事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「誰も知らない」 Nobody Knows 是枝裕和監督作品

2008-03-22 | 邦画

Nobodyknows  結婚すれば婚姻届を出し、子どもができれば名前をつけて出生届を役所へ。予防接種を受けさせ、就学年齢がくれば学校に入れる。身仕度のために三角巾を作ってやったりする。税金を納め、家族が死ねば死亡届を出し、葬式を行い、相続や法事に頭を痛める……

 社会人なら誰でもやっていることだし、当然のことだ。当然のことではあるけれど、でもこれって大変なことなんじゃないか。「誰でもやっているから」仕方なくやっているのではないだろうか。第一、ほんとうにみんなこんなことをキチンとこなしているのか?

 母親が四人の子どもを残して失踪し、子どもたちは都会の真ん中で自分たちだけで生き続ける……泣かせが苦手なわたしとしては、むしろ敬遠したくなるタイプの映画。でも監督は「ワンダフルライフ」で冴えたところを見せた是枝裕和だし、「スウィングガールズ」を観たがる妻を説得してこちらを選択。

 モデルとなった実際の事件の方はもっと陰惨な話のようだが、この映画には一種の救いが見える。兄妹四人の生活は、確かに苦しくはあるだろう。でもそれなりに楽しかったのではないか、とする是枝の視点は正しいと思う。その証拠に、彼らの部屋に入り込む兄の友人や大家などは、観客にとってはっきりと“異物”に感じられるほどだから。

「あたし、カンヌ女優じゃん!」とさんまの番組でギャグ(事実そのとおりなのだが)をとばしたYOUが、無責任だが憎めない母親を演じて出色。社会人として欠格していることがそんなに悪いことなのか、とまで感じさせてくれる。

 見終わってからの方がしみ入る映画。あの兄妹は、今どうしているのだろうと劇場を出てからも頭から離れない。実話であること以上に、是枝が口伝えで子どもたちにセリフを言わせた(めちゃめちゃにフィルムを消費したろう)およそ劇的なるものと無縁な作りがそうさせたのかもしれない。帰ってから、いつもなら没入するであろう達者な某映画をDVDで観ようとしたが、どうしても“嘘”が感じられてギブアップ。大嘘なのは「誰も知らない」の方かも知れないのに。おそるべし是枝。そしておそるべし子役たち!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「シンセミア」 阿部和重著 朝日文庫 

2008-03-22 | 本と雑誌

Abekazushige01 上下巻で800頁、400字詰原稿用紙1600枚の大作。リンチ、フィスト・ファック、盗撮、幼女偏愛、不倫、恐喝、薬物(シンセミア、とは麻薬の一種)、放火、暗殺、UFO、売春……なんでもあり。そのほとんどが村山弁で語られる。なにしろ、これは神の町を名のる、あの東根市神町(じんまち)の物語だ。日本版シティ・オブ・ゴッド。読みおえるまでに何度か挫折しそうになる。不道徳な展開に辟易したのではなく、阿部の、故郷である神町への愛憎の深さに、時間をおかないと冷静に読み進められなかったから。

「いいがらすっこんでろ糞野郎が!余計なごどいぢいぢぬかすなボゲ!お前が俺んち心配してどうするっつうんだこのカスが!馬鹿のくせに知ったかぶってつべこべほざぎやがって、絞め殺すぞこの腐れベッチョ野郎が!そもそもパン屋ど俺んちは無関係。うぢは何も関係ねえ。クソッタレ親父以外はな!」

「インディビジュアル・プロジェクション」など、実話をもとに語ることが多い阿部は、パン職人だった祖父の存在と、神町の歴史をシンクロさせて壮絶な惨劇を構築した。

 帝国海軍の航空基地が設けられていた関係から占領軍駐留地となり、そして自衛隊の駐屯地となった神町は、その陰で売春が横行。住民の生活も乱倫をきわめる。占領軍にうまく取り入ることが出来た人間が力を握ってきた歴史は、まさしく日本の戦後史そのものだ。なぜ日本人がパンを食べるようになったかを、学校給食とのかかわりで冒頭に提示するなど、縦糸にパン屋三代の物語をはめこんだ展開は象徴的。

刊行された03年は、さすがに地元東根の書店のベストセラーになっている。どう読まれたものやら。地元の人間にきいたら、確かに町の規模に比べて神町は飲食業が異常に多いそうだし、変な民族団体もいくつか存在するらしい。空港とフルーツの町、という穏やかなイメージは、意図的にその二つを惨劇の舞台とする阿部によってみごとにくつがえされる。何事も起こらない田舎の日常に苛立ちを隠せなかった若い頃に読んでいたら、ひょっとして吐いていたかもしれないほどの悲喜劇。ぜひ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

出身はヤマガタ。

2008-03-22 | うんちく・小ネタ

Mail03f あのね。○○小の××△△さん(温海町→現鶴岡市出身)の同級生に本上まなみのお母さんがいるそうです。ということは彼女のお母さんは山形県庄内出身ということなのかな?

Aoki_yuko ……これ、ファンの間ではよく知られている事実らしい。本上が生まれたのはまぎれもなく庄内なんだそうだ。山形関連の有名人については、いままで武田祐子(フジテレビ)やTOKIOの国分、定番ミスチル桜井、そしてMy Little Loverの小林などでふれてきたけれど、他にも意外なメンツが同郷だったりする。

 メジャーどころでは日テレの石川牧子アナ、レスラーの井上京子、オリジナル「ゴジラ」の監督本多猪四郎、「幽遊白書」「HUNTER×HUNTER」の冨樫義博(奥さんは「セーラームーン」の武内直子。この超大金持ち二人が住民票を移してくれたのに財政難か新庄市)、元都知事の鈴木俊一、ルースターズのギタリスト下山淳、グラビアアイドルの青木裕子(今はシンガー)、電撃ネットワークの南部虎弾……えーと途中から全然メジャーじゃなくなってしまいましたが(笑)。
 
なんか県人会って存在はうざったくて、同郷だからどうしたんだと昔は突っぱってたけど、同じ気候に囲まれ、同じ風景を見ていた人間が著名になっていくのはやっぱりちょっとうれしい。このメールをくれた人の高校の同学年には映画監督の冨樫森(「非・バランス」「鉄人28号」)がいて、こういうのは素直に応援したいと思える。

ところが、同い年の同僚が「あたしの同級生の息子がバンドやってて、CMでガンガン流れてるのよ」ってのはなぁ。これ、サザーランドってバンドで、サラ金のCMでミスチルっぽい、というかミスチルそのまんまな(笑)曲でブレイク。それはめでたいのだけれど、“同級生の息子がバンドでデビュー”……うーん、もうそんな歳になってしまったかあ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

内示

2008-03-22 | 公務員

Mickeymasami 2005年3月のネタです。
言いたいことは変わっていないのでアップしときます。

何度でも言う。
山形県職員の異動ってやっぱり変だ。何がって、“内示”が行われたその日に新聞発表されてしまうことが。これのどこが内示なんだ!

山形新聞は3月中旬に入ると一面で【山形新聞は、22日に行われる教職員異動内示の内容を詳しくお届けする予定です】なんて宣伝までうっている。異動内示が22日だという情報が正式に現場に下りてくる前に。おまけに【○○高の校長は××か△△に落ち着く模様】なんて憶測記事が、誰が誰に向かってコメントしてんのか知らないけど毎年恒例のように載っている。しかもこれが当たるんだ(笑)。

この、マスコミと“山形県”の蜜月はいったい何だろう。もう県民や県職員自身もそんなもんかなと慣らされてしまっているが、異動内容は異動日に報ぜられるのが当然じゃないか?少なくとも他の県はそうなっているし(調べてみたらそうでもなかった)、だいたい県職員の異動が大々的に特集されるなんてこりゃあ……田舎くせーぞやっぱり。

かつて高校の合格発表が詳細に特集されていたこともあった。ラジオやテレビでまで大々的にやられていた。それが“進学競争をあおっている”“プライバシーの侵害だ”などの理由で(か知らないけど)いつの間にかとりやめになっている。

同じことが異動にも言えないか。いくら読者ニーズが大きい(面白いわなやっぱり)からと言って、その後いろいろと変更もありうる異動内示を、ここまでデカデカと報ぜられたのでは「もう何を言っても虚しいだけ」という気分に。いくらミスがあっても訂正記事が出たという話も聞かないしなあ。

何度でも言う。記者クラブという存在がバックにあるのはこちらも重々承知しているが、そんな談合制度のなかで、こんな田舎臭いことがいつまでも続いているのははっきりと異常だ。こんな悪習、早く無くせよな!

……08年もまったく同じ経過となった。3月21日午前に内示があり、その日の夕刊にはもう発表になっている。山形新聞にいたっては、有料サイトでご覧いただけます、なんてことまで。商売のネタにすることに、もはや照れも何もないようだ。ったくもう。

画像は「新・土曜ワイド殺人事件」とり・みき+ゆうきまさみ
流浪の連載、やっとまとまる。ディープなネタは若年層にはちょっときついか。わたしにとってはストライクゾーンど真ん中なのだが。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「新選組!」 第四話~新選組マラソン

2008-03-22 | テレビ番組

Shinsengumisp2 第三話はこちら。

第一集から第七集、プラス「新選組!!(びっくりマークが二つになってる)土方歳三最後の日」を加えてDVDが8枚。せっかく同僚の家族から借りたのだから観ざるをえない。08年の正月は「新選組!」マラソンだった。お餅を食べては一枚、昼から酒をかっくらっては一枚。

前半が「七人の侍」のようにメンバーが次第に集まっていく過程(このぐらいのひねりを盗作で騒がれた「武蔵」でもやらなければならなかったのだ)、池田屋事件をピークに、一転して今度はメンバーが消えていく過程を描く。

新選組とはしかし何だったのだろう。永倉新八などの覚え書きをもとに、時代小説家たちがそれぞれに思い入れをぶちこまなかったら、歴史の片隅にうもれる暴力集団にすぎなかったに違いない。あるいは土方歳三がオフィシャルな(という言い方も変だけど)反乱軍のお偉いさんではなかったら……

しかし薩長を中心とした明治政府への反感や、日本人の(江戸の、と言いかえてもいい)美風が消えていくことへの寂寥が、コピーとしてのサムライであるテロ集団を偶像化したとも。わたしが明治期の貧乏人だったら(特に元武士階級だったら)、剣一本でのし上がり、田舎者のくせに尊大な役人たちに一泡吹かせてくれた若者たちのことを、やはり懐かしく思うはずだ。ファンが絶えないこともうなずける。

三谷幸喜は、長大な物語を構築しなければならないことを逆手にとって、多様なキャラを自在にあやつり、視聴者に幕末がまるで現代であるかのように誤解させることに成功している。特にくせ者キャラ(オダギリジョー、桂吉弥など)が一転して熱情キャラに生まれ変わる瞬間を多用し、ひたすら泣かせる。鬼の副長だったはずの土方が、実はいちばん泣いていたことも再確認。養母役の野際陽子が、近藤勇の京都への出立時に「あなたは、わたしです」とはげまし、勇の斬首直前に「近藤勇、よくやりましたっ!」と声をかけるふたつのセリフが、実は無惨な近藤の人生に美しい縁取りをほどこしている。

Kobayashitakashi これだけ長い間見続けると、マラソンだけにもはやランニングハイ状態。ほんとうに夢に出てきたのにはわれながら笑った。合計40時間以上の至福。見始めれば、やめられるはずのない地獄でもあった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする