アメリカ人の心の中には、常にスモールタウンの情景があるという。小さな町で生まれ育ち、狭い世間から都会に旅立つことを夢見る性向は、開拓者を先祖にもつ彼らにとって、もはや民族的DNAと化しているのだろうか。
この映画の主人公ホーマーも、そんな典型的アメリカ人だ。炭鉱の町コールウッドに生まれた男の子の選択肢は、父のあとを継いで炭鉱夫となるか、フットボールプレイヤーの才能に恵まれたほんのひとにぎりの少年が、奨学金を得て大学に向かうだけ。そんな状況のもと、しかしホーマーは“(炭鉱夫は)ぼくの人生じゃない”という事実を、ソ連が打ち上げたスプートニクの、夜空に引かれたひと筋の軌道によって知ってしまう。
何度も挑戦し、そのたびに失敗する手製のロケットの打ち上げ。彼を応援しながらも死病に冒されてしまう担任教師。努力の末に獲得する全米科学コンテスト(これがいかにもアメリカ)のファーストプライズ。相容れなかった父親との和解……
その後、ほんまもんのロケット技術者となったホーマー・ヒッカムの、いわば偉人伝の趣き。スプートニクの光を見つめながら炭鉱夫として地下に潜っていく主人公など、あざといと言えばこれほどあざとい設定もない。でも、のっけに示されるbased on a true storyというタイトルと、ジェイク・ギレンホール、ローラ・ダーン、クリス・クーパーというわたしのストライクゾーンど真ん中のキャスティングが、その臭みを吹き飛ばす。
正直に言おう。わたしはもう、途中から涙が噴き出しまくっていた。スモールタウンの主人公に、こいつ、オレじゃないか!と涙するのは、別にアメリカ人だけじゃないのである。傑作!
※ホーマーの原作Rocket Boysと、原題October Skyは、なんとアナグラムになっている。