屯田物語

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詩集「四季の風」夕愁白嶺<手紙>

2024年09月13日 | 四季の風
詩集「四季の風」は<手紙>をもってすべての詩の紹介がおわりました。

 【あとがき】

第二詩集「四季 の 風」は先の 習作時代の 「琴しぐれ」と共に、私の詩における第一期 の作品です。この「四季の 風」は「雪柳抄」「四季」「放談」「雪国」と四部からの構成になっていますが、それは私の詩的年令がもたらした結果によるものです。
これらの作品は目まぐるしく展開しながら表現形式を異にしてはいますが、しかし私の追求しているものは依然同様であり、私には目的の為の手段にしか過ぎないのです。勿論私自身の統一した文体で、私の追求しているものが表現出来るのに越した事はありませんが、現在の私は潮く前途に一筋の光を見出して、一歩一歩目的に向って前進している状態なので、これは今後の私に課せられた最大の問題だと思っています。
著者である私には私の作品を客観的に批判出来得る立場にある読者の目が恐しく、或は読者の方が私より一歩先に、私の追求しているものを取得してしまうかも解りません。
何にせよ私は私に忠実で、しかもその上に私自身の世界を創造したいと思っています。
  ━以下略━

  1959年4月6日 浦和にて  夕愁白嶺



<手紙>

発車の時
見送りに文た少女
小さい箱を差出した
車内で箱を開けると
真新しい青い手袋が入っていた

そうそう何時だったか
一度みかんを買いに行った事があった
その時店先に少女が立っていた
少女がみかんを袋に入れようとした時
少女の手袋の綻びていた所から
人差指が顔を出した
私の視線に気付いた少女は
人差指で「コンニチワ」と云った
私と少女はお可笑しくなって笑った
私は少女の機智が嬉しくなった
袋入りのみかんをもらうと
薄汚れた古い私の手袋を差出した
少女は驚いて暫く私と手袋を交互に見較べ
程無く「有難う」と云って受取った

今私は暖い青い手袋に
しみじみとした幸福感を味いながら
袋入りのみかんを抱いている