イタドリ紙を作りました。要領は,タンポポの花茎から野草紙を作ったのと同じです。
なぜ今イタドリなのかという理由なのですが,今のイタドリがいちばん良質の紙になるからです。イタドリが伸び始めたばかりの茎は食用(生食)になります。そのときは,まだからだを支える植物繊維はさほど強くはありません。それで生食できるわけです。
この茎がもう少し伸びた頃,葉が開いて,かなり背が高くなります。その茎を折ろうとすると,前のようにはポキンと折れません。無理に折ろうとすると,折れ曲がるという感じで,力を入れないと引きちぎれなくなっています。
それは,高い背を支えるためにそれに似合った丈夫な繊維ができてきているからです。これより時期が遅くなると,茎が木質化して,繊維が手強くなります。そうなると,煮る時間も,扱い方も,簡単にはいかなくなります。
というわけで,今がイタドリ紙を漉くにはもっともふさわしい時期だといえます。野草紙をやさしい手法で作るコツは,成長の時期を吟味することです。
もう一つ,イタドリ紙のよさがあります。それは色に意外性があるという点です。想像がつかないほど魅力的な色合いです。概ね,渋い赤みを帯びているといっていいでしょう。“概ね”といったのは,赤みに幅があるということです。これを一度漉くと,すっかり魅了されるのではないでしょうか。
わたしは,この紙を手作り時計の文字盤にしていますが,いつまで経っても飽きが来ないのです。ふしぎな紙です。
さて,煮る時間は2時間程度。
煮沸後,きれいに洗って繊維を取り出します。
それをミキサーで叩解して,短めの繊維にします。本格的な場合は石臼を使って手で叩いてきます。そうしてそれを漉くのです。少量の繊維をすべて使い切るため,溜め漉きにします。
乾燥は天日を利用します。アイロンでは乾きムラが出るために紙が反り返り,上質な紙になりません。わたしは経験的に,アイロンを一切使わないでやってきました。
一日もあれば乾燥は完了。「これぞ,野からの贈り物“野草紙”」といったところでしょうか。