虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

藤沢周平「山桜」

2009-02-28 | 映画・テレビ
レンタル屋さんで「山桜」を借りて観た。
最近の洋画はひたすら刺激の強いものばかりなので(内容はまったくないのに)、
この静かな時代劇はほっとする。でも、眠くなってしまう人もいるにちがいない。
雪山や田畑、川の流れ、花などのきれいな画像がたびたび出るが、一瞬、NHKのなんとか100選とかの風景番組を見てるような気もした。
原作(短編集「時雨みち」)は読んでいないので、どんな筋だろうかと思って見た。

主人公は、再婚した野江という女性。1度目は夫が病死し、2度目の嫁ぎ先では夫とも舅夫婦ともうまくいっていない(金のことしか考えない家)。

そんな野江がきれいな山桜の枝をとろうと、手をのばすが高くてとれない。そのとき、突然、「取ってしんぜよう」と手塚弥一郎(東山紀之)が現われ、桜の枝を折ってくれる。野江は忘れていたが、この人も再婚のときの縁談に名があがった人だった。こちらは知らなかったが、相手は前から野江を知っていた。野江と手塚が出会うシーンはここだけ。このときから、野江の心になにかがはじける。

この東山は、藩政を私腹化する悪重役を斬り、牢屋に入れられる。野江は、嫁ぎ先を追い出され、東山の実家(母親が一人で住む)を山桜の枝を持って訪ねるという話だ。東山がその後、どんな処分をうけるかはわからないまま。

原作を見ると、実に短い話。山桜の枝を折ってもらった日のあとは、「手塚弥一郎が、城中で諏訪平右衛門を刺殺したのは、その年の暮れであった」と、その経緯は2ページほどでおさめ、そのあとは、野江が弥一郎の母が住む家を訊ねる場面で終わる。

「履物を脱ぎかけて、野江は不意に式台に手をかけると土間にうずくまった。ほとばしるように、眼から涙があふれ落ちるのを感じる。とりかえしのつかない回り道をしたことがはっきりわかっていた。ここが私の来る家だったのだ。この家が、そうだったのだ。なぜ、もっと早く気づかなかったのだろう」

これがモチーフであり、女性の視点からの作品だ。

批判や文句はどこにでもつけられるので、この映画でもいいたい文句はいっぱいあるけど、やめておこう。原作が短いからいろいろ膨らましている。嫁ぎ先の暮らし、原作にはない弟、原作にはない農民と東山との関係、いや、斬り方だって、原作には何も書いていないのだ。ただ、東山紀之は、侍が似合う。藤沢時代劇に合う。この映画は、東山紀之の存在でかろうじて及第しているといったら、やっぱり悪口になるかな?

上野創記者

2009-02-22 | 新聞・テレビから
今日の朝刊に中央教育審議会の新しい会長になった三村明夫(新日鉄会長)へのインタビュー記事が出ていた。麻生おろし、とか政権交代とかいわれるけど、財界が国の政策ばかりか、教育も学校も都合のいいように統制していくこの国の基本姿勢には何の変化もないようだ。三村氏の話なんてどうでもいい。

このインタビュー記事を書いた上野創記者についてだ。
今、教育分野で仕事をしているのだろうか、と思った。

昨日、ブックオフで「ガンと向き合って」(朝日文庫2007年刊)という本を買ったばかりだった。上野創記者は1997年、26歳のときにガンにかかり、2000年にガン闘病記を新聞に連載、本にまとめられ、「日本エッセイストクラブ賞」を受賞している。ガンとわかったときに、婚約者に「結婚しよう」といわれたそうだが、自分の心のゆれを正直に記録したいい本だ。がんは再発の危険が常にあるが、上野氏は現在、たぶん39歳。元気に仕事をしていることがわかってなによりだ。

昨日のつづき

2009-02-17 | 新聞・テレビから
中川大臣に対して、今日は、一転して「醜態」と書く。昨日のローマ発の記事では、「中川さん 敵は不況?睡魔?」という見出しで、酔っ払ってるとかの言葉はなく、ただ「眠気をこらえているような様子だった」と同情的で、はっきりと批判し、問題化する視点はなかった。今、大新聞の記者がこうなんだろうと思う。テレビで報道され、その画面を国民が見て、その異常にはじめて気づかされる。

昨日、1面トップになっていた沖縄海兵隊グアム移転に関する費用。空・海軍施設費までも払うという報道だったが、今日、防衛省の事務次官が記者会見をしたそうだ。たった1行のベタ記事。目をこらさないと見つからない。移転経費が空・海軍施設に使われることについて、「まさに移転することに伴って必要となる事業だ」と述べ、問題はないとの認識を示した。これだけ。新聞記者は何もつっこんだ質問なんかしなかったにちがいない。土居記者のせっかくのスクープだったのに。

16日、日本郵政は入札に関する資料を総務省に提出し、記者会見をした、との記事。記者会見の詳しい紹介はなく、執行役の弁明を書くだけ。このときの記者会見でも、つっこんだ質問はなかったにちがいない。鳩山総務相の「いいわけのオンパレードだ」の言葉を紹介するだけで、郵政と鳩山さんの対立にすりかえてしまう。
こうなると、鳩山さんにがんばってもらうしかない。だが、いつまで鳩山さん、総務大臣でいられるか。

朝日は、はじめ、カンポの宿に対する鳩山さんの介入を不当とした、いわば郵政民営化推進の立場なのだろう。今日は、竹中平蔵にインタビューして、かんぽの宿へのこれまでの動き(鳩山さんに対しても)に対して反論させている。竹中平蔵にインタビューするなら、鳩山さんにもいんたびゅーしろよ。麻生首相の発言も小泉元首相の発言もこの「かんぽの宿」問題に端を発している。朝日は、小泉氏よくぞ、言ってくれた、と思っているのかもしれない。「かんぽの宿」問題が暴露されたら、郵政民営化そのものの実態も暴露されるのだろう。この記事の隣で星浩は「小泉氏の一撃」と題してまたまた小泉氏を持ち上げる。これも、醜態だ。

書き忘れたので、追加。この日の「政策ウオッチ」というコラムでは、平野春木という記者が、「郵政民営化」と題して「数年前に郵政を取材した者として改革後退は残念でならない」と書き、「どんぶり勘定」よりも「コスト透明化」の意味でも郵政民営化を推している。朝日は郵政民営化推進オンパレードの記事だ。かんぽの宿問題以後、「郵政民営に反対だった」と口走った麻生さん降ろしに勢いがついたのもわかる。

女相続人

2009-02-16 | 映画・テレビ
録画していたBS映画「女相続人」を見た。
「ベン・ハー」「大いなる西部」を作ったウイリアム・ワイラー監督の作品。今から60年前に作られた作品だが、おもしろかった。モンゴメリー・クリフトが美男子の「女たらし」(だったのかどうか?)になる。財産のある不器用で真面目で世間知らずの娘に美男子が財産目当てで近づくが、男性に裏切られ、復讐をする話(といっても殺したりはしないが)。最後まで、男性は財産目当てだったのか、それともほんとうに愛してたのかわからないように作っているが、たぶん、女性の判断が正しいのだろう。みんな演技がうまい。

BS映画、これからいろいろいいのをやるようだが、ほとんど見たものばかり。エリア・カザンの「波止場」と「いつか読書する日」は録画しておこうと思う。

グアム移転 他

2009-02-16 | 新聞・テレビから
1面トップに「沖縄米海兵隊グアム移転 空・海軍施設費も負担」の見出し。
沖縄の海兵隊の移転とは直接関係のない施設費も負担するという。その額202億円。防衛省から取材したそうだ。他紙には報道されてないから、これは朝日のスクープだろう。記事を書いたのは土居貴輝。「同盟国同士でも、海外にある他国の基地整備に、国民の税金を拠出するのは極めて異例だ」と書く。よい記者だ。この報道を黙殺してはいけない。

中川財務相の会見ニュースは昨日、テレビで見た。変だな、と思っていた。ローマ特派員からの記事が出ている。「同行した記者団らの間で話題になっている。時折、目を閉じるなど、眠気をこらえている様子だった。かみあわないやりとりに、戸惑いが広がった。ある同行筋は、「一時はどうなるかと思ったが、なんとか答弁できたようだ」と話していた」
まったく、第三者的、傍観者的書きぶり。現場にいたのなら、「大臣、その態度は何だ。酔っ払っているじゃないか」とどなるべきだろう。何もいえず、だまって見ている日本人記者も変だ。

朝日の月曜版に朝日歌壇があるが、そこの常連さんがホームレスで連絡先がわからないそうだ。公田耕人と名乗る人。「公田さん、何とか連絡とれませんか」と呼びかけていた。

   日産をリストラになり流れ来たる ブラジル人と隣りて眠る
   百均の「赤いきつね」と迷いつつ 月曜だけ買う朝日新聞

かんぽの宿④

2009-02-14 | 新聞・テレビから
朝日の朝刊。4回目の「かんぽの宿」社説。
「ひとまず収拾の方向になった」と書く。

責任は西川郵政社長であり、「官業体質へ逆戻りしてきた」西川郵政は、「この手痛い失敗を機に、民間会社として自立の道を歩む決意を新たにしなければならない」。うまくごまかせなかった失敗かい。

しかし、社説子は、今回の譲渡白紙撤回をまだ残念がるような書きぶり。社説の三分の一を使って、「心配なのは、未曾有の不況が深まるなか、今回より有利な条件で売却できるかという点だ」について書く。結びは、「売却をやり直しても大幅な損失が生じる恐れを覚悟しておく必要があるだろう」だ。まるで、オリックスがいいそうなセリフではないか。

社説も記事も「オリックス」とはいわず、「オリックス不動産」と書くが、オリックス不動産の社長はオリックスの副社長がなっているのだから、オリックスも宮内社長も無関係ではあるまい。

今回の「かんぽ問題」は日本郵政(それも西川氏の責任問題にして)で、オリックス側には何の関係もないような書きぶりがずっと続いている。

今回の疑惑についてもただ入札の最終段階で「レクセンター」が外された、という1点だけをあげるのみで、他の疑惑などは書かない(アドバイザーに1億とか支払ってる、とか話もあったが、朝日はこれを報道したっけ?)。

疑惑解明は、西川社長の説明と法務省の調査に待つだけ。
「ジャーナリスト宣言」したのは、どこの新聞社?

「かんぽの宿」問題で、国民は大新聞の正体も知ることができる。


かんぽの宿③

2009-02-08 | 新聞・テレビから
金曜日の朝日で「かんぽの宿、売却断念」の記事。それまで、かんぽの宿について2回も社説に書いてきた朝日(それまで鳩山氏への批判ばかりで日本郵政の味方ばかりしてきたが)、当然、今回の断念で三度「カンポの宿」について書かなければならないはずだ。

ところが、なんと、翌日(土曜日)の社説は、「郵政発言、麻生首相の見識を疑う」として、麻生氏の発言にかみつく。しかし、麻生さんの発言がいいかげんなのは今に始まったことではないだろう。これを問題にして「カンポの宿問題」から逃げるな、といいたい。どうも、この社説子も、あの「かんぽの宿」について書いた人と同じ感じがする。

要するに、郵政民営化をすすめたい立場なのだ。今回も、こう書く。「深刻な不況のなかで、かつて圧倒的に世論に支持された小泉改革路線には強い逆風が吹く。略。これほどの基本政策で、言葉をもてあそぶかのような首相の態度は、国のリーダーとしての見識を疑わせる」と。

郵政選挙を演出したのはマスコミであり、しかも、郵政民営化のわかりやすい解説をしたとはとても思えず、圧倒的な支持を得た、というのは何も内容を国民が理解したわけではない。選挙で決まったから、これは「基本政策だ」と?これが新聞人か?ジャーナリストか?国のご意見番のつもりか?

土曜日、日曜日とテレビの番組欄で、この「カンポの宿問題」について報道するのかどうか見てみたが、どこもなし(見逃したところもあるのかもしれないが)。こんな大きな問題、なぜ、もっと報道しないのだ?

本来ならこんな問題、新聞社が陣頭指揮をとて、調査すべきなのだが(全国紙ならできるはずだ)、ただ国会議員の調査にまかせるだけ。だれのための新聞だろう。

新刊屋さんで

2009-02-08 | 読書
新刊屋さんにいく(ジャスコの店内だけど)。
文庫本コーナーを回るが、最近は古い本の復刊が目につく。いい本はやはり何度も並べられるのだろう。いいかえれば、ここ10年間は、いい本はあまり出ていないのかも。海音寺潮五郎の「西郷と大久保」や「幕末動乱の男たち」「武将列伝」など海音寺潮五郎の復刊は当然だろう。ヘッセの「荒野のおおかみ」など、ちょっと手に入りにくかった本も並んでいる。ひょっとして古典ブームもくるかもしれない。この時代を生きにくには、脳を訓練したって、ハウツーもの読んだってどうにもならないものな。

岩波新書「小林多喜二ー21世紀にどう読むか」(ノーマ・フィールド)、吉村昭「彰義隊」(新潮文庫)、アラン「芸術の大系」(光文社古典新訳文庫)を買った。

アランはけっこう好きで、昔からときどき、読んでいた。幸福論は有名だが、文庫の「精神と情熱に関する81章」(小林秀雄訳)とか、「思想と年齢」とかは捨てずに愛蔵している。「芸術論」は中公の「世界の名著」にあるけど、これは抄訳なので、今度は長谷川宏の全訳ということで買った。

かんぽの宿2

2009-02-01 | 新聞・テレビから
今日の朝日の社説「カンポの宿」第2弾だ。
前回は、鳩山総務相の横槍は筋が通らない、文句をいうのはおかしい、だったが、今度は、しぶしぶ「徹底調査と公表で道開け」が見出しだ。徹底調査といっても、日本郵政が外部の専門家に頼んだ第三者委員会による調査だから、そんなもの信用しがたい。

見出しとちがって、今回の内容も、またも日本郵政に代わって、今回の売却を弁護する。
「鳩山発現を受け、国民の間からも売却に疑問の声が出ている。その核心は、購入・建設に2400億円もかかった79施設を109億円で売るのはおかしい、という点だだろう。たしかにこれでは大損だ。しかし、よく考えてみたい」

と、以下、社説の半分を使って、価格が大幅に下落したわけを説明し、たとえ、安くても市場価格ならしかたがない、と書く。この社説子はなお日本郵政の今回の売却を当然とする立場にいる。宮内氏やオリックスのことはもうおくびにも出さない。政府と日本郵政の問題にする。

国民に疑問の声があがっているなら、それを調査するのが新聞社だろう。いつからオリックスの社員になったのだ?