五里霧中

★ マンガなどの感想 ★

◆ 今月のナポレオン

2014年07月31日 | ◆[不定期] ヤングキング・アワーズ

ヤングキングアワーズ 2014年9月号より

 

 

 

 

以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)

 

 

 

 

 

●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)

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 コミックス7巻、8月30日発売!

 そんな今回、恒例の表紙サギです(^^;

 アワーズ今月号の表紙は、谷川史子先生『清々と』

 爽やか清純な女子高生が描かれていますが、表紙をめくれば「ナポレオン」。

 のっけから、毎度おなじみのショッキング場面が目に入って来て、インパクト抜群です!

 

 今回の衝撃場面は、時代をさかのぼって、フランス革命期。

 マリー・アントワネットの処刑シーンであり、1ページ目には彼女の首が・・・

 その物悲しい表情が、虚無へと誘うかのように、読者を引き込みます。

 しかし毎回、“表紙サギ”を考えられる長谷川先生は大変ですね(^∇^;

 なんで今、マリー・アントワネットなの? とも思いましたが、

 そこは、きちんと物語につながっているのだから、さすがでありました。

 

 

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 処刑人サンソンと、皇帝ナポレオン。

 マリー・アントワネット、そしてルイ16世を処刑したのが、サンソン親方。

 自身は王党派であるはずの彼が、主人であるはずの国王と王妃を処刑するという

 何とも哀しいめぐり合わせ、それに伴う心情が、回想から痛いほど伝わってくる冒頭でした。

 

 そして、皇帝陛下との邂逅。

 社会の下層にいるはずの処刑人と、頂点にいるはずの皇帝という立場でありながら、

 平静を保つサンソンに対し、動揺を隠せないナポレオンという描かれ方をしています。

 それは、かつてルイ16世を処刑したサンソンが、いつか自分を処刑するかもしれない

 立場にいることを、ナポレオンが強く意識しているため。

 対してサンソンは平等論者だったともいわれ、己を律することに厳しい人物。

 そのあたりが、皇帝を前にしても揺るがない精神を、形作っていたのかもしれませんね。

 

 政治という舞台において、下手を打てば死を招きかねないという恐怖。

 そして、戦死と処刑では、死の意味が大きく異なると考えるナポレオンにとって、

 処刑人サンソンの存在は、無視できないということなのでしょう。

 そんな皇帝と処刑人、双方の立場と心情が、興味深い一幕。

 ナポレオンの抱える不安と、サンソン親方の人間の大きさが、じっくりと感じられました。

 

 

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 サンソン親方、没す。

 ナポレオンと会った年に、サンソン親方はなくなったのですね・・・

 ビクトルさん、男泣きしておりますが、これはもう仕方ない。

 ビクトルさんにとっては、父親のような存在と言っても、過言ではありませんから。

 

 本作にとっては準主役ともいえる立場の彼が、そんな風に泣くことで、

 サンソン親方の存在感の大きさを、演出しているように思えたりもしますが、

 普通にサンソンという人物の個性が偉大でしたからね・・・ 喪失感ハンパないです。

 一方、ベルナドットのスウェーデン兵への処遇は、

 のちに彼が、スウェーデン王になることへの布石といった所でしょうか。

 このあたりも後々、ナポレオン体制に大きな影響を与えることになりますからね、重要です。

 

 

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 大陸封鎖令。

 プロシアを降したことにより、広大な海岸線を支配したナポレオン。

 そこで、仇敵イギリスを封じ込めるための貿易禁止を考案。

 これにより、イギリスに大打撃を与えつつ、ヨーロッパ経済を支配しようと目論見ますが、

 タレイランは細心の注意を払いつつ、消極的な態度によって反対の意向を示します。

 

 ここで、タレイランが眠そうにしているのは、間違いなく乗り気でないため。

 「人は利益を求めて動くんですよ」という言葉から、この経済封鎖はうまくいかないどころか、

 反仏感情を生み出してしまいかねないと忠告しているのが、

 利にさといタレイランらしいと感心しちゃいましたよ。

 

 それでも、ナポレオンは態度を崩さなかったため、

 表だって逆らうことはせず、忠実を装って封鎖令の文言を書き始めているのが、

 処世術に長けたタレイランの真骨頂といった趣です。

 最後、あくびでシメているのは、彼の反骨の表れですよねえ・・・

 

 

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 ポーランドの人々。

 ポーランドは、ロシア・オーストリア・プロシアによって分割された状態。

 ここで、オーストリアとプロシアの領土を独立をさせれば、

 フランスにとって利になると諭すタレイランの指摘は的確です。

 けれど、ナポレオンが独立を明言せずにいるあたりは、ちょっとズルさを感じましたよ。

 

 そんな中、出会った1人の女性・マリア・ヴァレフスカ。

 ナポレオンにとって、重要な女性の1人ですね~。

 一目ぼれしたナポレオンは、さっそく権力を使って探し出し、

 すでに人妻(夫は60代!)であったものの、それでもかまわず、

 愛人として差し出させているのは、なかなかの悪皇帝っぷりでした。

 

 そして、マリアさんを差し出したことに胸を痛める男性・ポニャトフスキ。

 ナポレオンに心酔しつつ、後にフランスの元帥位を授かる人物で、

 ポーランドの独立を望んでいるのですが、まあ、その想いは・・・・・・

 マリアにせよ、ポニャトフスキにせよ、ポーランドの独立が願いであり、

 その希望であるナポレオンに頼っているわけですが、お気の毒というか、哀しいというか。

 

 などなど、サンソンの死から、大陸封鎖令、ポーランドの人々と、様々な動きがあった今回。

 私としては、タレイランの背信が、ひたひたと迫っているような描き方が面白い所です。

 あと、マリアさんの美しさにも注目ですね!

 彼女については、どのように描かれてゆくのか気になりますし、

 ますます今後も、楽しみです!

 

 

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