散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

「抑止と同盟」、学ぶべき論稿(2)~露(ロシア)の宇(ウクライナ)侵略

2022年04月03日 | 国際政治

露の侵略に対するNATO諸国の当初の対応は…防衛の義務がないこともあってか、どこか他人事で、もたついていたと筆者には感じられた。

核兵器に関して、露の脅しに有効な反論がなされず、また、宇からポーランドに対するミグ戦闘機譲渡の要望にも、米国を含めて相互連絡にもたつき、結局、ロシアの核兵器使用の脅しに屈した形で出来ず仕舞いに終わる。そのため、宇軍の現場での奮闘で漸く戦線を持ち堪えている状況でいる。
しかし、一般人を含めてその被害は大きく、終結は見通せない。何故?

「抑止と同盟から考えるロシア・ウクライナ戦争」鶴岡路人(慶應義塾大学准教授)の分析が参考になる。問題のキーワードは<抑止>になる。

以下に引用する。
国際問題研究所 欧州研究会 FY2021-8号 研究レポート 2022-03-29  
https://www.jiia.or.jp/research-report/europe-fy2021-08.html

問題は宇がNATO加盟国ではなく、米国を含めたNATO諸国は宇に対する防衛義務を負っていない。そこで対露「抑止」を如何に捉えるか?これに係っている!
そこで鶴岡准教授は次の考え方を示す。

(1)ウクライナ国境地帯への露軍集結に対し、米国は露の宇侵攻を防ぎたかった、つまり抑止したかったことは確かだろう。
(2)但し、そこには明確な限界が存在した。
それは2021年12月の段階でバイデン米大統領は「(防衛)義務はウクライナには至らない」と述べ、「米軍派遣を選択肢に挙げたことはない」と言い切る。
(3)更に、上記の考え方を、行動しない免罪符として使っていた。
(4)しかし、ここで「思考停止」してはいけなかったのだ。

次の様に考えることは可能だった!
(5)防衛義務が存在しないとしても、集団的自衛権の発動は不可能ではない。
(6)国際連合憲章は集団的自衛権を国家固有の権利として認めている。
(7)他国を軍事的に支援することに対し、安全保障条約は不可欠ではない。
(8)実際、湾岸戦争の際、米国とクウェートの同盟関係はない。
(9)「イスラム国」に対する有志連合による空爆作戦は、イラク政府の要請に基づき、米英仏等がそれぞれ集団的自衛権を発動して対処した。

米国あるいはNATOによる宇への軍事的支援は、米国・NATO側による政治判断である。その判断では、(1)宇の重要性―同国を守る価値―と、(2)対峙する相手だ。
一方、二点を完全に分離して考えることはできない。「宇はNATO加盟国ではない」という主張は(1)に該当するが、バイデン大統領が繰り返す「第三次世界大戦になる可能性」は、(2)に係る。仮に(2)が強調される場合、NATO加盟国の防衛にも疑念が生じる。

「ウクライナにおいて」米国がロシアと戦うことがなくても、そのことは、ロシアの行動を抑止することが米国の国益の一部であることを否定するわけではない。ウクライナを防衛することと、(米国の望まない)ロシアの行動を抑止することは、本質において異なり、前者の意思がなくても、後者の必要性は減少しないのである。

米国・NATOの事情は、露の抑止にも大きな影響を与えた。即ち、露の抑止に失敗すると共に、宇への侵攻後も、「エスカレーション・コントロール」の失敗を続けていると評価せざるを得ない。

露は、NATOによる次の措置を封じるための抑止メッセージを繰り返し発してきた。宇上空の飛行禁止区域設定や、ポーランドなどから宇への戦闘機供与、さらには一部NATO加盟国が保有する旧ソ連製の防空システムS-300の宇への供与などに関し、「戦闘への参加」とみなすと警告してきた。これは、露が主導権を確保し、NATOを一方的に抑止している状況に相当する。これは由々しき事態なのだが、NATOからはその問題意識すら聞こえてこない。これはNATOにおける抑止の発想の不足を示している。

即ち、最後に問われるのは、エスカレーションを覚悟したうえで抑止を構築することであり、政治指導者の判断が問われる。

更に、鶴岡論稿では生物兵器、経済問題と議論は続く…参照して頂きたい。

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