自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ジャガイモの花と虫(6)

2015-05-26 | ジャガイモ

当初,花を訪れる昆虫はすこしぐらいは見かけるのではないかと予想していました。しかし正直にいえば,種類は限られているものの,これだけ豊かなドラマが展開されるとは思いも寄りませんでした。

ハナムグリも見かけました。からだに花粉が付いていましたが,ジャガイモのそれかどうか。ハナムグリは送粉に貢献しているのかどうか。


アマガエルが花の近くの葉でじっとしていました。きっと,昆虫でも待っているのでしょう。


ハエ類も数種,葉にとまっているのを見かけました。ただ,それらがジャガイモにとってありがたい訪花昆虫かどうかは不明です。花に近づく気配は感じませんでした。それはふしぎなことです。


チョウがほとんど近寄らないのも,ふしぎといえばふしぎです。畝の上を,度々モンシロチョウやツマグロヒョウモンたちが飛んでいきました。しかし,花にとまったのはモンシロチョウが一頭ほんの数秒,そしてアカタテハがしばらく。写真を拡大してみると,確かに口吻が蕊の根元に向かって伸びているのが確認できます。 

 


後日見かけたモンシロチョウは,花のすぐ脇にとまったものの,しばらくしてどこかに去って行きました。


ジャガイモ畑の生きものたちは,じつにこんなふうなのです。まだまだご紹介し切れていませんが。 

 


ジャガイモ栽培物語《タネイモ編》(9)

2015-05-26 | ジャガイモ

5月24日(日)。早く咲いた花が萎み始め,これから咲く花は蕾。いろんな段階の花が入り乱れて付いて花房をかたちづくっています。

 
咲き終わった花を見ていくと,萼に包まれた子房から花柱が伸びているものがあります。というより,目に付くといったほうがよいでしょう。明らかに,これは受粉がうまくいって実を結びつつある姿です。長めの花柱が優雅な曲線を描いています。


花弁が落ち切らずに,花柱に引っ掛かっているものがありました。 


この分だと,かなりの果実が実るように思われます。期待してよさそうです。待った甲斐がありました。 

 


ジャガイモ栽培物語《タネイモ編》(8)

2015-05-25 | ジャガイモ

5月17日(日)。花がずいぶん咲きかけました。かたまって咲くその姿の,なんと清らかなこと! ホッカイコガネの花は淡い赤紫。色合いからは,抑制の効いた品のよさが伝わってきます。

 
昆虫があれこれ訪れています。これまで意識して見たことがないので,見るもの,観察事実すべてが発見です。


5月20日(水)。ホッカイコガネが満開を迎えました。


5月21日(木)。もう花後を迎え,オシベと花弁が萎れて,メシベの花柱・柱頭がしっかり残る花がありました。


それも複数です。 

 
これらの例は,結実が始まったことを予感させます。「これはいい!」。期待が膨らみます。

 


ジャガイモの花と虫(5)

2015-05-25 | ジャガイモ

ジャガイモの花は,朝開き,夕方閉じます(下写真)。日中に昆虫を招く作戦をとっているので,夜間開いておく必要はないということなのでしょう。花として珍しいしくみではありませんが,合理的にできています。


それで,ふと思ったのですが,早朝開いたばかりの頃,花を観察するとどんな昆虫が見られるのでしょうか。もしかすると,なにか新しい情報が得られるかもしれません。そう思って,ある日,午前7時に畑に出かけてみることにしました。

その時刻,花ははっきりパアッと開いています。明るくなった頃には,もう訪花昆虫を待ち受ける準備を終えているのです。

さらに,おもしろいことに,ヒラタアブの仲間があちこちにわあーっとばかりに飛び回っていました。びっくり,びっくり。それも,ただ飛び回るというだけでなく花を求めて飛んでいるというふうなのです。花弁や蕊にとまったヒラタアブを探そうと思えば,じつに容易だと感じました。

気温がまだ十分に上がっていないということもあり,ヒラタアブの動きはゆっくりしたもの。観察・撮影には打ってつけです。何枚かご紹介しておきましょう。


これだけヒラタアブがいれば,外敵も当然いるはず。案の定,見かけたのがクモに捕獲された個体です。

クモは,獲物が来ることをちゃんと心得てそこで待ち構えていたのです。


朝,思いがけない事実と巡り合って,観察のおもしろさがまた一つ増えました。

 


ジャガイモの花!

2015-05-24 | ジャガイモ

ジャガイモの花を,すこしだけ解剖学的な目で見ておこうと思います。

日の光をいっぱいに受けて,花弁を精一杯開いています。反り返っている感じがスゴイところ。自分の存在を思いっ切り虫たちにアピールする姿でしょうか。じっくり見ると,なんと優雅が花かと思えてきます。それが数輪,束になるようにかたまって咲いているのです。

 
萼(がく)の数は5。花弁も5。この花の基本数は5であることがわかります。

 
オシベも5。メシベはオシベより飛び出しています。もちろん,自家受粉を避けるしくみなのでしょう。

 
萼と花弁を一部取り去って,花の中を覗いてみましょう。オシベの葯はかなり長いなあという印象を受けます。これだけ長い葯なら相当に花粉が蓄えられているだろうと思うのに,花粉が吹きこぼれているという感じを抱いたことがありません。品種改良によって退化してきた結果なのでしょうか。もしそうなら,アンデスに生えていると原生種にはあふれんばかりの花粉があるはず。

 
オシベを2本取り除いて,メシベの根元,子房を見てみました。花のしくみの典型例のように,ちょこんと子房が収まっています。


 子房を縦切りにします。種の赤ちゃん“胚珠”が詰まっているのがわかります。

 
さらに,近寄って撮影しました。胚珠が泡のように見えています。多いものでは300個を超します。


ジャガイモも,ごく普通の種子植物なのです。

 


手漉きイタドリ紙

2015-05-23 | 随想

イタドリ紙を作りました。要領は,タンポポの花茎から野草紙を作ったのと同じです。

なぜ今イタドリなのかという理由なのですが,今のイタドリがいちばん良質の紙になるからです。イタドリが伸び始めたばかりの茎は食用(生食)になります。そのときは,まだからだを支える植物繊維はさほど強くはありません。それで生食できるわけです。

この茎がもう少し伸びた頃,葉が開いて,かなり背が高くなります。その茎を折ろうとすると,前のようにはポキンと折れません。無理に折ろうとすると,折れ曲がるという感じで,力を入れないと引きちぎれなくなっています。

それは,高い背を支えるためにそれに似合った丈夫な繊維ができてきているからです。これより時期が遅くなると,茎が木質化して,繊維が手強くなります。そうなると,煮る時間も,扱い方も,簡単にはいかなくなります。


というわけで,今がイタドリ紙を漉くにはもっともふさわしい時期だといえます。野草紙をやさしい手法で作るコツは,成長の時期を吟味することです。

もう一つ,イタドリ紙のよさがあります。それは色に意外性があるという点です。想像がつかないほど魅力的な色合いです。概ね,渋い赤みを帯びているといっていいでしょう。“概ね”といったのは,赤みに幅があるということです。これを一度漉くと,すっかり魅了されるのではないでしょうか。

わたしは,この紙を手作り時計の文字盤にしていますが,いつまで経っても飽きが来ないのです。ふしぎな紙です。

さて,煮る時間は2時間程度。


煮沸後,きれいに洗って繊維を取り出します。


それをミキサーで叩解して,短めの繊維にします。本格的な場合は石臼を使って手で叩いてきます。そうしてそれを漉くのです。少量の繊維をすべて使い切るため,溜め漉きにします。


乾燥は天日を利用します。アイロンでは乾きムラが出るために紙が反り返り,上質な紙になりません。わたしは経験的に,アイロンを一切使わないでやってきました。


一日もあれば乾燥は完了。「これぞ,野からの贈り物“野草紙”」といったところでしょうか。

 


ジャガイモの花と虫(4)

2015-05-22 | ジャガイモ

前回ご紹介したコハナバチより一回り小さいハナバチも訪花。蕊に取り付いて,抱え込むような姿勢になりました。蕊が大きすぎて,からだから溢れ出しているように見えます。 


花粉を探しているのでしょうか。何かご馳走があるか,確認でもしているのでしょうか。 

 
ただ花粉の話なのですが,ジャガイモの葯を見ると,すべすべしていて花粉がこぼれ落ちているようには見えません。たぶん,品種改良によってオシベの機能が低下しているのでしょう。そんな花で,どうやらわずかな餌を探している模様です。


ヒメヒラタアブはごくふつうに見られます。ここにもか,ここにもか,というほどにいます。しかし,その数ほどには花で見かける例は多くありません。時間をかければ,花にとまる場面を相当に確認できるのかもしれません。 下写真のヒラタアブは口吻を出してご馳走を舐めています。


花から花へと移る個体,花にとまった個体の行動ぶりを見ていると,やはり目的を持って花を訪れているように見えます。もちろん,餌を口にするために。 

 


多くの例を見ていると,蕊の根元付近がどうやらお気に入りのようです。 


ヒラタアブにとっては,なにかご馳走があるのでしょう。これらの食餌行動が送受粉に貢献していることは十分考えられます。

 


幸運な出合い,決定的瞬間

2015-05-21 | ヤマトシジミ

アゲハの庭園には,カタバミが生えています。本格的な夏を迎える頃は,どっさり生えます。今は,まだまだといったところ。それゆえ,葉に産付されたヤマトシジミの卵を見つけるのは,いくら小さくても比較的容易です。

運がよければそれが孵化に至るまでの変化を記録できます。植木鉢に植え替えていれば,いつでも観察可能です。

実際,卵をいくつか観察中です。

 

 


そんな中,偶然孵化直後を観察できるという幸運が訪れました。カタバミは夜間葉を閉じるために,もし孵化しても観察は不可能です。早朝のこと。たまたま葉が開きかけて,隙間を通して卵が見える位置で,孵ったばかりの幼虫が確認できたのです。

 


尾部がまだ卵に接しています。生々しいばかりの光景です。といっても,卵の直径は1mm,幼虫の体長はせいぜい1.5mm。その小さなからだの姿は,毛に覆われ,風格すら感じられます。


この画像は,わたしにとって記念すべき一コマになりそうです。 幸運とはこういうものかなと感じています。 

 


ジャガイモの花と虫(3)

2015-05-20 | ジャガイモ

目が慣れてくると,ジャガイモ畑にはホソヒラタアブのなかまがずいぶんいることがわかりかけました。わたしの予想なのですが,たぶん,幼虫の餌であるアブラムシがたくさんいるからではないでしょうか。

ヒメヒラタアブもよく見かけます。しかし,どうも臆病な性質のようで,わたしがごくわずかに動いても,まるで気配を感じたかのように神経質に飛び去るのです。ほんとうにふしぎな程です。 

しかし,感心するのは,飛翔コースが花を次々に辿るようなかたちでつながっていく点です。花のシグナルをちゃんと受けとめているにちがいありません。色もそう,集団で咲き誇る流儀もそう。小さなからだに備わった認知能力のスゴサをついつい感じました。

 
コハナバチの一種が蕊に取り付いているのを見たときは,驚きました。「こんなハナバチがやって来るのか!」と感激。


花粉でも食していたのでしょうか。 


さらに新しい訪花昆虫が! ツマグロヒョウモンです。蕊の向こう側に回ってから撮ったので,ちょっとわかりづらい写真です。  


ツマグロヒョウモンは花の上に上がって来て,口吻を伸ばし,花弁を舐め始めました。 

 
ニジュウヤホシテントウが蕊にとまっていました。この格好で花弁でも食べているのかもしれません。この向きでは確認しようがありません。


開花の序の口で,すでに何種類かの訪花昆虫に出合いました。すべてが新しい発見です。問題意識を持って探せば,意外な物語が見えてくるものです。我ながら驚いています。

この物語はまだ続くように思います。  

 


モンシロチョウの恋

2015-05-19 | 昆虫

隣家の畑で見た話題です。畑の片隅にキクが植えられています。ふと見ると,白っぽいものが! 「なんだろう」と思い,近寄って確かめました。すると,モンシロチョウが交尾をしているのでした。 

 
チョウの写真はいくつか種を決めて生態を探る手がかりとして撮ってきましたが,モンシロチョウにはほとんど目を向けてきませんでした。理由は簡単。あまりにもありふれていて,生態をわたしなりに解き明かすほどの魅力を感じないからです。それでも,幼虫の典型的な食草から離れたところでこうして見かける機会は,そうそうあるものじゃありません。

それで,とにかく写真に収めることにしました。右がオス,左がメスです。葉先でじっとしていました。お蔭で,慌てることなく二頭の眼がシャープにとらえられる位置にレンズを置いて撮影できました。


オスの前方向からも一枚。 

 
なんだかとても真剣な表情に見えます。「ここには小さないのちが息づいている!」,そんな厳かな雰囲気が漂っています。