事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

I Don't Want to Die PART5

2008-03-05 | 国際・政治

Iraq05 PART4はこちら。

 人質の家族たちにいっせいに悪口雑言が投げつけられたのは、メディアのせいもある。読売と産経が事件発生の翌日にはすでに自己責任を掲げて彼ら人質の行動をいさめ、自衛隊の撤退が「あってはならない」としているし、同様にわたしもこの事態でかえって撤退への道は閉ざされてしまったと感じた。

 しかしそんなことだけでバッシングが起こるものだろうか。わたしたち日本人のなかに、彼らを“叩きのめしたい”とする加虐的な気分はなかっただろうか。自分の子どもや姉が“生きながら焼き殺される”予感で苦しんでいる家族を、目障りだ、と吐き捨てたくなる気持ちがどこかにあったのではないか?

 おなじみの藤原帰一の分析はクールだ。
「この人質事件で、もし武力救出っていうオプションが少しでもあったなら、特殊工作隊員で救出作戦をすべきだなんて元気な議論が出てきたと思います。だけどそれは出てこない、無理だから。どうにもならないから人質が悪いんだってことにされてしまう。」
「『ニューヨーク・タイムズ』は、これが日本のお上の概念だ、お上に-ローマ字でokamiって書いてましたけど-逆らってはいけないという日本人の心性が現れたものだって書いてました。もう偏見丸出しの記事だと僕は思いましたけれども、だけどその通りじゃん(笑)。」

Iraq06 ……そしていつのまにか状況はお上によって流され、信じられないことに人質家族は(他に選択肢はなかったにもかかわらず)チャーター機の費用を請求され、自衛隊は多国籍軍参加などというところまで来てしまった。

 ほんとうはみんな気づいているはずなのに。目前でいろいろと議論がなされていても、結局はアメリカについていくしかないという諦念にいらついているわけでしょう?

 もっと考えよう。この戦争が始まってしまったのは、無能な大統領が山っ気を出したからにすぎないし、泥沼化したのは占領統治のやり方が拙劣きわまりなかったからだ。この基本に立ち帰り、もうちょっとクールに、みっともなくとも、身の丈にあった日本の行き方を考えていかなければ。「わたしは死にたくありません」とたどだとしい英語で叫んだ隣国の人質青年の声に、虚心に耳を傾けよう。ほら、そこで「隣はどう考えてるか」なんて気にしないで。

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I Don't Want To Die PART4

2008-03-05 | 国際・政治

Iraq04 PART3より続く。

 イラクと日本をひっくり返すなんて荒業で情勢を概観したところで、人質たちと家族にあびせられた罵声に反論していこう。主な観点はふたつ。

1.いわゆる自己責任論
2.人質、および家族への“反感

 まず、“自己責任”なる、わけのわからない言葉(他己責任てあるのか)がひとり歩きをしたわけだけれど、言いたいことはこうでしょ。

【自分の意志でイラクに行ったのに政府に助けを求めるのは、サーファーが荒れた海でおぼれて海上保安庁が救助し、その費用を税金から支出されるのといっしょではないか】

江川昭子が絶妙の反論をかましているので紹介しよう。

はたして「いっしょ」だろうか。
海が荒れているときにサーフィンをしに行くのと、困難な状況にあって何の支援も受けられないでいる子どもたちを助けに行ったり、劣化ウラン弾の被害状況を調べに行くのは「いっしょ」なのだろうか。
溺れたサーファーについても一言。溺れた側に落ち度や判断ミスがある場合、あとでそれを厳しく反省させることは必要だ。だが溺れている最中の人に、海上保安庁の特殊救難隊員や消防のレスキュー隊や救急隊が助けるより先に「自己責任」を云々するようになったら……

 どうお考えだろう。だいたい罵声をあびせる彼らの前提条件には、おおいなる誤謬があるのだ。

 まず、NGOに対する偏見がある。日本を飛び出て、他国で奉仕活動を行う連中は“要するに自国に不満をもって海外へ逃避した反体制主義者”……こんなレッテルを勝手にはっていないだろうか。もちろんそんな単純なものではないわけで、途上国支援には政府が直接に行う部分と、NGOのような民間が主導する部分との両方がある。これは全世界的な潮流で、要するに日本がこの分野で立ち後れているだけなのである。考えてもみてほしい。たとえ自衛隊が何百何千人と向かったところで、現地の事情に明るく、何よりも現地民との信頼関係がすでに出来上がっているNGOの協力なしに、いったいどれほどのことが出来るというのだろう。 

続きます!

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I Don't Want To Die PART3

2008-03-05 | 国際・政治

Saddamhussein PART2よりつづく。

 現在のイラク状況が、イスラムを信仰する日本で起きていたらどうなのかとSF風に仮定してみよう。

北東アジアの島国である日本、および近隣諸国は同じイスラム教信者の多い国で、同様に多民族の集合体である。教義の違いから衝突をくり返してきた。争いの背後には、ソ連とアメリカという大国の思惑があり、それは地下に眠る莫大な石油資源をいかにコントロールするかに常に影響されてきた。

日本の大統領はいろいろと問題の多い男で、国民を圧政の下におき、他国を侵略することもいとわず、ためにアメリカを中心とした多国籍軍にうち負かされ、経済状況を悪化させた過去をもっていた。
海峡をへだてた隣国は王制をしいており、その国の金持ちのボンボンが、何を血迷ったかアメリカの中枢にある高層ビルに旅客機を突っ込ませるという派手なテロを行った。いい気味だ、と敗戦の記憶がまだ鮮やかな日本の大統領は考える。ここまでは、まあ関係がなくはないにしろ、他人事だったのだ。

ところが。

200pxgeorgewbush 就任して1年たってもろくな成果もあげられず、前大統領時代には空前の好景気だった経済状況が下降の一途をたどっていたことにあせったアメリカの大統領
「これは戦争だ」
と強引に言いつのり、テロ組織をかばっているのではないかといちゃもんをつけ、北方の砂漠しかない国へ攻撃をしかけたのである。それどころか、「今度は日本だ。あそこには大量破壊兵器があるはずだ」と言いがかりをつけはじめた。

「おいちょっと待て。なに考えてんだ。どうして日本なんだ(Why Japan?)。……ん?ひょっとして最初から日本を狙ってたんじゃないだろうな」日本の大統領はいらつきながら考える。

実はそのとおりだったことが暴露され始めている。アメリカ大統領は、テロ事件よりも先に日本への攻撃を計画しており、その流れを変えるつもりは毛頭なかったのだ。空襲がはじまり(空爆、は意図的な誤訳)、日本の国土は蹂躙される。

日本国民も少しずつ考え始める。この戦争はおかしいんじゃないか。テロ云々で始まったはずで、大量破壊兵器を発見すればすむことなのに、どうしてここまで徹底的にボカスカ爆弾を落とされなければならないんだ?これって実はアメリカの日本侵略じゃないのか……かくて日本におけるアメリカへの反感は醸成され、穴の中に隠れていた日本の大統領が拘束されたあとも、アメリカ憎しの感情はおさえることができない。米軍への攻撃は、日本人にとって「レジスタンス」だ。

ここでひょっこり顔を出してきたのが、遠い西アジアの果てから「人道支援」という名目でやってきたイラク軍(自国ではセルフ・ディフェンス・フォースを名のっているらしい。自衛軍、とでも訳すか。自衛のためでない軍などお目にかかったことはないが)。この国はアメリカといつもつるんでいるが、キリスト教国(ま、十字軍みたいな自意識)ではないことと石油取引などで日本とは悪くない関係を続けてきた。しかしファナティックにして外交音痴なイラク首相は、アメリカ以外の国々が日本攻撃から次第に手を引いているにもかかわらず、アメリカの要請にただ一国「はーい!」と手を挙げてやってきたのである。くどいようだが、人道支援で。

Koizumi03 しかし日本国民にしてみれば、アメリカの戦車といっしょにやってきて「ボクたちは攻撃に来たんじゃないんです。ジンドーシエンですから」言ってるそばから爆弾はドカンドカン落ちているわけで、こんな理屈が通るはずがない。イラク国民はひょっとしてこの出来の悪いファンタジーを信じているのか?
次第に悪化する対イラク感情を背景に、ちょうどNGOとして来日していた若僧を、レジスタンスたちは見せしめに……

……国内問題じゃなくて国際問題なのに、一向にその方向で語る風潮が見えないので、いっちょイラクと日本をひっくり返してみました。日本に空襲をしかけてくる多国籍軍、という観点からみれば、帯同する自衛隊がどんな存在にみえるのか、少しでも感じてもらえればと。

PART4へつづく。

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