ソニー・ピクチャーズ配給 原作・脚本・キャラクターデザイン・監督:今敏
白い雪が町を染めるクリスマスの夜。3人のホームレスはゴミ袋の山の中から“赤ん坊”を見つけ出した。名前を付け、手掛りを探し、その子の親捜しを始めることにした3人に、次々と運命の出会いが訪れ始める…
いきなり、幼稚園児による東方の三賢人の場面から始まる。キリストの生誕劇。この日はクリスマスイブで、つまりこれは“何らかの奇跡が起きますよ”と脚本(「白線流し」の信本敬子と共同)の今敏の高らかな宣言だ。どうしてこんな手間をかけるかというと、それでもストーリーに偶然が多すぎるという批判が散見される世の中だから。いくら無宗教の国でも、「素晴らしき哉、人生」や「クリスマス・キャロル」ぐらい観ておけっちゅうねん。「古ーい!」あ、そお?なら「ダイ・ハード」や「ホーム・アローン」でもいいや。聖夜に奇跡はつきものなのである。ついでにこのホームレスたちが、三賢人をシンボライズしているわけね。
もうひとつの批判は「このストーリーなら、実写でもかまわないじゃないか」という意見。もっともな話で、声優の江守徹と梅垣義明(ろくーでなーしー♪で鼻から豆ミサイルのあの人)、そして岡本綾の三人で、そのまま実写映画化しても泣ける映画にはなったろう。赤ちゃん役のこおろぎさとみ(クレヨンしんちゃんのひまわりでお馴染み)は別だけど。でも今回は、むしろアニメならではの味を実現させたことを評価すべきだと思う。何よりも、こんなに美しい聖夜の東京は実写では実現できないだろうし。
あたたかい気持ちになれる、完璧な奇跡の物語。クリスマスまで待たないで、ぜひ。