何年か前にソ連映画「大祖国戦争」を見た。それは第二次世界大戦に関するソ連の典型的なプロパガンダ(宣伝)映画であった。この映画を思い出したのは、ロシア侵攻に対するウクライナ反攻が進む中での、ロシアにおける反徴兵騒動、若者たちの海外脱出のニュースに接して考えさせられたからだ。
独ソ不可侵条約を破ってロシアに侵攻した独軍に中核地域を攻撃され、余儀なく後退する。しかし、苦しさを乗り越えて反撃を加える。逆に押し返して独に攻め込み、ナチスを崩壊へと追い込んだ。この大戦でのソ連戦死者は2千5百万人を超えたと言われるほど、凄まじい戦いであった。
戦士たちは見事なパトリオティズム(愛国主義)を発露した。しかし、その愛国心は共産主義イデオロギーのためではなかった。即ち、戦士たちはプロレタリア革命のために死んだわけではない。彼らは家族、その象徴としての母のため、また生きる糧を育む大地を確保するために、死をもいとわずに戦ったのだ。それは将に死を覚悟の戦いだった。
ロシア(露)・プーチンによるウクライナ(宇)侵攻は、現在、宇の反攻によって、後退を余儀なくされている。その反攻はナチス侵略の際に発揮された見事な愛国主義をベースに発揮されたものと考えられる。
一方、露では新たな戦士の徴発に対する反発が報道されている。また、若い人たちの国外脱出も著しく多い。多くのロシア人はプーチンの「大祖国戦争」を、プロパガンダ映画を見るような気持ちで眺めているのであろうか。