2003年3月24日付「情宣さかた」裏版。
持論である「コピーはオリジナルよりも奇怪な姿をとる」を展開。
少年マンガ誌としては後発だった少年ジャンプは、創刊当時部数が伸び悩んでいた。そこで編集部がとった作戦は、“本物よりも本物らしい”コピーを作り出し、本物の読者を、言い方は悪いがかすめ取ることだった。この場合の本物とは最盛期の少年マガジンに連載されていたヒット作「巨人の星」や「あしたのジョー」などをさしていたのだろう。
ジャンプのキャッチフレーズは“友情・努力・勝利”だが、根性を前面に押し出し、努力の過程を省略して勝負の連続で読者の関心を引き寄せる……冷徹な読者アンケート至上主義と連動したこの作戦は成功し、「包丁人味平」や「アストロ球団」そして「キン肉マン」のようなヒット作を生み出した。そしてマンガ誌のなかで史上最高の発行部数653万部(毎日新聞よりも多い!)を記録するまでになったのである。コピーがオリジナルを凌駕するためには、グロテスクなまでのデフォルメが必要だったのだ。
二世や三世と呼ばれる人たちは本当につらいんだと思う。偉大なる一世を超えるためには、生半可な努力や結果ではまわりが満足してくれないのだ。
特に政治の世界では、地盤と呼ばれる後援会組織の都合や利権がらみで、“なりたくもなかった”政治家に据えられることも多い。まわりが一世の話を持ち出して比較する意図がなかったとしても、本人の気持ちのなかではかなりのストレスが渦巻いていることだろう。そんなとき、プライドだけは間違いなく肥大している二世はどんな行動をとればいいか。
……もちろん、すべてジョージ・ブッシュのことを言っている。彼の場合は、大統領選自体におおいなる疑念が残っており、“大統領らしさ”を強力に自己演出する必要があるのだろう。ましてやとりまくスタッフは、チェイニーにしてもパウエルにしても、ほとんどがシニアのスタッフだったのだ。
いつのまにか、意外なぐらいにアメリカへの、あるいはブッシュ大統領への逆風は強まっており、イラク攻撃にしても、利権(石油・軍需産業)のための戦争、という認識は多くの人たちが共有するようになってきた。
でもへそまがりである私は、9.11さえ無かったら、果たしてブッシュはどんな大統領だったのかをむしろ考えている。いちばん簡単なのは、9.11以前に彼がなにをしていたかを検証することだ。ここからは、組合員へのこの1冊のスペースで。
組合員へのこの1冊
「アホでマヌケなアメリカ白人」Stupid White Men マイケル・ムーア著 柏書房刊
すごい書名にひかないでいただきたいが、内容はまさしくこのとおり、ブッシュに代表されるアメリカのエグゼクティブに対する悪罵の連続。
著者のムーアは、今もっともチケットが取りにくい(とにかく毎回満員札止め)映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」の監督。野放図に銃があふれているアメリカ社会を糾弾するドキュメンタリーだ。ライフル協会の代表であるチャールトン・ヘストンへのインタビューはかなりのものらしい。
この書において、ブッシュ・ジュニアが就任以来どんなことをやったかが列挙されている。
・連邦の図書館費を3900万ドル削減
・医師の小児科教育費用を3500万ドル削減
・地球温暖化に関する1997年の京都議定書の合意から撤退
・モンタナ州のルイス・アンド・クラーク国有林で石油採掘を許可する計画を表明
・減税。その恩恵の43%は、アメリカ人で最も裕福な1%に集中
・児童虐待に関するプログラムから1570万ドルを削減
・精油所、原発、水力発電所の建設許可の簡素化を提案。この中には環境基準の緩和も含まれる
・アラスカ自然保護区の油田、ガス田の売却を提案
・再生可能エネルギー研究費を50%削減
・国定記念物を開拓し、植林、石炭・石油・ガスの採掘などを行うことを提案する権限を内務長官ゲイル・ノートンに与える
・公立病院等で、健康保険のない人々に治療の援助をする「コミュニティ・アクセス・プログラム」を86%削減
・連邦法、環境保護法、労働安全基準に違反した企業に対して、政府が契約を拒否する権限を強化する法律の廃止
……すばらしい大統領じゃないか(笑)。ある意味、こんなにわかりやすい大統領は初めてではないのか。そして、このわかりやすい大統領の政策に、どこまで日本はついていこうというのか……