ヤングキングアワーズ 2012年11月号より
以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)
●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)
前回までの大騒動が収束した後・・・
スルトさんを訪ねるのは、フーシェさん。
大活躍した元パン職人をねぎらう一方で、失業中の彼に新たな職場をすすめます・・・
が、これまたフーシェさんの人の悪さ全開で面白い!
金には興味がないというスルトさんを引き留め、
「欲を持つべき」などとささやく様子は、まさに悪魔といったところか。
さらにそこから、スルトさんに金が必要だと思わせるよう仕向ける手練手管がさすが。
それに加えて「お礼と罰」て・・・ この陰険さこそフーシェさんですねえ。
スルトさんの強欲さは、ここから始まるということか。 どうりで“キャラ”違うと思ってました。
いかにも質実剛健な好青年・スルトも好きだったんですけどね・・・ 今後どうなることか。
さらに、パン屋の店主さんにも・・・
ここで、「獅子の時代」のエピソードが関わってくるとは驚き。
フーシェさんの「まあ、がんばって」の一言には笑いましたわ!
人生の春を謳歌してますな、フーシェさん。
しかし店主さんの方は、古巣じゃ厄病神扱いされてるわ、ランヌさんに負い目ができたわと、
もうズタボロですけど、それでこそ彼らしいと思ってしまえるのが、ある意味人徳かも(^^;
そして本筋ともいえるのは、モローさんの処遇。
一連のクーデター騒ぎに便乗しようとした彼に下されるのは、いかなる処分か。
反ボナパルトという立場で、己の信念を貫いたモローさん。
その心に悔いはないと、覚悟を決める様子は「男」ですねえ。
しかし彼を炊きつけたのが、“革命の亡霊”だったとは・・・
亡霊さんは今後も登場しては、ナポレオン体制への反逆者となるんでしょうかね。
本作での彼の立場は、本来は存在しないジョーカーともいえるものですから、
どこからどのように行動を起こすかわからないなど、かなり面白くなりそうな要素です。
反ボナパルト派の起こした騒動を、さっそくプロパガンダに用いるナポレオン。
この平和を築いたボナパルトへの民衆の期待は高く、
やがてその声は新体制への移行を望むように・・・
共和国の黄昏を眺めるように、タレイランのつぶやく言葉が、重くのしかかります。
そして、カドゥーダルの処刑。
王党派の大物にして、前回の騒ぎの首謀者の1人。
サンソンが執行人となっているのも、読者にとってはなつかしいところでしょうか。
ここで交わされた会話は興味深かった。
国王処刑に対するサンソンの心情。 そして、カドゥーダルの覚悟。
立場は違えど、モローがみせた覚悟と同じものを、カドゥーダルも持っていたわけですね。
じたばたせず処刑される彼からは、「男」の臭いを感じざるを得なかった。
このあたり、残酷な男ではあるのだけど、単純な“悪役”ではなかったということなのかも・・・
でもって今回、痛快だったのはミュラ!
クーデター騒ぎの際、不覚をとった彼のリベンジ。
ピシュグリュ将軍の話を、ここでこう展開させたのも驚きでしたが、
それ以上にミュラという男の凄味を感じずにはいられなかった!
私は今まで、あまりミュラのキャラクターを魅力的と感じたことがなかったのですが、
前回の父親としての姿と、今回の男としての行動のダブルショックによって、
彼への印象が大幅に変化しましたよ。
ミュラにとっては父親として以上に大切なことなんですねえ・・・
そのエゴイスティックというか自分中心な行動原理に、「男」をみました! いや痛快!!
などなど、クーデター騒ぎの後始末的な話となりましたが、
これによって反ボナパルトの大物が一気にいなくなったこととなり、
物語は文字通り、覇道進撃といった様相を示すことになるのでしょうか?
今後も楽しみです!