「はいっ、七曲署捜査一係……なに?矢追町で死体発見?ジーパン、すぐ行ってくれ!」
「わかりました。ボスッ!」
♪ちゃっちゃっちゃーらら~ん♪とやけに足の長い長髪刑事が走り出す。
おなじみ「太陽にほえろ!」によくある風景。さて、石原裕次郎演じるボスは、あのものすごい貫禄で“係長”ってのは階級的にはどうなの?と思ったことはないだろうか。
ジーパン刑事の松田優作はどのくらい給料をもらっているんだ?彼らは国家公務員なのかそれとも都道府県職員なのか……わたしたちは彼ら警察のことをほとんど知らないことに気づく。
今回の特集は、主な警察小説やドラマをテキストに、彼らの実態をちびっとうかがっていこうという趣向。全容まではとてもとても。なにしろ知り合いがいないもんだから情報が入んなくて。
でもまったく知り合いがいないわけじゃない。高校の同期生は2名が警察官となり、今は刑事をやっている。先入観があるせいかもしれないけれど、やっぱり目つきは鋭い。そのうちのひとりとちょっと前にいっしょに飲んだときのこと。
「オレやぁ、こないだまで警視庁さ出向しったんだ」
「へー」
そのときはよくわかっていなかった。警視庁に行くというのは、そりゃーたいそうなことなのであろうと考えたくらい。
ところで、警視庁って何だ。
日本の警察は、基本的に自治体警察になっている。各都道府県の公安委員会の管轄の下、警察本部がおかれているのだ。これは、戦前の国家警察の専横が日本をゆがめたとGHQが判断したため、各自治体に権力を分散させたわけ。
最初は市町村にまで分散させたのだけれど、財政負担がきびしくて(ついでに国家警察的性格を復活させようという意図もあって)途中で棚上げになっている。まるで義務教育費国庫負担制度の行く末をみる思い。
山形県の場合は、山形県公安委員会の下に山形県警察本部がある。そのトップが“本部長”だ。ところが、東京都の場合には東京都警察本部とはよばず、警視庁と呼び、そのトップが警視総監。なにか違った上級組織のように考えられがちだが(実はそうなんだけど)、基本的に警視庁とは東京都警察本部のことなのである。県警ならぬ「都警」だ。
まあ、警察は《格》を重要視する世界だから、首都の警察は違った性格も付与されているのだが、それはまた別の話。【もちろん続きます】