らんかみち

童話から老話まで

漂流教室と白熱教室

2013年01月08日 | 暮らしの落とし穴
 漂流教室といえば楳図かずお先生、白熱教室といえばマイケル・サンデル教授。この二つに共通項はあるのか、大ありだ。
 漂流教室は熱心に読んだわけでもないのでストーリーは断片的にしか思い出せないが、学校の決まりを優先するのか、それとも現実を直視して臨機応変に対応するのか、といったことで子どもたちが悩んだり戦ったりするんじゃなかったかな。
 つまり正義とは何か、といった明確に答えの出ない命題を目の前に突きつけ、さあ君はどちらにする、と選択を迫られる。

 白熱教室も同じで、100人の人を助けるために1人を飛行機から突き落とすのは正義か、みたいな究極の選択を学生たちに討論させる。ずいぶん前から放送されていた気がするけど、2010年からなんだってね。
 初めて観たときはぼくもずいぶん悩んだけど、考えることに意味があって、答えを出さねばならないわけじゃない、と気がついて楽になった。

 サンデル教授はハーバード大学を飛び出して東大でも講義したらしい。テーマは一貫して「正義とは何か」だけど、原発や、いじめといったコンテンポラリーな問題も取り上げて学生たちの意見を聞く。
 教授の講義を何度も観てきた人は、次にはこう答える学生が出てきて、それに対して反論は? みたいな展開になるんだろうな、と予測できる。真剣に観ていいないぼくでもそうなんだから、サンデル教授にしてみたら東大生であろうと赤子の手をひねるようなもんだろう。

 何度観ても面白いなと感じるのは、取り上げる事例がその都度変わるからだろう。同じ図式のときもなくはないけど、その時々でこちらも考え方が変わってしまう。だからいつも鮮度が高いのだ。
 思うに、白熱教室は知的好奇心を満たしてくれる壮大なエンターテインメントなのではなかろうか。BGMがあるわけでなく、スライドを使うわけでもない。喫茶店で4、5人と話し合っているような身近な問題を5000人相手にやってしまうのだ。
 落語や漫才なら一方通行だけど、双方向通信でやってしまうサンデル教授は素晴らしいと手放しで褒めたいところだが、実は講義するにおいて欠くべからざる条件が一つだけある。あれって、頭の良い聴衆相手にしか、やれんのじゃないかぁ?