ヤングキングアワーズ 2014年9月号より
以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)
●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)
コミックス7巻、8月30日発売!
そんな今回、恒例の表紙サギです(^^;
アワーズ今月号の表紙は、谷川史子先生『清々と』。
爽やか清純な女子高生が描かれていますが、表紙をめくれば「ナポレオン」。
のっけから、毎度おなじみのショッキング場面が目に入って来て、インパクト抜群です!
今回の衝撃場面は、時代をさかのぼって、フランス革命期。
マリー・アントワネットの処刑シーンであり、1ページ目には彼女の首が・・・
その物悲しい表情が、虚無へと誘うかのように、読者を引き込みます。
しかし毎回、“表紙サギ”を考えられる長谷川先生は大変ですね(^∇^;
なんで今、マリー・アントワネットなの? とも思いましたが、
そこは、きちんと物語につながっているのだから、さすがでありました。
処刑人サンソンと、皇帝ナポレオン。
マリー・アントワネット、そしてルイ16世を処刑したのが、サンソン親方。
自身は王党派であるはずの彼が、主人であるはずの国王と王妃を処刑するという
何とも哀しいめぐり合わせ、それに伴う心情が、回想から痛いほど伝わってくる冒頭でした。
そして、皇帝陛下との邂逅。
社会の下層にいるはずの処刑人と、頂点にいるはずの皇帝という立場でありながら、
平静を保つサンソンに対し、動揺を隠せないナポレオンという描かれ方をしています。
それは、かつてルイ16世を処刑したサンソンが、いつか自分を処刑するかもしれない
立場にいることを、ナポレオンが強く意識しているため。
対してサンソンは平等論者だったともいわれ、己を律することに厳しい人物。
そのあたりが、皇帝を前にしても揺るがない精神を、形作っていたのかもしれませんね。
政治という舞台において、下手を打てば死を招きかねないという恐怖。
そして、戦死と処刑では、死の意味が大きく異なると考えるナポレオンにとって、
処刑人サンソンの存在は、無視できないということなのでしょう。
そんな皇帝と処刑人、双方の立場と心情が、興味深い一幕。
ナポレオンの抱える不安と、サンソン親方の人間の大きさが、じっくりと感じられました。
サンソン親方、没す。
ナポレオンと会った年に、サンソン親方はなくなったのですね・・・
ビクトルさん、男泣きしておりますが、これはもう仕方ない。
ビクトルさんにとっては、父親のような存在と言っても、過言ではありませんから。
本作にとっては準主役ともいえる立場の彼が、そんな風に泣くことで、
サンソン親方の存在感の大きさを、演出しているように思えたりもしますが、
普通にサンソンという人物の個性が偉大でしたからね・・・ 喪失感ハンパないです。
一方、ベルナドットのスウェーデン兵への処遇は、
のちに彼が、スウェーデン王になることへの布石といった所でしょうか。
このあたりも後々、ナポレオン体制に大きな影響を与えることになりますからね、重要です。
大陸封鎖令。
プロシアを降したことにより、広大な海岸線を支配したナポレオン。
そこで、仇敵イギリスを封じ込めるための貿易禁止を考案。
これにより、イギリスに大打撃を与えつつ、ヨーロッパ経済を支配しようと目論見ますが、
タレイランは細心の注意を払いつつ、消極的な態度によって反対の意向を示します。
ここで、タレイランが眠そうにしているのは、間違いなく乗り気でないため。
「人は利益を求めて動くんですよ」という言葉から、この経済封鎖はうまくいかないどころか、
反仏感情を生み出してしまいかねないと忠告しているのが、
利にさといタレイランらしいと感心しちゃいましたよ。
それでも、ナポレオンは態度を崩さなかったため、
表だって逆らうことはせず、忠実を装って封鎖令の文言を書き始めているのが、
処世術に長けたタレイランの真骨頂といった趣です。
最後、あくびでシメているのは、彼の反骨の表れですよねえ・・・
ポーランドの人々。
ポーランドは、ロシア・オーストリア・プロシアによって分割された状態。
ここで、オーストリアとプロシアの領土を独立をさせれば、
フランスにとって利になると諭すタレイランの指摘は的確です。
けれど、ナポレオンが独立を明言せずにいるあたりは、ちょっとズルさを感じましたよ。
そんな中、出会った1人の女性・マリア・ヴァレフスカ。
ナポレオンにとって、重要な女性の1人ですね~。
一目ぼれしたナポレオンは、さっそく権力を使って探し出し、
すでに人妻(夫は60代!)であったものの、それでもかまわず、
愛人として差し出させているのは、なかなかの悪皇帝っぷりでした。
そして、マリアさんを差し出したことに胸を痛める男性・ポニャトフスキ。
ナポレオンに心酔しつつ、後にフランスの元帥位を授かる人物で、
ポーランドの独立を望んでいるのですが、まあ、その想いは・・・・・・
マリアにせよ、ポニャトフスキにせよ、ポーランドの独立が願いであり、
その希望であるナポレオンに頼っているわけですが、お気の毒というか、哀しいというか。
などなど、サンソンの死から、大陸封鎖令、ポーランドの人々と、様々な動きがあった今回。
私としては、タレイランの背信が、ひたひたと迫っているような描き方が面白い所です。
あと、マリアさんの美しさにも注目ですね!
彼女については、どのように描かれてゆくのか気になりますし、
ますます今後も、楽しみです!