮肉をかましたのである。シャレのわからん旦那だな、コメントまで管理しろっていうのか、と当時カーラジオで中継を聞いていたわたしは思ったが、なんと広岡の予想通り、激怒した巨人は、第4戦から4連勝してシリーズを制覇したのだった。

 よく、管理職のあり方として広岡や森の選手操縦術を信奉する人がいる。自信のない中間管理職あたりに特に。しかしそれは野球の見方としてやはり邪道だろう。わたしはあのとき、加藤哲が発したコメントの稚気を愛するし、冷静に突っ込んだ広岡の解説もまた野球の一部だと考えるだけだ。それにしても、1リーグになると、こんなコクのある場面ともお別れかあ……

Tetsu1  選手のことを「あの子」と言ってしまう広岡流は好みではないけれど、管理だけの野球人ではなかったことで、いつか再評価されることもあるかもしれない。その日を期待して80点

画像は第7戦で先制ホームランを放った駒田。ついでに先発の加藤に「バーカ」と意趣返し。こっちの方がよほど失礼である(笑)。

次回は中畑清篇。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

解説者を評定する ~ 広岡達朗

2008-03-09 | スポーツ

野村克也篇はこちら。Hirooka01

(2004年8月現在)1リーグだ2リーグだともめている間に、プロ野球界に今訪れている最大の危機は、果てしない視聴率の低下だ。前々から言われていることではある。でも、視聴率オタクの立場で言わせてもらう。この時期に、しかも裏に強力なコンテンツがあるわけでもないのに、平気で8%台などという数字が出ているなんて。“釜の底が抜けた”程度の表現では追いつかないくらいの、正真正銘の危機。その認識があるのか、マスコミも含めた関係者たちに。

こんな時こそ、もう読売新聞は買わないと言ってのけた彼の直言を……

 偉くなったからか(ラジオ日本へ出向中という噂)、めったに中継を担当しなくなった日テレの吉田アナが

「い・や・こ・れ・は手厳しい……」

と嘆息した、あの皮肉な解説が聞けなくなって随分たつ。まだラジオ日本の番組は続けているんだろうか。管理野球を体現した広岡達朗だけど、実はけっこう優しいところもあったのである。

 もう十年以上も前、広島市民球場における巨人戦。その日の中継はNHKで解説者は広岡。世に言う(いや、今勝手にわたしが名づけたんだけど)「広島市民球場スパイダーマン事件」が起こったのである。

 まわりが止める間もなく、観客の一人がスルスルとバックネットをよじ登りはじめ、上から

「巨人軍は永遠に不潔です!」

というのぼりを掲げたのだ。
 当然試合は中断。結果的に押せ押せだった広島は、蜘蛛男の願いも虚しく中断によって巨人に流れを奪われてしまった。

Ebisawa  このお馬鹿な男に広岡は当然のように激怒……しなかったのである。含み笑いを浮かべながら「これがね、広島県人なんですよ」と。彼もまた、広島県人だったのだ。

かと思えばやはり鋭いところも。あの伝説の近鉄VS巨人の日本シリーズで……あ、これは次回

画像は広岡達朗モデル小説の海老沢泰久「監督」監督論として抜群の面白さ。巨人批判本としてもかなり機能している。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする