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渡辺行夫作品■BENIZAKURA PARK ART ANNUAL 2020 (8月22日~9月30日、札幌)

2020年10月03日 05時56分25秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
(承前)

 ちょっと間があいてしまいましたが、ベニザクラパーク・アートアニュアルの続き。
 渡辺行夫さんの作品はド迫力過ぎて、ネタバレしないよう、会期が終わってからアップしたほうがいいかな、と思ったのは確かです。

 ガラス窓越しに鑑賞する方式です。
 それにしても、でかい。
 恐竜がでかいのは当然かもしれないし、じつはイタドリという軽い素材(道内の道ばたあちこちに生えてる巨大な草)を使っているのですが、これらの巨大な新作群を70歳が制作・発表しているのですから、驚くしかありません。



 「時間は実在するか??」
と題したテキストが附されていました。
 かなり長文ですが、途中で切れないので、全文を引きます。

私が今回制作したモノたちは時間の流れの中でどのような位置を占めて存在できるのかを考えながら作り続けました。

その時間とはどのように自分の中で捉えるかによって過去、現在、未来の位置づけが違っています。時間とはそのように流れ続けるものと当たり前に思っていたことも、考え方を変えるとそんなに単純に成立しているかどうかを考え込んでしまいます。私が2020年に制作したモノなので現在の作品だと思っても、作り始めた時はすでに過去のことになっている。これからまだ作り続けるとしたらこの空間は未来なのか? それを続けるといつから過去になるのか? その辺の線引きはいつどこで誰が決めるのか?

博物館に展示されている何億年か前に存在していたとされる恐竜もいたのか、いなかったのか。判別がつかないモノたちも私が表現した今、同列に並べてこの空間を構成した時には、まさに現在の空間ということになります。

私は意識する主体がなければ時の流れや、そもそも時間は存在しないのではないかと思われます。とは言っても私たちは時間的なスケジュールの中で行動しています。その時は確かに時間を意識しています。わたしたちが使っている道具としての言語は宇宙空間の中で生きている状態を上手く表現しきれていない部分もあるのではと思います。表現されたモノたちを資格と言語で考えてみたいと思います。


 カント哲学でいえば、時間は実在せず、カテゴリーだということになります。
 空間と時間は認識の枠組みなのであり、モノのように存在するわけではありません。

 まあ、そんな哲学的な話はともかく、存在感がすごいです。
 彫刻は、時として人間よりも長い時間を生きると考えられています。その点からすると、恐竜というモティーフは、彫刻向きなのかもしれないと思います。
 ただし、古生物学の進展によって、恐竜の姿も変化しています。過去の恐竜自体が変化するはずがないのに、わたしたちの学問の発展にともなって、イメージは変わっていくのです。
 ここで渡辺行夫さんが提示した1億年前の状態も、10年後、50年後にはどう変化しているかはわかりません。


 渡辺さんは小樽在住の彫刻家。もとは石彫を手がけていました。
 出身地の紋別など、道内各地に、スケールの大きな抽象の野外作品が置かれています。
 2010年代の道内を代表する大規模な野外展「ハルカヤマ藝術要塞」の実行委を率いる存在でもありました。

 2017年に胆振管内むかわ町穂別で、同展を引き継ぐ「ポンペツ藝術要塞」が開かれ、その会場で渡辺さんは恐竜をモチーフにした大作を発表しています。今回のモチーフ選びにも関係しているかもしれません。


2020年8月22日(土)~9月30日(水)午前10時~午後5時、月曜休み(9月21日は開園し、23日休み)
紅櫻公園(札幌市南区澄川389-6)

https://www.benizakura.jp/information/event/611.html


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