ヤングキングアワーズ 2017年8月号より
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今月の『僕らはみんな河合荘』感想はこちら
以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)
●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)
コミックス13巻は、8月発売! そんな今回、トレス・ヴェドラス線!
ついにたどり着いたその場所には、フランス軍の士気をくじくものが・・・
兵士たちが見上げ、マッセナが驚愕するそれは、長大なる防衛線。
単に軍事施設というだけでなく、生活の匂いすら感じさせる堅固ぶり。
フランス軍にいるポルトガル将校によれば、1年前にはなかったもの。
ということは、1年かけて作り上げたわけで、敵将アーサー・ウェルズリーの
優秀さ・周到さが、強く印象付けられますね。
ここに、トレス・ヴェドラス線における、マッセナとアーサー・ウェルズリーの戦いが、
開幕します!
トラス・ヴェドラス線を作られた時点で・・・
すでにマッセナは、大きく不利な状況にあることを察知。
「戦場で最も大切なもの・・・時間と士気を奴に譲っちまった!」と悔し気です。
見開きで描かれるトレス・ヴェドラス線は、フランス軍を圧倒し、
その威容を眺めるだけで、心がくじけそうになるほど。
それでも何とかしなければならないと、マッセナさんはさっそく偵察を出し、
この長大な壁がどこまで続いているのか確かめさせますが、80kmもの距離を
自然を利用しながらつないだ防衛線に、迂回路はないことが判明しただけ・・・
となると、越えるしかないわけですが、調べてみてもスキのない要塞になっており、
さすがのマッセナさんも手が出せないほどとは、アーサー・ウェルズリー恐るべしです。
さらに、フランス軍は食糧不足で空腹になる者が多く、もはや詰み状態。
マッセナさんも、手の打ちようがないことを痛いほどわかっていて、己の軍歴の終わりが
このような形になることに、忸怩たる思いを抱いているのが切なかった。
アーサー・ウェルズリーの勝利。
トレス・ヴェドラス線に消耗を強いられると判断したマッセナさんは、撤退を決意。
擬態によってイギリス軍をごまかしつつ秘かに撤退しますが、それに気づいた
アーサーさん、部下に追撃を進言されるも、罠を警戒。
このあたり、アーサーさんのマッセナさんへの評価の高さを感じさせます。
「相手はあのマッセナだ」なんて言うくらいですからね。
おかげで、ある程度は時間を稼げたものの、それでも追撃はやって来て・・・
フランス軍のピンチかと思いきや!?
ここで活躍したのが、ネイ!
追ってくる敵軍に対し、待ち伏せ戦術で大打撃を与えるネイの部隊。
殿を任され、仕事を全うする様子が、プロフェッショナルを感じさせます。
アーサーさんも、彼の活躍を目にして「怖い番犬」と評していたのは興味深い。
「番犬」というあたりに侮蔑がにじんでいる気もしますが、それだけ手ごわい
ということでもあるのかも・・・
ここでのネイの活躍は、撤退戦の手腕を印象付けますけど、後のロシア遠征でも
語り草となるなんて述べられていて、今後に注目です。
軍の撤退はかなり難しいもので、追撃を受けて崩れがちな所を踏ん張って、
なおかつ統制を保ったまま敵を退けるのですから、どれだけ優秀な将か
よくわかるというものです。 これだけでもネイの凄さが伝わってきますね。
マッセナさんも、珍しく「逆境での奴は最高だ」とネイを褒めていて、
勇者は勇者を知るといった感じでしたが、それでもネイに対する不満は大きい様子。
マッセナ、その軍歴の終わり・・・
国境へ着いたマッセナさんがまず行なったのは、ネイの指揮権剥奪。
それというのも、スルトへの援軍要請を独断で潰したことへの処置ですが、
ネイ自身は無駄な損害を防ぐためだったと、反発しています。
しかし、兵士たちに惜しまれながら去ってゆくネイさんを眺めつつ、
マッセナさんは「お前じゃあ、アーサー・ウェルズリーには勝てねぇ」と考えていて、
良い風に解釈すれば、ネイの身を案じての措置だったのかもと思えます。
そして、次は自分が更迭される番だと考えるマッセナさん。
けれどその前に、やれることはやろうと、他の元帥へ援軍要請を出しますが、
要請は無視されてしまったというから、さすがに酷すぎないですかね・・・
実際も、こんな感じだったのでしょうか。
この後、フランス軍は敗退を繰り返したらしいですから、やるせないことです。
などなど、トレス・ヴェドラス線をめぐる戦いが描かれた今回。
強固な要塞を前になすすべなく、軍歴を終えるマッセナの哀愁が感じられましたね。
ナポレオン配下でも、トップを争うほど優秀な将帥である彼が・・・と。
そして同時に、アーサー・ウェルズリーの強さが印象付けられ、着々と
ナポレオンの落日へと時間が進むことに緊張をはらみつつ、今後も楽しみです!