らんかみち

童話から老話まで

トンチンカンな英国人に愛の手を

2007年12月18日 | 暮らしの落とし穴
 まったく信じ難い話だけど、本当にこの記事が英紙フィナンシャル・タイムズの生活・芸術面に大きく掲載されたのなら、大阪当局は断固抗議すべきだし、それが太田知事の花道にもなると思う。

全く東京的ではないあらゆるものが それこそが大阪の魅力――フィナンシャル・タイムズ(1)(フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュース

 これを書いたのが、観光で大阪に来た英国人であるというなら話はわかるけど、フィナンシャル・タイムズの東京支局長? 全部が全部間違っているとは言いませんけど、多くの日本人が持つ皮相的な印象に、支局長自身の主観を加えて「初めにカオス大阪ありき」の結論を導いたに過ぎないんじゃありませんか。

 エスカレーターのどちらを空けるかなんてことは、大阪が欧米にならってしたことであって、東京が「追い越しは右」の日本流を頑迷に貫いていることは、欧米人ならすぐに理解できるはず。同じ自動車左側通行の英国にあっても、追い越しは左側ではなかったでしょうか。もっとも大阪では場所によって、あるいは時間帯によって空ける側が違ったりする臨機応変ぶりも発揮して、混乱に拍車がかかっている場合もあったりするみたいですが。

 食い物にしたって、串カツとたこ焼きだけが大阪の名物みたいに思われているとしたら、大阪APECのとき、自分の頭をたこ焼きになぞらえた横山ノック知事の責任も問いたくなります。グルメ都市宣言をした尻からジャンクフードのたこ焼きを大阪のシンボルみたいに「さむらいボール」などと銘打って紹介したもんだから、たこ焼きの地位は上がったものの、食い倒れの街、大阪のプライドはいたく傷ついたじゃないですか。もっとも当時のクリントン大統領がAPECをすっぽかしてくれたお陰で、国際的被害は免れたのですが。

 看板が下品でケバくて毒々しいのはその通りだけど、大阪のおばちゃんだって年甲斐も無く豹柄の悪趣味な服をまとうのが好きだぞ! そういうのをひっくるめて、せっかちで図々しくて雑然としていると言うなら、それは全く的を射ていない。カニがデカイのもグリコが派手なのも、おばちゃんのパンプスがカラフルなのも、全ては大阪らしいサービス精神の表れなのではないでしょうか。「ようこそ大阪へ」って、大方の印象を裏切らないいでたちで観光客を迎えているのです。

 最後のネズミだけど、それはハツカネズミだろう。そんなのどうってことないじゃないか。よりによってネズミの出るような店に入らなくてもいような気がする。というか、この記事を書くためにわざわざ店を選んだのか?
 結局、支局長は何が言いたいのでしょう。大阪が好きだと書いているが、東京と比べるんじゃなくてロンドンと比べてどうよ。
 それはともかく、エンタメとして読むならレトリックには学ぶべき点があるし、面白い。だけど大阪の文化を紹介した記事としてなら、ぼくとしては及第点はあげられない。もっともそういうトンチンカンさえも笑いのネタにしてしまうのが、大阪的でもあるのでしょうが。