詩集「琴しぐれ」夕愁白嶺<慕愁> 2022年01月10日 | 琴しぐれ <慕愁> 汝が唇はつぼみにて 莟の誘う口付は みかんの粒か柔かく かみしめて強きオレンジの 香に酔うも麗しき 恋の宴の口付は ほの甘きオレンジの味か 漂う果汁の滴りに 惑う胸の高鳴りて 愛しき汝を抱きしめぬ 汝が恋しき人ゆえに 別れは悲し口付を 涙で交すうたかたの 痺るる恋のせつなさに 汝が唇のほろ苦き 遠くにありて汝を愁い 心悶える夜もすがら みかんの粒をかみしめて 汝が唇の面影を オレンジの肌に求め得ぬくれる 画像は「地球岬」
詩集「琴しぐれ」夕愁白嶺<石狩川> 2022年01月06日 | 琴しぐれ <石狩川> 宵闇迫る石狩川の 波近辺に立ちて 心染みし川音に 愛しきふるさとは 今もなおかわらじ 河原のそこかしこ 川柳の生茂りて 浅瀬とぶ川千鳥の 細かに鳴いて渡るも 石狩川は静かなり 遠くに見ゆ旭橋の 欄干の白き灯は 暗き水面にゆらぎて ほど近き川瀬に消ゆるも 石狩川は美しき 西日消ゆ石狩川の 波近き辺に立ちて 旅行く吾が心に ふるさとの面影を 忘れじと忍ぶなり 画像はニセコ駅前
詩集「琴しぐれ」夕愁白嶺<旅三景> 2021年12月05日 | 琴しぐれ <旅三景> 陸奥の旅のつれづれ 車上に見ゆる松島の 波近き松のかたへに 冬凪も淋し釣舟あり 青森駅の売り娘の誘う 竹籠の青きリンゴを 故郷に待つ愛しき人へ 林檎土産は甘く香りぬ 凍凪も静かなる港 函館の町の匂いよ 波に散る港の灯も 函館の町の懐しき 数艘のイカ釣舟の並び 釣人の姿なき夜の港 近くに磯振りの聞え 遠くに汽笛小さく聞ゆ どこのラーメンが好きかと問われたら、「旭川ラーメン」とこたえることにしている。 ”すがわら”は旭川ラーメンのなかでも比較的あっさり系だ。
詩集「琴しぐれ」夕愁白嶺<鈴懸の並木路> 2021年11月27日 | 琴しぐれ <鈴懸の並木路> 鈴懸の並木道の零れ落葉を カサカサと踏み歩みき この路は悲しや枯葉なりけり カサカサと鳴る枯葉なりけり 秋日射す鈴懸の並木路を 鈴懸の葉のころび行きぬ 鈴懸の葉の足辺に散りて 心ならずも歩みを止めぬ 鈴懸の並木路は果しなく 黄金色に細々と続きぬ 懐かしき友の往きて 吾が影の長々と残りけり 亡き人を慕う心に 秋日射す零れ落葉は 吾のみか かなし 思い出の鈴懸の並木路 旭川東高卒業アルバム(昭和35年卒)を「映像で見る60年ののち」(グーグルフォト)にアップすることにした。 全部で八クラスあるので一組から順次載せていく。次に教職員のお顔もアップする予定だ。
詩集「琴しぐれ」夕愁白嶺<恋椿> 2021年11月23日 | 琴しぐれ <恋椿>(民謡) なぜに咲いたか寒椿 恋に咲くなら春に咲け 叶はぬ恋と知るならば 悲しき秋に咲くまいぞ 小さく咲いたよ寒椿 俺とおまえの二つ花 短く散るのが運命でも 恨みの秋に泣き咲くか たとへ短き生命でも 俺とおまえの恋ならば 誰も知らないその内に いっそ二人で秋に咲こ 二つ咲いたよ寒椿 俺とおまえの恋の花 辛い浮世も二人なら 泣いて咲いても恋椿
詩集「琴しぐれ」夕愁白嶺<四季・冬> 2021年11月20日 | 琴しぐれ <四季> 冬 冬は来ぬ 霙交りの風吹かせ 途惑う足に冬は来ぬ 細き小枝をふるわせて 浮草 枯葉ふみて来ぬ 冬は来ぬ 白き曠野かけめぐり 狂喜の風に冬は来ぬ 戦く木々をあざ笑い 戯れ遊びつ走り来ぬ 冬は来ぬ 天の塵 屑投げ捨てて 軒のつららに冬は来ぬ 灰色空をゆすらせて 小さき綿屑こぼし来ぬ 冬は来ぬ 山川草木しきつめて 窪みし道に冬は来ぬ 馬橇雪なか駆けさせて 鈴の音鳴して辷り来ぬ 北側のベランダからスマホで撮った皆既月食の画像をコラージュしてみた。
詩集「琴しぐれ」夕愁白嶺<四季・秋> 2021年11月19日 | 琴しぐれ <四季> 秋 秋は来ぬ 彼方のむら木々染め変えて 黄葉 紅葉に秋は来ぬ 枯れし諸葉を渦巻かせ 葉風あおりて急ぎ来ぬ 私は来ぬ 庭の落葉煙りさせ 残りし灰に秋は来ぬ 蛤蛤を宙に飛び交せ 竹垣沿いに並び来ぬ 秋は来ぬ 岩間の魚を光らせて 早瀬の音に秋は来ぬ 浮きし落葉の背に乗りて 水面をすべりて流れ来ぬ 秋は来ぬ 月も哀れに曇りさせ 薄れし雲に秋は来ぬ 狭霧に入りて立ち籠めて 地面の上をそぞろ来ぬ 昨日の手稲山。 今夜は皆既月食だが、少し曇ってきたので見られるかどうかわからない。
詩集「琴しぐれ」夕愁白嶺<四季・夏> 2021年11月17日 | 琴しぐれ 2008年11月18日 南側ベランダからJRタワーを撮る。 <四季> 夏 夏は来ぬ しめりの虹をうち渡り 玉のしずくに夏は来ぬ 乾きし若草濡れ染めて もゆる緑ににじみ来ぬ 夏は来ぬ 螢の明り火ともしつつ 童等の声に夏は来ぬ 団扇の音のむしむして 汗ばむ肌に浮び来ぬ 夏は来ぬ 涼風御簾に忍ばせて 風鈴の音に夏は来ぬ もやる香をたゆらに 揺ぐ煙を遣わせ来ぬ 夏は来ぬ 木立の陽炎ゆらぎさせ あみ模様に夏は来ぬ 草木の香り含ませて 茂る根株分けて来ぬ
詩集「琴しぐれ」夕愁白嶺<四季・春> 2021年11月16日 | 琴しぐれ <四季> 春 春は来ぬ 淀みの小石の面ふみて 川草 若菜に春は来ぬ 衣更へよと白銀の 褥を波に託し来ぬ 春は来ぬ 小さきの頬うちて 乙女の髪に春は来ぬ 軽し遠き山おりて 風に交りて里に来ぬ 春は来ぬ 雑木の小枝をうち鳴し 小鳥の声に春は来ぬ 根本の雪の消え去りて 土の底から湧いて来ぬ 春は来ぬ 灰色空を散りさらし 青き真澄に春は来ぬ 白い雲には紅さして 遙か彼方を転び来ぬ
詩集「琴しぐれ」夕愁白嶺<ヤキトーキビ> 2021年11月15日 | 琴しぐれ <ヤキトーキビ> 街角の屋台で買った 二本のヤキトーキビに その人はいたずらっぽく笑った 道行く人が振返って見ても その人はいたずらっぽく笑った 小さな小さな冒険に ヤキトーキビの香ばしさ 木枯し吹く夜道に 一本のヤキトーキビの温もりが 両手より腹中に沁み渡る その人のあどけない望みの 小さな小さな冒険は いたずらっぽい笑顔で 白い歯を一層美しくさせた 屋台のヤキトーキビにも その人の秘めた夢がある 木枯し寒き夜道には 小さな温かさがいる ヤキトーキビの温かさである そしてそれは恋である 一本のヤキトーキビにも 恋が秘んでいる 私の気付かぬ事 それを その人は知っていたのだ