ヤングキングアワーズ 2014年12月号より
以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)
●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)
今回の主役は、ルフェーブル!
ナポレオンの元帥の中でも、それほど目立った人ではありませんが、
「元帥になったのをうらやんだ友人を撃とうとした」(コミックス4巻)ことで、印象深い人です。
冒頭、革命戦争時のフランケン地方で、彼が占領した町の人々に、
「自由と平等をもたらすためにやって来た」と宣言しながら、
二言目に、いかにも軍人らしい言葉を続けていたことに大笑い!
それこそが、ルフェーブルという人物の個性を、見事に表現していましたね~。
そんな彼の“凡人”ぶりが楽しい内容でありました。
ダンツィヒ攻囲戦!
オージュローを休養させるかわりにマッセナを呼び寄せ、
後方の守りを固めさせたナポレオンは、物資の豊富なダンツィヒに狙いを定めます。
その指揮官に誰を選ぶのかと聞かれ、「ルフェーブル」の名前を出したところ、
ベルティエさんが意外な顔をしているのが面白い。
「友人を撃とうとした」変り者、「ちょっとイカレてる」といった評判のルフェーブルですが、
戦闘指揮となると平均的な評価を受けているようで、ランヌやネイなど
適任者は他にいるのでは? という感じなのでしょうかね。
しかし、ナポレオンはルフェーブルを選んだ。
その理由については、タレイランが語っていましたけど、なるほど政治的なものだと・・・
そうした意味で、ルフェーブルという人物は、ナポレオン体制に必要な人材だとわかります。
実際の戦闘では・・・
塹壕堀りに時間をかけるルフェーブル。
そこを、ランヌにとがめられてますが、「年寄りは気が長い」などと言って動かない。
そんな中、ロシア・イギリス艦隊が襲来、ダンツィヒのプロシア軍と挟み撃ちにさせぬよう、
ランヌがロシア・イギリス軍へ、ルフェーブルがプロシア軍にあたりますが・・・ という展開。
ここでランヌが、ルフェーブルのことを「やるなロートル」と評価していたのが、妙に痛快。
さらに、ダンツィヒへの総攻撃が始まり、一面が火の海になると、ランヌは大喜びですが、
好対照にルフェーブルは、平静を保ちつつ、どっしりと構えて風格を漂わせているのが
カッコよかったですね~。
軍人・ルフェーブル。
ナポレオンの政治的な思惑があったとはいえ、ダンツィヒ攻囲戦では、
ランヌとは違ったカタチでの活躍を見せつけてくれたルフェーブルという人物。
自らを「凡庸」と称し、ランヌやネイに劣ることを自覚しながらも、
自分には自分の戦い方があるのだという、矜持を抱いている“凡人”っぷりが、よかった!
また、ナポレオンが振り返る「霜月のクーデター」直前のルフェーブルとのやりとりも、
彼のいかにも「軍人」といった気質に、苦笑しつつも好感を持ってしまったり、
ルフェーブルという男の魅力が、見事に描かれていた話であったと感じます。
彼の返事に、虚を突かれたような表情になるナポレオンが、可笑しかったですよ!
などなど、パイプの似合う元帥さんが面白かった今回。
最後、ランヌがルフェーブルのことを認めているようなことを述べつつ、
美味しい所を持って行かれているのが、これまた愉快!
ルフェーブルのいぶし銀なカッコよさが光ってましたね。
さて、ダンツィヒ攻囲戦は、フリートラントの戦いへとつながる一戦。
アイラウの戦いで苦戦したナポレオン軍を、落ち目とみる諸国の目もあり、
負けられない戦いとなるわけですが、さて、陛下はどう動くのか・・・・・・
この戦いがどのように描かれるのか期待しつつ、今後も楽しみです!