虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

「沈まぬ太陽」を観た

2010-02-05 | 映画・テレビ
「沈まぬ太陽」を見に行った。

観客は、5、6人くらいか。
もちろん、映画としては、「アバター」の方が断然おもしろいけど、「大会社」の差別人事を描いた映画は珍しい。

ただ、「会社」が組合活動をした者に対していかに差別待遇をするか、というテーマと飛行機事故の二つの主題があるので、どちらも中途半端はまぬがれない。作家は、この航空会社を追求したかったのだろうけど。


組合の委員長を務めた渡辺謙に対して、会社は、カラチ、テヘラン、ナイロビと海外の僻地勤務を命じる。子供や老いた母親もいるのにだ。
なぜ、会社をやめなかったのだろう、とわたしなどは思う。

「会社とは何だ」と、映画の中でも自問する場面があるが、そのへんをもっと同僚や他の労働者も描いて深く追求してほしかった。映画では、渡辺謙の過去の経歴(たとえば、青年時代)をカットしているので、主人公の人物像もつかみにくい。

中曽根康弘を思わせる総理(加藤剛)とか、実在の人をモデルにした人が出てくるが、総理にたのまれ、日航の再建役に鐘紡の石坂浩二をひきだすブレーン役にあの瀬島龍三が出てきた。元大本営参謀で、「不毛地帯」のモデルにもなった人だ。たしか臨調かなにかの会長もしたっけ。

司馬遼太郎がこの人と対談したこで、司馬が書こうとしていた「ノモンハン事件」の主人公のモデル須見さん(下の名、忘れた)が怒り、司馬に絶縁を告げた、という話がある。須見さんに絶縁されては司馬もノモンハンは書けない。元大本営参謀がまたも戦後の社会を動かすのはたしかにかなわん。

でも、これは瀬島龍三だけに限らないかもしれない。戦前に権力を握り、人を支配していた者たちが戦後もあいかわらず権力を握っている。黒幕たちの人脈は連綿として変わっていないのかもしれない。

映画の中で一番戯画化されていたのは新聞記者。「おれはジャーナリストだ」とバーでいばり、政治家や企業から賄賂をもらって、権力に都合のよい記事を書く笑うべき人種。

今日の朝日の記事はなんだ。2面、3面、4面、5面、13面、30面が小沢の政治資金事件の記事。国民がそれだけ関心をもっているというのだろうか。いやになる。それよりも、あの「密約」事件をなぜ書かない。

おっと、また、映画から話がそれた(笑)。

主人公はアフリカ勤務の中で、アフリカの魅力にとりつかれたようだ。「沈まぬ太陽」とは、アフリカの太陽のことだった。