アミシュの戒律の一つに自分を誇示しないというのがあります。お化粧もよく見せたいという願望、人よりも美しい洋服を着たいと思うのも虚栄誇示に入ります。比較してはいけないのです。
シェーカーは極限の単純美を誇りにしましたがアミシュのプロダクトで美しいものは古いアミシュキルトとフックドラグです。だけといってもよいほどです。集まって作るキルト作りが社交と楽しみになっていました。柄のある布地やデザインは他人と比較することになりご法度でした。20世紀になってウールシャーリーという日本のメリンスのような柔らかいウール地が各色作られ世紀末から1920年後ころまでに作られたアミシュキルトは木綿よりキルティングしやすいこともあって本当に美しいものです。現在はほとんどコレクターや美術館に所有されています。また現在の柄物でビジネスとして作られたキルトはほとんどが美しいものではありません。
アミシュ デザイン フックド・ラグ 制作 岡本登志子(見事な出来栄えです)
アミシュはルーテル派新教再組織から分かれてスイスで生まれ、迫害でドイツに移住。キリスト教徒として共同体に忠実で、厳格な規則のある派で創始者メノン シモンズの名前を取ってメノナイトと言われ、メノナイトの一員、ヤコブ アマンは教会の純粋性を保持するために一層保守的なアミシュ派を作り宗教の自由を求めて三百年前にアメリカのペンシルバニアのランカスターに移住しました。
農耕、牧畜、自給自足の生活をし、新しい技術や考え方を拒否し近代文明と隔離されたシンプルな暮らしをしています。独自のバイブルの解釈から服装を決め、コミュニティで暮し、謙遜、公平、丁寧にシンプルライフを続けています。自分を引き立てる虚栄心はご法度です。庭の花も競って美しい花を植えません。虫よけのマリーゴールドがふつうです。
男性は白シャツ、黒ズボンにズボン吊り、黒いジャケット、ジッパはないのでカギホックとボタン、冬は黒いフエルトの帽子、夏はストローハットをかぶります。女性は無地のドレスかスカート、白いブラウス、肌を見せることはしません。アクセサリ―をつけることも厳禁です。白いボンネットで髪を見せません。
戦争にはいきません。税金を払わないので年金もいただきません。病院もなくコミュニティで病人の面倒を見るそうです。学校は16歳までに生活に必要なすべてを学びます。
数年前、アミシュの小学校に無差別に10人以上の子供に発砲し、射殺しました。犯人もすぐそこで自殺した大事件が起こりました。
そのこと以上に考えさせられたことは、犯人のお葬式に犯人の棺の後を村人たちの列が延々と続いたことでした。大きくニューヨークタイムスにその写真が出ましたが、考えさせられる忘れ得ぬページとして皆がそれぞれの心にとめた事件でした。
アートって「人を幸せにするもの 」って答えたお父さんに「作り手も幸せにしていただきました」と伝えたいです。これからも自由に楽しくフックしながら、幸せを感じていきたいと思います。
教えた生徒が想像以上に素敵なものを作る、しかも草の根のレベル。年数ではないことを生徒のみなさんが証明してくれました。こんな嬉しいことってざらにはありません。
やれば出来る!潜んでいる才能はのばすほうが人生は楽しい。この達成感はみなが感じたことだと思います。
しかし、上には上があることを忘れないで、努力していきましょうね。
ランカスターのアーミッシュのキルト博物館と素朴で美味しそうな手作りの食べ物などを売っていたマーケットに行ったことを懐かしく思い出しました。