ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
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南八ヶ岳縦走 「三叉峰を越えて」

2022年11月23日 11時40分50秒 | Weblog
横岳山頂で一息ついた。
快晴である・・・が、相変わらずの強風の為、落ち着いて腰を下ろし体を休めるには程遠い休憩だった。

これから先の三叉峰へはほぼフラットに近い縦走ルートとなるが、風を遮ってくれるものが全くない。
まともに西から強風を受けながらの縦走となることは明白だった。
「天気がいいぶんそれほど苦にならないね。」
そんなことを言いながら歩き始めた。


三叉峰へ向けてスタート。

先ずは二ヵ所の鉄梯子を下る。
ごく短い梯子だが、アイゼンの爪を引っかけてしまえばどうなるかは知れたこと。
実際に上から見下ろしてみると、梯子は利用せずに雪面をキックステップで下った方が安全だと思えた。

自分が先に下る。
斜度はそれほどでもない。
N君が後から続き梯子を利用せずに下る。
順調なペースだ。


ご覧の通り、雪面を下った方が危険性は少ないポイントだった。

程なくして小高い丘の様なポイントが見えた。
何度も通っているルートであり、記憶違いでなければあの丘の東側(左手)が三叉峰の分岐点だ。

単独での登山者が来る。
今日初めて人と出会うことが妙に嬉しかった。
互いにシャッターをお願いし、写真を取り合いながらこれからのルート状況について情報交換をした。
あくまで個人的主観(判断)によるものであってもこれは極めてありがたいことで、最も新しいルート状況を知ることができる。
安全のためにも情報交換は欠かすことのできないことだ。


後方に見えているのが三叉峰。

三叉峰の分岐点に到着。
コースタイムもまずまずで、ほぼ予定通りにきている。


分岐点にて、N君。

ここから東側へと延びているのが「杣添尾根」であり、南八ヶ岳林道を利用し貯水池のあるポイントからスタートし約4時間掛けてここまで辿り着く。
まだ通ったことのないコースであるが、一般的に利用する登山者は少なと聞いている。
またかなり雪に埋もれやすいことから、アイゼンではなくスノーシューを利用して来るらしい。
自分にはちょっと苦手なコースだ。

さて、ここから先は「石尊峰」を越えて「鉾岳」を巻くルートとなる。
鉾岳の巻きルートだが、やっかいなことに西側を下りながら巻き、トラバースをして最後は巻きながら登攀する。
毎度の事ながら西風に煽られながらの巻きルートとなっており、それなりに危険性の高い区間だ。

先ずはルート状況を確認しながら自分が先に下った。
先ほど出会った方からの情報通りかなりクラストした雪面で、この先のトラバースは慎重さを求められることは明らかだった。


巻きルートを下る。
ここは滑落すればそれでアウト! 
距離は短いが無理せずフェイスインで下っても良い。

さてトラバース区間だが、トレースが一本はっきりと見えた。
左手にピッケルを持ち、トレースに従って越えても良いと思った。
・・・いや、せっかくだからダガーポジションでやってみよう。
これもアイゼンワークやピッケルワークに役立つし、奥穂高岳の時にはトライしなかったN君にとっては何よりの実践経験となる。


ダガーポジションで斜面をトラバースする。
斜度を考えれば落ちればそれまでだ。
背中に強風が当たり時折バランスを崩しそうにもなったが、三点支持による移動なのでストレートのトラバースよりは安全性は高い。
N君にとっては初めてのテクかも知れないが、現場での経験は何よりも貴重であり、これからの長い登山人生にとって必ず役立つだろう。

無事トラバースを終え、登攀へと変わった。
ここを登りきれば日ノ岳へと出る。
そして日ノ岳の東斜面にある広いルンゼを下れば赤岳が眼前に現れてくる。


鉾岳を巻き終える為の登攀。
ポイントによってはかなりの斜度であり、焦らず一歩一歩登る。
強風に背中を押されながら、ダガーポジションによる三点支持での登攀が必要である。


N君が続く。
このエリアは日中殆ど日の当たらないことが幸いし、雪面は程良く固い。
上から見下ろせば画像の通り滑落すれば一発でアウトとなるポイントだが、固い雪面がアイゼンの爪を十分に噛んでくれていた。

さぁ、ルンゼを下り赤岳へ向かおう。