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事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「パッチギ!」('04 シネカノン)井筒和幸監督

2008-03-25 | 邦画

Patchigi1  むかし「GO」を特集した号で、“いい映画を観ると腹のあたりが熱くなる”と書いた。その「GO」が、今思えばきれいごとですませていた部分を活写する「パッチギ!」(朝鮮語で『頭突き』の意)は、腹の中が沸騰する映画だ。まちがいなく04年のベストワン。

 ストーリーでわかるように「ロミオとジュリエット」在日版であり、同時に、なぜ在日が差別されなければならないのかを、激しく世間に問う政治映画でもある。しかし、それ以前にまず娯楽作品としてすばらしい。高校生たちのバトルの凄まじさはさすが「ガキ帝国」の監督だし、終盤、アンソンの最後の大喧嘩と、その彼女の出産、康介のラジオ局での「イムジン河」の熱唱が一気呵成に描かれ、涙なくしては観られない。“セリフが聞き取れない”ほど勢いだけで描写することが特徴だった井筒和幸が、ここまでみごとな映画を撮るとは。

 アルフィーの坂崎幸之助をモデルにした酒屋の息子を演ずるオダギリ・ジョーや、在日の長老を演ずる笹野高史もいいが、なにしろ高校生たちが抜群だ。特にキョンジャ役の沢尻エリカと、のちにハスッパな看護婦になるガンジャ役真木よう子

キョンジャの
「徳山にいるときはトイレもなかったもんねえ」というセリフや、
幼い弟妹を連れて歩くガンジャが「にぎやかでええねえ」と声をかけられ
「ほんまに?」
とぶっきらぼうに切り返す演出は、在日が背負う歴史を一瞬にして観客に納得させる凄みがある。しかも、あくまで明るく演じながら、だ。これは効く。

 わたしたちは今、北朝鮮がどんな状況にあるのかを知っている。反面、韓流ブームでわきたってもいる。でも、特に若い世代には背景にこんな歴史が流れていることをぜひ知ってほしいし、その意味で“押しつけがましくなく”(これが大事)感じとるための最高のテキストとしてこの映画は機能するだろう。

「もしもよ、もしも結婚するとして……あなた朝鮮人になれる?」
このキョンジャのつぶやきは現代においてもなお痛い。おまけに、在日たちは日本人だけでなく、彼らが心の故郷と慕う祖国からまで実は差別される対象でもある。

「北の故郷に なぜに帰れぬ」
と歌うイムジン河はその意味でも象徴的。京都の町で、鴨川をはさんで“向こう側”が朝鮮人、“こちら側”が日本人居住区と分かれ(このあたりは関西人にとって皮膚感覚なのだろう)、高校生たちの決戦が河原で行われる設定は、だからこそ観客にしみる。

 確かに若い連中は無力だ。でも、この川を渡ることができるのは、やはり若い世代か。そのことを、またしても泣かせまくるラストシーンが教えてくれる。合唱コンクールの定番、フォーク・クルセダーズの「あの素晴らしい愛をもう一度」がこんなに心にしみる曲だったなんて。腹に頭突きくらった気分。またしても責任をとりたくなる映画の登場だ。つまらなかったら入場料オレが払ったるわ!必見!

続編「LOVE&PEACE」はこちら。

画像は真木よう子。まさかこの人がこんな……以下略。アダルトサイトみたいだといわれようがかまうものか。

Makiyoko01

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「ファミリーレストラン」前川麻子著 集英社刊

2008-03-25 | 本と雑誌

Familyrestrant  若い頃、友人の家を訪ねたときだった。きこえてくる家族の談笑にわたしは本当におどろき、チャイムを押すのをためらった。

「こんなウチ、ほんとにあるんだ!?」

 いがみあうことにすら疲れ果て、もはや家族のあいだで会話も成立しないことに慣れきっていたわたしに、この団らんはショックだった。ひょっとしたらテレビのホームドラマの中にしか存在しない世界なのかも、とまで思っていたのである。

……さまざまな経緯から、ほとんど血のつながりのない家族を“やっている”登場人物たちは、それゆえに家族であることに意識的だ。それは言わない約束でしょ、という部分まで過剰に考え込み、反応し、お互いを傷つけ、そして幸せをかみしめている。

 これはしかし結構しんどいだろう。お料理のディテールに徹底してこだわるあたり、彼らのきつく、途切れない日常を感じさせ、ため息がでる。没交渉だったわたしの家族の方がまだしも居心地がよかったのではないかとさえ思ったりする。

Maekawaasako  このファミレス、女性には圧倒的におすすめ。でもわたしのような中年男が再び訪れるのはやっぱりきついかも。味は最高なんだけど、なにしろ料理人のレシピの解説とかがうるさそうだし(笑)。

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Dragon Quest Ⅷ

2008-03-25 | アニメ・コミック・ゲーム

Dragon_quest_2__j_0000thumb  中年の教員ドラクエファンたちの泣き言の数々。
「“ふっかつのじゅもん”をミスって何度泣いたかなあ」
「オレなんか無くさないように教務手帳に書いてたぞ」
「魔王に『世界の半分をゆずってやるから』って誘いに思わず『はい』って答えちゃった自分の心のどす黒さにはほとほと呆れた」
「オレなんかオレなんか、テレビの前にノート開いて宝物のありか『西へ3歩・南へ5歩』とかメモるだろ?そしたらさー、看護婦やってる女房が、出勤前に『バカ!』ってそのノートに殴り書きしやがってよー」

……ドラクエがブロックバスターの地位を築いたのはⅢからというのが定説。発売時の狂騒は今も語り草。いかにⅡが面白かったか、ってことでもある。あの、やたらに強力なラスボスにはわたしも衝撃を受けたっけ。プラットフォームがファミコン→スーパーファミコン→プレイステーションと移り(その時点で最も強力なハードにソフトを提供する、これがエニックスの流儀。要するに勝ち馬に乗れってこと)大ヒットを連発してきたドラクエで、わたしのお気に入りはⅤ。戦ったモンスターが“ごくまれに”仲間になる、というシステムは最高だった。キラーマシンを二体も仲間にできたときはうれしかったよー!……と、このようにマニアックになりすぎたこともあって最近のゲーム業界は沈滞の極み。ライバルだったスクウェア(ファイナルファンタジーの会社ね)を吸収合併し、業界代表として今回のドラクエⅧはどんな戦法を持ち出したか。

 いやー歴然としてました。要するに『初めてゲームをするような人=ライトユーザーが楽しめる』ように細心の注意がはらわれているのだ。「あー先に進めねー!」と途中で放り投げたくなる事態にはめったに出くわさない。それはそれでヘビーユーザーには不満もあるだろう。でも彼ら向けには、とんでもないところに宝箱があったり、錬金釜というディープなネタが用意されていたりもする。さすがビッグタイトル。

 気が早いようだが、ドラクエⅨがどのプラットフォーム対応かは一大事件。プレステ3だとすれば、次世代DVDの規格争いでブルーレイ陣営への圧倒的な……あ、またマニアックになってしまったー。

※これ、2005年のネタ。結果としてDQⅨはDSでの発売。エニックスの、要するに勝ち馬に乗る方針にゆるぎはなかったわけだ。

Quest3_2 

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